世界一の錬金術師の養女は、ホグワーツへ入学するそうです。   作:東風吹かば

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ホグワーツへの道筋

 「『コロポータス(扉よ、くっつけ)』」

 

 ホグワーツ特急のコンパートメントに入ると、とりあえずドアを完全に閉鎖した。これでやっと一安心だ。

 

 キングズ・クロス駅で元死喰い人に出会うと少し厄介なのだ。幸い、それらしき人物には出会わなかったが。

 

 「もう大きくなってもいいぞ、ウィル」

 

 黒猫に話しかける私は、もしここに他人がいればとても変人に思われただろう。

 

『いえ。小さいままでも問題ないです、主人(マスター)

 

 結論から言うと、私はケット・シーの使い魔をゲットした。

 

 約束通りあの日の翌日にはケット・シーがやって来ていたのだ。

 

 曰く、「王国の一応第1王子ですが妾腹で、王妃から生まれた第2王子との政権争いなどしたくないので参りました」とのことである。猫の世界も大変らしい。

 

 王族としてのプライドもそこまでなく、本猫(?)も「妖精の状態だった公爵が視える方なら尊敬します」とのことなので大丈夫だろう。きっと。

 

 ケット・シーの王国では高貴な身分であるほど名前がつけられないらしいので、ウィルと名づけたのだった。

 

 しかしケット・シーは犬サイズ。ただの猫にしては大きすぎなので、魔法で一般サイズになってもらったというわけだ。

 

 それで問題は解決したように思われたのだが、残念ながら一つ問題があったらしい。父さんが『オスだと!? 許さん!』と言ってきたのだ。手の施しようがない親ばかだとは思う。まあ、面倒なので放置してきたが。

 

『私は読書をしているが、妖精状態(モード)になるなら列車を好きに散策してていいぞ』

 

 妖精状態なら私の様な眼のいい者や魔法力が高い者、武術の達人以外には視えないし存在すらわからない。

 

 私は静かに読書を楽しみたい人間なので、着くまで暇だろうなという配慮に満ちた発言だったが。

 

『いえ。ご主人様(マスター)を護るのが私の役目ですので』

 

 随分と職務に忠実なのは嬉しいが、マスターの言い方がグレードアップしたのは気のせいだろうか?

 

 まあいいか、とパラりと「アブラハムの書」をめくった。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 元からローブを着ていたので、慌てることなく優雅に降りた。

 

 薄暗い中見えるホグワーツは、正直ボーバトンの方が校舎は綺麗だなという感想を抱くものだった。(ニックやお爺様にボーバトンの写真を見せられた事が度々あったのだ)

 

 とはいえこれから七年間過ごす学び舎だ。

 

 きっと隠し通路とか隠された部屋とかあるんだろうな……って、父さんに聞けばわかるか。

 

『正直、うちの城の方が豪華ですな』

 

『そうなのか。まあ、これは城ではなく学び舎だからな。仕方ないだろ』

 

 ケット・シーの王城も見てみたいものだ。

 

 

 

 

 

 1年生のみ森番の誘導で向かうらしい。

 

 自動で動く小舟にひょいと乗ったら、あと二人男子が乗ってきた。森番は四人ずつ乗れと言っていたのだから仕方ないことだろう。

 

 コンパートメントで一人と一匹(ボッチ)だった私は、一緒に乗る三人など当然用意できない。

 

 とは言え、女子校育ちの私にいきなり男子と相席などという試練を与えるとは──もしこの世に神様がいるとしたらまったくひどい神様だ。

 

 特に話す必要性も見当たらなかったのでウィルを撫でたりしていると、黒人の方の男子から話しかけてきた。

 

「あー、オレはブレーズ・ザビニ。よろしくな!」

 

「……セオドール・ノットだ」

 

 無愛想な方も口を開いた。にしても、ノット家か。

 

 やれやれ、これは私も名乗らなくてはいけない流れだろう。

 

「アイラ・ド・サド。イラと呼んでくれ」

 

「OK、イラ。いやぁ、かわい子ちゃんが目の前に居るとつい喋りたくなっちゃうんだよね」

 

 どうやら見た目通り(つまり世間的に見ればイケメンと呼ばれよう)の、いわゆるチャラ男のようだ。

 

 なかなかに対照的な二人だが組み分けはどこに行くやら。

 

 ノットの方はスリザリンに来そうだが、チャラ男はどうだろう。まあ、レイブンクローだけはなさそうだな。

 

「私より容姿が優れている者など掃いて捨てるほどいるだろうに」

 

 実際、そうだった。

 

 父譲りの灰色の眼はありふれた色だし、母譲りの長い金髪もよく手入れされているというくらいの印象しか与えない。

 

「んっんー、オレは可愛いと思うよ。なんつーか、眼が澄んでるんだよな」

 

「それはどうもありがとう」

 

 眼、か。そんなにわかり易いものだろうか?

