世界一の錬金術師の養女は、ホグワーツへ入学するそうです。   作:東風吹かば

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はじめまして、東風吹かばと申します。
初投稿です。よろしくお願いします。


賢者の石編
終わりの始まり


「ホグワーツとボーバトンから入学許可証が届いているが……どっちへ行くんだい、ララ。わしとしては、わしらの母校、ボーバトンがいいと思うぞい」

 

「残念、ニック。私はホグワーツへ行くよ」

 

 イギリス、デボン州。

 

 かの有名な錬金術師である、ニコラ・フラメルとペレネレの夫妻がそこに住んでいることを知っている人は少ないだろう。魔法によって見た目以上に広くなっている洋館で私達は静かに暮らしていたのだが、今日はふくろうのお客さんがいるのでいつもよりも騒がしかった。

 

 ふくろう便により入学許可証が来る、というのは予想はしていたが実際に来ると感慨深いものだ。

 

 これから私は魔法を学べるんだ! とかいう感慨は一切ない。(世界どころか歴史上で一二を争う錬金術師に既に魔法は教わっているのだから、当たり前と言えば当たり前だろう)

 

 だが、同年代の魔法使いたちと共に過ごし学ぶというのは楽しみである。まあ、一つだけ悲しいこともあるが、それは一年後なのだから今は後回しにしておこう。

 

「あらあら。残念ねぇ」

 

「二人には悪いと思うけれど、私はレグの……父と同じ学校に通いたい。私にはホグワーツの方が合ってると思っている。

 それに、フランスだとお爺様がうるさそうだ」

 

「「『『ララ……』』」」

 

 我が養父ながら幽鬼のような風貌のニックと、今なお美しいペレネルが感極まった声をもらすのと同時に、その場にいた二人の霊がむせび泣いた。

 

『ララが、そこまで、私のことを、想ってくれて、いたなんて────』

 

『もう、泣いちゃダメよレグ。ララが困っちゃうでしょう?』

 

「あいにくとすでに困っとるのでな!」

 

 それと、感動しているところに悪いが最後の言葉も結構な割合を占めてるんだが。

 

 お爺様。フランスの由緒正しい貴族の彼にとって、孫娘は目にいれても痛くないくらい可愛いらしい。(男が生まれやすい家系なので今現在唯一の女児であることと、娘の忘れ形見であることが拍車をかけている)

 

 つまり、私に対しては超絶過保護なのである。うちのお爺様は。

 

 フランスのボーバトンに通いでもすれば、そこに通っている孫(私からしたら従兄弟であるが)にでも言って超過保護ガードを実行するだろう。いや、絶対に行う。

 

 それは断固阻止したい。私は自由に生きたいのだ。

 

「ララ、(ご両親)と会話すんのはいいが、声にはあまり出すな。変人に見られかねん」

 

 顔が赤くなる。未熟さをまた見せてしまった自分が恥ずかしい。

 

 霊。霊魂。ゴーストとはまた違った存在で、本来ならばヒトの眼に映る存在ではない。しかし特殊な眼がある私には生者のようにはっきりと見える。ついでに霊の言葉も聞こえれば、霊以外でも人外の言葉はだいたい理解できる。しかし霊を(はら)うことも、触れることすらもできないのだから何とも悲しい力だ。

 

 こういうのは母の家系に割と現れる能力らしく、どうやら先祖に人外と婚姻を結んだ者がいたそうだ。まあ、祖先やら親に魔法生物の血が入ることなど珍しくない魔法界では「だからなんだ?」で終わる話だが。

 

 父の家系からは闇の魔術への強い適性や灰色の眼などしか受け継がなかったので、それに比べればかなり役に立つものだ。この素直な感想を父へ言ったら泣かれたのは記憶に新しい。

 

「気をつけます」

 

『あらあら。修行が足りないわね、ララ』

 

『明らかに母さん達のせいですから。まあ、仕方ないことでしょう。心で会話するのは少しばかり面倒だから』

 

『そうなのか。私達、霊にはよくわからないな』

 

 ゴーストだったなら常人にも見えるのに。とは思うものの、霊だからこそこの二人は私をずっと見守っていられるのだ。

 

