東方古神録   作:しおさば

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作「復活!!」

紫「……ちっ」

作「紫ちゃん?露骨過ぎますよ?」

霞「紫に何をされたかは聞かないが、良く無事だったな」

作「今度、番外編を書く事になりました」

霞「番外編?」

紫「今はまだ、知らなくても良いんですよ」

霞「なにそれ怖い」


41話/重すぎる愛らしい

相変わらず中国大陸にいる霞です。

 

なかなかに二人とも成長したようで、美鈴は俺が相手をする様になり、紫は独自の結界や封印術を編み出すまでに至った。

 

そんな平和な日常を過ごしていた俺達だったが、最近頻繁によろしくない噂を耳にする。

「妖怪殺しが人間を襲い出している?」

「えぇ、そのようです」

リビングでコーヒーを飲んでいると、紫が立ち寄った村での噂を話し出した。

「以前耳にしていた『妖怪を殺す妖怪』が、今度は人間を襲っているらしいです」

「なんだそれ。普通順番が逆だろ?」

本来なら人間を襲う妖怪。勢いを増した妖怪は、縄張りを広げるために他の妖怪を襲い出す。

「本来ならば。ですが、この妖怪は色々と違うようで」

「色々と違うって?」

「……まずは、いま師匠が仰ったように、順番。次にその目的ですね。その妖怪は食事の為に襲っているわけでは無いみたいです」

「喰うためじゃないのか?」

「んぁ?」

ドーナッツを齧っている美鈴が驚く。ほら、食べカスが落ちてるぞ。

「その証拠に、骸には喰われた形跡がないのです。妖怪にも、人間にも」

「なんだそれ」

また、ゲーム感覚で襲っているヤツの仕業なのか。

「そうか……」

「あと、1つ」

「まだあんの?!」

コーヒーを吹き出しそうになる。コッチとしてはもうお腹いっぱいなんだが。

「最大の特異点は、その妖怪がたった1人だと言うことです」

 

 

 

夜風を浴びながら月を見上げると、あと数日で満ちる月が浮かぶ。紫から妖怪の噂を聞いた日から、辺りの妖力を探知している。

ここ数日は目立った妖力の動きは感じられないが、むしろそれが何か良くない空気を纏っているようで、不気味に思える。

「師匠」

見るとテントから紫が顔を出していた。いや、顔だけって。

「寒いですから」

「そーですか」

「……なにか気になることでも?」

俺は懐からタバコを取り出し咥える。火をつけて煙を吐き出すと、空へ消えていった。

「紫はどう思う」

「どう、とは?」

「この状況さ。まるで……月が満ちるのを待っているような」

「……確かに、妖怪にとって満月というのは特別なものです。ですが、今までアレだけ暴れていたのに、今更満月を待つというのは、不気味ですね」

「だよなぁ……」

今度、月のアイツに言って、満月の光をどうにかしてもらうかな。出来るかわからないけど。

「つまり、次の満月。何かが起こる……のか」

「確証はありませんが、恐らく」

出来うるならば、この予想が外れることを祈るばかりだ。

なにせ、今までで1番面倒臭いことになる気がするから。

 

 

 

紫と美鈴の修行をしつつ、旅を続けた俺達はとある村にたどり着いた。

「静かな所ですねぇ〜」

「いや、美鈴?これは静かとは言わないよ?」

なんせ人っ子1人居ないのだから。

「これもあの妖怪の仕業でしょうか」

「多分な」

襲われた形跡の残る村。破壊され、所々に煙が立ち上っている。

「生き残っている人は?」

「どうやらいないようだ」

無残にも転がる人間の死体の数は、おびただしい量になる。

「まだ近くにいるかもしれないから、油断するなよ?」

「はい」

「了解です!!」

 

 

 

「酷い状態ですね。これだけの事をたった1人で起こすとわ、どんな妖怪なんですかね」

師匠や紫さんと別れて、生きている人間の方がいないか探す。破壊された家屋を覗くけれど、どこもかしこも血の海。惨たらしい死体はもはや原型を留めていません。

「師匠も怖い人ですが、この妖怪も恐ろしいです」

「そんな事言うなよ……」

ふと背後から声が聞こえました、が誰でしょうね。勿論師匠や紫さんではありません。聞き間違えるわけがないので。それに人間でもないようです。先程から気配を探っているにも関わらず、私の背後に立てるような人はいませんから。

