白狐+ショタ=正義! ~世界は厳しく甘ったるい~   作:星の屑鉄

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まさか、第一話でUA数500突破まで伸びるとは……ハーメルン民の皆様のショタコン率の多さに二次創作者は若干驚いております。

また、感想3件の方もありがとうございます。非常に励みになりました! たくさんのお気に入り登録の方もありがとうございます。

そんな皆様に支えられているこの小説、何とかクオリティを引き上げつつ続けていきたいと思います。

それでは、長々と前書きしましたが、本編をどうぞ。




第二話 弱いけど強い男の子

 実験が大成功した翌日のお昼時の事。

 

 八意永琳は他の追随を許さない頭脳を持ちながらも、今も尚混乱の極致に突き落とされていた。ちなみに、今日の昼食はきつねうどんだ。昨日の残りの油揚げが良い味を出している。我ながら最高の出来の一品だと自負している。

 

 しかし、彼女はそのきつねうどんに手を付けない。ただ、目の前で彼女の前にあるものと全く同じものを嬉しそうに啜っている、白髪と頭に生えた三角の狐耳、毛並み綺麗な一本だけの狐の尻尾を生やした男児を見ていた。

 

 昨日、不覚にも精神的に一瞬で気絶まで追い込まれた彼女は、改めてその姿を見て、その破壊力に心を震わせる。純粋にきつねうどんを美味しそうに食べる姿もそうだが、食べ物を一杯に詰めた頬の艶と柔らかそうな雰囲気ときたら、すぐさま突いてしまいたくなる魔力に溢れている。彼女の天才的頭脳は同時に、突けば最後、底なし沼の如くその頬を弄り続ける未来まで見通していた。それでも尚、彼女の理性を、かき氷を作るかの如く削っていくものだから、下手な麻薬よりも性質が悪い。いや、副作用が無いことを考えれば、それ以上に依存性が高いようにも思える。

 

「ふー……ごちそうさまー!」

 

 丁寧に手を合わせて、食べ終わると満面の笑みで彼はそう言ってのけた。十割天然の笑顔の破壊力は、もはや既存の兵器の追随を許さない。天才の頭脳は一瞬にしてエラーで埋め尽くされたことによりフリーズして、ぎこちなく「お粗末様でした」と言うしかない。

 

「う……? たべないの?」

 

 指摘されて、彼女は我に返った。いけない、いけない、と彼女は頭を振って煩悩や知識欲を追い払い、既に伸びそうになっているうどんを慌てて啜った。

 

 彼女が食べ始めると、また突然、彼は笑顔一色となって、尻尾を千切れんばかりに振ってその様子を見ていた。一体、何がそんなに楽しいのかしら、とこの時ばかりは追い払った知識欲で頭の中を一杯にして、彼女はうどんを食べ続けた。

 

「ふぅ、ご馳走様でした」

 

 手を合わせ、食物に感謝と祈りを捧げる。それが終わると、さて、後片付けしなくちゃ、と彼の分の器も運んで、すぐにそれを洗浄機に入れた。彼はそんな彼女の後についてきており、その様子を興味深そうに「おー」と声を上げながら、まじまじと見ていた。仮にも妖怪なのだから、きっと科学の産物が珍しいのだろう。

 

 それが終わると縁側に移動して、二人してそこで座って寛いだ。

 

「そう言えば。あなた、名前は?」

 

「んー? なまえ……はく!」

 

 はく……おそらく、白と書いて「はく」だろう。安直な名前だが、それは実に良い名前だと、彼女は思わず笑みを浮かべる。

 

「それと、びゃく!」

 

「えっ」

 

 彼女は思わず声を出した。不意を突かれて驚いた風に口に手を当ててしまったが、すぐに何事か納得すると、ひとり頷いて、また笑みを浮かべようとして。

 

「それと、くろ!」

 

 今度こそ、目から鱗が出る思いを味わった。彼の口から紡がれたのは、まったく同じ意味の2つの名前と、まったく別の意味の1つの名前だ。前者であれば納得したが、後者に至ってはまったく理解に及ばず、彼女は天才の頭脳を余すところなく使って考え込み、しかしそれでも確信を突けず、溜息を吐いた。

 

「んー」

 

 不意に、自分を期待の眼差しで見上げてくる存在に気が付いた。言わずと知れた彼――とりあえず今は白(はく)と呼ぶ――が瞳を輝かせて、何かを待っていた。これには少しも考えることなく答えに至り、柔らかい笑みを作って、彼に目線を合わせて言った。

 

