「そういえば光秀」
食べ終えて皿を片付けようとした俺を手で制しながら真琴が声をかけてきた。
「後であれを着てもらうからな」
そう言って指差した先には、あの魚マークのついた大きな紙袋が置かれてる。
「あれって着ぐるみだよな。冬用だろ」
「そうでもない」
「ならメッシュ地かなんかってことか? つーか前のやつはかなり高かったよな。またあんな感じの値段なのか」
「今回は12万」
「はっ!?」
真琴の言葉に俺は耳を疑った。つーかここは真琴の頭を疑うべきか。
俺が戸惑ってるうちに真琴は食器を片付けてくれた。ここまで至れり尽くせりだとなんか落ち着かねぇんだが、結局のところあの袋の中身を着ろって事だよな。
いやでもあれは普通の着ぐるみだよな?
ちらっとしか見てないからわかんねーけど、よくある寝間着で使われるやつみたいな感じだったし
やがて食器を洗い終えた真琴が戻ってきて、紙袋を俺のそばに置いた。
「これはセットだから、中の衣装も着ないと駄目だからな」
「着ぐるみ以外にあるってことか?」
「むしろそっちが本命」
いやいや真琴君、オッサンその説明じゃ意味わかんねーわ
けど楽しそうな真琴を見てると拒否できないところがあった
今回はいろいろ迷惑かけちまったからな
ガシガシと頭をかいた俺は意を決して立ち上がった。
「また着方とかあるんだろ? それ」
また簡単に着られるもんじゃないんだろうと問いかけた俺を真琴が大きな目で見つめてくる。
こいつ普通に見れば可愛いんだよな
寝室に移動した俺は真琴が紙袋の中身を取り出して並べるのを唖然と眺めた。
「こっちは普通の着ぐるみだよな。その複雑そうなのは何なんだ?」
「見ればわかるだろ。これも牛の衣装だ」
「いや、オッサンにはわかんねーわ」
形だけなら前回のウサギもどきの服とおんなじなんだわ。背中も開いてるし
けど胸部から腹部にかけて六個くらい乳がついてんのは牛だからか?
「ちょっとプラモデルみたいだよな」
「あーパーツを組み立ててな……って、そんなわけあるか」
「とにかく着てみないと始まらないな」
渾身のツッコミを完全に流した真琴は俺のシャツを脱がし始めた。
今回の服は二着セットで12万らしい。前回は一着5万だったから、それと比べても割高になった。
その理由っつーか、違いは尻尾の部分を見たときに気付いた。
前は服にくっついてるだけだった尻尾が着脱式になってんだわ
着脱式っつーか………何て言うんだ?
「この尻尾は俺が入れようか」
「入れるって言うなよ」
尻尾の根本が大人のオモチャみたいになってて、中に入れて固定する感じなんだが……それを真琴が持ってる時点で嫌だな
真琴君の楽しそうな顔もすげーおいてかれてる感じがするわ
「もしかして光秀……怖いのか?」
「怖くねぇよ。なに言ってんだよ。ドン引きしてるだけだろ」
「それなら良いんだ」
反射的に言い返した俺に真琴が笑顔を見せた。
いや、何も良くないからな?
なんでいきなりオモチャ突っ込まれる流れになってんだよ
「光秀は気づいてるか? ここの部分、穴が開いてるんだ」
服を着て手首のふわふわを着けてた俺の尻に真琴が手を伸ばした。けどいきなり敏感なとこを触られた俺は反射的に手から逃げちまう。
しかもその拍子にベッドに倒れちまったからもうダメだ。
笑顔の真琴が俺の上に覆い被さってきて、尻尾を見せつける。
「自分で入れてるところを見せてくれるというのも有りかもしれないな」
「有りなわけねぇだろ」
「それなら仕方ない」
語尾とともに真琴の手が俺の足をつかむ。
無理やりうつ伏せにさせられた俺は、この服の変態過ぎる構造におののくしかなかった。
誰だよこんな服を作ろうなんて考えたヤツは!