超能力者は勝ち組じゃない   作:サイコ0%

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第四話② 知らない天井

 

 

「ダメだよ、勝手にいなくなっちゃ」

 

男なのか女なのか若いのか老いてるのかわからない声が眼前のガスマスクから発せられる。

眼を見開いた。後ろから追手が来てないか確かめてる間に目の前にいるのだから。ガスマスクも声も相まって軽く恐怖である。

 

「いつの間にッ!」

 

左手を振り降ろしそこから念動力で発した強い突風で飛ばす。軽く浮いていたガスマスクは吹っ飛んでいった。その間に転移。今できる最大限の飛距離で跳ぶ。小学校上がる前は十メートルだったコレも今じゃ百メートル。約十倍に飛距離が伸びており、一瞬で移動する為他のヤツに捕まえられる事が少ない。瞬間移動できる超能力者は今の所会ったことはないが、コレしか即座に逃げられる手段は無いので、コレに頼るしか無い。

二、三回ほど瞬間移動を繰り返した所で小さな門と舗装された道路が見えた。まだ山道だが、コレに従っていけば住宅街へ出られるはずだ。

光が見えた。それは希望がやって来たのと同時に絶望に塗り潰される瞬間。絶望という名の恐怖を与える住人は総じて人が悪い。だからこそ、彼女、いや彼?が嫌なタイミングで現れたのだとオレは後でそう思った。

 

「ハイ、残念」

「ぐっ、うっ……!?」

 

急に重くなる足に取られ、手をついた所で圧力がかけられた。いや、重力が増したというのだろうか?自分の手足の部分の地面だけが凹んでいる。念動力で必死に対抗するが、力は相手が上。抜け出すには力勝負ではなく技の方が良さそうだ。瞬間移動し、ガスマスクの斜め上に跳ぶ。周囲の重そうな石を自分の周りに出現させ、それを念動力でガスマスクに向けて放つ。しかしその刹那に、石達は粉々に砕け散り、何か黒い球体へと吸い込まれて行った。なんだ……アレ。

 

「瞬間移動に念動力。君は優秀だね。ますます取り逃がすのが惜しくなる」

 

球体は周囲の石や木を取り込み砕く。いや、アレは塵にしている方が正しいか。ブラックホール。宇宙の神秘の名がオレの脳内を掠った。

 

「だからさ……殺しちゃうね」

 

---ゾワッ!

 

自身の背中に寒気が走った。手足が言うことを聞かなくなり、カタカタと震える。口の中では歯を打ち付ける音が反響していた。そんな状態の中で、宙に浮き続ける程の念動力を使えている事が奇跡に思える。

オレをこんな風にしているこの威圧は何なんだろうか。いや、わかっている。わかっているが、理解したくない。矛盾を起こさせるソレは、〝殺気〟だ。ドス黒い殺気。

こっくりさんに向けられていたのは殺気ではない、敵意だった。あの悪霊の老人も殺気を直接オレ達ではなくこっくりに向けていた為、そんなに感じなかったのだが……前世では感じなかったコレ。今世で人の感情に少しばかり敏感になったからか、コレはオレにとって未知の恐怖。いや、本能的な恐怖か。

ゆっくりと、ゆっくりと黒い手袋に覆われた手が近づいてくる。そのままあの球体を近づけさせるのではなく、掌にそれを発生させ苦しませる事もなく死なせるなんて、なんて優しんだろうとでも思ったかクソ野郎が!第二の人生、ココで死ぬわけにはいかねェんだよ!!

しかし、敵わぬのは明白。ならば、せめて。オレは震える手足に鞭を打ち、無理やり動かさせた。

 

「せめて、せめて!死ぬぐらいなら!!テメェも道連れにしてやるッ……!!!」

「ッ!?」

 

思い切り念動力を使い、相手の首を絞める。念動力でできた見えない手が相手の首を絞め、その首にはクッキリと手形が付いていた。不気味だと思うと同時に、愉快に思う。ガスマスクの奥にある、その余裕な顔を崩せていると自信があるからだ。

 

「あはっ、あはハはハハハッ!!!しネッ!!」

「ぐっ、ふ」

 

その時、何処からかため息が聞こえ、そしてオレは。

 

「支部長ともあろう方が殺られそうになっているとはな」

 