「私の名前は八意××……ごめんなさい。聞き取れないわよね。なら、永琳、って呼んでくれると嬉しいわ」

 

「んー、えーりん!」

 

 向日葵の様な笑顔を向けられて、永琳は心に致命的な一撃を受けた。目線を合わせていたこと、間近でその笑顔を直視してしまった故のことだった。これほど美しく純粋な男児の笑みを直視して、更にその前に名前を呼ばれて、それで尚精神的に即死しなかっただけでも、永琳はよく耐えたといえる。

 

「えーりん、えーりん! ねー、なにするー?」

 

 白(はく)は無邪気に小首をかしげて問いかけた。彼が暇だということが分かった永琳は、早速何をしようかと頭を働かせる。しかし、どれも彼が喜ぶようなことだとは思えず、ここにきて彼女は頭を抱えた。

 

「あたまいたいの?」

 

 ぽん、ぽん、と彼女の頭に小さな手が乗っけられた。すぐに視線を彼に戻すと、何と彼が心配そうな、不安そうな顔で彼女の顔を覗き込み、更にその手で頭を撫でていた。

 

 とても柔らかい手なのね、と永琳は場違いにも冷静に状況分析していた。状況分析が終わると、それが自分にされていることなのだと自覚して、思わず顔が赤くなった。今、この状況を弟子たちが見たらどんな顔をするのだろうか。出来れば、今この時だけは弟子たちが此処に来ませんように、と彼女は神に祈りを捧げた。

 

「八意様、いらっしゃいま、す、か……?」

 

 あぁ、何てタイミングの悪い、と永琳は心の中だけで天を仰いだ。現実に天を仰ぐわけにはいかなかった。今は頭を撫でられているこの心地をもう少し味わっていたいと思い、現実に反応することだけは避けた。

 

 一番の敗因は、縁側で寛いでいたことだろう。縁側と家の入口は繋がっており、入り口に立てば縁側も見える図式だ。そのせいで、家に訪れた弟子の一人に、この現場を目撃されてしまった。

 

「……妖怪かッ!」

 

 薄紫色の髪を黄色いリボンでポニーテールにして纏めている少女は、呆然とした表情から真剣な面持ちに切り替わり、腰に差していた刀を抜いて彼へと突撃する。

 

 不味い、と永琳は柄にもなく焦った。甘美な感触に酔いしれている場合ではない。今すぐ彼を助けねば、と永琳は彼を抱き込んで庇おうとした時だった。

 

「はう!?」

 

 突然、彼が何もないところにも関わらず、まるで何者かに足を掛けられたかの如く、正面から転んで、その顔を床に強打した。間一髪、少女からの刺突は回避できたが、あれはあれで痛い。それも、勢いづいていた。

 

 何とも言えぬ空気を永琳が噛みしめている間にも、少女は油断も躊躇いも無く、追撃しようと刀を振り上げた。

 

「っ、やめなさ――」

 

「――ひっく、ゔゔ、えぐっ……」

 

 永琳の制止の言葉が、泣きじゃくる声により止められた。少女も、これには思わず手を止めた。場の空気は先ほど少女のペースで進められていたが、今は彼一色に重苦しく染まった。ついで、錆びついたブリキのおもちゃが動くかの如く、ギギギと音でも立てるのかというほどぎこちない首の動きから、二人はようやく彼の顔を視界に捉えた。

 

「ま……ない……」

 

 彼が何事かを小さな声で呟いた。視覚ばかりに囚われていた二人は、慌てて彼の声を拾おうと耳を傾けた。

 

「いたく、ないもん……!」

 

 耳に泣き虫の強がりが聞こえた。その直後、少女の視界に彼の顔が映り込んだ。

 

 彼は一人で必死に立ち上がろうとして、そして立ち上がるには至らなかったものの、転げた状態から、ぺたんと座り込むまでには姿勢を自力で戻して見せた。ほろほろ零れる涙を懸命に両手で拭きながらも、床にぶつけて赤くなった鼻には手もつけない。何よりも、彼の瞳は泣いていなかった。下を向いていなかった。ただ真っ直ぐ、ひたむきに前を向いていた。時々嗚咽は聞こえてくるが、その度に涙声で「泣かないもん……!」と独り懸命に戦っていた。

 

「っ……!」

 

 少女の胸の内から熱いものがこみ上げてくる。それが喉元までせり上がったところで、光の速さで脳を焼いた。

 

 少女はすぐに刀を鞘に納め、先ほどとは打って変わって柔らかい笑みを浮かべて、彼の前まで歩いたかと思うと、その場に膝をついて、その瞳を真正面から見つめた。

 

