東方古神録   作:しおさば

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書いてるものが一気に消えた!!



90話/幻想大異変-紅魔館③

side 咲夜

 

その惨状を、どう表現すれば良いのか。私には筆舌にし難い、目の前の現実を未だに受け入れられなかった。

私は勿論。お嬢様やパチュリー様ですら、恐怖によって動けずにいる。純粋なまでの力の差を見せつけられた時、生き物は全てを諦めるのかもしれない。

 

血の海に沈む、動かなくなった美鈴を見ながら、私たちはなす術なく立ち尽くしていた。

もはや、能力が使えるとかそういった次元の話じゃない。

生まれたての赤子が、大の大人に敵うわけがないのと同じく。正しく最強の妖怪に、ましてや人間である私が太刀打ちできるわけもなく。

「さて、次は誰かしら?」

そう言いながら、俯せの美鈴の頭を踏む。そこには勝者と敗者しかない。

 

-殺される。

 

そんな言葉が頭をよぎった時、背後から声が聞こえた。

それは言葉と言うには暴力的で、雄叫びと呼ぶには感情的なもの。

「がぁあああっ!!」

 

妹様の暴走。

咄嗟に理解出来たのは、その事実。

眼を赤く光らせ、鋭く牙を剥き、全身から妖力を滾らせる妹様。

私の知る、『吸血鬼』という種族から掛け離れた、獣じみた様相を見せる。

「よぐも!美鈴をっ!!」

力がこもり過ぎて、かろうじて聞こえたのはその部分だけ。

次の瞬間には、妹様の姿は私の視界から消えていた。

「っ!?止めなさいフラン!!」

お嬢様の言葉にすら、妹様は見向きもしない。

振るわれた爪は鬼の腕の皮を裂いた。

流れる血に、初めて驚きの表情を見せる。しかしそれも束の間。直ぐにそれは笑みと変わり、身震いするほどの殺意と変わる。

「良いわ。次はあなたね」

腕が消えたのかと見間違えるほどの速さで殴る。妹様は避けることなく、額で受けた。遅れて走る突風。

「殺スっ!!」

そこからは、二人の間に言葉はなかった。

 

妹様は顕現させたレーヴァテインで斬りかかり、鬼は回し蹴りで軌道をずらす。体制を崩すことなく、妹様はそのまま回転し、横に再び薙ぎ払った。

今度はそれを避け、再び間合いを詰め拳による連撃。

辛うじて見ることのできたのはそれ位。

気が付けば、当然と言わんばかりに妹様は血を流し、鬼は余裕を持って立っていた。

 

「吸血鬼ってのはこんなものなの?」

その表情は、もはや興味をなくしている。

自分以外の血によって染まった着物は、赤黒く。恐怖を感じる。

「しょうがないか。そろそろ遊ぶのも飽きてきたし、さっさとアイツの所に行かないと」

そう言った鬼は、右拳を握る。込められていく妖力は、今までのそれとは桁違いの濃さを放つ。

「三歩必殺」

周囲の空間すらも歪めそうなほどの力が、私たちに迫る。

もはや、逃げることすらもできない。

もっと早くに、お嬢様と妹様だけでも逃がしておけばよかった。そんな後悔をした。

 

振るわれる拳。

死を覚悟した。

目の前に迫る力の嵐。

 

ふと、誰かが目の前にたった気がした。

 

それは黒い姿。

闇よりも深い黒に染められた、金色の髪の女性の姿。

 

 

 

「面倒臭いけど、アイツの命令だから。助けてあげるわ」

 

 

 

side ルーミア

 

まったく、面倒臭いにも程がある。

幾ら私でも、鬼とやり合うなんて、神と戦う事の次に御免だもの。

それでも、一応は主人だから命令には従うけれど。いつか絶対にこの札を外させてやるんだから。

 

必殺技っぽいのを剣で受け止めると、鬼は明らかに動揺していた。

「アナタ、何者?」

鬼が問う。

「分かりきった答えを聞くなんて、無駄じゃない?」

私の力の半分以上は、霞からの神力を妖力に変換したものだ。大本が同じなのだから、気付かないはずが無い。

「……そう。アイツは来ないのね」

「あら、ふられて寂しいの?」

軽口を叩きながらも、飛び交う殺気と妖力。

長らく感じていなかった、命のやり取り。

 

さぁ、始めましょう。

常闇と鬼の、力のぶつかり合いを。

 

「遊んであげる。かかって来なさい」

 




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