 一緒にいるためには結局、私が閉心術とテレパシーを鍛える他なかった。かなりのスパルタ式である。あの修行のつらさは従兄弟からのいじめと同等のものだった。

 

「まあ、ララならホグワーツでも上手くやれるでしょう」

 

『当然よ、ペレネル! だってわたしとレグの愛娘ですもの』

 

『むしろ上手くやりすぎて悪い虫がついた時が心配だ』

 

「くく、お主の表情からすると2人とも同意しとるか? まあ、わしらの名を出さなければ大丈夫だろうに」

 

「うん、わかってるよ。『フラメル』の名の影響力がわからないほど馬鹿ではないつもりだ」

 

 近頃ダンブルドアがよくうちを訪ねて来ているので(ふくろうなんて使わずに自分で書類を渡せばよかったと思うのだが)、そのまま返答を渡した。ふくろう便はあまり使いたくないものだし、校長をパシリにできるのはなかなか愉快だ。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「おお! 久しぶりじゃのう、アイラ。

 そして、早いが入学おめでとう!!」

 

「ありがとうございます、ダンブルドア先生」

 

 本名で呼ばれるのは久しぶりで(長期休暇中で家にこもっているのもある)くすぐったいような感じを覚えた。

 

 忙しいと聞いてはいたが、よほど仕事に忙殺されたらしくしばらく来訪は途切れていた。ニック達からすれば短い期間だろうが、久しぶりにダンブルドアが姿を見せたのはかなり時が経った後、7月31日の早朝だった。

 

 昔ダンブルドアからもらったホグワーツの全学年の教科書はとっくのとうに学習済み。ついでに言うと、お爺様からもらったボーバトンのものも同じだ。

 

 杖はとっくに買ってある。というよりかは使い込んでいる。

 

 ローブも帽子も手袋も、セーターもマフラーも、アビル(屋敷しもべ妖精)たちが一年をかけて製作してくれていた。

 

 つまり学業準備の品々はいつ買っても問題ないとはいえ、もう少しくらい早く来て欲しかった。(それと、もう少し寝かせて欲しかった)

 

「ようこそアルバス。久方ぶりだな」

 

「そうじゃのう、ニコラス。さて、これが頼まれていたアイラに必要になるであろう学用品リストじゃ」

 

 私には普通の新入生以上の物が必要だろうというニックの配慮だけれど、果たして校長先生を働かせるほどのことかという疑問は残る。入学許可と一緒に届けるべきものではないだろうか。

 

「ありがとう、アルバス。ほら、ララ」

 

「ありがとうございます……では、私は席を外しますね」

 

「すまんのう」

 

「いえ。お気になさらず」

 

 直ちに出ていけとプレッシャーをかけていたくせにぬけぬけと、とは流石に口に出せなかった。

 

 まあ喧嘩を売るつもりはないし、さっさと私が出ていくのがお互いのためだろう。

 

「そうじゃ。今日はハリーがダイアゴン横丁へ行く日だったわい。もし会ったら、優しく接してあげてくれんかのう? アイラとは似た境遇じゃし……」

 

「ええ。もし会えば、そのようにします。では、失礼させていただきます」

 

「生き残った男の子」と一緒にするな、という言葉を飲み込み、あくまでも貴族らしく優雅に礼をした。

 

 ダンブルドアは私によくしてくれるし、善人であることを頭ではわかっている。けれど、あまり好きにはなれないのだ。申しわけないことに。

 

 

 

 

 

『どんな話か気にならないの?』

 

 前に、(ララ)二人(わし達)と養子縁組はしておらず実質ただの居候なので遺産相続の手続きが面倒だ、とニックがぼやいてたのを思い出した。

 

『どうせニック達の葬儀についてとか、遺産についてとかでしょうに。聞いてても悲しくなるだけだ』

 

 ニコラス・フラメルとペレネレ夫人で有名なのは、「賢者の石」だ。万物を黄金に変え、永遠の命をもたらす錬金術の至高。

 

 実際に665歳以上のニック。

 

