見慣れた寝室の天上を見上げながら呟く。
「運がないですね…。」
妖力が不安定な私はよく体調を崩す。酷い時は起き上がる事にも苦労する程に調子が悪くなる。
今回は、そんなに酷くはならなさそうだが…タイミングが悪かった。昨日の私が今日の私に〝背負わせた〟7人分の苦しみは、ただでさえ調子の悪い私にとってかなりの負担になってしまう。
「あたしを使って熱を下げようとするな!」
枕元にいるのは〝自称最強の妖精〟チルノちゃん。普段はあんまり私の家に来ることはないけれど一応、(チルノちゃんは私を子分と言うけど)友達という関係にある。〝主に冷気を操る程度の能力〟を持つ彼女の回りはいつも涼しいし、彼女に頼めば簡単に熱も下がると思うのだけど…現実はそんなに優しくはない。ちなみに大ちゃんにはお使いに行ってもらっている。(治ったら一緒にプリンを作ろうと言ったらニコニコしながら飛んでいった。)少し心配だけど、妖精が死ぬことはないって慧念先生が言ってたから大丈夫だと思いたい。
「お薬、買ってきました!」
「見舞いに来た、邪魔をするぞ。」
大ちゃん(大妖精)が慧音(けいね)先生をつれて帰って来た。
「お出迎えできなくてすみません。あ、大ちゃんはお薬ありがとうね。」
ただ、慧音先生を連れてくるとは…大ちゃん恐るべし。授業は…あ、そう言えば学級閉鎖的な状況だって慧音先生が言ってました。
「今日は、文がいないのだな…。」
文さんは今日は天狗の用事があるらしいのでいません。昨日の夕方からしばらく<天魔様が~>って愚痴っていましたしね。大方、呼び出しでもくらってしまったのでしょう。
「今日は、なんだか用事が入っていたようです。
あ、慧音先生はこの家に来るの初めてですよね…床とかによく気をつけて下さい。」
「おまえの事だから、てっきり幻術で包んでしまうものだと思っていたのだがな…調子のほうはどうなんだ?」
幻術…確かに今までの私なら幻術を使ってこの家を包んで豪華な屋敷にする事はなくても損傷箇所を隠す程度はした事だろう。しかし、相手は人里の守護者。偉大なる慧音先生だ。妖力の安定しない今、幻術で彼女を騙せるとは思えなかった。幻術を使うという事は、相手の五感を支配するという事でもあり、慧音先生にこの状況で幻術をかける事は恐らく不可能である。
「幻術は…掛けた方がいいですか?体調はこの前の時よりはずっとましです。この前なんて起き上がることさえできませんでしたから。」
「幻術は結構だ。今の身体で妖力を使うような事は良くないだろうし、私は全然気にしない妖怪だ。」
優しく微笑みながら私の頭撫でる慧音先生の手は、凄く暖かくて優しかった。