ここは穏やかな森林地帯…湖のほとりや洞窟の中、また森の木陰などでポケモンたちが自由気ままにそれぞれのやりたいことをやっていた…
人間もまたこの森林地帯の一部で村をつくり暮らしていた…
村にはポケモンバトルをしあうトレーナーやポケモンたちを育てるブリーダー、中にはポケモンをさらっては売りさばくという悪人もいる…
この物語の主人公ウロスバもかつてはこの森林地帯にある村の住人であったが、彼は3年前からずっと家には帰っていない。
彼の目的はわざわいポケモン、アブソルを捕まえること。
そしてアブソルを捕まえるまでは家に帰らないと誓っていたのだ。
彼のアブソルを愛する心は(色々な意味で)並外れている…
「ハーッハッハッハ!!!」
ウロスバは村から少し離れた一つ岩の上で高らかに笑っている。
その笑い声に驚いたマメパトやポッポたちが驚いて一気に飛び去って行った。
「あれ?ウロスバ、また何か思いついたの?」
ウロスバの隣にいた少年、チャイが呆れた表情でウロスバを睨んだ。
チャイはウロスバから勝手に助手という名目で連れてこられた挙句、ウロスバ以上に災いの被害者となっている。
彼はウロスバの高笑いが何か(愚策を)思いついた合図だと教わっていたのだ。
ウロスバは自分の持つ白いつばつきの帽子を目深にかぶると白い手帳を取り出した。
「ふっふっふ…私の作戦はこれまで幾多にも失敗してきた…その原因はこの服にあると思うんだ…」
ウロスバは自分の身にまとっている服をところどころ指差した。
彼の服装はアブソルの色にちなんでほぼ全体を白と黒で固めており、緑の多い森の中では十分目立ってしまう。
チャイは一瞬頷いたものの、過去に服を変えて失敗に終わっていることを急に思い出した。
「ちょっと待って!それって去年もやった作戦にあったけど、見事に失敗したじゃないか!『カテゴリーその32:地味な服作戦』は効果が無いよ!!」
ウロスバはぎくりとした表情だ。どうやらチャイの牽制が彼にとっては図星だったようだ。
「な、なに。まだ1回だ!二度も同じミスはしないさ!」
ウロスバはそういうとすぐさまターンして(いつの間にか仕込んでいた)緑一色の服に着替えた。
チャイはため息をつくと自分も緑一色の服に着替えた。
「それで、今回はどういう作戦なの?まさか、カテゴリーその32をそのまま実行するなんてことないよね?」
チャイは疑いの目をウロスバに向けたがウロスバは待ってましたと言わんばかりの表情でフフフと笑っている。
「実はだねチャイ君。全くその通りなのだよ!」
ウロスバは一枚岩から飛び降りると決めポーズをしながらチャイにグッドラックのポーズを見せた。
チャイはもちろん納得がいかない。
「ちょっと待ってよ!それで僕がどんな目に遭ったか知ってるの!?あの後スピアーの大群にハチの巣にされるところだったんだよ!!?もう僕は行かないよ!!!」
ウロスバは何故か笑いをこらえている。彼の顔に反省の色は無いようだ。
「チャイ君、傑作じゃないか…そんな冗談が言えるなんて…プッ!!!」
ウロスバの態度にチャイは怒りをあらわにしている。
その怒りによってチャイの目から光が消えた。
「ウロスバ、一旦死ぬカ?」
「…ごめんなさい」
チャイの鬼気迫る殺気にウロスバは顔を青ざめて謝ったが、大樹の方で何かを発見しチャイもろとも草むらの中に身を隠した。
「ちょ、ちょっと!いったい何が…むぐっ!?」
ウロスバは不満げなチャイの口を急にふさいだ。
そして無言で1本の大樹を静かに指差した。
「あ、あれはアブソルだ…!」
チャイの目にはアブソルがツノをピクピクさせながら木陰で身を休めているのが見えた。
休んでいても災いの察知は続けているのだろう…
「それでどうするの?」
チャイの問いも聞かずウロスバはただじっとチャンスをうかがっているようだった。
ウロスバの目にはアブソルしか映っていないようだ。
『ウロスバ、本気になってる…こう見るとプロのハンターなんだけどなあ…』
アブソルがアクビをした瞬間、ウロスバの目が光った。
「今だ!アーブソぐっはあ!!!」
ウロスバがアブソルを捕獲するために草むらから飛び出した瞬間、ウロスバの右側から何者かが彼にぶつかり、そのまま彼を連れて行ってしまった。
「ウロスバ!…あぁ、はいはい」
チャイはあまりの出来事に驚いてはいたが、原因がはっきりとわかるとまたかと言わんばかりの表情で草の生えた地面に腰を静かに下ろした。
しかしウロスバはアブソル自身が自分の方へ飛び出してきたと勘違いしてかなりうっとりとしている。
「ああアブソル…君はなんてアグレッシブなんだ…君を追ってはや3年…触ることさえできなかった君にようやく触ることが出来た…私を抱え込むかのようなふわふわかつ暖かい体毛、そして2本足で走るかのようなこのスピード…」
ウロスバはここで何かがおかしいことに気づいた。アブソルは2本足で走るわけがない。ましてや抱え込むすべがない。
ウロスバがハッとして上を見るとそこではメスと思われるコジョンドがウロスバに向かってウインクして走っていた。
「こらーっ!またお前かコジョンド!!!」
コジョンドは自分の名前が呼ばれると嬉しそうにニコッと微笑みかけた。
このコジョンドは2年前、怪我しているところをウロスバに治療された際に気に入ってしまい、彼を追いかけてきてはアブソルゲットを妨げていた元凶の4割である。
「君は何度私の任務を邪魔するのだ!?今私は任務の真っ最中だぞ!?だからお願い!下ろしてくれ!!!頼むから!おいチャイ君!いたら君からも何か言ってくれ!」
ウロスバの必死な願いも聞かずにチャイは自分のバッグからサンドイッチを取り出すと、おもむろに食べ始めた。
「ひどいよー!鬼ー!悪魔ー!!たーすーけーてー!!!」
ウロスバはチャイに対する悪口雑言と断末魔にも似た叫びを残してそのままコジョンドにさらわれていった…
アブソルはこの叫びで完全に目を覚ましたようで、猫のように少し伸びをした後森の奥へと消えた。
チャイは「今回は何日かかるかな?」と呟きながらお手製のお茶を水筒からコップに注いで一口飲んだ。
そしてウロスバはというと…
「痛い!そんなに強く抱きしめないでくれ!というより放して!」
「コージョッ♪」
コジョンドの住処と思われる小さな洞窟の中でコジョンドに抱きしめられていた。
「痛い痛い痛い痛い!!!だから放してってば!!!」
「コジョ♪」
コジョンドは彼を放すどころかより一層強く抱きしめ始めた。
「ひぎゃああああっ!!!チャイー!助けてー!!!」
彼の悲痛な叫びは夕焼けで赤く染まった山々に虚しくこだまするだけで、チャイが助けにくることは無かった…
MISSION1:FAILED!
キャラ紹介
No.01
ウロスバ:17歳:男
この物語の主人公で、かなりのアブソル好き。そのためアブソル関連になると手が付けられなくなる。一見ダメ人間に見えるがポケモンの治療に関しては村一番と言われているほどの腕前を持つ。コジョンドに何度もアブソルゲットを邪魔された挙句に抱きつかれるためコジョンドが苦手。
※次回はいつになるかは全くの未定です。