作「ノーコメントで」
紫「私が大活躍なのと関係が?」
作「ノーコメントで」
美「私の活躍は?」
作「ありません」
美「私の時だけなんか違うっ?!」
姫咲の纏う妖力は、霊力を3割開放している俺ですら、圧倒される程だった。いやいや、俺よりってかなり異常だぞ?これでも創造神だからね?
「おいおい。お前1人でこの大陸消し飛ばすつもりか?」
「貴方が本気になってくれるなら、それもいいわね」
是非とも遠慮したいんだけど。
夜月を握り直し、構える。
「とりあえず、半分か」
「……言ったでしょ?」
すると視界から姫咲の姿が消える。張り巡らしている霊力の網が姫咲を捉えた瞬間には、目の前に拳が迫っていた。
「……本気でやってって」
殴られると同時に訪れる浮遊感。吹き飛ばされた俺は、かなりの距離を飛び、地面に落ちてもその勢いは止まらなかった。
漸く止まると、何年ぶりかに口の中に鉄の味がした。クソが。
「やっぱり、貴方は最高ね。今ので死なないんだもの」
「普通なら死んでるわ」
霊力での防御も間に合わなかった。咄嗟に後ろに飛んで威力を殺すくらいしか出来ない。
つーか、制限くらい外すの待ってろよ。
「……霊力開放……5割」
俺の周りに漂う霊力が、より濃い色になり、輝き出す。
ここまでの霊力は流石に最近使っていない。
「おら、来いよ」
口の中の血を吐き出すと、強がってみせる。本当は今にも紫と美鈴を抱えて逃げ出したいのよ?
でも、コイツは逃げても追いかけてきそうだし、ってか逃げきれなさそうだし。
「いいわ……いいわよ!!もっと!もっと私を楽しませて!!」
それからは、二人とも言葉を交わすことがなくなった。
俺からすればそんな余裕は無いからだ。5割も開放しているのに、それと同等の力を持っているのだから。
夜月を振るうとそれを避けられ、拳が迫ればそれを受け止める。
「だりゃぁっ!」
避けきれず、蹴りを腹に食らってしまう。うっわ……腹の中身全部出ちまいそう。
込み上げる吐き気を無理矢理抑え込み、両足で踏ん張ってその場に留まる。
「くそがぁっ!!」
夜月を横に振り抜くと、姫咲の肌を切り裂き血が滴る。夜月で斬れないってどういう事だよ。コイツで斬れない物があるとは思わなかったわ。
「……何年ぶりかしら……血を流すなんて」
指で血を拭うと、恍惚とした表情でそれを舐めとる。
「もう少し、力を出してもいいかしら」
「……」
若干、5割でも足りないと思ってたのに、これ以上本気にならないでくれないかな……。
「貴方が半分なら、私も半分ね」
はい?今までどんくらいでやってたんだよ。
「いくわよ?」
もう、滅茶苦茶だよ。これ以上コイツに本気になられたら、マジで大陸が消し飛ぶぞ。
妖力を更に吹き出し、とうとう俺の網にすら感知できない様になった。
気がつくと俺は吹き飛び、直ぐに脇腹に激痛が走る。どうやら殴られたらしい。
「し、師匠!!」
吹き飛ばされながら、紫が叫んでいるのが聞こえた。そんな泣きそうな声を出すなよ。
「……がっ!!」
骨を何本か折ったらしく、呼吸がままならない。
飛ばされた時に夜月も手放したようで、遠くに突き刺さっている。
なんとか立ち上がると、腕も上がらない。あぁ、そりゃそうか。
「師匠!!う、腕が!!」
さっきのは腕を殴られたらしい。その結果、腕は無残にもはじけ飛んだようだ。左腕の肘から先がなくなっていた。くそ、痛くて今にも意識を手放してしまいそうだ。
「あら、あらあら、大丈夫?まだ続けられるわよね?」
「なんて答えようと止めないくせに」
額からは冷汗が噴きでる。単純に考えて、霊力を全開しても、姫咲の全力に勝てないという事なのだが。どうするか。
「……これ、かなりマズイな」
小さく呟くと、とりあえず腕を霊力で止血する。
なんせ、腕が無いから今すぐには創造することが出来ない。両手を合わせる事が出来ないからな。
「……紫、頼みがある」
あんまりやりたくは無いのだが。
俺に駆け寄った紫に耳打ちする。流石にこれ以上、アイツの好き勝手にさせるわけにはいかない。
「俺が今からヤツの動きを止めるから、アイツの力を封印する術を組み上げろ」
「わ、私がですか?!無理です!アレだけの妖力を私1人では抑え込めません!!」
「んなこた解ってる。俺が今から神力で抑えるから」
「なら師匠がやった方が……」
「アホ。アイツの妖力と俺の神力がぶつかったら、お前達所かこの大陸すら原型留めてないわ」