 

 だとしたらちょっと困るなあ、と思いつつ。ウィルのブラッシングに(いそ)しむ。

 

「ノットもそう思うだろ?」

 

「……ん、まあ、言われてみればそうかもな」

 

 ここで否定などすれば失礼にあたるという考えの元の発言だろう。ぞんざいな返答ではあるが、少しは女心がわかっているな。

 

 

『こいつら、馴れ馴れしくないですか?』

 

 ウィルは王族だったせいか護衛であるせいか、判断が(から)かった。

 

『いや、ノットの方は仕方なく会話に参加している体だろう。同年代の友人といえばこんなもんだ』

 

『友人、ですか。主人(マスター)がボッチの方が護衛としてはやりやすいんですけどね』

 

『残念だったな。そこまでコミュ力は低くない』

 

 はずだ。

 

 マグルの学校しか通ってないのでわからないが、魔法族の中でも上手くやっていけるだろう。多分。

 

『そういえば、ご両親は学校へはいらっしゃらないんです?』

 

『言っとらんかったか? 二人は霊界に還ったよ。まあ、呼べば大抵の時はいつでも来れるけどな』

 

『どうしてです?』

 

『ホグワーツにはゴーストもいるし、霊がうろつきにくい。それに二人は私の守護のためにいてくれていた。(しゃく)だがダンブルドアが守ってくれている以上、ここは安全だからな』

 

 そう言うと、ウィルは納得したようだ。ダンブルドアという名はケット・シー界でも有名らしい。

 

 

 

「イラ! 着いたよ」

 

 ウィルと話している内に、ホグワーツへ到着したらしい。いよいよ組み分けか。

 

「ああ、すまんな。少しぼーっとしてた」

 

「………………疲れているのか?」

 

 じっと顔を覗きこんでくるから何かと思えば、心配してくれたようだ。

 

「心配してくれてありがとう、ノット。列車内でずっと読書していてな。それで眠くなってきたのかもしれん。

 ──それと、セオと呼んでもいいか?」

 

「…………別に構わない」

 

「ずるい! イラ、オレもイズと呼んでくれよ」

 

「だが断る」

 

「ひ、ひどいっ!!」

 

 あはは、と三人とも顔を見合わせて笑った。

 

 できれば二人と同じ寮がいいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 三人で後ろの方にいたので姿はよく見えなかったが、女性の教授(おそらく)が大きな声で私たちに呼びかけているのがわかった。

 

 「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」

 

 他の新入生の話し声が止んだ。

 

「新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席に着く前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。寮の組分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生は家族も同然です。教室で寮生とともに学びますし、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。

 寮は全部で4つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。それぞれに輝かしい歴史があり、偉大な魔法使いや魔女が卒業しました。

 ホグワーツにいる間、皆さんのよい行いに対しては、属する寮に得点が与えられます。反対に、規則に違反したときは減点されます。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が授与されます。どの寮に入るにしても、皆さん一人ひとりが寮にとって誇りとなるよう望みます」

 

  輝かしい歴史、ねぇ。どんなところにも光と影があるとはいえ、ヴォルデモートのことは無かったことにされているのか。いやはや。まあ、新入生への言葉だ。明るい希望に溢れた言葉を選ぶか。

 

「まもなく、全校生徒、職員の前で組分けの儀式が始まります。待っている間、出来るだけ身なりを整えておきなさい」

 

 一拍置いてから、教授は再び話を続ける。

 

 「準備ができたら戻ってきますから、静かに待っていてください」

 

 組み分けの時が迫ってたのを知覚し、生徒はざわついた。まあ、七年間を左右する重要なものだから当然か。

 

 

「寮、ねぇ。イラはどこがいいの?」

 

「スリザリン一択だ」

 

 さらりと返すと、二人はとても驚いた顔つきだった。そんなに純血に見えないのか、狡猾に見えないのか。まったく、どちらだろう。

 

