Fate/Eternal Piece   作:Elys_wing

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第4話

――夢を、見た

 

私は、見たこともない部屋の中にいた。

 

「ここは…」

 

あまりきれいとは言えない部屋の中、唯一の灯りは窓の外からの日差しだけだった。

 

状況を確認する為に窓の外を覗き見た。

 

水が見える。ここは船の上のようだ。

男たちの怒号が、女たちの悲鳴が聞こえる。

何が起こっているのかは不思議と疑問に思わなかった。

 

それを認識した瞬間、目の前を紅い液体を撒き散らしながら何か大きな塊が水面に落下した。

飛び散った紅い液体は私の顔にも飛んできて、思わず服の袖でふき取る。何か鉄臭い液体だった。

 

「これ…着物…?」

 

そこで初めて近くにあった丸い鏡に映る自分の姿を見た。

 

その姿は、先ほどまで自分を守ってくれていたセイバーのさらに幼くしたような姿だった。

 

「あれ…私、セイバーになってる…?」

 

自分の頬を触る。

幼子特有のぷにぷにした感触が指先に伝わった。

 

契約した使い魔の過去をマスターが夢として見ることがある。

という話は聞いたことがあるが、それはサーヴァントでもそれは適用されるのか。

 

「安徳天皇…船の上…まさかここはッ!?」

 

先ほどから聞こえていた怒号と悲鳴。その意味がやっと繋がった。

袖に付着した紅い液体は血液。まさにこの部屋の直上で戦が起きている。

 

「壇ノ浦の戦い…」

 

平氏と源氏の勝敗を分けた最後の戦い。

 

つまりここはセイバーの最後の時間。それを私は体験している。

 

――急に周りが静かになった。

 

耳を突く怒号も、耳障りな悲鳴も聞こえない。

 

――ガラッ!

 

急に扉が開く。

着物を着た女性が入ってきた。

 

「ご無礼を、失礼いたします」

 

彼女は突然私を抱き寄せ、近くにあった剣と鏡、小包を抱え、私を外へと連れ出した。

 

明るい太陽に目が慣れて見えたものは地獄だった。

体の部分がいくつも欠損した武者たち。

着物をはがされ息絶えている女たち。

つい先ほどまで人間だったであろうモノが数えきれないほど散乱している。

 

「うぐっ…」

 

あまりにも凄惨な状況と凄まじい死臭でとっさに嘔吐しそうになるが何とか耐えられた。

私を抱きかかえる女性は、私に外を見せまいと視界を着物の袖で覆い隠す。

しかし私の網膜には先ほどの地獄が焼き付いてしまっていた。

ガタガタと体の震えが止まらない。

 

「私を…どこに連れて行くの…?」

 

何とか絞り出した声はそれだけだった。

それに対し、女性は答える。

 

「極楽へ、共に参りましょう。波の下(した)にも都がございます。」

 

彼女がそう呟くと、体が浮遊感に包まれた。

私の目を覆い隠していた袖が離れ、どんどん近づく水面が見えた。

着水の瞬間、女性は私を強く抱きしめ、呟く。

 

「申し訳…ございませぬ…」

 

その瞳には涙が零れていたように見えたが、確認することはできなかった。

 

 

――はぁッ!!

 

目を覚ます。

あたりを見渡すと見慣れた自分の部屋、横ではセイバーが寝息を立てていた。

体中が汗でべたべたになり、髪はひどい有様だった。

 

未だに止まらぬ動悸を落ち着かせようと胸に手をやり、深呼吸をしているとセイバーが目を覚ます。

 

「んぅ…ますたぁ…おはよう…?」

 

セイバーは眠たげに目をこすり、私の様子がおかしいことに気づく。

 

「マスター!どうしたの!?」

 

セイバーが心配して私に詰め寄る。

 

「夢で…見ちゃった…」

 

セイバーにそう告げた途端、私は涙が止まらなくなった。

どうしてこの娘がこんな目に合わなくてはならなかったのか。

そう思うと悔しさとも怒りとも言えない感情が堰を切ったように溢れ出した。

 

「マスター…?見たって…もしかして…」

 

そこでセイバーは察したのか一瞬だけ暗い表情へと変わる。

だが次の瞬間にはいつもの明るい表情に戻り、笑顔を作る。

 

「私の事なら大丈夫だよ!過ぎたことだし、しょうがなかったから!」

 

セイバーは笑顔ではあった。

だが私にはその裏に泣くのを我慢している見た目の年相応の表情があったように見えた。

 




久々すぎて設定とか細かいところまで覚えてなかった(((
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