 だが。いや、だからか。夫妻は義娘()が無事学校に入学するのを見届けたら死の世界へ旅立ちたいらしい。

 

 何て自分勝手で、残される私のことを考えていないんだろう。それが初めて聞いた時の感想だ。

 

 でも今は違う。

 

 私には、可愛がってくれるお爺様がいる。一応は頼れる従兄弟がいる。(霊だけど)見守ってくれる両親がいる。だからもう大丈夫ではないか、と考えているのか。まあ、そのあたりだろう。

 

 むしろ、私が成長するまで死期を遅らせてくれていたとさえ考えられる。

 

 駄々をこねるな。私は充分恵まれている。今ではそう感じられるのだ。

 

『そうか』

 

 そんな達観した結論を出せているのは、紛れもなく相談にのってくれた両親のおかげだ。

 

 だからだろうか。父の顔は少し悲しそうで、それでいて誇らしそうだった。

 

 それと、まだ見ぬハリー・ポッターへの殺意が見える。まったく、ダンブルドアが余計なことを言ったせいだろう。

 

 その顔にどこかムカついた私は、笑顔で言い放った。(テレパシーだが)

 

『レグ。うざい』

 

 あいにくと私は年齢的に反抗期だ。

 涙をこぼす父の顔なんぞ知らないな。

 

 視界の端で、母さんが慰めているのを視た。

 

 

 

 

「姿くらまし」は本当に便利で、ダイアゴン横丁までもあっという間だ。

 

 しかしいつもに増して人が多い。余計に暑く感じる。(黒いローブをきっちり着込んだ魔法使いの皆様は暑くないのだろうか?)

 

「さて、まずは……」

 

 ガサゴソと念の為リストを見直すと、やはり教科書が1番多い。書名がズラリと並んでいる。

 

「本屋からだな」

 

 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店が視えた。

 

 

「ありがとうございましたぁ」

 

 レジカウンターに積んだ大量の本の会計をした店員の声は疲れが見えた。私も「検知不可能拡大呪文」がかかっているとはいえトランクに入れるのは大変だったのでお互い様だろう。

 

 生涯困らない程度には金を持っているものの、庶生とともに過ごしたことのある私にはこの大量の本は少し痛い買い物だった。

 

 しかし育った環境からか読書は好んでいるので、気分はとても向上している。

 

 帰ってからこのトランクを開けるのが楽しみで仕方ないな。

 

「次は……ん?」

 

 なんと言えばいいのか。「境界のゆらぎ」が視えた。「姿現し」ではない。もっと異質なモノだ。

 

「ほほう」

 

 危険ではある。が、好奇心から近づくことが決定した。

 

 

 人気の少ない、隅のほうに目的のモノはいた。

 

『ごきげんよう、可愛らしいマドモアゼル。ワタシが視えるのかい?』

 

『ああ。ただの猫ではない……ケット・シーか?』

 

 大型犬サイズの黒猫がのっそりと歩いていたのが視えて、魔法生物なのはわかった。あふれる知性からしてケット・シーあたりかと思ったが、当たったようだ。

 

『ええ。言葉までわかるとは。近頃はいなくなったのに、珍しいですねぇ。ああ、申し遅れました。ワタシは「公爵」です』

 

『こんにちは、公爵殿。私はアイラ・ド・サド。イラで構わない。

 さて単刀直入に言うが、使い魔を探している。人間の使い魔になりたがっているもの(同族)がいたりはしないだろうか?』

 

 ヒキガエルもねずみもあまり好まないので、使い魔は猫がよい。せっかく意思の疎通が可能なのだから、知性が高い方が好ましい。そんな中、あちらからやってきたのだから運命としか言えないだろう。

 

 既に私の中で使い魔はケット・シーで決定していた。

 

『そうですねぇ。うちの王国でしたら、そこそこいるかと。よろしければ、明日にでも連れて来ましょうか?』

 

 思っていたよりも軽い返事なので、今までも魔法使いからの打診は割とあったのだろう。妖精たちの姿を見れなくとも彼らから姿を見せようとすれば見えるようになるし、妖精の言葉がわからなくとも彼らから語りかけられればわかる。昔から様々な妖精が魔法使いの傍らに寄り添い、あるいは敵になってきたものだ。

