Fate/Eternal Piece   作:Elys_wing

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第1話

ーーうぅん…

 

まだ空も暗い午前4時。

私の朝はそこから始まる。

 

 

「そろそろ起きないと…」

 

まだベッドに戻りたい衝動と戦いながら重い身体を起こす。

フラフラとした足取りで洗面所へと向かう。

 

これがいつも通りの朝。

 

鏡の前に立つと大嫌いな自分の姿が目に入る。

ボサボサな黒髪、左右で色が違う瞳、薄い胸、挙げていくと限りがない。

 

「今日も冴えないなぁ…私…」

 

ぽつんと呟きながら、朝の支度をする。

寝巻きである大きめのワイシャツを脱ぎ、学校指定の制服に着替える。

 

「この制服はやっぱりかわいいよね…」

 

今いる学校に進学を決めた理由はこの制服だった。

 

(私の家は小さいけど魔術師の家系だから学校なんてどうでもいいんだけどね…)

 

そう、どうせどれだけ普通の勉強をしても、最終的には意味がない。

 

「跡継ぎが私以外誰もいないし、継がされるのかなぁ…」

 

私の家の目的は、人間の無意識に介入して根源を目指すこと。

そして私の起源は、《沈下》でその目的には最適らしい。

朝からこんなに気分が沈んでるのも私の起源のせいかも知れない。

最後に、自分の金色の右眼に左眼と同じ明るい茶色のカラーコンタクトを付ける。

 

「着替え終わったし、今日もやるかぁ…」

 

まだ朝の5時、登校までの時間は結構ある。

私は毎朝やっている魔術の鍛錬を始める。

 

座禅を組み、目を閉じる。

 

「《接続》ートランスー」

 

自分の意識を深層まで沈めていく。

自分の中に何があるのか、それについてどう思っているのか、思考中の自分はどう見えるのか。

まるで合わせ鏡のように、無限に連鎖していくーー

 

ハッと目を開けるともう7時半だった。

 

「そろそろ行かなきゃ…」

 

ーーどこへ?

 

ーーどこだっけ…

 

ーーあ、学校か…

 

この鍛錬をした後はいつもそうだ。

私がまだ未熟な為に、自我が曖昧になる。

そして、まだ若干覚束無い足取りで外に出る。

ドアに鍵をかけ、またフラフラと歩き出す。

すると、

 

「あ、麻上さんだ。おはよう!」

 

突然声をかけられる。

 

ーー麻上…?

 

ーー誰のこと?

 

ーーそうか私か…

 

どうやら一瞬自分の名前が分からないほどに、自我が綻んでいたようだ。

 

(そう、私の名前は麻上ーー麻上凪鎖)

 

自分に言い聞かせる。

やっと思考がハッキリする。

 

「おはようございます」

 

営業スマイルで挨拶をする。

正直、相手の顔を見ても誰かわからない。

同じクラスだったような気がするが、別に興味もない。

どうせこの学校にいる間の関係だ。

適当な挨拶を返して学校へ向かう。

そしていつも通りの時間に校門を通り、いつも通りの席に座る。

 

特に変化もない私の日常だ。

何か変わったことが起きたらいいんだけど。

それはそれで面倒臭いか。

 

何事もなく夕方になり、席を立つ。

 

「今日もいつも通りっと…」

 

面白くもない日常を事務的にこなしながら生活するのは割と疲れる。

 

ーー校門を出るとそれは一変した。

 

(ーーおかしい)

 

まず気がついたのは人がいない。

空も暗く染まっている。

下校時間なのに私以外の生徒がいない。

そして異質な空気。

異様に重く、息苦しい。

 

「これは…結界?…それも入った事を気取らせない程高度な…」

 

「あら?私の人払いの結界に普通に入ってこれるなんて、貴女は何者かしら?」

 

目の前の暗闇が声を発する。

 

ーー違う。

 

暗闇が話したのではない。

暗闇の中に金色に光る双眸がこちらを見据えている。

 

