世界一の錬金術師の養女は、ホグワーツへ入学するそうです。   作:東風吹かば

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クィディッチ観戦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──────というわけで、クィディッチという児戯を観戦する必要などないと思うのです。が、どうにもドラコは一緒に行きたいらしく。どうすべきか、悩んでいるのですが」

 

 十一月にはいるとクリスマス休暇も近くなり、クィディッチの試合があるせいか。ホグワーツに慣れてきたからかは知らないが、新入生諸君もそれほど問題を起こすことなく楽しげにイベントを待っていた。

 

 特にクィディッチ。皆にとってはとても心躍るイベントらしく、様々な人からしきりに「一緒に観戦しよう」などと言われている。

 

 別に興味が無いからといって行くことすら嫌なわけではないのだが、時間の無駄ではないかと考えてしまうのだ。

 

 「わかった。よくわかったから我輩の足をペチペチと叩くのはやめたまえ!」

 

 気づけば魔法薬を塗らしてもらっていたセブルス教授の足を、軽くではあるが叩いてしまったようだ。

 

 傷口自体は薬のおかげで完璧に治ってはいたがそういう問題ではないだろう。

 

 「申し訳ございません。無意識に……」

 

 「まあいい。しかし流石はニコラス・フラメル手製の魔法薬。一瞬で治るとは凄まじい効き目のようだ」

 

 本当に、それは私も思う。私が同じ手法で魔法薬をつくってもこれほどの効果は出せないだろう。怪我から日がいくらか経っても傷口すら残さず治すとは。

 

 

 セブルス教授の足の怪我に気づいたのはハロウィンの翌日。その日から治しましょうかと幾度となく提案したものの断られていた。

 

 生徒に治してもらうことが屈辱だったのか、自らへの(いまし)めとして残そうと思ったのか。理由は定かではなかったが、本人の意思を尊重して治療は諦めていた。

 

 だが何があったか知らないが、今日は治療はと聞くと「……頼む」と言ってくれたのだ。セブルス教授の痛ましい怪我を治せるのも、教授の役に立てるのも嬉しかった。

 

 「ありがとうございます。ニックも喜ぶかと。

 ……それで、閲覧禁止書棚の特別許可書は」

 

 「ああ、これだ」

 

 「ありがとうございますっ!」

 

 閲覧禁止の書棚には、勿論危険な書が多々ある。しかしそれ以上に限りない叡智を手に入れられるだろう。なにより読書は大好きな上、魔道書を手なずけるのは得意だしな。

 

 「注意することだな。あそこには今のお前では手に負えない書もある」

 

 「気をつけます! それで、お礼の方ですが……」

 

 「前にも言ったが、礼などいらん。そもそも我輩は書類にサインしただけであろう」

 

 「いえ。貴族(我々)は少しでも借りをつくることを大いに嫌います。押し付けがましいとは存じますが、受け取るだけ受け取っていただきたいです。後で煮るなり焼くなり処分していただいて構いませんので」

 

 ──まあ、焼けないと思いますが。

 

 ぼそりと付け加えた言葉に首を傾げつつ、手渡した小包を開けた教授は(いぶか)しげな顔をした。

 

 まあ菓子とかそういうものを想像していたんだろう。

 

 「ドラゴンの……スウェーデン・ショート‐スナウト種とハンガリー・ホーンテール種の鱗を加工して作られたマントです。三頭犬(ケルベロス)に噛み付かれようが傷一つ付きませんよ。

 もうすぐ冬になりますから、ついでに手袋もお付けしました」

 

 勿論マントも手袋も黒。マントは普段セブルス教授が使っている物とだいたい同じデザインにした。

 

 流石にまったく同じデザインとまではいかないだろう。具体的にはマントの裏に隠しポケットを多めに付けた。これで薬品なども持ち歩きやすいに違いない。

 

 できれば普段使いして欲しいからな。

 

 

 ちなみにスウェーデン・ショート‐スナウト種の鱗の手袋なら私も愛用している。ファッション面から見れば無骨なので婦女子には今まで好かれてこなかったが、マグルの技術も取り入れて加工したことによって最近フランス魔法界では男女問わず人気の商品らしい。お爺様が自慢していた。

 

 このマントと手袋もお爺様の経営している工場に特注した品だ。結構お金がかかったが、まあ仕方が無い。セブルス教授のためだ。

 

 というか私は最悪、錬金術が使えるので金欠とは無縁だしな。

 

 「………………ありがたく使わせてもらおう」

 

 「そうしていただけると嬉しいです、おとう──セブルス教授」

 

 思わぬ失言に慌てて訂正するも時すでに遅し。

 

 「我輩は貴様のような娘をもった覚えはないのだがな」

 

 「し、失礼しますっ!」

 

 少し礼節には欠けるが軽いお辞儀をしてから慌てて立ち去る。

 

 廊下は走るな、という落ち着いた声が背後から聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お父さん、か………………」

 

 その呟きが誰のものかは、知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さあさあ始まりました! 世紀の大舞台! 心躍るクィディッチ、記念すべき初戦はグリフィンドールvs.スリザリン! 因縁の対決です!

