十五夜に影は蠢く 作:スフィンクス
【注意】
一話目ということで文章がヒッチャカメッチャカになっています。
早めに物語に入りたいということで無理矢理感が出ていますのでそういうのが嫌いな方はブラウザバック推奨です。
「おいっ! あっちで馬鹿強ぇのが暴れてるって話だぞ!」
「はぁ? なに言ってんだよ。ここは竜兵さんの縄張りだぞ」
「そうだろ、こんなとこで暴れたら雑巾にされて終わりだろ」
——親不孝通り
通称でもなければ、愛称でもない。
そこは元々の地名を‘‘親不孝通り’’と名付けられた。
当時、何故マイナスのイメージを持つ通り名にされたのかは分からないが、現在のそこは名前通り親に不孝を働いてしまう場所であり、不良やヤンキーと言った社会の掃き溜めが集う場所だった。
親に不孝と言うとイメージが湧きにくいが、簡単に説明すると自分が‘‘容疑者’’になるか‘‘犠牲者’’になるかの二つである。
「でも何十人もヤられたらしいぜ?」
「信じられねぇが見に行くしかねえな」
「はっ、嘘だったら晩飯奢りな」
コンクリートで舗装された道を三人はゲラゲラと笑いながら歩いて行く。
彼ら三人もこの親不孝通りに入ってから数年経つ、少し顔が効くと言ったところだ。親不孝通りで頻繁に行われる縄張り争いにもよっぽどの事がない限り参加し、場数も踏んできた。
しかし、この瞬間。
——自分が犠牲者になることも知らずに
彼らは歩いて行く。
○ ○
『——ニュースをお伝えします。昨夜未明、神奈川県にある親不孝通りで不良同士による大規模抗争が行われ四十人以上の重軽傷者が出ました。通報をしたのは通りの近くに住む住人で、いつもより大きな声、騒音がすると警察に通報すると駆け付けた警察官十数人が既に重軽傷を追っていた男たちを発見。直ぐに救急に連絡したとのことです』
「自業自得だ……」
ニュースを呟きながらそう言った男は朝食であるご飯と味噌汁を適当に流し込んだ。
ご飯は自炊し、味噌汁はレトルトと言った些か無愛想なものである。ご飯を自炊するならば味噌汁も作れよと思うが、ここには彼を指摘するのは誰も居ない。
『この手の問題について詳しい——さん。ご意見をお聞かせ下さい』
テレビの中の名も知らないコメンテーターが専門家と呼ばれた男に話を振る。
それと同時に食べ終わった味噌汁のカップをゴミ箱に投げ入れ、箸を置いた。
『そうですねぇ、この親不孝通りと言うのは非常にアウトローな奴らがかなり集まってるのでこのような騒動は表には出てないでしょうけど頻繁にあるんじゃないですかね。何年か前はあそこも小さな商店街だったんですが、時代の並に押されて——』
そこまで聞いてテレビの電源を切る。
専門家と呼ばれた男に少し苛立ちを覚えたからだ。
専門家と自称するならば不良やヤンキーと言った奴らの行動を研究するのではなく、そいつらを潰せる方法を考えれば良いものを。人の世は堕ちる奴は堕ちる、じゃあそいつらをどうするかが問題だろう。
ご飯がまだ何粒か付いている食器を水に漬ける。
洗い物は寝る前にやれば良いだろう、どうせ二食しか家では食わない。
着ていた白い制服に汚れがないか確認すると首元のボタンを止める。
机の上に置いていた鍵を取ると玄関へと向かった。
「……はぁ。行ってきます」
靴を履き、誰も居ない家内にそう言うと外に出た。
登校中、目の前で歩いている何人かが楽しそうに笑っている。
それが心からなのか、一緒に居るために上辺だけ笑っているのかは分からないが。
「見て、今日のトラブルんかなり際どいよ」
「うわっ、相変わらずエロいなぁ」
どうでも良い光景に退屈した俺は気晴らしに塀の先を見ると、黒猫が一匹で器用に寝ていた。
強めの風が吹けば落ちるんじゃないかと思うバランス力だ。
すれ違い越しにシュッと一撫でしてやると気持ち良さそうに耳を揺らした。目を瞑っているのでまだ夢の中のようだ。猫にしては注意力散漫なのかもしれない。
「それにしても主人公よく誘惑に耐えるよね」