 

 妖精の中にはイタズラが過ぎたり邪悪なモノもいるが、ケット・シーならば先祖に交流を持ったモノもいるのだし、名前を名乗った以上信用できる。

 

『ああ、頼む。住所は……』

 

 適当な紙に走り書きして、公爵の巻いていたスカーフに挟んだ。上質なスカーフだ。センスがいい。

 

『それでは、また明日お会いしましょう』

 

 息をするように魔法を使って消えたケット・シー(猫の妖精なのだから当たり前か)を視て、私の魔法もまだまだだなと思い知らされた。妖精たちの魔法は根本からして違うものだが、屋敷しもべ妖精とも違う魔法に見える。まあ彼らは特殊な身の上なのだから道理といえば道理だが。

 

 とはいえ、使い魔問題は解決と。

 

 

 

 細々とした魔法具等々を買い込み、リストの物は無事買い終わった。(使い魔は無事決まったのだからもちろん除く)

 

「意外と早く終わったものだな」

 

 これからどうするか。帰るのは良策とは思えなかった。(ダンブルドアはまだいるに違いない)

 

 丁度目にしたのは「マダム・マルキンの洋装店」という文字。

 

「服でも見るか」

 

 屋敷しもべ妖精たちが作ってくれた服やお爺様にもらった服もあるが、動きづらい服が多い。私の好みが反映された服が作られることは少なかったし、そこまで意見したこともなかった。

 

 しかし市販の服や自分で選んだ服も持っていて損ではないだろう。

 

 

 ドアを開けようとすると、入れ違いに少年が出て来た。

 

 青白い肌、尖った顎、プラチナブロンドのオールバック。父さんの言っていた要注意人物(ルシウス・マルフォイ)に酷似した外見だ。息子がいると聞いたことがあるから、おそらくそうだろう。

 

 ニアミスで幸いだった。

 

「お嬢ちゃんもホグワーツかしら?」

 

「いや、ローブは既に仕立てているので。普段着をいただきたい」

 

 巻尺が体にまとわりつく。採寸とはわかっていてもいい気はしないな。他人に生殺与奪の権利を握られることはどうにも落ち着かない。

 

「き、君もホグワーツなの?」

 

 ボサボサの黒髪に壊れかけたメガネ。明らかにお下がりであろうボロい服。唯一の美点は、綺麗な緑色の眼だろうか。そんな少年だった。先程の少年ほどではないが、どこか見覚えのある顔だちだ。

 

 採寸終わっても立ち去らないことが不思議に思われたが、単純に友達を欲しただけやもしれない。

 

「ああ。ローブは既に屋敷しもべ妖精がつくってくれたがな」

 

「屋敷しもべ妖精?」

 

「屋敷しもべ妖精とは、特定の魔法使いや家族に一生涯仕え、日常の家事や雑用などの労働奉仕を行う魔法生物だ。ホグワーツには大量にいるらしいぞ?」

 

「へー、そうなんだ!」

 

 魔法族ならば普通に知っていることを知らないとは。よほどの辺境か、マグル育ち……容姿の特徴からしてもしや、ハリー・ポッターなのだろうか? 

 

 まあ、私にはたいして関係のないことか。

 

 巨大な男が窓から見えた。丁度いい。

 

「外で森番が待っているぞ? 行ってやったらどうだ」

 

「そうだった! ありがとう。えーっと、僕は……ハリー・ポッターです」

 

「アイラ・ド・サドだ。イラで構わん」

 

 自己紹介も終わったのだから素早く出ていくといい。あまり長話をすると仲が深まる恐れがある。ダンブルドアの考えるようには動きたくないものだ。

 

「採寸、終わりましたから服をお作りしますねぇ。30分後くらいにいらしてください」

 

 一緒に回ってくれるのかなぁというような、期待に満ちた眼差しが嫌でもわかった。

 

 ……まったく、ツイてない。ダンブルドアの差し金と疑いたいほどだ。

 

 

 

 

「ルビウス・ハグリッドだ。ホグワーツの森番をやっちょる」

 

