東方古神録   作:しおさば

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酒が飲みてぇ!


19話/どうやら雨が降るらしい

目を覚ますと、僕は見知らぬ天井を見上げていた。

今まで見たことも触ったことも無いくらい、柔らかな感触の布団(?)に横たわっていたようだ。

というか、ここは何処だろう。

「ここは俺の……まぁ家だ。んで俺は神条霞」

見知らぬ男性が顔を覗かせる。この家の主だそうだ。あ、名乗られたのだから名乗り返さなきゃ。

「僕は……水斑律」

男性……神条さんは僕の返事に満足したのか頷いて、水を差し出してくれた。とても綺麗な透明の器に注がれた水は、冬場の井戸水のように冷たかった。

そらから幾つか質問をされた。

それで漸く気づく。なんで僕はココにいるんだろう。神条さんの話だと行き倒れの様に倒れていたらしいけど。

それに……僕はなにものなんだろう。

 

 

 

 

 

「んで、コッチにそのおかしな村があると?」

俺達はルーミアの見つけた村へと向かっている。

「えぇ」

ルーミアはく短く、どこかイラついた様に答えた。

「無性に腹が立つのよ。そこに行けるのに、行けない。出来るのにそれをさせようとしない自分がいることに」

まるで目に見えない鎖で拘束されているかのような。

しかも結界を感じず、神力霊力もなかったという。

「なんとも不思議な村、ねぇ」

なんとも陳腐な感想だが、その通りなのだろう。

暫く歩くと、件の村は直ぐに見つかった。小さいが長閑な印象を受けるその村は、凡そ『不思議』というセリフが似合いそうにもない。

俺には何も感じないけど?

振り返るとルーミアはかなり遠い所で立っている。

「どうした?」

「なんか、この先には進みたくないのよ」

これがルーミアの言う『不思議』なのだろうか。

「ふむ。もしかすると妖怪にだけ効く結界か?」

それならばルーミアが近づけないのも頷ける。が、力を感じないのには違和感がある。

「まぁ、行ってみればわかるか」

そう言って、ルーミアに異空間へ入るよう告げる。

 

 

 

「おや、見慣れぬ顔じゃのぉ」

村に入ると1人の老人が声をかけてきた。

「あぁ、俺は旅をしている者で、途中でココを見かけたから寄ってみたんだが」

「そうかそうか。まぁ、何もない村だがゆっくりして行きなさい」

どうやらこの村は雰囲気だけじゃなく、人まで穏やかなようだ。

「して、そちらは……おや、お久しぶりですな」

後ろにいた律に老人は挨拶をする。顔見知りなのか?

「随分昔にいらしてから、月日は経ちましたがな」

「え、えーと……」

「あぁ、どうやらコイツは記憶を失っているようでな」

「なんと!?それはそれは……」

 

 

 

「で?なにか思い出せそうか?」

「……いえ」

キョロキョロと辺りを見回していた律に訪ねたが、状況は芳しくないようだ。

期せずして律と関わりのある村へと来ることが出来たのだが、なにも得られないのだろうか。

「しかし、この村は平和だな。妖怪も襲ってこないのか?」

「えぇ、そうですな。ここ数年妖怪は近づいてすらいませんな」

「……近づいて……いない?」

どういう事だ?ルーミアの言う、不思議な結界のせいなのだろうか。

「なにか結界でも張っているのか?」

「いえいえ、そんな力のある者はこの村にはおりませんよ」

「そう、ソチラの方がいらした時に襲われたのが最後ですな」

 

 

 

 

 

 

「どう思う?」

異空間に閉じこもっているルーミアに訊いてみた。先程の老人……この村の長との会話をルーミアは聞いていただろう。

「まぁ、十中八九過去の妖怪襲撃がキッカケでしょ」

「だよなぁ」

それ以降妖怪に襲われていない、って事から簡単に想像がつく。しかし誰が、どうやって、何をしたのかがわからない。

特に『何をしたのか』わからないことが一番問題だ。

そして……。

縁側で星空を眺めている律。その後ろ姿を見やる。

記憶を失った彼は、今何を考えているのだろうか。

「律もこの件に関係しているのだろうか」

 

 

 

 

星を眺めると、落ち着くような気がした。

何処か懐かしいような、煌めく一つ一つの星が全て僕に向けて光を指しているかのような、錯覚すら覚える。手を伸ばせばその一つに届きそうで。

「『この手に光を』」

そう無意識に呟いてしまった。なんか恥ずかしい。

その瞬間に、伸ばした右手が淡く輝いた。

驚いて手を開くと、その光は蛍のように空中を彷徨い、空へと登っていった。今のは……何だったのだろう。

 

 

 

「……」

今のはなんだ。

律が空へ手を伸ばし、なにか呟くと、右手が輝き出した。

いや、問題は律がなにか呟いた時に溢れ出した『神力』だ。

コイツは人間じゃないのか?

ごく普通の、一般的な量しか感じられない霊力と違い。先程の神力は、そんじょそこらの神より、ヘタをすれば天照よりも多かった。

直ぐに消えてしまった力の波は、まるでそれが幻であったかのように感じられない。

「……ほんと、なんなんだ」

 

 

 

その日、月夜見から聞いた話だと、一つの星が消え去ったという。




さぁ、まだまだ続くぜ!!
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