0話/拒否権はないらしい・・・
小さな頃から、人生の目標は『無難に生きる』と決めていた。
それは両親の影響が大きいが、それはそれ。今は特別語るようなことでもない。
そんな俺、神条霞は仕事を終え、駅から家までを、疲れきった足を引き摺りながら歩いていた。
「あ〜、免許取るかな〜」
そんな事を考えながら、途中で寄ったコンビニでコーヒーを買い、飲みながら空を見上げる。
ここ数年、意識して見ることもなかったが、今夜は月が綺麗だ。
そんな風にボーっとしながら歩いていると、どうやら家を大分過ぎてしまったらしい。大分疲れているのだろうか。
いかんいかんと頭を小さく振って意識を戻す。
この辺りは、昔ながらの家が多い、すこし寂れた地域。子供たちが良く肝試しに来るような廃屋があるくらいだ。
ほら、そんな話をしたからか、その建物が見えてきた。
「昔は立派な建物だったろうに」
大きな門の前で足を止める。
聞いた話だと、いつからココに建っているのかも分からないほど古く、今では所有者もどこにいるのかわからない。洋風の、所謂、館と言うやつだ。
しかし、皆から気味悪がられるこの館も、俺からすると何処か懐かしい気持ちになる。
何故だろう。
そんな事を考えていると、遠くで車の音がした。
『こんな時間に、この通りを車?』
と思いながらも、端に寄る。
車のライトが近づいてきた。
「………………え?!」
気がつくと、知らない天井。
あれ?俺は?え?
身体を起こして辺りを見回す。
上も下も、右も左も真っ白な空間。
真っ白だから、どこまで広いのかもわからない。
「え〜と……ここは何処だ」
え、なに?俺は誘拐されたのか?アレだぞ?俺の両親はそんな事をしても身代金なんか1円たりとも出さないぞ?
「そんな事は百も承知だ」
突然背後から声がした。驚きつつも振り返ると、白い着物の青年(俺より少し年上か?)が立っていた。
「気分はどうかな?神条霞よ」
「……良いか悪いかで言えば、悪いな」
そう言いながらこの男を観察する。顔立ちは……ムカツクがイケメンってヤツだろう。俗に言う10人中12人が振り返る程の。
「カッカッカッ。だろうな」
笑いながらその場に腰を下ろした。
「で?あんたは誰で、此処は何処だ」
俺も男と少し間を置きながらも腰を下ろす。
「まぁそうなるだろうな。まず、儂が誰かと言うならば、お主らの言う『神』と言うやつじゃ」
「は?神?」
コイツ、頭おかしいのか。普通自分で神と名乗る事はないだろ。
「……いや、そんな目で見るでない」
「どっかの新興宗教の勧誘なら間に合ってます」
「違うわっ!」
そう言うと(自称)神様は床に指で丸く円を描いた。
「信じる信じないはお主次第じゃ。だが、ここからは儂が神として話を進めるからの」
「は、はぁ」
見ると描いていた円の中が蒼く光っている。
「此処が何処かという質問ならば、あの世とこの世の狭間、とでも言うべきかの」
「は?あの世?!なら俺は死んだのか?!」
「まぁ落ち着きなさい」
(自称)神様は両手で抑えるように宥める。
俺は馬か。
「お主は確かにこの世では死んだ。だが本来ならばまだあの世に行くべき時では無いのだ」
「は?」
「これを見よ」
先程の蒼い円の中に俺の情報が浮かび上がる。なんだこれ、3Dマッピングとか言うやつか?
「お主は本来、103歳まで生きて老衰で死ぬ予定だった。しかしこちらの手違いでの、この日に死なせてしまったのだ」
「うわぁ、長生き〜。って、ちょっと待て、手違いってなんだ!」
「いや、ちょっとコーラを零しちゃって」
俺は人生でこれ程までに腹の立つ『テヘペロ』を見たことがない。
「なのでお主には今一度人生を送ってもらおうと思っての」
「なら俺は生き返れるのか?」
「いや、そうではない。お主の生きていた『この世』にはお主の人生は残されておらん。別の世界に転生してもらうことになる」
転生って、なんかめんどくさいことになって来たな。
「あ、ちなみに拒否権はないからの」
「ないのかよ!!」
ってなわけで初投稿でした。
誤字脱字はお許しください!!
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