世界一の錬金術師の養女は、ホグワーツへ入学するそうです。 作:東風吹かば
今年もよろしくお願い致します。
世界が変わる瞬間を
世界が塗り替えられる瞬間を
見たことがありますか?
私には、あったのです。
出会ってしまったのです。
すべてを一変させられてしまったのです。
──────あの
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「ねえ、今年の新入生って可愛い子多くない? 特にグリフィンドールとか」
「ハッフルパフ生のくせになに言ってんだか。でもそうよね。女子も男子もレベルが高かったわね~。将来有望だわ」
「年下もいいよね、全然あり、射程圏内!」
とりとめのない、くだらない会話。
興味のあることだけ覚えて、後の事は全て忘れて。あんな話したね、と言われればそうだったと思い出す。
仲良く話して、行動して。遊んだり、恋したり。
思い出というには陳腐で、平凡で。どこまでもありふれた話。それでもそれはやがて大切な宝物思い出へと昇華されていったことでしょう。
出会いは唐突で、劇的で。
私ごとき
それでも彼女に出会ったことを後悔するかと聞かれれば。
私は迷いなく答えるに違いない。
「
…………、と
初めての出会いは、階段。
「危ないですよ」
かけられた言葉に振り向けば、金髪の少女が立っていました。
「そこの段は踏むと消える段です」
ああ、そうだったと思い出す。
同時に忘れていた愚鈍な自分に腹が立って。下級生に指摘されたこともどうしようもなく恥ずかしかったのです。
「ありがとう、忘れていたの」
取り繕って言い訳がましく言おうが、何も変りはしない。
「どういたしまして」
涼やかな顔で言うその姿が。私なんかでは到底及ばない一種のオーラをもって私に襲いかかって。
きっとこの人にとっては人生なんてヌルゲーなんだな、と思わされたのです。
二度目の
「こんばんは」
そう、軽く挨拶されただけでした。
それだけの言葉。それだけの動作に、何人のハッフルパフ生の視線が集まったことでしょうか。
スリザリン生へ向ける好奇心、警戒心、嫌悪感。私以外、例えば私の友達などはそういった感情が強かったようでした。
けれど、私は。いえ、私以外にも何人かいた事に違いありません。
その仕草に。その声に。ポーッとしてしまいました。
「こ、こんばんは……」
一つ一つの所作が、私と比べるなんておこがましいほどに洗練されていて。優雅で。
住む世界が違うんだなぁ、と嫉妬とも憧憬とも言えないごちゃごちゃした想いと共に痛感させられたのです。
三度目の
確かうちの寮のセドリック・ディゴリーはカッコイイよね、とかそんな会話だったと思います。
いつの通りの会話。普段通りの移動。ただ一つ違ったのは、たまたまでしょうがスリザリン生が下の方に見えていたことくらいでした。
その日の階段は機嫌が悪かったのでしょうか。いえ、階段に意思があるのかは知りませんけど。
とにかく、階段はぐるんとそれはそれは勢いよく回転したのです。
他の友人はなんとか手すりにしがみつけたらしいのですが、真ん中の方にいた私には不可能で。
結果。見事に下へと落ちていきました。
いやもう、『死ぬな、私』としか思えなくて。とりあえず階段と、そんな危険な階段を生徒に使わせる教職員を恨んでやる……と、思ったところで。
あれ? すーっと降りてる?
と、気づいたのです。今思えばクッション呪文をかけてくださったのでしょう。
「お怪我はないですか?」
他の生徒がざわめく中、冷静にそう言われて。色々あってもう泣きそうなのを察してくれたのか、そっとハンカチを手渡してくれて。
────私は、彼女。アイラ・ド・サドに。恋、という言葉は適切ではないでしょう。一番近い言葉で言えば、「惚れて」しまったのです。
それからの行動は我ながら、素早いと賞賛に値するものでした。
他の同士を探し、集める。(もっとも、同じように同士を探していた人との合流、といった方が正しいかも知れませんが)
そして既に広まりつつあった「
団員章の作成。情報ネットワークの設置、などなど。皆で協力して行いました。
団員は4寮全てから構成されていましたが、やはりグリフィンドールは少ないです。団員が増えた今もそれは同じで、スリザリンとグリフィンドールの対立は根深いものだと改めて実感させられました。
それでも我々、
どうぞ奮ってご入団ください
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「え、何コレ」
「中々面白い読み物ね」
「
「いや、ツッコミどころ多過ぎんだけどよ。とりあえず一つ言うなら……この王子様新聞って何だよ!?」
「情報が古いよ、もー。11月には発行されてたんだから」
「歴史ある新聞なのね」
「半年ちょいしか経ってねぇだろうが!! ってかこの人のプライバシーの侵害しまくりな新聞、どこで出回ってんだ?」
「えー、広報担当じゃないから団員以外では誰に渡されてるかなんて知らないよ?」
「担当とかあんのかよ……」
「あら、ちゃんとした組織ならあるのは当然でしょう?」
「いや、まあ、そうだけどよ……何かどっか納得できねぇ!」
「あ、そうそう! ダンブルドア校長先生も愛読してるらしいよ」
「おい校長大丈夫か!? この学校、大丈夫なのか!?」
「中々、生徒愛に溢れているいい先生ね」
「そういう次元じゃねぇだろ!!」
「うんうん、確かに王子様は次元を超えた存在だよね」
「果てしなく曲解された!?」
「あ、そーいえば、前に団員の1人がスネイプ先生にこの新聞没収されたって」
「あら。それは大変だったわね」
「うん。今でも、発行されたらその日に渡さなくちゃ怒られるんだって」
「さすがはスネイプ先せ…………っておい、本当に大丈夫なのかここの教師!?」
「時々読んだ後、記事を書いた人を叱るらしいよ」
「よかった、まだまともな先生だった。そうだよな、きっと生徒ド・サドのために検閲を……」
「『ここの表現がおかしいだろう』」
「ふんふん」
「『ド・サドを表すには余りに貧弱すぎる表現だ! もっと優美に!!』とか、そんな感じに」
「オレの安心を返せ!」
「中々、生徒愛に溢れているいい先生ね」
「だからそういう問題じゃねぇだろ!!」
「はぁ、私もこんな運命的な出会いがしたかったなぁ〜」
「そういう、問題じゃ、ねぇだろっ!
……ってかこの学校は本当に大丈夫なのか!?
大丈夫だよな!?」
次は、「100億年前から愛してる」となります。
次の次くらいからようやく2巻に入れます……