白狐+ショタ=正義! ~世界は厳しく甘ったるい~ 作:星の屑鉄
それでは、本編をどうぞ。
『はく! しろいから、はく!』
そんな自己紹介をした男の子は、もう近くには居ない。
癖のある緑色の髪をいじりながら、花々に水を与える。雫は太陽の光のもとに輝き、花に当たれば弾けて宙に消える。
水に与える雫は、まるで昔の思い出のようだ。出たかと思うと、弾けて、消えて、そしてまた現れる。楽しかったころの思い出は、どうにも頭の中に残り続ける。
『はくははく。くろはくろ。びゃくはびゃく』
闢の力は『ひらく程度の能力』といっていた。
なるほど、確かに規格外の能力だ。
「だけど、そうじゃないわ」
『びゃく、くろ、どっちもともだち。はくといっしょ。でも、どっちもあばれんぼう。はくとちがう』
白と、闢と、黒。
この三者は同一の体を保有する。しかし、各々の意識はまるで別人だ。事実、魂のレベルで根本的に違うのだろう、と風見幽香は考えている。
「ふふっ」
思わず笑みがこぼれた。
「あはははっ!」
たのしくて、たのしくて、仕方が無かった。
「『異変を予見する程度の能力』」
それが白の能力だと、ルーミアが言っていた。
「そう。間違ってはいないわ」
そして問題は、黒の能力だが。
これに関しては、まったく分からない。周りにいる誰もが知らなかった。
「黒の能力。ふふっ、あはは、アハハハハハハ!」
おかしくて、おかしくて、堪らなかった。
腹を抱えて、心の底から笑った。
「なんて素晴らしいのかしら」
ひとしきり笑って、目元の涙を拭って呟いた。
「白。本当に、なんて、恐ろしいのかしら」
敬遠されるわけだ。恐れられるわけだ。知った者が拒絶するわけだ。
あの日、気づいた時の感触を思い出すと、夏場だというのに今も肌が粟立ってしまっている。
「でも、貴方に勝てないわけではないわ」
確かに、白の舞台に立てば風見幽香に勝ち目は、万に一つも有り得ない。いや、確率なんて、本当の意味でゼロである。
だが、要するに、彼をその舞台から引きずり下ろしてしまえば勝ち目が生まれると、風見幽香は計算していた。
「魔界か、月の都」
前者も後者も、ある人物の力が必要になってくる。いや、もしかすればその両方が必要になるかもしれない。知恵者の彼女は数百年経った今も尚、計画に穴を作らないために考える。
しかし、どう転んだとしても、勝利条件だけは変わらない。
「闢。それに黒。白以外、本当に、邪魔ね」
風見幽香にとって、闢と黒は害虫だった。あの二体さえ居なければ、すぐにでも決行出来たというのに、あの二体のせいで、計画に大幅な遅れが生じている。打つ手が、十手、二十手と、とことん変わってくる。
「私が、屈服させるわ」
――絶対的強者である白を。
――この手で、抵抗できないようにして。
――その心まで犯し尽す。
――白を、自分だけのものにする。
絶対的強者を屈服させる。なんと、甘美な響きだろうか。
考えただけで、彼女の体が疼き始める。はやく、はやく、と急かすように、時間を経れば経るほど衝動は強くなる。
「はぁ」
艶めいた息が糸を引く様に吐き出された。その色めきときたら、見ればすぐさま思考が凍結し、甘い蜜に寄りつく虫の様に彼女のもとに歩き出してしまうほどだ。例え身持ちと警戒心の強い男性相手だとしても、これを見れば自らまな板の上に躍り出るだろう。
「はぁ――」
長い、長い、後に引くような吐息が漏れる。
花の水やりを終えた時には、シャツが汗にまみれて透けていた。肌にペタリとくっ付いたシャツからは肌色が浮かび上がっている。服は着崩れ、滑らかな鎖骨のラインが白日のもとに晒される。豊満な胸から締まった腰に至るまで、ボディラインを浮き上がらせるほどしっかりと貼り付いた白色。それが彼女の美しい肢体を強調しているからこそ、今の彼女は裸体であるときよりも艶めいて映る。
「はぁ」
――今日も平和だわ。
彼女は暢気に空を見上げた。
今日も、憎たらしいほど青々とした空である。
快晴だ。
「私の心のようね」
それはない、とどこかの宵闇が呟いた気がしたが、そんなことは気にしない。
何せ、今日は快晴なのだから。
友の戯言を聞き流すくらいの寛容さは備えている。
まぁ、それはさておき。
「水浴びをしましょう」
豪雨に見舞われたかの如く濡れていた彼女は、身体を清めるために川辺へ向かうのであった。
本日は快晴。
平和な一日なり。
そろそろ白の本質が見えてくるかもしれない頃合い。
ゆうかりんは白を打倒して独り占めするために画策中。
ただそれを描きたかった回になります。
さて、それでは、また来週には物語が進んで行くことに。
それでは、感想、コメント、評価、批判などなどお待ちしております。