ある晴れた日。
村では大人が気持ちよさそうに深呼吸しながら洗濯物を干したり、ポケモンの日向ぼっこをさせたりしていた…
そんな中一人、村から離れて森林地帯を真っ直ぐ北へと走る少年がいた…
「あの山に何があるんだろう…もしかしてウロスバ、また変な事を考えたんじゃ…いや、もしかしてもないか…」
ウロスバのパートナー、チャイだ。
彼はウロスバから『森林地帯の奥地と言われている山に来い』との連絡を受け向かっているところだった。もちろん彼はウロスバがまた何か(愚策を)思いついたと考えていた。
チャイが山にたどり着いたとき、ウロスバは彼を歓迎した。
彼の服はコジョンドに締め付けられた跡で若干ボロボロだ。
「よく来たぞ我がパートナー、チャイよ!今回の作戦はこれだ!」
ウロスバがチャイに見せたのは何の変哲もないモンスターボールだった。
「…で?」
チャイは半目でウロスバを睨んでいる。
どこからどう見てもただのモンスターボールであり、これだけでは全く作戦がわからない。
「つまりだ。今回は久々にバトルしようかと考えているのだよ…まあ戦うのは3年ぶりだがね」
チャイは驚いた表情を見せている。
その驚きには、アブソル好きであるウロスバがポケモンを持っているということもあったが、彼の口から「バトルしようかと考えている」という基本的な言葉が出たことの方が大きかった。
「ウロスバってポケモン持ってたの!?知らなかったよ!」
ウロスバは若干恥ずかしげに頷いてボールを専用のポーチに入れた。
「ああ2体いる。だが1体は回復専用として使っているから、実質戦えるのは1体だ」
彼の目はいつにも増して本気だ。
チャイはここまで真剣な目をしているウロスバを見たことが無かった。
「それじゃあアブソルを見つけたら教えるね!」
「頼んだぞ」
ウロスバとチャイは山にあった大岩に隠れてアブソルが来るのを待った。
しかし時は過ぎてもアブソルは現れない…
待っている間もウロスバはボールをしっかりと手に持って臨戦態勢を取っている。
アブソルは現れないまま辺りは暗くなり、暗い夜となってしまった。
「ウロスバ、今日は現れないんじゃないの?」
チャイの問いかけにも答えず、ウロスバはただじっとしてアブソルを待っている…
彼の目は何かを見極めているようにも見えた。
その時、ウロスバたちが隠れる岩の向こう側にある岩の陰からアブソルが現れた!
2人はそれを見つけると今か今かと飛び出すタイミングをうかがった。
アブソルは2人の気配を察知したようで戦闘態勢についている。
「今だ!戦いを申し込むぞアブソル!」
ウロスバがアブソルの前に飛び出してきた。
アブソルはいつ攻撃してもおかしくない状態だ。
「いくぞ!私のポケモンだ!行け!」
ウロスバはとっておきのモンスターボールを投げた!
チャイは彼の持っているポケモンを知らない。そのため何が出てくるのかわくわくしている。
『ウロスバの持っているポケモンって何なんだろう?ウロスバのルックスとか性格とかで考えるとロズレイド?それとも案外ルカリオとかカッコいいポケモン?うーん何だろう!?』
ウロスバのボールから出てきたポケモンは………
「えっ?」
チャイは意外だという表情をしている。
彼の持っていたポケモン。それは…
「ネイ…ティオ……?」
チャイの目の前には確かにネイティオの姿があった。
ネイティオは無言でアブソルを見つめている。
「驚いたかねチャイ君?」
「うん…」
チャイはウロスバの出したネイティオをまじまじと見ながら頷いた。
ウロスバがネイティオを持っているというイメージが全くなかったため彼にはかなり新鮮な光景だ。
「さて、行くぞネイティオ!まずはあいさつ代わりの電磁波だ!」
ネイティオはコクンと頷くとアブソルめがけて電磁波を放った。
アブソルはかわそうとするもネイティオの素早さに劣ったか、電磁波に当たってしまった!
「かかった!」
チャイは興奮した様子でネイティオとアブソルの戦いを眺めていた。
アブソルは身体がしびれて動くのもままならない様子だ。
だが、苦し紛れにアブソルはネイティオに向かい辻斬りを放ってきた!