「ーーなに…あれ…」

 

ただの影の筈なのに、とてつもない魔力を感じる。

圧倒的な魔力に足が震える。

 

「ーーいいわ。偵察のつもりだったけど、貴女、すごく美味しそうーー」

 

「…ッ」

 

まずい、私はあの影に餌として認識されたようだ。

このままでは何の抵抗もできずに、むざむざ食べられるだけだ。

 

「ーーいや…いやッ!!」

 

ーー叫ぶ。

咄嗟に右眼のコンタクトを外して魔眼を発動する。

 

金色の瞳が煌めく。

右眼から溢れ出した光が、当たり一面を白く染め上げる。

 

「ーーッその光はッ!」

 

影が怯んだ。

 

ーー今だッ!

 

走る。

足が縺れても気にせず、躓いても飛び越える。

 

「私は…ッまだ…死にたくないッ!」

 

無我夢中で走った。

逃げる。

ひたすらに逃げた。

 

気がつくと、我が家の前に着いていた。

空もいつも通りの夕焼けだった。

 

「逃げ切れ…た?」

 

ぺたんとその場にへたり込む。

落ち着いた途端、涙が溢れた。

 

「私…生きてる…ぅ…」

 

年甲斐もなく泣く。

見た目など気にすることもなく。

 

小一時間ほど立てなかったが、やっとのことで立ち上がり、家に入る。

 

すると左手の手の甲に鈍い痛みが走った。

 

「痛ッ…なに…これ…?」

 

痛みの元を見やると、そこには赤い痣が紋様のようになって刻まれていた。

微かな魔力も感じる。

 

「これは…もしかして…令呪?」

 

昔、聞いたことがある。

 

ーー聖杯戦争

 

7人のマスターがそれぞれ7人の英雄達を使い魔ーサーヴァントーとして召喚し、それを使役して戦う儀式。

勝ち残った1組には何でも願いを叶えられる万能の願望器が与えられる

 

ーーと

 

私の手の甲に浮かび上がったそれはまさに、昔本で見た令呪だった。

 

(私はーー選ばれた…の?聖杯戦争のマスターに…)

 

お伽話だと思っていた儀式が実在したとは。

しかもそれに自分が選ばれるとは。

 

聖杯戦争は私にとって憧れだった。

小さい時から聖杯戦争の話を聞かされる度に自分がマスターとして戦う事を思い描いていた。

しかし成長するにつれて、聖杯戦争はお伽話でマスターになんてなれないと考えていたのに。

 

「本当に…あったんだ…!」

 

喜んだのもつかの間。

聖杯戦争のマスターになった、ということは他のマスターから命を狙われる事を意味する。

サーヴァントがいないマスターとなればただのカモになってしまう。

考えてみるとさっきの影は他のサーヴァントだったのかも知れない。

恐怖を思い出し身が竦む。

 

「私も…サーヴァントを召喚しないと…」

 

自衛の為にもサーヴァントは不可欠。

最悪、教会に逃げ込むという手もあったが、それはできるだけ使いたくない。

憧れだった聖杯戦争に参加できるのだから、それを無駄にはしたくない。

 

家の地下にある工房に英霊を召喚するための陣を敷く。

狙った英霊を召喚するには触媒が必要のようだが、あいにくそんなものはない。

 

「触媒無しで…やるしかない…」

 

完成した陣の前に立ち、召喚の言霊を唱える。

 

言霊が進むにつれ、工房内に魔力が充満していく。

 

それは風となり、炎となり、水となり、様々な形を表しながら一つの人型を高速で成形していく。

 

「天秤の守り手よ!!」

 

最後の一言を放つと同時に工房内は煙で満たされた。

すると人型は手を一振りして、その煙を打ち払い、尋ねた。

 

「貴女が私のマスターね!よろしく!」

 

そこには、若干ハイテンションの着物を着崩した14歳ぐらいの少女が立っていた。

 

 

 

 

 

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