車校で理不尽にキレられた裏みだぁ!
うちがあんちゃんを初めて見たのは一年の夏ごろの話だった。
その時あんちゃんは…
警察に捕まろうとしていた。
あの日、うちが学校から帰ってくると、うちの部屋の近くに警察がうろついとってすごく驚いたのを覚えとる。
けど、そんなことよりよっぽど驚いたのは警察と容疑者の関係だった。
この容疑者、この人こそが今のうちのあんちゃん、叶奏である。
その罪状は、地上二階からブーメランパンツに白衣という服装で後方抱え込み二回宙返り三回ひねりで飛び降り、五接地転回法受け身していたこと。
簡単に言えば猥褻物陳列罪と危険な行為に対する厳重注意。
そんな意味の分からないことをやった容疑で警察が任意同行を求めとったんやけど、その男はどうにかして逃げようと言い訳を繰り返しとったんや。
「証拠はあるのかね!証拠は!!」
「証拠云々の前にそんなことをやれるのはここらへんでお前しかいないだろうが!」
「はぁ?一回下の大谷さんだってできるしー、ついでにこのマンションの住人ならたぶん3人に2人はできるしー」
うちの住んどるマンションはいつから魔境になったんやろか?
「大谷さんにはさっき話を伺ったところだ。」
「その時、大谷さんが提供してくれたの動画がこれだ。」
警官が持ってきたノーパソに映された動画にはブーメランパンツに白衣、加えてスイムキャップとゴーグルで顔を隠した男が飛び降りる光景が写っとった。そして問題やったのはそのあとやった。
『どうっすか?大谷さん。完璧に撮れてますか?』
『ああ!完璧だ!!これをア・ナ・タTubeに投稿すれば金は貰ったも同然だな!』
『いや~いい収入になりそうっすね。』
『そうだね!叶君!』
そう言って画面の変質者と撮影者は固く手を結んでいた。
しばらく無言で警察と見つめ合っていたあんちゃん。
先に口を開いたのは警官だった。
「これでも証拠不十分だと?」
「すみません、今から用事ができたんで少し待ってもらいませんか?」
そう言ってどこからともなく釘バットを取り出し、下の階へとつながる階段に足を向けたその男。
だけど
「殺人未遂の容疑も追加だな。」
という警察の言葉とともに手錠をはめられ、拘束された。
「まぁまて、なら少しだけパソコンをかまわせてくれ、少しでいいから。」
「…何をするつもりだ。」
拘束されながらも真剣な顔で頼みだすその男。なんやけど頼んだ内容が
「あいつの見てるエロサイト、買ったAV・エロ本、すべてをアイツのブログにさらすだけだ。」
「連れていけ。」
「おい、ちょっと待て。何の問題があるというんだ!」
警察に連行されそうになるのを耐えながら訴える。
「逆にどこに問題がないと思ってるんだ、お前は。」
「全て。」
「連れていけ。」
「Just a minute!!」
再三交渉を始めるその男。何がそんな彼を必死にさせるんやろか。
「いいか、俺を連れて行ったら大変なことになるぞ!?」
「ほう、例えば?」
「出席日数が足りなくて俺が高校中退になってしまう。」
「自己責任だな。」
「まぁまて、そう慌てるな。そうだ、あれだ、そのぉあれだぞ。」
「どれだ。」
「あんたの一夜の間違いを妻にばらす。」
「おい、誰か射殺する許可を申請してくれ。」
そう言いながら拳銃を突きつける警官。
「おいおい、どうしたんですか?急に慌ててぇ。」
「貴様…どこでその情報を…。」
「さぁてどこだろうなぁ。」
形勢逆転だとでも言いたげにニヨニヨしてるその男に、脂汗をかきながら歯ぎしりをする警官。周りの警官は自分に飛び火してこないよう目をそらしとる。
「お前は毎回毎回なんでこうなんだ…」
「お前も毎回毎回よく一夜の過ちが尽きないな。」
「おい、人が毎回浮気しているみたいな言い方やめろ。間違えてセーフティ外しちまっただろうが。」