「二人はどうなんだ?」

 

 先に答えたのは、意外にもセオの方だった。

 

「……俺も、多分スリザリン」

 

 純血の家系なのだからまあ、そうか。

 

 予想していたとは言え、少し嬉しかった。

 

 ブレーズはどうか。レイブンクロー以外ならどこも行けそうだけどなあ。(悪いが勉強が好きそうには見えない)

 

「うーん、迷い中。二人が居るならスリザリンかなぁ」

 

「人で判断するなよ。自分で決めなさい」

 

 この言葉はよく父に言われたものだ。昔は父のいた寮というだけでスリザリンがいいと思っていた。

 

 けれど、今はどの寮の話も吟味した上でスリザリンがいいと強く思っている。

 

 間違った寮を選べば、困るのは自分なのだ。

 

「は〜い」

 

 

 

 さて、と。早めに済ませておくか。

 

『ウィル、偵察だ。行ってこい。くれぐれもダンブルドアとゴーストには気を付けてな』

 

『承知いたしました!』

 

 いきなり(ウィル)が駆け出していったことに対し、いいのかとセオに視線で問われた。勿論、問題ないと目で返す。

 

 ホグワーツには色々と探っておくべきことがある。情報収集は大切だ。

 

 ケット・シーは不可視化も壁のすり抜けもできるのだから、ダンブルドアかゴーストでもなければ障害になどならない。まあ、ダンブルドアも猫にかまうほど暇でないだろうし、問題ないはず。

 

 

 

 

 にしても話し相手(ウィル)もいなくなったし暇だなあ、と少しぼーっと室内を見渡していれば前の方から「ハリー・ポッター」という言葉が聞こえた。

 

 ……そういえばポッターをすっかり忘れてたな。ま、このどっかにいるか。

 

 

「さあ、行きますよ」

 

 教授が戻ってきたようだ。

 

 その厳格そうな声に従い、新入生たちはぞろぞろと大広間へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 大広間は、話には聞いていたがとても広かった。

 

 大勢の上級生に見られて緊張するような可愛げは残念ながらない。むしろダンブルドアと目が合い、ウエッと思うくらいだった。

 

 地下では屋敷しもべ妖精たちが一生懸命料理を作っているのが、視えた。

 

 生憎と舌が肥えてるので美味しくないと困るぞ? 聞こえないだろうが、よろしくな。

 

 

 

 

 

 

 さて、教職員や上級生の視線を集めていた椅子に置かれた薄汚い帽子。これがいきなり歌い出した。

 

 魔法具か。それも、年季が入った。

 

 

 

 ──私はきれいじゃないけれど

  私を凌ぐ賢い帽子

  あるなら私は身を引こう

  山高帽子は真っ黒だ

  シルクハットはすらりと高い

  私は彼らの上を行く

  私はホグワーツ組分け帽子

  かぶれば君に教えよう

  君が行くべき寮の名を

 

  グリフィンドールに入るなら

  勇気ある者が住まう寮

  勇猛果敢な騎士道で

  ほかとは違うグリフィンドール

 

  ハッフルパフに入るなら

  君は正しく忠実で

  忍耐強く真実で

  苦労を苦労と思わない

 

  古き賢きレインブンクロー

  君に意欲があるならば

  機知と学びの友人を

  必ずここで得るだろう

 

  スリザリンではもしかして

  君はまことの友を得る?

  どんな手段を使っても

  目的遂げる狡猾さ

 

  かぶってごらん恐れずに

  君を私の手にゆだね(私に手なんかないけれど)

  だって私は考える帽子──

 

 

 

 

 大広間に居る全員が拍手をした。……そんなにいい歌だったか?

 

 まあ、寮の特徴はよくわかる歌だな。グリフィンドール贔屓(びいき)らしいのはいただけないが。

 

 

 

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り、組分けを受けてください」

 

 途端、大広間が静まる。

 

「アボット・ハンナ!」

 

 一人目が始まった。……ファミリーネーム順だと私は早い方だな。

 

「ハッフルパフ!」

 

 

 

 

 

「ド・サド・アイラ!」

 

 父曰く、組み分け困難者は五十年に一人。その言葉通り、前の人々も数秒で判断された。

 

 さて、ついに私の番だ。

 

「んじゃ、後でな」

 

 ノットもザビニもまだ先。特にザビニなど最後の可能性が高いだろう。

 

 

 

