どうも、脇腹が痛い霞です。
昨日の事は……うん。忘れよう。
残りの2人?爆睡中だよ。
俺は縁側に腰を下ろし、お茶を飲む。
あ、久しぶりにコーヒーが飲みたくなってきたな。
今度創るか。
そんな事を考えていると、2人がのっそりと起きてきた。
「おはよう霞」
「おう、おはよう」
「あ〜う〜。頭痛いよ〜」
そりゃあんだけ飲めばそうなるだろ。
ルーミアは……あ、まだほぼ寝てるわ。
俺は諏訪子の分もお茶を淹れてやると手渡した。
俺とルーミアは今、市街地とでも言える賑わった道を歩いている。散歩がてら見て回るつもりだからだ。
「おや、お兄さんここらじゃ見ない顔だね」
八百屋であろう店の恰幅のいい女将が、話しかけてくる。
「あぁ、俺達は旅をしてるんだ。途中でこの国に立ち寄ってな、少し滞在させて貰ってる」
「そうかいそうかい。神社にはもう行ったかい?この国は諏訪子様のおかげで成り立っているようなもんだからね。一度行ってみるといいよ」
まぁ、俺らはそこから来たんだけどな。
「ほんと、祟り神が治める国とは思えないわね」
「そうだな」
道を歩く度に話しかけられ、その度に諏訪子の素晴らしさを説かれる。もう聞き飽きたわ。
「だからとでも言うべきか、諏訪子の力自体は相当強いぞ?」
神の力は信仰の量で決まる。信仰されればされるだけ、神は力を蓄える。
あれ?なら俺は?
「貴方は規格外でしょう」
そんな一言で済ませないでくれ。
神社に滞在して、一週間程過ぎた頃、ようやく大和から使者が訪れた。
対応したのは諏訪子だけなので、どんなやりとりをしたのかわからないが、使者が帰った後の諏訪子は、目に見えて恐怖していた。
「か、霞。どうしょぅ……」
俺の姿を見るなり、諏訪子は裾をつかんですがりついてきた。
「なんだ?どうした?」
「や、大和からの使者が来たんだけど」
「みたいだな」
その小さな手に握り締められたのは、どうやら大和からの手紙のようだ。
「読んでもいいか?」
俺は諏訪子から受け取ると開いてみた。
……まぁ、簡単に言えば国を明け渡せ。明け渡さなければ、大和の神軍が洩矢を襲う。との事だ。
いや、余りにも頭のおかしい内容だな。向こうは八百万の神。こちらは一柱の神とごく普通の人間達。勝負になるわけが無い。せめて、ちゃんとした勝負の元、やり取りをするのならまだしも。これはただの脅迫だ。
「どうしよう。民が……民を犠牲にはできないよ……」
「ふむ」
まったく。アイツらは何をやってるんだか。
……これは少し説教をせねばならんな。
「諏訪子、少し時間をくれるか?」
「え?」
「大和にちょっと話をしてくる」
「はい?!」
おぅ。そんなに驚くことか?
「いやいや。何処に行こうとしてるかわかってるのかい?相手の総本山だよ?下手すりゃ生きて帰ってこれないよ?!」
「んー。かも知れんが、そうならんかも知れんだろ?」
諏訪子の頭をポンポンと撫でてやりながら、落ち着かせるよう努めた。
「それに、この国には使者として向こうに行ける奴なんかいないだろ?俺が少しやり方を変えてもらうようにしてくるから」
「霞……」
俺はそう言うとルーミアへと向けて。
「少し出てくるが、なにかあったらこの国を守ってやれ。……人間は食うなよ?」
「わかってるわよ。貴方もちゃんと帰ってきなさいよね」
「お?なに?俺の心配してくれんのか?」
やっとルーミアもデレてくれたのか?
「バカ言わないで。貴方が死んだら、誰がラーメンを作るのよ」
おい。せめて嘘でも心配しろよ。
「?ラーメン?」
「おう。うまい食い物の事だ、今回の事が片付いたら諏訪子にも食わしてやるよ」
「……わかった。約束だよ?」
ちっちゃい子との約束は死んでも守らんと。まぁ、死なないんだが。
「じゃぁ少し行ってくるわ」
そう言って俺は神社を後にした。
はい、というわけで。今、私は大和に来ております!
まぁ、ワームホールを通れば一瞬だからね。楽だね。
んで、やっぱりコチラにも門番がいるのか。
「あのー、すいませーん」
「ん?貴様、何者だ」
いつも思うんだが、門番ってのは厳ついオッサンしかいないのだろうか。
「わたくし、洩矢の使者として参ったものなのですが」
「む。洩矢の?」
すると門番は俺の身形を確認するように睨みつける。
「わかった。今、伝えてくる、ここでしばし待て」
暫くして中へ通されると、宮殿のような屋敷があった。
アイツら、結構いい所に住んでるんだな。
「この部屋にいらっしゃるのが三貴神様と軍神さまだ。くれぐれも失礼の無いように」
するとゆっくりと戸が開かれる。
かなり広い座敷の中に、四人(?)の姿があった。
二人は知ってるが、あとは誰だ?
俺は一応使者なので、深々と頭を下げる。どうやら二人は気がついていないようだ。
「お前が洩矢の使者か?」
「はい、そうです」
「して、何用で参った?」
一番端にいた女性が話し始めた。
「此度の手紙での内容、今一度検討し直して頂きたく、参った次第です」
「なに?」
お?怒った?
