今回は息抜き回です。ホラーというよりギャグです。あとオリ提督のような何かが生息しています。そういうのが嫌だという方はブラウザバックをした後に本編に戻ることを推奨します。
それと息抜き小話だけあって短いです。
理由もなく食堂で始まった百物語、流石にずっと話続けていると疲れる、それにそろそろ尿意を催してきた。そう考えた島風は少し休憩しようと提案した。
皆同じような気持ちだったのか少し休憩することになり、島風は急いでトイレへと向かった。
「あれ……提督……?」
無事に尿意を発散した島風はトイレから出た時に廊下の端に不思議なものを見つけた。
「えっ、でも、あれ?」
その物体を島風は何度か目を擦りながら確認するが、それはいつも見慣れている制服に身を包んだ提督、つまり自分達の所属する鎮守府の司令官であった。ただその恰好がおかしかった。
―――ぺかー
「光ってる……」
―――ぺかー
尻が光っていた。
それはもう明々とぺかーっと光っていた。
さらに言えば、なぜか四つん這いで光る尻を島風のいるほうに向けて歩いていた。
「…………」
島風がもう一度ごしごしと目元を擦るが、確かに提督の尻が光っていた。
―――ぺかー
「て、てーとく!?」
―――ぺかー
廊下の曲がり角の先に消えた提督を慌てて島風は追いかけた。いま見たものが現実かどうかまったく理解できなかったからだ。
勢いよく角を曲がると、そこで島風は誰かの背中にぶつかった。
「ん? どうした島風?」
二本足で立っていた、尻は光っていなかった、そこにはいつも通りの提督の姿があった。
「てい…とく…? ほんとに提督?」
「俺がここの提督じゃなくて他に誰が提督だって言うんだい?」
「いや、でもだって、さっきお尻が…」
「お尻? なんだかよくわからないけど、今日は非番の皆で百物語をしているんじゃなかったのかい? 戻らなくていいのかい?」
「おぅ! そうだった早く戻らないと!」
そう言って、さっきのはきっと何かの見間違いだったのかな、と考えながら島風は廊下を引き返した。
うーんと唸りながら廊下を歩く島風だったが、そこでまたもおかしな現象に出会った。
「あれ? 提督? さっき廊下の向こうにいってたんじゃ…」
「ん? どうした島風?」
廊下の向こうであったはずの提督が何故か自分が来た方にいたのである。
「え、だってさっき提督は向こうに……あれ、あれ?」
「向こう? なんだかよくわからないけど、今日は非番の皆で百物語をしているんじゃなかったのかい? 戻らなくていいのかい?」
「そうなんだけど、さっき確かに……」
ぶつぶつと呟きながら島風は提督の横を通り抜けていった。
その島風の背中に向けて提督は声を掛けた。
「ところで島風……」
「ん、何ていとく?」
「さっき島風が見たって言った提督ってもしかして……」
声を掛けられた島風が後ろを振り返った。
―――ぺかー
「もしかしてこんな感じ?」
―――ぺかー
尻が光っていた。というより尻に付いた目が光っていた。
―――ぺかー
―――ぺかー
―――ぺかー
「きゃああああああああああああああああああ!!!」
あまりの気持ち悪さと不気味さに島風は思わず悲鳴を上げて食堂まで走り去った。
あとに残された提督は何度かお尻を点滅させたあと、何食わぬ顔でズボンを引き上げた。
「計画通り」
まるで死の手帳を手に入れたニューワールドのゴッドのように笑みを浮かべる提督であった。
仕組みは簡単、予め肌色の薄い布に目を描いておく、それを尻の上に被せ布の下に懐中電灯を忍ばせおく。あとは誰かが廊下の端に見えるのを見計らってズボンを降ろし、電灯を光らせ目を描いた布を被せた尻を突き出しだがら四足歩行で廊下を曲がる。
次に、気になって追ってきた艦娘に何食わぬ顔で廊下を引き返させると、窓から脱出し外を通って全力ダッシュで廊下の反対側の曲がり角に戻る。
そして廊下を引き返してきた艦娘に何食わぬ顔で接する、艦娘が自分の横を通りすぎたのを確認すると再びズボンを下げ、尻を突き出す。
実にシンプルで幼稚な悪戯であった。百物語に誘われなかったことに拗ねただけのちょっとしたおふざけであった。
その後、島風の反応で味を占めた提督が同じことを実行しようとするが、島風に言われ様子を見に来た加賀が冷静に提督の尻目掛けて右ストレートを放ったことで、提督は尻から煙を出しながら気絶した。
―――ぺかー
尻目:顔はのっぺらぼうで尻に目があって光る変態、もとい妖怪。いったいこの変態、もとい妖怪を思いついたのはどこのどいつであろうか。今回は顔がのっぺらぼうということで本家のっぺらぼうのように再度の怪っぽくしてみた。
提督:この話に出てくる鎮守府の提督、普段はそれなりに真面目、やるときはやる、でもそれ以外ではかなりお茶目、というか阿呆、というか見た目少女な艦娘に対して尻出してセクハラする変態。
つまり、尻目=変態=提督