「ほんとそうだよな、確か同棲始めて一年経ってるだろ?」
「それくらいだろうね」
しまった、思えば昨日夜に買った昼飯を忘れてきてしまった。
注意力散漫なのは俺の方だったようだ。
今から取りに帰っても良いが時間が勿体無いので今日は食堂で食べるとしよう。
「マジすごいわ、俺様だったら同棲の時点で多少嫌われても無理矢理組み付してるかもしれねぇ」
「——ッ」
耳に入った言葉を聞いて頭がチカチカとする。
手にも力が入り、歯がギシギシと鳴っている。
「——うぉっ!? 何だ今の!」
「どうかしたの?」
「いや、なんか……モモ先輩が怒った時みたいな感覚が……」
「そう? 僕は感じないから勘違いじゃない? それにモモ先輩なら前で大和弄ってご機嫌良さそうだし」
「だよなぁ……何だったんだよ……」
眼を伏せながら歩く。
酷い眼になっているだろう。
何度か深呼吸して心を落ち着かせる。
「……く……はぁ……」
頭がクリアになっていく。
思考が真っ白、と言った状態だ。
過去がフィードバックされて、頭を抱えそうになるくらい辛かった。
「楽しくなさそうだ、何もかも」
誰にも聞かれないようにそう言った
「なぁ、昨日のテレビどうだった? ——君カッコよかったよね!」
「分かる! 私あの人すごい大好きでね」
「心ー、新しい紙芝居作ったから見てー」
「嫌じゃ、どうせお主が作った紙芝居なんてバッドエンドばかりではないか」
「フハハ! 今日も皆の衆は元気なようだな」
「はいっ! これも英雄様のお陰だと思いますぅ☆」
「弁慶、明日の休み暇なら水族館に行かないか? ペンギンショーが限定でやるみたいなんだ」
「うーんペンギンを見てはしゃぐ主も見たいが休日をだらだら過ごす私も見てみたい……どっちにすれば」
教室の扉を開ければそんな声が聞こえてくる。
まだ八時十分過ぎだと言うのに集合率は中々のものだろう。
「と、弁慶が渋るだろうと思って予め駅前で義経は明日のチケットを二枚買ったんだ」
「え——!」
しかし俺は話す友人も居ないためまっすぐ自分の席を目指す。
一番後ろから三列目の窓際だ、その前が柔道部だったか身体が随分と大きいので睡眠には助かっている。
「じゃーん、見てくれ」
「何もここで出さないでも……」
「家で出したら出したで弁慶は何処からともなく理由を出して行かないだろう? だから敢えて義経は何もない学校で誘ってみた」
「くっ、主が学んでるっ!」
「ふふん、義経もやれば出来る子なんだ……あ」
「あ……」
別段と聞き耳を立てていたわけじゃないがいきなり会話が止まったのを聞いて訝しげに思う。
視界にヒラヒラとしたものが入ったと思うと無意識に脚が動いていた。
「——気を付けろよ」
「え、あ、うん……ありがとう」
「すご」
ヒラヒラとしたものはどうやらチケットだったらしい。
‘‘七浜水族館日帰り券’’と書いていた。それを後ろ足を引くように、尚且つ汚れないように狙って蹴るとヒラヒラと自分を義経と呼んだ少女の手中に収まった。
礼を言われたが特に返さずに自分の席に向かう。
席に着いてから俺が何をするのかと言うと、唯顔を伏せて寝るだけだ。
「——はーいお前ら席に着け、出席取るぞ」
三十分くらい経つとクラス担任が入ってくる。
灰色の長髪に無精髭、如何にもおじさんと言ったところだろうか。
このクラスの出席の取り方は返事をする必要もなく、先生が空いてる席がないか確認する簡単なものだ。
「ほい、今日も皆んな出勤ご苦労さん。暑いのによく来るわ、ほんと……おじさんなんか最近朝起きにくくなってきてねえ……元気ないというか……萎え気味というかッ!?」
「——コラっ、可愛い生徒の前でそんなこと言っちゃダメですよぉ〜☆」
「よ、容赦ねぇ」
「よいあずみ。宇佐美教師も疲労した身体を顧みず労働にいそんしでいるのだ。愚痴のはけ口ぐらい、我らがなってやろうぞ!」
「さすがです英雄様ぁ!」
