正直に白状しますと、この物語、プロットも何も出来ておりません。
完全に見切り発車で書き始めてしまいました。
それ故、ここからしばらく更新することが出来なくなりますがご容赦下さい。
それでも読んでくださる方がもしいらっしゃいましたら、ご意見、ご感想を是非お待ちしております。
それでは、序章、0-1話をどうぞ。
0-1 英雄、グラールを旅立つ
ヒューマンとキャストが統治する星、惑星パルム。
劣悪な環境に適応するべく独自の進化を遂げた種族、ビーストが生活する惑星モトゥブ。
精霊やフォトンを信仰する、3惑星の中でも宗教色が強い惑星、ニューデイズ。
この3つの惑星からなるグラール太陽系は、SEED事変を発端とする未曾有の危機に何度も瀕したが、その度に英雄と呼ばれる者達が世界を救ってきた。
今この世界は、様々な奇跡の上に成り立っている。
最初はイーサン・ウェーバーが。
直近の二回はロア・ノエル――俺のことだ――が世界を救ったというのが、人々の共通の認識だ。
が、彼も自分も、自らを世界を救った救世主などと思ったことは一度もない。
ただ目の前に転がり込んでくる厄介事を片付けている内、気が付けば周りに祀り上げられていた。
ただそれだけのことなのだ。
このことについて、イーサンと何度愚痴をこぼし合ったことか。
出来るなら放っておいてほしいというのが、
しかし世界が英雄を放っておくわけもなく――
一連の事件が収束してからしばらくの間、俺は案の定、グラールを救った英雄として多くの人々からの視線と賞賛を受けることになった。
感謝されることが嬉しくないわけじゃない。
でも色んな人達から無条件に言われる「ありがとう」は、俺にとってはとても重い言葉だった。
「あなたは私たちの希望です」
「助けてくれて、ありがとうございました」
違う、本当に称えられるべきなのは俺じゃない――
どれだけ違うと言っても謙遜としか受け取られず、余計に自分の英雄像が膨らんでいくだけの状況。
最初はどうすればいいんだと辟易したものだが、そんな中でのふとした会話で飛び出した仲間の言葉に俺は英雄という肩書きへの認識を改めることになる。
「確かに英雄は一人じゃないワ。頑張った皆、一人ひとりが英雄。でもネ。何事においても、旗印っていうのは必ず求められるのヨ。」
あなたが居るだけで、皆が笑顔になる。
その言葉をきっかけに、ああ、そんな役回りも悪くないかもしれないと、俺は考えられるようになった。
* * * * * * * *
それから数年、世界が落ち着きを取り戻し始めたある日。
俺は今日、戦いに身を投じることになる前から抱いていた夢を実行に移そうとしていた。
「行って来ます」
そう言って乗り込んだのは、数年の間に発達した亜空間航行の技術をこれでもかと詰め込んだマイシップ。
稀代の大天才二人に頭を下げて作ってもらった、最新型の宇宙船だ。
彼ら曰く、
「最先端を行き過ぎて、これ一つで世界がひっくり返る代物が出来てしまった」
らしい。
見た目とその制作費用からして俺の手には有り余りすぎる船だ。
それだけならまだいいものの、こいつに仕込まれているシステムもトンデモだからもうどうしようもない。
製造途中の現場に何度か顔を出した時に、机上の空論だと言われていた技術が平然とシステムに組み込まれているのを見て唖然としたのを今でも覚えている。
と言うか、ほとんど誰も知らない、ましてや誰も使ったことがない技術を他人が乗る船にポンポン搭載するのは正直勘弁してほしい。
いくら天才が作ったものだとはいえ、使う側としては流石に心配になる。
航行中にシステムトラブルが発生して、そのまま船と一緒にご臨終じゃ洒落にならないからな。
そんな俺の不安を
「格好良いからいいじゃん」
の一言で片付けてしまったのもまた、あの愛すべき
で、俺がそんなぶっ飛んだものに乗ってまでしたいこと、成し遂げたい目的ってのは何なのか。
こいつが実は結構単純だったりするんだよな。
宇宙の果ての果てのそのまた果て、そして更にその先の世界を見る。
これが、俺が幼い頃から抱き続けてきた夢であり、今実現に向けて動き出している目標だ。
その為にここ何年かはほとんどの時間を学問に費やした。
これまた天才二人に機械工学の教授役をお願いしたわけなのだが、こいつがまた超が付く程難解な話だったことは言うまでもない。
入門編だと言われていたフォトンを扱う技術についての基礎理論を完璧に習得するのに半年。
そこから更にフォトンリアクターやフォトンカートリッジ、Aフォトンなどについての授業に一年を使い、結局入門編を終わらせるのに一年半もかかってしまった。
しかし普段何の気なしに使っている武器や道具にどれだけ多くの技術が詰め込まれているのかを思い知らされた俺は、そこから勉強にのめりこみ。
物凄い勢いで知識を吸収していった俺は、たったの一年で亜空間に関する理論を覚えきったのだった。
「いやあ、勉強って楽しいよな」
ある時そう二人に言葉を投げかけたら、二人とも表情を引き攣らせていたのを思い出す。
誰よりも研究にのめり込んでいる二人が何故顔を引き攣らせるのか。
あれだけは未だに解せない。
…とまあ、色々なことがあった三年間だったが、あの天才コンビには本当に世話になった。
これはいよいよ、二人には足を向けて寝られないかもしれないな。
そんな回想をしながら別れの挨拶を程々に済ませ、呼吸を整えてから操縦席に座る。
「よし」
コンソールを起動させて、そのまま亜空間航行システムを起動。
「行くぞ――」
俺は船と共に、無限の宇宙へと飛び出した。
* * * * * * * *
「ん、今のところは順調だな」
ぐんぐん速度を上げていく宇宙船は、亜音速で宇宙を飛んでいる。
予定では後数分で速度が音速に達し、そこから更に十分も加速すれば光速に到達するはずだ。
後は空間に負荷をかけてやれば、亜空間に入ることが出来る。
そしてそこからが、この長い旅の本当の始まり。
未知なる世界への期待に胸を躍らせながら、俺は亜空間に突入した。
――間もなく、自分が再び厄介事に巻き込まれることを知らないままに。
いかかでしたでしょうか。
ここから物語は展開されていきます。
次回の更新がいつになるのか正直何とも言えませんが、もしこの物語に可能性を感じてくださった方がおられれば更新を待って頂けると幸いです。
では、また次回に。