 すたすたと優雅に歩き、華麗に椅子に座る。

 

『ふむ、その年にしてかなりの閉心術の使い手だね』

 

 脳を探るような不快な感覚の後、声が響いた。開心術でも当たり障りのないことしか視えないはずなので、大丈夫だろう。閉心術を習得してよかった。

 

 それでも、視られたことは不快だが。

 

『生憎と隠さなくてはならない事が多いもので……』

 

『血筋で決めるならスリザリン。だが、君はどこでもやっていけそうだね』

 

『いえ、スリザリンで。それが私に最も合う寮でしょうし、私自身もそれを望みます』

 

 「よし、では…………スリザリン!」

 

 スリザリンのテーブルからは大きな拍手が。それと、「あのド・サドだよな」「ド・サドがホグワーツに来るなんて」などという声がちらほら聞こえる。

 

 流石スリザリン。貴族の情報はよくご存知らしい。

 

 

 

 

 

 

 

「君は……」

 

 席に着くなりゴーストが寄ってきた。げっそりした顔、銀に輝く血がべっとりと付いたその姿は父から聞いていたスリザリン専属ゴーストの情報と一致した。

 

「アイラ・ド・サドと申します、血みどろ男爵殿(ル・バロン・アンサングランテ)。どうぞお見知りおきを」

 

 「ほう……覚えておこう」

 

 ゴーストは気まぐれだ。

 

 男爵は私に興味をなくしたかのようにスーッと他の生徒の方へ行った。

 

 

 

 

 

 上級生の数を比べてみると、やはりスリザリンは他寮に比べて人数が少なそうだ。

 

 つまり新入生も他寮に比べ、少ないだろうな。大人数でワイワイするのは苦手なのでその方がむしろ嬉しいが。

 

 「はじめまして。私はミリセント・ブルストロード。よろしくお願いします、アイラ」

 

 向かいに座っていた同じく1年生、背の高いの女子。ブルストロード、とな。また純血の家系か。

 

 「イラで構わないよ。こちらこそよろしく……ミリー、と呼んでもいいかな?」

 

 「ええ、勿論。驚いたけれど、あなたって見た目に反してとってもクールな口調なのね」

 

 世辞だな。確かに変わった口調だとは自覚しているが、違和感があるほど可愛い容姿ではない。

 

 本音と建前。世辞にごますり。上流階級には必須のスキルだから仕方ないとは思うが。

 

 「そうか? まあ『お姉様』とかはよく言われたが。それと、砕けた物言いで構わんよ。口調で他人を判断するクチでもないしな」

 

 「『ド・サド』には萎縮しちゃうのよ。ま、よろしく、イラ」

 

 「ああ」

 

 スリザリンの女子は人数も少ないだろう。ルームメイトになる可能性が高い以上、仲良くしておいた方が無難か。

 

 まあ、見た感じ聡明というわけではなさそうだが愚鈍とも言い難い。一般的な純血の家系の子女といった具合か。

 

 貴族的な振る舞いに関しては及第点。そこそこよく育てられている。

 

 

 

 

 

 ガールズトーク。とは言えまだ当たり障りない会話しかされていない。万が一でもド・サドの機嫌を損ねまいという打算だろう。が、その貴族らしさは好みだ。

 

「あの…………アイラ・ド・サド様ですよね?」

 

 典型的なおっとりしたお嬢様といった風体の女子が会話に加わろうとしてきた。

 

 一応組み分けの様子も聞いていたし、純血の家系だったのでよく記憶している。

 

「ああ、そうだが。君は……ダフネ・グリーングラス嬢かな?」

 

「はい。はじめまして。どうぞよろしくお願い致しますわ」

 

「え!? イラってば、あたしと話しながら組み分けも聞いてたの?」

 

「まあ、そうだな。と言っても名まで記憶してるのはスリザリン生のみだが」

 

「充分スゴイわよ」

 

「はい、お凄い方なのですね、アイラ様は」

 

 これまた典型的なごますりだが、悪感情を抱かせないところは流石だな。だがダフネは男ウケがいいタイプなのだろう。逆に言えば女子には煙たがられる。ミリーには軽く(まゆ)をしかめられ、あまりよく思われていないようだ。まあ二人で話しているところに入ってこられたという理由も含んでのことだろうが。

 

 おそらくスリザリンの女子では私が一番身分として権力として上。私にゴマをすっときゃいい、というのは正しい考えだ。実に貴族的で好ましい。

 