 実況はワタクシ、グリフィンドールのリー・ジョーダンと我らが愛すべき寮監、マクゴナガル先生でお送りします!!」

 

 「リー、声のボリュームとテンションを落としなさい」

 

 「おっと始めから手厳しい。しかしリー・ジョーダンはこんなところでくじける男ではありません! みなさんにはハイテンションにボリューミーな解説をお送りするZE!」

 

 熱狂する観客。騒がしい雑音。見渡す限り人、人、人。

 

 

 

 「……帰っていいか?」

 

 「いや初戦くらいは見ておこうぜ。自寮の試合なわけだし」

 

 嫌なのだ。まるで黒ミサをしているかのような熱狂的な集団と、無駄なことで時間を潰すのは。

 

 「とことんクィディッチに興味がないのね、イラは。箒に乗るのは上手いくせに!」

 

 「別に私たちが観戦したところでスリザリンの勝率は変わりようがないだろう? だったら後で結果を聞くだけで充分さ」

 

 今の所連続で寮杯を獲得しているスリザリンには今年も寮杯を取らせたいが、私は授業等での得点を既に稼いでいる。クィディッチにまで協力するメリットはないし、観戦(この行為)には大した意味もない。

 

 まあ知り合いの上級生が出ているとかなら話は別だがあいにく私は上級生との接点はあまりない。

 

 時々写真を撮りにくる上級生がいるが、あちらから話しかけてくることは滅多になかった。

 

 試合に出ているので知っている顔といえばポッターと双子のウィーズリーくらいなのだから私がつまらないと思うのも無理はないだろう。

 

 「イラはやっぱり達観しているんですのね。けれど、1つ読み違えていますわ。イラが来ているというだけで頑張る選手も多いんですのよ?」

 

 「いや、たかが下級生1人、来ていようが来ていまいが気にせんだろうに」

 

 というかそうでないと困る。たかが下級生一人に振り回されるような軟弱なチームだとは思いたくないのだが。

 

 

 ダフネの言葉の真偽は不明だったが、スリザリンチームに手を振られた。

 

 ……下級生全体に手を振ったのだろう、きっと。

 

 

 

 

 「見ろよ! ポッターが箒に振り落とされそうになってるぜ」

 

 「ざまあみろ。1年生の分際で無理して出場したからだ」

 

 クィディッチの試合など三分見て飽きたので、じっと観戦しているフリをしつつ次の実験について考えていると、そんな言葉が聞こえた。

 

 自分でも見てみると確かにポッターは箒から落ちそうだった。

 

 授業の時に見たポッターの飛行技術は本物であった。とすればこれが未熟さからとは考えにくい。

 

 となれば、闇の魔術か。しかし見たところポッターの箒は高級そうなので、闇の魔術対策はきちんとされているはず。そこから考えるにレベルの高い闇の魔術が使用されている……教職員か。

 

 箒にかかっている呪いを視れば案の定、教職員のいる所から放たれていた。少々ややこしいことになっていたが。

 

 クィレル教授が呪いをかけ、セブルス教授がそれを妨害し(反対呪文をかけ)ていた。

 

 クィレル教授の狙いはポッターの大怪我か殺害かその辺だろう。ただ単に怨恨と考えるよりは──ヴォルデモートの差し金と考えた方が自然だな。

 

 いや別にクィレル教授は実は英雄願望があってその地位を奪ったポッターを恨んでいたとかいう可能性もあるが、クィレル教授の性格的にそれはないだろう。人は演技していても素の性格はにじみ出てくるものだ。

 

 さて、まだポッターには死なれても困るし助けてやるか。もちろん落ちた時にのみ、だが。

 

 

 

 

 

 

 

 しかしクィレル教授とヴォルデモートが繋がってると仮定するならその接点は何だったのだろうか。それとヴォルデモートは今どこにいるのか。

 

 クィレル教授に裏切られたら困るのだから、近くにいるはずなのだが…………

 

 

 「グリフィンドール、170対160で勝ちました!」

 

 あれ、試合が終わっている。

 

 しかし……なぜクィレル教授のローブが燃えてるんだ?

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 少し前のお話(時は遡る)

 

 

 

 

 

 「ハリーが! やばい、もう落ちちゃいそうだよ……箒のコントロールを失ったのかな!?」

 

 「ハリーにかぎってそんなこたぁない! しっかしニンバス2000に手出しできるのは強力な闇の魔術くれぇだし……っと、ハーマイオニー、それは俺の双眼鏡だけどよ」

 

 「ちょっと借りるわ、ハグリッド!