だから俺は神様モードになれないのだ。神様モードの俺と渡り合えるだけの力を持つ者なんて、本来ならいる訳が無いのだが、どういう事か姫咲は持っている。そんな力と力がぶつかれば、この星に多大な影響を及ぼすのは火を見るより明らか。
「……やれるな?」
「……そんな……わ、私には」
不安そうに俯く紫。いつもなら元気よく『やれますっ!』と根拠の無い返事をするくせに。
俺は残っている右手で紫の頭をポンポンと撫でてやる。
「お前は誰の弟子だ?俺の弟子だろう?なら大丈夫だ」
出来うる限りの笑顔を作り見せてやる。
本当はそんな余裕はないのだが、今回ばかりは紫に頑張って貰わないと困る。
「俺は紫を信じてるよ」
「さて、お望み通りの全力だ」
「あら、やっと本気になってくれるのね」
姫咲は冷たい眼をしながらも、嬉しそうに笑う。
「後悔すんなよ?」
「ここで本気になってくれなきゃ、そっちの方が後悔するわ」
「あぁ、そうかい。神力開放、1割。『神様モード』」
そう言うと俺の力の質が変わる。霊力から神力に変換されると空気が震える。
「……素晴らしいわ。貴方の正体とかどうでも良くなるくらいに」
「……無駄口叩いてねぇで、遊んでやるからかかって来いや」
次の瞬間には眼前に迫る姫咲の蹴りを、仰け反って避けながら背中を蹴り飛ばす。
「かっ……!!」
肺の空気が吐き出され、吹き飛んでいく姫咲。しかし身体を捻って着地をすると、再び地を蹴って今度は拳の連打を繰り出す。
俺は神力で壁を作り出し、防ごうとするがその威力に耐えきれず、脆くも崩れさる。
しかしそれで良かった。一瞬でも間があれば、神力を溜められる。
掌大の弾を腹に叩き込むと、爆風が至近距離で起こり、視界が遮られる。
そろそろ、俺も準備をしなきゃな。
師匠に頼まれたのは、あの馬鹿げている妖力を抑え込む封印。本来ならそんなもの、今の私では不可能なのだが、師匠の言葉を信じるならばやるしかない。
確かに、師匠が霊力から神力へと力の質を変えると、先程とは打って変わって、鬼ヶ原を圧倒し出した。
もはや私には、その動きの全てを見る事は出来ないけれど、師匠に傷が増えていないことから、一方的な展開になっているのだろう。しかし、鬼ヶ原も未だに半分の力を残していると言う。これは早く術式を組み上げるべきだろう。
私は両手を合わせる。以前、師匠が能力を行使する際に両手を合わせているのを見てから、私も真似をする様になった。気分の問題かも知れないが、こうすることによって力の巡りが良い気がする。
アレだけの妖力を封印するには、私自身も莫大な妖力を必要とする。今の私ではギリギリ足りるかどうかだ。
『俺は紫を信じてるよ』
師匠が私を信じてくれているなら、私も私を信じる。
徐々に妖力の出力を上げ出す姫咲。
そろそろ、神力1割でもキツくなってくる。
紫はまだなのだろうか。
「もっと!もっと上があるでしょう?!」
「ふざけんな。お前如きに本気になんてなるか!」
流石に片腕のハンデは大きい。左側の防御があからさまに薄いのだから。
そろそろ2割にまで上げないと行けないか?と思い始めた頃、後ろから紫の声が聞こえた。
「師匠!出来ました!!」
その声に振り返りそうになるのを必死に抑える。今度は俺の番だ。弟子の努力を師匠の俺が無駄にするわけにはいかない。
俺は一気に神力を3割開放する。
一瞬、姫咲は俺の力に驚いた表情をするが、直ぐにまた笑みを浮かべた。
「やっぱり、貴方は最高ね!!」
んなセリフもこれで終わりだ。
俺は神力を操作することなく、姫咲へとぶつける。純粋な力の圧を受けて、姫咲は動きを止める。とうとう膝から崩れ、地に手を着いてしまう。
「がっ……く!!」
俺は神力で押さえ込みながら、姫咲から溢れる妖力を掻き消す。これならば紫の妖力でもコイツに術式が届く。
「今だ!打ち込め!!」
「で、でも師匠!そこに居たら師匠も封印に……!!」
んなもん構うな。今はそんな事を言ってる場合じゃない。
「いいから!!早く!!」
少しづつだが、抵抗する力が増してきている。
「早くっ!!」
「くっ……!!」
迫る紫の術式。それは俺と姫咲を包み込み、陣が力を抑え込む感覚に陥った。
こうして、姫咲は力の大半を封印された。
俺の神力、霊力と共に。
紫「……」
霞「お、おい!紫!!いきなり土下座なんかしてんな!!」
紫「だ、だって師匠も一緒に封印を!」
霞「あ〜。気にするな。それも含めてバカ作者は考えてるんだろ」
作「それに、大半を封印されても、規格外は規格外だからね?」
霞「まぁ、言い方はアレだけど。気にすんな」
紫「師匠……」
美「誰か私の心配もしてくれませんかね?」