 「ありがとう。それと、イラで構わんよ、ダフネ」

 

 「では、お言葉に甘えてイラと呼ばせていただきますわ」

 

 

 

 

 その後もダフネとミリーとばかり話していた。これぞ所謂ガールズトークだ。

 

 私たちの方へは他の新入生は一切寄り付かないのだ。まあ、当然とも言えるが。ここだけ明らかに貴族的オーラを放っている。

 

 ド・サドを知らずとも、雰囲気からして由緒正しい家柄の者しか入ってくるなというオーラが見事に漂っている。

 

 スリザリンにも半純血とかいるだろうし、そういう人々は気後れしてしまっているのか。あるいは女子だけで話しているので声をかけづらいのか。まあ、どうでもいいことか。

 

 

 

 「マルフォイ・ドラコ!」

 

 前を見ればやはり、洋裁店ですれ違った男子。

 

「次はマルフォイか〜」

 

「ですわね」

 

「二人とも、知り合いなのか」

 

「ええ。パーティーなどで、幼い頃からよくお会いしましたもの」

 

 パーティーか。出させてもらったことがないんだよなあ。通っていたマグルの学校の、小規模なやつくらいしか。

 

 なにせお爺様が断固拒否するのだ。「可愛い孫に悪い虫がつくのを許容できん!」とか言って。

 

 まったく、私にまとわりつく虫は「ド・サド」という甘い蜜しか求めてないのに。

 

 

「スリザリン!」

 

 上級生たちが拍手をして歓迎する。私たちも勿論、貴族的に空気を読んで拍手した。

 

 しかし……彼の組み分けは、帽子は頭に乗らなかったのではないかと思うくらい、あまりに一瞬だった。

 

「流石マルフォイ。速いわね」

 

「よほどスリザリン気質なのだろうな」

 

 

 

 

 

「ノット・セオドール!」

 

「スリザリン!」

 

 ルシウスの息子の時よりも幾分か小さい拍手に、親の権力というものは強いなと思わされた。

 

 やはりセオはスリザリン(うち)になったか。よかったよかった。

 

 

 

 

「僕の名はドラコ・ルシウス・マルフォイ。よろしく」

 

「アイラ・ド・サド。こちらこそよろしく頼むよ、ドラコ」

 

 ド・サドには目ざとく注目していたのか、ドラコは真っ直ぐにこちらへと来た。

 

 ガールズトークのさなか話しかけるとはなかなかに勇気のある奴だ。態度に子供っぽさはあるが、振る舞いは実に貴族的。合格点だ。

 

 彼の親とはできるだけ会いたくないが、彼自身とは仲良くできそうだ。

 

「こっちはクラッブとゴイル」

 

「よろしくな、クラッブ、ゴイルも」

 

 ガタイのいい二人はドラコの子分的な存在か。一応こっちを見たが、それくらいの反応しかなかった。ひもじい顔をしているので腹が減っているのかと理解はできるが、その態度はいただけないなあ。

 

 まあ、どうでもいいか。

 

 それよりも……

 

 「ポッター・ハリー!」

 

 こちらの方が、重要だ。

 

 

 

 「グリフィンドール!!」

 

 ポッターは予想通り両親と同じ、グリフィンドールか。

 

 ドラコが少し残念そうな顔をしているが、まあ仕方ないだろう。こればかりは本人の資質と意思次第だ。

 

 見ると、ダンブルドアはかすかに微笑みを強くしていた。やれやれ。これもダンブルドア(たぬき爺)の手のひらの上なのか。どちらにせよ、私を巻き込まないでいただきたいが。

 

 

 

 

 

 

「ザビニ・ブレーズ!」

 

「スリザリン!」

 

 やはり最後はブレーズだった。まあzだしな。

 

 多少長かったので悩んだのだろう。けれど彼はスリザリンを選んだ。その事を嬉しく思う。

 

 私やセオのことも、少しは影響していたのか。だとしたら実に喜ばしいことだ。

 

 

 

「おめでとう。ホグワーツ、新入生の諸君。おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。

 

 そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上!」

 

 

 ……ニックはよくこんな変人と付き合えるな。いや、ニックも充分変人か。

 

 

 

 

 ダンブルドアの魔法により出された……ように見せかけて屋敷しもべ妖精が地下から上へ出してくれた料理がテーブルに並ぶ。

 