「っ、な、ないてないもん!」

 

 うーっ! と獣が相手を威嚇するように、彼は低い唸り声を上げて少女の瞳を目に涙を溜めながら真っ向から睨み付けた。彼の尻尾が怒髪天を衝いていた。

 

 涙を流しているのに、泣いていない彼の瞳。

 ただ真正面だけを見つめて逸らさず、逃げず、下も向かなければ、上に向けて祈りもしない、真っ直ぐな瞳。

 誰かが見つめても、それに応える無邪気な胆力。

 

「大丈夫。大丈夫だ。ほら、綺麗な顔が台無しだ」

 

「じぶんでできるもん!」

 

 ハンカチを取り出して、彼の涙と鼻水で濡れてしまった顔を拭おうとしたが、少女が拭こうとすると、彼はすぐさま着物の袖で顔を拭き始めた。

 

 綺麗な着物が汚れてしまう、なんて野暮なことは誰も言わない。少女も永琳も、ただその雄姿を黙って見守り続けた。

 

 少ししてから、ようやく着物で隠れた彼の顔が出て来た。涙も鼻水も、もう顔についてはいなかった。当然、涙の跡、目に溜まった潤い、腫れた目元、少し赤い瞳は隠せないが、彼はそんなことを気に止めた様子もなく、リベンジするように少女の瞳を精一杯睨み付けた。

 

「ないてないもん!」

 

 少女は彼の瞳を見つめ返した。何十秒と見つめ返したが、彼は瞬きすることも無く、瞳をさ迷わせることなく、頑なに少女の瞳に向けて睨み付ける。

 

「そうだな。うん、泣いていないな」

 

 少女は自然と、彼のことを抱きしめた。優しく、抜け出そうと思えば例え弱小妖怪であってもすぐに振りほどけるくらい、力を全く込めずに抱きしめた。

 

 そんな時間を数十秒ほど味わったかと思うと、少女は彼の小さな肩越しから永琳を見つめて、一大決心したような顔で言った。

 

「八意様。私は、この子を婿に迎え入れます!」

 

「……はぁ」

 

 頭に手を当てて、永琳は溜息を吐いたのであった。

 

 




 ショタコン万歳!(挨拶)
 申し訳ないです。あまりにも素晴らしい挨拶だったのでつい、こちらで出してしまいました。(抗議きたらすぐに消します)。

 マンネリは良くないので、謎解き展開も入れました。フラグ回収時期も既に設定しているので、忘却の彼方に忘れ去られることは多分ありません(笑) 忘れ去られたら幻想郷に飛びます。

 なんて冗談はさておき、白狐+ショタ=正義 という方程式は、やはり書いている間にも正しいと確信した次第です。書きながら常に心がハッピーになる二次創作者です。

 また、白狐+ショタ+笑顔=最強 という方程式を今回は考え付いたのですが、皆様はどうお思いでしょうか? 二次創作者の手前にとっては大好物であります(`・ω・´)ゞ

 こういった設定は、どうしても地盤の無い一次創作にするには難しいので、ピッタリマッチングする東方の世界がある事には感謝の念が尽きません。



 それと、勘違いなされないように念のため。
 依姫が白を問答無用で攻撃した理由は、師匠である永琳が、妖怪に何かしらされている、洗脳の類の術に掛けているのではないか、という勘違いのもとでの行動です(描写しなかったのは雰囲気を壊さないためです。文才が追い付かず申し訳ありません)。絵面が絵面でしたし、それくらいの勘違いはあってもいいと思います。古代ということもあり、非常に狡猾で強い妖怪が居てもおかしくありません。

 簡単に言うと、永琳を手玉に取ってる一尾の妖怪なんて怪し過ぎるだろう? ということです。それに、強い妖怪にも萃香みたな合法ロリが居る世界ですから。見た目で弱いと判断することは不可能。更に、都に妖怪が居ること自体有り得ないことですし、これくらいは当然かと。
 和解の理由は、儚月抄にもあったように、霊夢たちを露骨に見下したり嫌悪していることは無かったので、本質が悪でなければ、ある程度妖怪に対しても理解があると考えました。あと、元ネタであると思われる玉依姫が……ね(ほぼリアル光源氏状態)。


 ……と、語り過ぎました。後々、あとがきに書くネタが無くなっても困るので、今回はこれにて。


 感想、コメント、評価等々、お待ちしております。

 ちなみに、永琳の口調は説明時は「です、ます」調で、それ以外の時はフランクであると勝手に分析しております。

 ……あとがき960文字って、なんぞよ(;´・ω・)
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