世界一の錬金術師の養女は、ホグワーツへ入学するそうです。 作:東風吹かば
この後は笑うとけつバットやらタイキックやら出てくるあの番組を見ます。とても楽しみです。
どんな人間にも心はあると思う。
そして、それに触れられるかどうかが分かれ目となる
I believe every person has a heart, and if you can reach it, you can make a difference.
ユーリ・デリクソン(TW847便乗務員)
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……優秀でなければいけなかった。
……「いい子」でなければいけなかった。
それだけが、俺の十年間だ。
ニンゲンというものをあまり好まないようだ、と気づけたのはいつのことだったか。
何が原因か。それだけははっきりしている。
死喰人の父は高齢になっても結婚相手が出来なかった。純血のノット家は、先祖代々純血志向が
父はどう考えたか。簡単だ。
純血ならば
……そうして無理矢理嫁がされたのが俺の母、らしい。
スクイブの子どもはスクイブになるか。……父曰く一種の賭けだったらしいが、俺という純血の魔法使いが産まれたのだから父の悪運は強かったのだろう。
俺が女だったならともかく、きちんとした純血の健康な魔法使いが長男として生まれたのだから母はもう用済みだった。
純血至上主義の父のことだ。……あまり覚えてはいないが、母の扱いは決していいものではなかった。
それでも俺の前では優しく、気丈に振舞っていた母の姿が目に焼き付いている。
…………なのに。
母は死んだ。殺された。あの、父に。
俺の目の前で。
魔法が使えない者は魔法使いには敵わない。少なくとも、武装すらしていない者では。
父が何を思ったのかは知らない。
ただ純然たる事実として、母は父に呆気なく殺された。
父曰く母は「汚点」だそうだ。
俺はもしその「汚点」が知られても相手より優位に立てるような優秀さを身につけなくてはいけないらしい。……ノット家のため、
父に逆らってはいけなかった。
……父に従う「いい子」でなくては、父の言った通りの結果を出す「いい子」でなくてはいけなかった。
それは、パーティーに出席する時も。
弱味を見せてはいけなかった。「優秀さ」を、「いい子」ぶりを、見せつけなくてはいけなかった。
俺の意思なんてどこにもなくて。
本当の俺とは何なのか。……何がしたいのか。
まったくわからなかった。
スリザリンに入る、というのは決定事項だった。
イラ…………アイラ・ド・サドと、ブレーズ・ザビニと同じ船に乗ったのは偶然だった。
今までの学友とは比べものにならないくらい、普通に話せた。話してくれた。仲良くなれた。
そして、3人ともスリザリン生になった。
……嬉しかった。
──────久しぶりの、感情だった。
父からは頻繁に手紙は届くが、実際に父が見張っているわけではない。今までにない、『自由』というものを俺は味わえていた。
父から言われた、「名家の人間と仲良くする」というのはクリアできていたのだから。
ド・サドは勿論、マルフォイ家、クラッブ家、ゴイル家、グリーングラス家、ブルストロード家。ザビニも名家ではないが卑しい家でもない。
後は優秀な成績を修め、問題行為も行わなければ問題は無かった。……優秀で、あれば。
イラとは何かとペアを組むことが多かった。…………だからこそ、誰よりもよくわかってしまった。自分の優秀さなんて紙屑のように薄っぺらく小さなモノだと。
不思議と
あるのはただの『焦り』。
グリフィンドールのグレンジャーという生徒も優秀だと聞く。
レイブンクローの生徒達は当然優秀だろう。
…………俺の優秀さは何処まで通用するのか。
「俺」という人間の根幹が揺らいだ。
俺から「優秀さ」を除けば何も残らない。
例えばイラなら、成績優秀でなくともその類まれなるリーダーシップだってある上に、魔法を使うこと自体が群を抜いて上手い。ザビニであれば、誰とでも仲良くしようと思えば出来るコミュニケーション能力と話術がある。マルフォイにも、リーダーシップがある。それに彼は、財力やそこからくる人脈が豊富だ。
俺だけが、何も無かった。…………何も持っていない。
そう思うと、震えが止まらなかった。
「父の言いなりのままでいいのか」
そう、自分に問うたことがある。
……結局、答えは出なかったが。
俺は「人に弱味を見せてはいけない」し「優秀でなくてはいけない」。でもイラやザビニ等、皆とは仲良くしたい。こういう広い場でも優秀で居られるかはわからない。
普通の、みんなと同じように。皆と仲良くしたかった。優秀でなくとも仲良くしたかった。優秀でなくとも「自分は自分でいい」と、誇れる何かが、誰かにそう言ってもらえるナニカが、欲しかった。
「…………イラは、凄いな」
何度もペアを組んで、何度も言った言葉。……心から思っている言葉。
「ありがとう」
ここで綺麗な笑顔が付いてくるまでもセットで、いつも通りだ。
「でもセオだって、黙っているだけでいつも周りを気遣っている。それだって充分に凄いと思うぞ」
…………それは、お世辞だったのかもしれない。誇張して、言ったのかもしれない。
だけど。……それでも。
とても。とてもとても…………嬉しかった。嬉しすぎた。
俺にだって、優秀さ以外にもいい所がある。それを、他の人から。イラから。言ってもらえたのだから。
結局、テストでの順位は3位。イラにもグレンジャーにも負けた。
「優秀」と。「いい子」と。そうは言い難い成績だ。
父に何と言われるだろうか、などと。……そんな恐怖よりも。
「次は、
父から命令されるからではなく、自分の意思で。自然とそう思った。…………口に出しては、言えなかったが。
スクイブとは
両親、あるいは片親が魔法族だが魔力を持っておらず、魔法が使えない人のこと。簡単に言えば「魔法族生まれのマグル」。
次は明日の投稿。とある王子様騎士団員(モブ)の独白となります。出来れば2日、3日と続けて投稿したいです。
さて、本年はいろいろとお世話になり、ありがとうございました。また新年もどうぞよろしくお願いいたします。
よい年をお迎えください。