 一部の生徒(クラッブとゴイルなど)はバクバクと食べているが、大半は貴族的に、優雅に食べている。流石、スリザリン。食べ方については全体的に上品だ。

 

 

 

 料理は多少脂っこいものもあったが、そこは成長期に対する配慮というやつだろう。食べたものだけしかわからんが、美味と感じられた。

 

 

 

 

 

「エヘン──全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうからまた二言三言。新学期を迎えるにあたって、いくつかお知らせがある。

 1年生に注意しておくが、校内にある森には入ってはいならぬ。これは上級生にも言えることじゃ。何人かの生徒には、特に注意しておきますぞ」

 

 ダンブルドアはグリフィンドールの方を見ていた。グリフィンドールの上級生に常習犯がいるのか。

 

 ……私も入ってみたいなあ、森。

 

「管理人のフィルチさんから、授業の合間に廊下で魔法を使わないようにという注意がありました」

 

 だが断る!

 

 迷惑をかけなければいいだろうし。そもそもこんな規則、守る人も少なかろう。

 

「今学期は2週目にクィディッチの予選がある。寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡すること」

 

 クィディッチ、か。興味無いな。

 

 父さんはなかなか優秀な選手だったらしいが、可愛い娘に怪我をさせたくないとか言ってクィディッチの参加には反対してるし。お爺様も断固反対している。

 

 怪我しても治せる程度の実力はあるのだが、それとこれは別らしい。

 

「最後にじゃが、とても痛い死に方をしたくない者は、今年いっぱい4階の右側の廊下に入らぬことじゃの」

 

 少数の生徒は笑っているが、ホグワーツなのだから割と本気で死ぬ可能性があるのだろう。

 

 とは言え、むしろ入りたくなるヤツに該当してしまうだろうソレは。教育者としてもう少し考えて発言して欲しい。

 

 

「では、寝る前に校歌を歌うとしよう!」

 

 各々好きなメロディ、好きなテンポで歌っていたが、スリザリンではダンブルドアへの嫌悪や不信感も相まって歌っている人は少なかった。

 

 私も人前で歌うのは好きではないので口を閉ざしていよう。

 

「ああ、音楽とは何にも勝る魔法じゃ。

 さあ、諸君、就寝時間。駆け足!」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 スリザリンの寮は地下にある。緑と銀を基調にした気品溢れるデザインだった。

 

 大広間がそこそこ近いので、食事の際は便利だな。なにせホグワーツでは姿くらましが使えない。歩いて移動しなくてはいけないのだから。

 

 くっ、ダンブルドアめ! 私は知っているんだ。貴様だけは姿現しをここでも使えることを。

 

 なぜ知っているかと言えば簡単で、父さんから聞いたからだ。まあ父さんは偶然目撃したらしいが。

 

 ただその制約は人間のみで、屋敷しもべ妖精はあっさりと転移できていた。というのも私はふくろう便を信用出来ないため、手紙は屋敷しもべ妖精に直接届けてもらうのだが……ホグワーツへもやってもらった所、見事成功した。

 

 屋敷しもべ妖精の使う魔法は人間のとは違うからな。それでだろう。そもそも屋敷しもべ妖精もここで働いているのだから、彼らが魔法を使えなくては困るしな。

 

 

 

 

 さて、私のルームメイトは三人だった。うち二人はもう知り合い。ダフネとミリー。

 

 そして後の一人も純血の家系の女子だった。

 

 「パンジー・パーキンソンよ。一つ言わせてちょうだい、アイラ・ド・サド。ドラコと必要以上に近づかないで!」

 

 どうでもいいんだが、と言ったら禍根を残すだろう。まあ、ドラコと仲良くはしたい。パーキンソンのように恋愛方面でなく友情で。

 

 「ああ、わかったよ、パーキンソン。

 だが、心配無用だ。うちは厳しくてね、結婚相手なんぞ祖父が決めるんだ。おそらくフランスの魔法使いになるんじゃないかな。だから恋愛事に疎いんだよ、私は。恋をしたことも無ければする予定もない。ドラコとは友情以外、感じられないと思うよ」

 

 「ふん! それならいいわ」

 

 …………

 

 ダフネとミリーが「やれやれ、コイツ、またか……」という顔をしているのだが、これは昔からなのだろうか。彼女たちも同じことを耳にタコができるくらい言われたようだ。

 

 私もやれやれと言いたい気分だよ、まったく。

 

 

 

 

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