「う……あ…ここは…?」
天龍が寝て1時間後に他の艦娘が目を覚ました。資料では見た事があるが、朝潮型駆逐艦十番艦の霞で間違いないようだ。
「気が付いたかい?」
優しく声を掛けるが、かなり怯えているようだ。それもそうだろう。天龍から聞く限りでは、酷い扱いを受けたのだから。
「ひっ…!!だ、誰よアンタ…」
「佐久間と言う。ここの鎮守府の提督だ。君達が知っている鎮守府とは少し違う所があるが…」
「…佐久間…?聞いた事あるわね。深海棲艦さえも味方につける楽園のような鎮守府…クズ司令官が何か言ってたような気がするわ。ところで私達を助けてどうするつもり?あのクズ司令官と一緒な事をするつもりかしら?」
「…俺は助けたお前達を保護したい。此処に居てもらいたい。天龍から聞いたが、酷い扱いを受けてたんだろう?」
「…そうよ。凌辱されたり、暴力を振るわれたりしたわ…。…それが、あの鎮守府では当たり前にあるのよ」
…聞くと酷い話だ。1度その提督に会って顔を拝みたいものだ。…まぁ、電話は掛けるんだが…。
ふと、医務室の扉が開いた。誰か入ってきたのかなと思って扉の方を霞と見てみるとどうやら艦娘ではないらしい。
「……何なのよあれ?」
「くすぐりお化けだよ」
「お化け?…あれが?」
ゲル状で半透明でまとまりがなく、オレンジ色をした大きなスライムのような物が医務室の中に入ってきた。
霞がいる方に向かって行っているようだ。
チラリと霞の方に目をやると、表情が固まっており不気味なモノを見るような目をしていて、くすぐりお化けの方を凝視していた。
やがてベッドに上がってきており、霞の近くまでやってきた。
「何も害はないから触ってごらん?」
「…」
ゆっくりとだが、言われるがまま霞は手を伸ばしてくすぐりお化けを触ろうとする。触れようとすると、『くぅくぅ』と言う音を散らしながら手を合わせるようにオレンジ色のゲル状が包み込んだ。
「ふふ…なんだかこの子を触っていると心地よくて…どういう事か分からないけど気分が良くなってくるわ…♪」
「よかった…。暫く遊んであげてね」
そう言うと霞はくすぐりお化けを指先で突っついたり一部分を摘んだりしていた。
「貴方が最初から私の司令官になってたら良かったのに…。あの鎮守府には二度と戻らないわ。あっ、ちょ、ちょっと!この子どこはいってるのよ!?ひゃう!?あはっ、くすぐったいからやめなさいっ!あははは!」
くすぐりお化けにくすぐられており、布団の上でバタバタと暴れている。…落ちなければいいが…。
席を離れ、他の艦娘達の様子を見る。まだ寝ており暫く起きそうにない。起きたとしても、くすぐりお化けに任したらいいだろう。この子達が居た鎮守府に電話をしようと思い執務室に戻る事にした。
SCP-999
「くすぐりオバケ」
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