「何方ですか?」

私はゆっくりと振り返ると、1人の女性が立っていました。赤色に染められた服は、元の色すらも分からないくらいに血に染められています。

とても友好的な表情ではないのが一目でわかると、咄嗟に飛び退き間を広げようとしますが、相手はなんの反応も示していません。

「いいわね。貴方、なかなか強そうじゃない」

「貴女は……とてつもないですね」

その隙のない立ち姿から相手の実力が、否応なくわかってしまう。自らの妖力を完璧に隠しているのもさることながら、底の見えない井戸のような、深い暗い眼は、合わせるだけで身体が凍ってしまいそうになるほど冷たいです。

「貴女は何発まで耐えられるの?」

その言葉を最後に、彼女は私の視界から消えてしまいました。

 

 

 

探索を続けていると、近くに突然大きな妖力を感知して、壊れかけの家屋から飛び出すと同時に、けたたましい爆音が響き渡る。

「美鈴?!」

私は叫び、煙と共に地面を転がる美鈴の名を叫ぶ。

壁にぶつかり勢いが止まった美鈴は、見るからに傷だらけで、血を垂れ流している。

「ゆ、紫さん!援護をお願いしますっ!!」

「め、美鈴?!」

口元の血を拭いながら叫ぶ美鈴は、目線を土煙から離さない。

少しづつおさまる煙の中に立っていたのは1人の女性。どことなく師匠と同じような服装だが、それが地のものか血で染められたのか分からないほど、赤黒い。

「こ、このぉっ!!」

大量の妖力弾を放つと隙間を同時に展開し、全方位から狙う。いつぞや美鈴を倒した技だ。

相手は避ける素振りも見せず、全てが音をたてて着弾する。

音が聞こえなくなるが、女性は無傷でそこに立っていた。

「妖力で守ってすらいないのに!!」

「今のは貴女?」

ようやっと、コチラに意識を向けた女の眼は、怒っている時の師匠に似ている。冷たい刃そのものの視線に晒されると、身体がこの場から逃げ出したくなる。

「でやぁぁぁああっ!!」

ふと、美鈴が目にも止まらぬ勢いで連打を叩き込む。さすが体術だけなら師匠の相手を出来るだけはある。

まぁ、師匠にとってはお遊び感覚なんだろうけど。

「……そろそろ、全力でやってくれないかな?」

しかし女は美鈴の拳すら、まるで当たっていないかのような。反応すらせずにいる。

「……化け物!!」

美鈴に当たらないように、ありったけの妖力を込めて弾幕をはる。

「なんか痛そうね」

そう言うと、殴っていた美鈴の拳を受け止め、掴むとそのまま振り回す。

「危ない!!」

女は振り回した美鈴で弾幕を防いだ。無論、私の弾幕をまともに食 喰らった美鈴は、腕を離されるとその場で倒れてしまった。

幼い割には丈夫な美鈴でも、流石にあれだけの量を受けるのは無理がある。

「あら、終わっちゃった。なら次は貴方かしら?」

女がコチラに向かって歩いてくる。マズイ。私は美鈴と正反対の遠距離型。近づかれるのは苦手だ。

「くっ!!」

スキマを開いて距離をとろうとする。

飛び退いて距離とったはず、はずなのに。

「面白い能力ね」

女は目の前にいた。スキマを女が通ったわけじゃない。ただの脚力で、一瞬にして間を詰めたのだ。

そんな考えが頭の中を過ぎるが、見上げると女は腕を振りかぶっていた。

殺られる!?