 うん、うん、やっぱりそう!! ロン、スネイプよ。スネイプが箒に呪いをかけているんだわ」

 

 「えっ! そ、それじゃあ僕らはどうすればいいんだ!?」

 

 「しっ、声を小さくして。私に任せてちょうだい」

 

 「心配だから僕もついていくよ!」

 

 「いいけど……素早くコソコソ行動するのよ!?」

 

 

 

 

 「いた、ハーマイオニー。スネイプだ」

 

 「下がってて。スネイプのマントを燃やすわ」

 

 「こっわ……あれ? 燃えてなくない?」

 

 「可笑しいわ。呪文は合っているはずよ──もう、時間が無いのに! 適当に近くの先生のローブを燃やすことにするわ」

 

 「スネイプは?」

 

 「何でもいいわ。とりあえず口を閉じさせれば!」

 

 「あ、スネイプのヤツ、ローブが燃えて驚いたクィレル先生にぶつかられてこけてらぁ。ざまあみろ!」

 

 「よかった……さ、早く逃げるわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 「今日のクィディッチよかったね!」

 

 「オマエ試合そっちのけでド・サド見てただろうが……」

 

 「いやー、いつもの凛々しい表情もいいけどあんな物憂げな表情もお美しいよね!」

 

 「いやいつもと変わりなかったと思うぞ?」

 

 「もー、ちゃんと見てよね! 王子様の口角が3.2ミリも下がってたじゃない!!」

 

 「あいにくとオレは試合をちゃんと見てたんでなぁ。知るか、んなモン」

 

 「話は変わるけど、ハリー・ポッターが箒から落ちそうになっていたわね。持ち直したけど」

 

 「へー、そうだったんだー」

 

 「ああ、1年生で出るのは緊張したからか知らんが、見事に箒に振り回されてたな」

 

 「まあ最終的にはスニッチを取れたからね。あれはすごかったわ」

 

 「ああ、箒に振り回されてたヤツとは思えないほどの見事な飛行だったな。ただあの口に入ってたスニッチ、ちゃんと消毒されたよなぁ。それが心配だ」

 

 「消毒はともかく清められたとは思うわ」

 

 「あ! そーいえば、クィレル先生の服が燃えたらしいね。ターバンも燃えた!? 私、あの中身はスキンヘッドだと思ってるんだけど」

 

 「そうか? オレは数本残ってると思うぜ」

 

 「クィレル先生はローブが燃えただけで済んだわ。ただその時驚いて、近くにいたスネイプ先生にぶつかって一緒にこけたから……これから更に恨まれそうね」

 

 「スネイプ先生、闇の魔術に対する防衛術の教師にものめっそなりたがってたからな。

 でも実はあの炎はスネイプ先生が出していて、クィレル先生がスネイプ先生にぶつかったのはそれに気がついたから仕返しにとかいう噂もあったっけか。真偽はわからんけどな」

 

 「流石にスネイプ先生もクィレル先生もそこまで子供じゃないと思うわよ……ただ、正直な話スネイプ先生がクィレル先生を脅してる姿は想像しやすいわね」

 

 「スネイプ先生は悪い人じゃないよ! だって王子様の慕ってる先生だもん」

 

 「ド・サドが慕ってるのか。へー、それは知らなかった」

 

 「だって放課後、時々王子様はスネイプ先生に魔法を教わったり一緒に実験したりしてるんだよ〜。しかも2人きりで。いいなー、スネイプ先生。羨ましい〜」

 

 「そんなことまで知ってるオマエが心底怖いよ……」

 

 「みんな知ってると思うけどな〜」

 

 「王子様の騎士団(L'ORDRE DU PRINCE)の連中だけでしょうに」

 

 「あー、そういえばね。また団員が増えたんだよ!」

 

 「ちなみに何人になったんだ?」

 

 「知りたければ入団するといいよ! 今ならサイン入りブロマイドがついてくる!!」

 

 「気のせいかもしんないが前より特典、グレードアップしてね?」

 

 「よく気づいたね。ふっふっふ、私たち(L'ORDRE DU PRINCE)はなんと王子様にサインをもらうという偉業を達成したんだよ!」

 

 「いやスゴイのはそれでサインくれるド・サドだよ……」

 

 「器が広いのね。私だったらサインなんて普通に断るわよ、普通に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公がクィディッチに興味が無いことによりクィディッチ描写がたいへん少なかったですね……それに伴いいつもより短くなっています。

次はクリスマス休暇でしょうか。
クリスマスにプレゼントを送り合う習慣のない日本人からしたらイギリスのクリスマスは羨ましいですね。
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