Fate/Eternal Piece 作:Elys_wing
「貴方が私のマスターね!よろしく!」
私の召喚に応えてくれたハイテンションな少女は、人懐っこい笑みを浮かべながら言った。
しかし私は召喚に魔力をかなり消費したため疲労困憊だった。
「よ…よろしく…」
生気のない顔で応える。
「あれぇ?マスターお疲れなの?あ、私のせいか!」
少女は自分の頭を軽く小突きながら舌を出して笑った。
それに応える気力もないので、とりあえずもっとも重要な事を聞いておく。
「それで…貴方は誰?クラスは?」
英霊を使役するマスターとして、使い魔たるサーヴァントの情報を得る事はとても重要と言える。
それを加味した上で、自身のサーヴァントに合ったこれからの戦略を考えていかねばならないからだ。
「私?私は言仁!クラスはセイバーだよ!」
「とき…ひと?」
頭の中で必死に学校で習った偉人の名前を思い出す。
だが聞き覚えは無かった。
(もしかして、マイナーな英霊を呼んじゃったのかな…)
聖杯戦争において、知名度はサーヴァントのステータスの補正に大きく関わる重要な要素だ。
人々に広く知られていることが、英霊達の力になる。
(まぁ、正体は置いておいて、セイバーか…!)
ーーセイバー
つまり剣を使う英霊。
最優のサーヴァントが選ばれる。
という事はなんとなく聞いていた。
「じゃあ…これからは貴方のことセイバーって呼ぶね?これから一緒にがんばろうね…!」
「わかった!よろしくね、マスター!」
ーーそこで、私の意識は途絶えた。
突然の襲撃、令呪の発現、英霊召喚。
たくさんの事が1度に起こりすぎた。
魔力も魔眼の発動と英霊召喚で使い切ってしまっていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ーー目を覚ます。
部屋のカーテンの隙間からいつも通りの太陽の光が射し込む。
「もう…朝?」
なにか酷い夢を見ていたような気がする。
すごく怖くて、でも嬉しいこともあって…
それから、女の子を召喚したんだ。
あまりにも非現実的過ぎて、脳の理解が追いつかなかった。
しかし目を覚ますといつも通りの朝。
「あれ…夢だったのかな…?」
呟いて、体を起こそうとする。
すると少しだけ違和感に気付く。
「ん…?体が重い…?」
ふと視線を下に向けると、薄い着物1枚だけを羽織った少女が私に半ば覆い被さる様になって寝ていた。
「セイ…バー?」
まさに先程まで夢だと思っていた少女が目の前にいた。
少女は私の声に反応して、うっすら目を開ける。
「ますたぁ…おはよう…」
とても眠そうに呟いた。
咄嗟に払い除けることもできずに、動けなくなる。
するとセイバーはズルズルと体を滑らせながら、私の上から退いてくれた。
私が体を起こすと、セイバーも起き上がり、私の方を見る。
「ッ!?」
セイバーの着物は、はだけていた。
当たり前だ、寝転んでいる状態で体を引きずったのだから。
眠たげに目を細めているが整った顔立ち、吸い込まれそうな黒髪、そして白磁の如き白い肌。
そんなセイバーの着物が二の腕までずり落ちていた。
もういろいろと際どい所まで来ている。
膨らみかけの小ぶりな胸が朝の陽射しに晒されようとしている。
「わぁぁぁぁぁ!!?!」
私は叫びながらセイバーの着物を正す。
するとその声に驚いたセイバーが目を見開く。
「マスター!?どうしたの!?」
本気で心配しているようだ。
「いや…なんでもない…」
少しだけセイバーから目を逸らしながら呟いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
セイバーは1度霊体化し、服装が召喚時の物に変わった。
私はいつも通りの朝支度を済ませる。
「マスターの目の色が変わった!」
セイバーはコンタクトに大変興味があるらしい。
それにしても、昨日あんな事があったのに何故自分はいつも通りの支度をしているのだろうか。
正直、外に出るのは怖い。
それでも、私は日常を守りたいのか。
学校に行くことになんの強制力もない。
なのに繰り返す。
会いたい友達もいない。
なのに行き続ける。
はたして意味はあるのだろうか。
もはや癖になりつつある自問自答を繰り返しながら、勇気を出して外に出る。
セイバーも霊体化してついてきてくれている。
1人でいる時よりも、安心感が段違いだった。
時々念話でセイバーと会話しつつ、学校に着く。
セイバーは霊体化した状態であたりを駆け回っていた。
学校、という物が初めてらしく、どれも新鮮で面白いそうだ。
セイバーに見られながら授業を受ける。
正直緊張した。
セイバーは終始楽しそうに先生の話を聞いていた。
そんなセイバーを感じながら、初めて授業が楽しいと思えた。
そんな楽しい時間は一瞬にして過ぎ去り、下校時刻になった。
辺りがにわかに暗くなり、緊張感を持つ。
セイバーも辺りを警戒している。
「!!マスター!あそこ!!」
セイバーが校門の辺りを指さす。
目を凝らすと、そこには昨日の影が立っていた。
下校する生徒達には見えていない様で、影のすぐ脇を通っても何の反応もない。
影はこちらを見つけ、ニタリと笑っているように見えた。
ーー瞬間、世界が静寂に包まれた。
「昨日と…同じ…」
空は暗く、人が消えた。
急いで校舎から出る。
校庭に出ると、その中心に影が立っていた。
「ーー貴女、マスターだったのね」
影が喋る。
私は答えない。
否、答えられない。
恐怖で立っているのがやっとだった。
セイバーが霊体化を解除する。
「貴方が私のマスターを襲ったサーヴァントね!許さないから!!」
気丈に言い放つ。
「あら、襲ったとは失敬ね。そのマスターが勝手に私の狩場に入ってきただけなのだけれど。」
影はクスクスと笑いながら応える。
「うるさい!マスターの敵は私が倒す!!」
セイバーが手を上に掲げ、言霊を唱える。
「《焔を祓う竜尾の剣》“つるぎ”!!!」
唱え終わった瞬間、セイバーの手が光に包まれる。
光が収まると、セイバーの手には1.5mはあるような、長く、装飾もない無骨な剣が握られていた。
真名ばればれな気がしなくもない