意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知らない天井だ。

本日二回目だと思われる知らない天井……ではなく、脱出しようとする前にいた白い部屋だった。しっかし、またしても超能力使えないし、手首が痛いし、頭も痛い。

頭に関しては、気絶する前にオレは窮地を脱する為、自分で自分自身を騙していたからだと思われる。精神感応は洗脳に近いモノができるからな。ソレを自分にかけた時点で可笑しくなる事は明白だったが、まさか狂人みたいになるとは。いや、自分に洗脳をかけるヤツは狂人だと思うけどな。人を殺しかけておいて、アハハと笑ってるヤツの何処が狂人じゃないというのだろうか。殺人鬼にでもなるつもりか、オレは。とにかく、色々危なかった気がする。

手首に関しては、動かすたびにジャラリと鳴る手錠の所為かと。まぁ、コレは手錠じゃなくて手枷だけどな。何処で手に入れたんだか。結構重いんですけども。あと、ついでに脚にもついてるわ、枷。オレは何処ぞの囚人かっての。でも、日常生活に関しては少し邪魔になるだけで、支障はきたす事は無さそうだ。多分だが。

 

《おはよう。小僧》

「あっ、桜威さん。おはようございます。見た目に違わず挨拶とかしない方だと思ってたんですけど、ちゃんとするんですね」

《……今のは褒め言葉だと受け取っておこう》

 

褒め言葉ですよ。

ベットから起き上がり、部屋内を彷徨く。やはり、何も変わっていない様だ。唯一変わっているとすれば、オレの状態だけ。ジャラジャラと鳴る枷は煩いが、慣れればそうでも無さそうだ。

この部屋の出口があるはずの部分へと近寄る。ペタペタと触ってみるが、凹凸も無く反応する事もない。うむ、やはり桜威さんの同意がなきゃダメか。

 

《やぁ、少年。先程はよくもやってくれたね》

 

脱走中、オレを追い詰めたガスマスクらしき声が聞こえた。あの時はわからなかったが、変声機を使っているのか……成る程コレは彼なのか彼女なのかわからないな。背も小さかったし……オレぐらいだったし。

 

《私を追い詰めたのはボス以来だよ、全く》

 

やれやれ、という様に言うガスマスク。ボスねぇ……思ったよりも組織化されてる様だ。コレは厄介だな。そもそも、この広い建物を有している事からも金銭的余裕もある様だし。それに抗った方がバカと言うモノかねぇ。

 

《君は桜威が連れてきた超能力者だからね。殺すのは止めとくよ……痛いしっぺ返しも食らったし》

「賢明な判断だと思いますよ」

《君って、ちょくちょく人を煽るのが趣味なのかな?殺してもいい?》

「うーん、ココで殺したら赤い血で芸術的なアートができてしまうんで遠慮して頂くとありがたいですね」

《そうだね。掃除が面倒そうだし、そもそもそこじゃぁ、私も能力使えないから、安心して良いよ》

 

いや、どういう安心。でも、良い情報は手に入った。どうやら、この部屋は無差別に超能力者から超能力を奪う様だ。予想だが細かい設定ができないのだろう。〝超能力が使えない〟という事だけを設定しているのかもしれない。だとすれば、ココに入った者は全員、ただの人間へと成り下がる。それはオレも敵も例外ではない。そういう点では安心、なのかね。

 

《そうそう、自己紹介がまだだったね。私は遺志黒。ここ第七支部の支部長を務めている》

 

あ、支部長さんでしたか…………え、支部長?しかも、第七支部とか言ったな、ガスマスクの野郎。遺志黒だったか。この単語から予想されるに、本部があり、最低でも七つに支部が分かれている。支部ごとの人数はわからないが、この短時間で超能力者に出会った数が三人。うち一人はまだ直接は見ていないが、超能力者で間違いないだろう。うわ、組織化されていると思っていたが、結構デカイ組織らしい。うん、ヤバイのに目をつけられましたね。詰んだかな。

その遺志黒が言うには、オレが完全に組織の仲間になるまで帰さないという。基本的にココで生活し、呼び出しの時はあの消える扉を開くらしい。

 

《あと、さっきみたいに部屋から出た瞬間テレポート!……なんてできないからね》

 

この手足についている枷はこの部屋と同じ様な役割をしており、超能力が使えないので逃げるのは無駄らしい。詰んだかな。

 

 




桜威さんのスプレー欲しい。シュッシュ。
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