「存じています…………アイラ・ド・サドです」

 

 ダンブルドア! お前が仕組んだのだろうっっ!! という叫びは胸に秘め、優雅に一礼した。

 

 決して二人が食べているアイスが羨ましいとか、そういう事ではない。どちらかというと気が利かないという印象のほうが強い。

 

「さっきの店で会った子に聞いたんだけどさ、クィディッチってなに?」

 

「そうか、おまえさん、クィディッチを知らんのか!」

 

 この森番(ハグリッド)は明らかに説明が下手そうな語り口だ。仕方がない、私から説明しよう。

 

「クィディッチとはわかり易く言えば、箒に乗って行うサッカーだ。詳しくは、『クィディッチ今昔』でも読むといい。本からは色々なことを学べるぞ?」

 

 箒専門店を指しつつ答えてやると、ある程度は理解したらしい。まあ、森番はサッカーがわからんだろうがな。

 

 マグルのスポーツも面白いものは面白いと思うのだが、どうにもマグル蔑視の情は根強いものだ。正直なところ人間同士の争いなどどうでもいい気はするが、イギリスは島国だからかマグルに対する感情がフランスよりも強くて戸惑う。

 

「ありがとう、イラ。あとさ、ホグワーツって寮が別れてるの?」

 

 ふむ。私はスリザリンで決まりだが、彼は何処へ行くかな。両親の血筋からしてグリフィンドールか? 優しさがあるとしてハッフルパフになるやもしれない。ハッフルパフに関しては優しさ、という曖昧なものよりは狡猾さも勇気も知識欲もない者、と言うのが近い気もするが。

 

「創設者の名にちなんだ4つの寮がある。グリフィンドールにレイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリンだ。各々寮に特徴はあるが、人から聞いた先入観を持たず自分で判断した方がいいだろう。

 さて、杖は買ったのか?」

 

「まだだけど……」

 

「ほら、そこがオリバンダーの店だ。行ってこい」

 

 ぽんと背中を押すと、ポッターは恐る恐る店に入っていった。杖を買うのに緊張する必要があるのか? 

 

 なにしろオリバンダーは世界一の杖職人だ。懐かしい、私もここで杖を買ったものだ。

 

「お前さんはもう杖を買っちょるのか?」

 

「ええ、これですよ」

 

 37センチ、桜の木。持ち手が湾曲して先は真っ直ぐな剣のような形。何か塗ってあるのか、綺麗な漆黒。細かく入っている紋様。すべてが気に入っている。

 

「おお、いい杖だな!! 

 さーて、おれはハリーの誕生日プレゼントを買っちょくるが、お前さんはどうする?」

 

「私は……」

 

 私はハリー・ポッターと仲良しこよしになることをよしとしない。友人の一人とはいえ、親友ではないくらいのレベルに収めることが望ましいと考えている。

 

 まず一つ目。ダンブルドアの思い通りになどさせたくない。おそらくあのたぬき爺は、私がポッターと仲良くなって奴を守ってあげることを期待していただろう。そんなものは真っ平御免だ。

 

 二つ目。父さんがポッターを嫌っているのだ。どうやら父さんの尊敬していた先輩が、ハリー・ポッターの父であるジェームズ・ポッターの酷いいじめにあっていたらしい。

 

 三つ目。変に目立ちたくないのだ、単純に。ポッターという有名人の近くにいれば「ポッターの友人」として悪目立ちするだろう。とはいえ嫌われすぎても問題だから、要はほどほどが一番なのだ。ほどほどが。

 

 少し話しすぎた気もするが、これくらいが引き際だろう。

 

「失礼、もう時間のようです。ハリーにはこれをお渡しください。あと、『申し訳ない、それと誕生日おめでとう』と伝えておいてくださると嬉しいです」

 

「おお。引き受けちゃるぞ。じゃあな、アイラ」

 

 丁度手元にあった買ったばかりの羽根ペンセットを押し付け、服を受け取りに急いだ。

 

 

 まだ帰りたくはないが、このままいても再会してしまう危険性がある。会わないよう、ノクターン横丁でも見て回るとしよう。

 

 

 

 

 




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