咄嗟に思ってしまった。

 

「俺の弟子に何してんだコラ」

 

さっきの子供は久々に面白い相手だった。私の攻撃を紙一重で交わし続けていたが、少し力を込めて動きの速度を上げると、やはり付いてこれなかったけど。

次に出てきたのはさっきよりは弱そうだった。でも妖力を使った面白い戦い方をする。まさか全部の方向から弾を当ててくるとは思わなかった。でも、私が近づこうとすると逃げるあたり、さっきの娘みたいに単純な力は弱いのかも。

まぁ、二人とも面白かったけど、そこらの妖怪よりも『ちょっと強い』くらい。私に快感を与えてくれる相手じゃなかった。現にこうやって距離を詰めて、殴ろうとすると涙目になって逃げようとしている。

「……師匠!!」

咄嗟に少女が誰かを呼んだ。師匠?この子たちの師匠?ならもう少し楽しめるのかしら。

そんな淡い期待を持ってしまう。

「俺の弟子に何してんだコラ」

いつの間にか腕を掴まれていた。今の私でも振り解けないなんて、面白いわ。

振り返ると同時に、そいつの顔を殴る。でもその拳すら受け止められる。あら、ほんとに何者かしら。私を2度も止めるなんて。

「……お前が噂の『妖怪殺し』か」

私はこの時、初めて相手の顔を見た。そして自分の目を疑った。なぜ?どうして?なんで貴方がここに居るの?なんで貴方が生きているの?!

私に最高の快感をくれた人。

私に初めて、いや唯一勝った人間。

「……会いたかったわ。貴方に……」

「俺は会いたくなかったよ、チクショウ」

 

 

 

「久しぶり、と言うべきか?」

「そうね、何千年、何億年ぶりかしら。よく覚えてないけど」

師匠と女は腕を掴んだ状態で話している。え、師匠は会ったことがあるの?!

「あの時は自己紹介も出来なかったな。俺は神条霞」

「鬼ヶ原姫咲、鬼子母神なんて呼ばれてるわ」

腕を離すと同時に2人わ距離をとる。鬼ヶ原と名乗った女の目には、もう既に私の事なんか映っていなかった。

「……師匠」

 

 

 

夜月を抜くと霊力の制限を3割程開放する。相手があの時の鬼ならば、長い年月と共にその力は以前とは別物にまでなっているだろう。

油断は出来ない。なんせ近くには紫と美鈴がいるのだから。

「あぁ、本当に、本当に本当に!!どれだけ望んだことか。もう既に死んだと思っていた貴方が、今私の目の前にいる!どうしてとか、どうやってとか、そんな事はどうだっていい!!また、私と戦ってくれる!!私の渇きを潤してくれる!!それが堪らなく気持ちいい!!」

「とんだ変態になったんだな」

前にあった時はこんな奴だったか?

かなり昔だからよく覚えてないが。

「いくよ!!」

姫咲は地を蹴る。本来なら反応できない速度を、霊力探知で無理矢理反応させる。身体を咄嗟に捻る事で拳を躱すと、夜月を振り下ろす。しかし。

「ほんと、化け物だな」

「褒めてる?ねぇ、褒めてる?嬉しいわぁ、貴方ともう1度会うために、誰にも負けないくらい鍛えたんだもの」

振り下ろした刃は簡単に指で止められ、引き抜く事も出来ない程の力で抑えられる。

片手で霊力を溜めて放つと今度は左手ではじかれる。

「楽しい、楽しいわ!!」

「俺は楽しくねぇよ」

姫咲の腹を蹴り上げ、ようやく夜月が自由になった。

「痛いわねぇ」

「ならもっと痛がれ」

全くと言っていいほどダメージのない姫咲は、笑顔を見せる。怖いから、その笑顔。なに?ヤンデレ?!

「でも、本気でやってはくれないのね?」

「本気になって欲しいのかよ」

「当たり前じゃない。だって……」

その瞬間、姫咲から妖力が溢れ出る。今まで妖力使ってなかったの?

「私の本気を受け止めてくれるのは、貴方だけなんだもの」

どす黒い妖力は、周りの建物を吹き飛ばし更地へと変えていく。紫美鈴は紫が張った結界でなんとか耐えたようだ。

「早く本気になってね?私も本気になりたいんだから」

あれ?まだこれ以上があるの?

これはちょっと……まずいかな……。




霞「あれ?これはヤバイの?ピンチなの?」

作「どうかな?」

美「わたし、活躍出来ませんでした」

紫「同じく」

作「ほら、コイツが規格外だから」

霞「俺を化物扱いするなよ」

作「でも次回は紫ちゃん大活躍だよ?」

霞・紫「え?!」

美「羨ましいです」
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