「撃つなよ?撃ったらお前も道連れだからな?」
「…条件を言え。」
「警察庁長官に電話つないでくれ。それだけでお前のこの情報は黙っといてやろう。」
「…おい、誰か携帯を持ってこい。」
業務用のように見える携帯を持ってこさせ、コールし、男に渡す警察官。
「はいはいもしもし?俺だけど?」
そのあと聞こえ来るツーツーという通話が切れた音。
「もう一回かけてくんね?」
再チャレンジ。
「よくも電話切ってくれたな、こんにゃろめ。」
「あぁ?誰だって?んなもん叶奏だよ。」
「ああ、そうそう、そのカナカナちゃんですよー。」
偉い人と話してるんに関わらずすごいフランクなんやけど…この男。
「え?じゃらじゃらうるさい?しょうがないだろ、手錠はめられてんだから。」
「ハイハイ、ちょい代わるわ。おーい、電話代わってくれってよ。」
そう言って携帯を警官に渡して少し会話したかと思ったら
「…おい、手錠外してやれ。くっそまた失敗かよ。」
「はははは!また逃げれたぜ!」
悔しがる警官一同に高笑いする男。
「けど今日一晩刑務所で説教だからな?長官からの命令だ。」
「げ…まじかよ。まぁ明日の学校に間に合えばいいよ。その代わりカツ丼は自分で作るから材料よろしく。」
「おいふざけんなよ!」
警官をパシリに使おうとすればそりゃ怒るやろ。
「俺たちの分も作れよ!材料費も買い出しも負担してやるから!」
そっちかい!
「それじゃあ今から買い出し部隊を組織する。買い出し部隊はカツ丼がいるものの人数を数え、必要な材料を叶に確認し、スーパーへ向かえ。領収書を忘れるなよ。」
「また俺が作んのかよ~、これで何回目だ?」
「少なくても10は超えてるな。」
「そんな捕まって見逃してもらってんのかぁ俺。」
「ちったぁ反省しろよ。」
本当に反省した方がいいんとちゃうかな。それは捕まりすぎや。
「いいんだよ、俺はこれで。そんじゃ、料理作りに行きますか。」
「説教聞きにの間違えだろうが。」
「お前はいらないんだな、わかった。」
「いるから!悪い!俺が悪かったですぅ!!」
言い合いしながら笑いながら降りていく警官たちとうちの隣人っぽい男。
うちが叶奏という男を認識した瞬間はこの時。
出会いはもう少し時間が進んだ頃に行われることになるんやけど、それはまた今度やね。
どうやった?エリちに亜里沙ちゃん。」
「すごいんですね!奏さん!」
「捕まればよかったのに。」
そう目を輝かせる亜里沙ちゃんに、“惜しいっ”って顔をするエリち。
「それでこの後どうして出会ったんですか?」
「そうね、今回の話にあ、愛するなんて要素一欠けらもなかったもの。」
「愛しとるくらいで慌て過ぎやで、エリち。」
「…」
への字エリちもいいわぁ…
「ま、続きはまた今度やね。もう夜遅いし、このまんまやとエリちが寝れんくなってまう。」
「失礼ねぇ、豆電球がついていれば眠れるわよ。」
「事前に豆電球抜いといたから安心してええで。」
「え…」
泣きそうな顔をするエリち。
そそるわぁ、ほんまからかいがいがあるんやから。
「それじゃあお休み~。」
「はい、お休みなさいです。」
「ねぇ、希?亜里沙?ちょっと待て、お願い、待って!」
「あんちゃんの部屋なら豆電球着くで?行ってきたらどうなん?」
「な!?ちょt「お休み~。」」
エリちの抗議を遮って今度こそ寝に入るうち。
エリちがどうしたか、朝見ものやね。
そう思いながら夢の世界に落ちていく。
懐かしく忘れられない思い出に。
次回は希のDreamだ!
って言っても相変わらずシリアスとかまじめな話はするつもりはないからね!
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