「愚痴のはけ口になってくれるのは嬉しいんだけど今日は臨時の集会があるから今から並ぶぞ〜」
面倒くさい、臨時臨時と言いながら生徒にとって臨時じゃない集会には何の意味があるのかと考えたのは数知れない。
それでも行かなければならないのだから迷惑この上ない。
「何でしょうね、この前も臨時集会で義経たちがやって来ましたけど……」
「さすがに二連続で転校生はないだろ」
どうやらクラスは臨時集会に対する文句ではなく内容に興味があるらしい。
まあ、前回の集会で源義経や、武蔵坊弁慶と言った英雄のクローンが来たのだ。今回も少し期待するのは仕方ないのだろう。
教室から出て階段を降りる、そしてグラウンドに入ると既に他クラスは集まっており少しざわめいている。
「全員居るなー? 学園長が出てきたら静かにするように」
一言だけ告げると他の先生も並んでいるところに歩いて行った。
数秒もすると先ほどまでざわついていた雰囲気が一変し、全員が前を見る。どうやら学園長が集会台に上がってきたらしい。
既に立ち退きをしてしまった頭部に、腕並みの髭、暑そうな和装は初老を過ぎ去った学園長を更に深める効果を齎している。
年齢とは意に沿わない立ち振る舞いで集会台を上がると口を開いた。
「皆の者、おはよう」
嗄れた声音だが確かに全員に届き、挨拶を返す。
「今月は二回目の臨時集会ということで儂の長々しい話は抜きにして、いきなり本題に入りたいと思う」
学園長がそう言うと幾つからか安堵の声が上がる。
他校の学園長と話の長さは比べたことはないが、やはり若者にとって老人の話しは退屈なものが多い。
「六月ももうすっかり終わりを迎えようとして、梅雨も過ぎ去っていきよる。今月は源義経ら九鬼紋白を含む六人が転校して来てこの学園も更に賑やかになった」
まあその熱も徐々に冷めつつあるが。
「そして更に、今日より新しい仲間が増える」
学園長の言葉に始めより生徒が声を上げる。
「どんな奴だ」「可愛い娘が良い!」「イケメン希望!」と言ったのもちらほら耳に入る。
「落ち着けい。今より紹介する。五人とも前に出ませい」
出てきたのは旗袍を纏った少女が五人。
左から……
「随分物騒だな」
思わず声が漏れる。
改めて左から幼女、赤髪、杖、青龍刀、槍と言ったところだろうか。
「五人とも中国にある梁山泊から留学生として今日より川神学園の生徒となる。中々の強者じゃ、本人たちの了承を経て決闘を挑んでみるのも良いじゃろう。五人とも、自己紹介を」
「天間星の公孫勝。天才だからよろしくー」
「——くぉっ!? 俺には紋様という方がぁ!」
「天傷星武松、よろしく」
「天微星の史進だ、よろしくなっ!」
「天暗星の楊志、よろしくお願いします」
「最後に天雄星の林冲だ。この四人共に今日からお世話になる。よろしく」
まあ、転校生が来たとしても俺には関係ない。
自分から関わるつもりもなく、無いとは思うが相手から関わって来ても深いりするつもりはない。
事実、源義経らが転校してきて周りが騒いでいても俺はどうということはなかった。
所詮、他人同士が集まっただけなのだから。
◯ ◯
なんてことを考えていた朝。
「俺なんかフラグ立てたかなぁ……」
「……? なんの話だ?」
逢う魔が時、夕刻である。
丸々と大きな夕日は川神の街を照らしている。
その日差しの下、二人の男女が立っていた。
「——虜俊義の捕獲を命じられたが、思いの外血濡れた奴が紛れ込んでるじゃないか」
「誰だよお前、そんな危ないもん引っさげて……鬼かなんかのコスプレか?」
「くっくっく、私相手にそんな口を聞けるほどの実力があるようだな……良いぞ、川神に入って少し退屈してたとこだ! 相手になってやろう!」
「いや、誰も相手になれなんか言ってねぇよ」
物語は淡々と進み始める。
一人の青年の時間は停止したまま……
最近マジ恋のssが増えてきたが、どっからのラノベの主を引っ張ってくるとかいうよくわからないもんが増えたような気がするので書いてみます。