「来るぞネイティオ!!かわせ!」
ネイティオはアブソルの辻斬りをヒラリとかわした。
アブソルは勢い余って地面にぶつかったがすぐに体勢を立て直し、ネイティオの様子を伺っている。
「ここでとどめを出してやれネイティオ!私たちの修行の成果を見せてやろうではないか!」
ネイティオはコクンと頷いた。その目には何か熱いものを感じる…
チャイもまたウロスバとネイティオのコンビネーションと彼らの技に期待を膨らませている…
「必殺!サイコキネシス!!!」
ウロスバは自信満々に叫んだが、チャイはそれを聞いた瞬間期待が一気に冷めたのを感じた。
ネイティオもまた自信満々にサイコキネシスを放つがアブソルには何の変化も見当たらない。
「ハッハッハッハ!私たちの美しい技に見とれて言葉も出ないか!そうかそうか!」
ウロスバは勝ち誇ったように大笑いしているがアブソルは呆然として立ち尽くしている。
「ちょ、ちょっとウロスバ!エスパータイプの技はあくタイプのアブソルには効かないよ!!?」
「そ、そうなの!?」
大笑いしていたウロスバもそれに気づいたようで、助けを求めるかのようにチャイに視線を送った。
「しょうがないな…」
チャイが呆れてウロスバのところへ駆け寄ろうとしたが、そこにアブソルが怒りにも似た感情で彼らにかまいたちを放った。
「ギャース!」
ネイティオはひらりとかわしたものの、ウロスバとチャイは共に餌食となってしまった…
そしてアブソルはそのまま山を駆け下りて逃げていった…
しばらくしてウロスバが目を覚ました時、ハピナスが呆れた表情でウロスバの手当てをしていた…
隣ではチャイが疲れたように眠っていた。
「あれ?私はハピナスを出した覚えはないぞ?」
ハピナスはつんけんとした態度でネイティオを指した。
ネイティオは申し訳なさそうにウロスバのもとに寄ってきた。
ウロスバは今にも泣きそうなネイティオの翼(?)にそっと手をやって励ました。
「謝らなくていいよ…あれは私の指示ミスが原因だ…それに君は頑張ってくれた…だから…その…ありがとう…」
「!!」
ネイティオは顔を赤らめながら感動と照れ隠しで体当たりのような技を出すとモンスターボールの中に戻ってしまった。
ハピナスはまたかといわんばかりにため息をついた。
「いたたた…あれ?この技…ネイティオ…君は『とんぼがえり』を覚えていたのか…ん?とんぼがえり…?」
ウロスバはチャイの持っていた『ポケモンバトル入門』という本をめくって、とんぼがえりとアブソルについて調べた。
「なんと!虫タイプの技はアブソルに効果抜群だったのか!3年もブランクがあるとここまで落ちるのか…不覚だった…何々?『あくタイプのポケモンは虫タイプの他に格闘タイプが効果抜群です。しっかりと覚えましょう』か…ん?格闘…?」
格闘タイプとしてウロスバはあのポケモンを思い出して寒気が走った。
そう。格闘タイプの『あのポケモン』だ。
「アブソルゲットの為に我が身は犠牲にしたくないな…よし!明日はネイティオととんぼがえりの特訓でもするかな…そうだハピナス、オレンの実とオボンの実でパイを作ってみたんだが食べるか?ネイティオもボールに戻ってないで食べよう!」
ウロスバは恥ずかしがるネイティオをボールから出して3人でパイを食べ始めた。
「我ながら美味い!チャイは…」
ウロスバはチャイを起こそうとしたが彼のあまりにも気持ちよさそうな寝顔に起こすのが申し訳なくなり、そのまま寝せておいた…
「よし!今度こそはアブソルをゲットするぞ!今に見ていろアブソル!ハッハッハッハ!」
彼の笑い声は静かな山に力強く響いていた…
森林地帯のポケモンや旅人達にもその声は聞こえていたが、特にうるさいとも考えずにそれぞれの道へと進んでいった………
MISSION FAILED!
キャラ紹介
NO.2
チャイ:14歳:男
ウロスバの後輩であり、勝手に「助手」という名目で連れ出された少年。童顔な上に背が小さいため子供に思われている。アブソルの角をほうふつさせるようなくせっ毛がトレードマーク。よくウロスバのとんでもない考えに巻き込まれる(※)。
(※)たとえばアブソルのかまいたちによって倒れてきた木の下敷き。メグロコに食べ…もとい襲われるetc...
・次回も全くの未定です。(アイデアが思いつき、時間があればまた書く予定ですのでその際はまたよろしくお願いします!)