「何を呆けた事を吐かすか。これは戦争ぞ。そちらに手心を加えるつもりは毛頭ないわ」
「……ふーん」
あら。取り尽くしまもなし?
ならしょうがないよね。
「……貴様、誰を前にしてその様な態度を取っているか、わかっているのか?!」
「テメェこそ、俺を誰だと思っていやがる」
俺はゆっくりと顔を上げた。俺の顔を見た瞬間、顔を知っている二人は、一気に凍りついた。
「久しぶりだな、天照、月夜見」
「き、貴様!誰の名を呼んでいるのかわかっているのか!!」
天照の隣にいた男が腰の剣に手を掛ける。
「黙れ、貴様に喋りかけた覚えはない」
瞬間、俺は久しぶりに神力を使う。使うと言ってもただ身に纏うように漏れ出させるだけだが。それでも四人には圧倒的な力の差がわかったようだ。
「お、お久しぶりでございます。父上様」
絞り出したかの様に天照が頭を下げる。
「あ、姉上?!」
「天照様?!」
端にいた女と、男は驚いている。そりゃそうだ。大和神話の最高神が頭を下げているのだから。
「控えなさい、素戔嗚、神奈子。この方は我々の父なる方、創造神様ですよ」
気付けば月夜見も頭を下げている。
「そ、創造神?!」
「おい、せめて様ぐらいつけろや」
俺は男に対して、神力を強めた。純粋な力量の差を感じてなのか、呼吸もままならないようだ。
「も、申し訳ございません」
神奈子と呼ばれた女は深々と謝罪した。
素戔嗚もなんとか頭を下げる。
それを見届け、漏れ出させていた神力を引っ込める。意外と便利だな。自分で言うのもなんだが。
「天照、まずはそこの二人は何者だ?」
「はい、右に居りますのが、我が弟素戔嗚尊にございます」
へー。コイツが素戔嗚尊ね。ならもうひとりは?
「私は八坂神奈子と申します」
ってことは、コッチが軍神って奴か。
「ふむ。俺は神条霞。天照が言っていたが、創造神だ」
八坂神奈子と素戔嗚尊は小さく震え、冷や汗をかいている。
そんなに怖い?
「それで、父上様。何故洩矢の使者などされているのですか」
天照が顔を上げる。まぁ、この中だったらまだ天照は平気な方か。
「なに、お前達から受け取った手紙の内容が余りにも酷いものだったので、ちょっと話をしに来ただけだ」
「では、お父上は洩矢の味方をすると?!」
いや、そうなったら今度は俺一人で事が済んじゃうだろ。
「そうではない。ってか、この手紙は誰が書いたものなんだ?」
そう言って手紙を四人の前に投げ出す。
「これは下級の神に書かせ、洩矢に持っていかせたものです」
なんともまぁ、無責任にも程があるだろ。読んでみろ、と言い天照は恐る恐る開いてみた。すると見る見るうちに表情が青ざめていく。
読み終えると、天照は再び深く頭を下げた。
「知らぬ事とは言え、我らが目の行き届かぬばかりに、父上様には大変失礼な事をいたしました。申し訳ございません」
「いや、わかればいい」
他の神も手紙を読んで、それぞれ反応をしている。
「そんで、ものは相談なんだが」
俺は意識して砕けた話し方をした。どうも堅苦しいのが続くのは嫌いだ。
「お前らの中で……そうだな。八坂神奈子と言ったな、お前と洩矢の神との一騎打ちで勝負を決めようじゃないか。他の神は一切手出し無用。それを守るのであれば、俺も今回は手出ししない。ってのはどうだ?」
「わ、私がですか?!」
神奈子は驚いたようだ。
「うん。この中だとお前がちょうど諏訪子……洩矢の神と釣り合いが取れていると思うんだよ」
「それを守れば、お父上は手を出されないと?」
「本来ならガキ共の喧嘩に、一々俺が首を突っ込むってのも、場違いだろ?」
天照も月夜見も、俺からすればまだまだガキだからな。
「わかりました。しかし、勝負の行く末を見守るために我々は赴かせていただきます」
「おぅ、来い来い。終わったら宴会やるから」
「……お父上は相変わらずですね」
月夜見はジト目で俺を見ている。なんだ?最近俺の扱いが酷くないか?
「では勝負は三日後、場所は洩矢と大和の中間。良いな?」
「はい、畏まりました」
こうして、諏訪子VS神奈子の勝負が決められた。早く帰ってこの事を伝えなきゃな。
「んじゃ、俺は帰るぞ」
「え?もうですか?!」
驚いたのは天照だ。何を驚いている。
「……だって、月夜見はしばらくの間父上様のお側に居たのでしょう?」
……あぁ、確かに都市にいた時はしょっちゅう会っていたな。というか、俺が月夜見の所に遊びに行っていたんだが。
「狡いです」
「……は?」
「月夜見だけ狡いです!私だって父上様ともっとお話したいです!!」
お前はファザコンか。そんで一応大和の最高神なんだから、他の奴がいる前で俺に甘えるんじゃない。
「あ、姉上?」
ほらみろ、素戔嗚なんて若干……いや、かなり引いてるじゃないか。
というか、裾を掴むな。
「わかったから!全部終わったら構ってやるから!!今は離せ!」
「絶対ですよ?!約束ですからね?!神は約束を破ったらダメなんですよ!?」
えぇい、執拗い。
何処で教育を間違えたんだろうか。……あ、教育なんてほとんどしてねぇや。
はい。神奈子様登場です。
ってか天照のキャラが濃くなりすぎて、神奈子の影が薄い気が………………。
気のせいか。