霞「まったく。アチラさんに迷惑かけるなよ?」
作「なんと!そんな事はない…………はず」
霞「自信はないのか」
「ちょっ、これ洒落にならんがな!!ゆ、ユウさ〜ん!!た〜すけて〜!!」
俺は今、絶賛命の危機に瀕している。紅いカーペットが敷かれた廊下を全速力で走り抜けるが、一向に撒ける気配がない。振り返ればすぐそこに追手が迫っているような。
どうしてこんな状況になったかって?
それは1時間程前の事だ……。
「ってなわけで、この『幻想郷』ってのを見て回ろうと思うんだが」
1通り自分達の事を説明し終えると立ち上がり、背伸びをする。博麗神社でノンビリ過ごすってのも良いが、それだと元の世界と何ら変わらないしな。
「まずは何処か珍しい場所はないかね?」
「珍しいって、どんなんだよ」
相変わらず紫に抱きかかえられているユウは頭を抑える。え?そんなに変なこと言ったか?
「まず、霞の世界がどんなんだか知らないんだから、何が珍しいなんて決められないだろ」
それもそうか。俺からしたらこの世界自体珍しいが、ユウ達からしたら日常そのものなんだ。
「んー。そうだなぁ。例えば面白い奴のいる場所とか?」
「面白い、ねぇ……」
小さいなりで考えるユウは、確かに母性本能を擽るのだろう。隣の美鈴が面白い物を見るように笑顔だ。
「なら紅魔館がいいんじゃないかしら」
「おぉ、そうだな。アソコなら面白いもんが見れるぞ」
コーマカン?初めて聞く単語だ。
「そこに住んでる奴らも面白いが、特に美鈴ちゃんは驚くだろうな」
急に話を振られた美鈴は驚く。
何故に美鈴なんだ?
「まぁ、行けばわかるさ」
博麗神社を後にして、俺達はユウの案内で紅魔館を目指す。空の飛べない姫咲と美鈴は俺が抱えている。
「神様って、全員飛べるものなんですか?」
「まぁ、基本的にはな。だけど訓練次第で美鈴ちゃんや姫咲ちゃんも飛べるようになるさ」
だそうだ。元から飛べた俺としては、どうやって飛ぶのかなんて教えにくい。だって感覚で飛んでるんだから。
暫くすると、大きな湖が見えてきた。と、同時に視界に靄がかかる。
「ここが霧の湖。紅魔館はすぐそこだ」
「神秘的ね。夏場は涼しそう」
何をいうか。夏はクーラーの真下から動かない姫咲はよくわからない事を言う。なんだ?知らない人の前だとお淑やかになるのか?
「……殴るわよ」
「殴ってから言うなよ」
そんな会話をしていると、目の前に大きな影が見えてきた。それは洋風の館で、全身真っ赤に染められていた。なんとも、目に悪い色だ。こんな物がうちの世界にもあるってんなら、問答無用で白に塗り直すぞ。
「ここが紅魔館。吸血鬼の住む館だぞ」
なんか最後に聞きなれない単語があった気がする。
「吸血鬼?」
「あぁ、レミリア・スカーレットと言う幼じ……少女が主を務めているんだ」
ほう。吸血鬼なんて初めてだ。これはこの世界に飛ばされた甲斐があったってもんだな。……夢乃には帰ってからお仕置きするけど。
俺達は門の前に降り立つ。姫咲と美鈴を下ろすと、ぼんやりと門のところに誰かが居るのが見えた。
長身に緑のチャイナ服、長く綺麗な赤い髪が目立つ。何処かで見たことあるような女性は、門に寄りかかって眠っているようだ。器用なことで。
「おい、起きろ」
ユウが女性に話しかける。何度か揺すっているが、それでも一向に起きる気配はない。
つーか、あの人ってもしかして……。
「はぁ……流石にこんなんじゃ起きないか」
そう言うとユウは大きく息を吸い込む。
「咲夜ぁ!!」
思わず耳を塞ぎたくなるような大声で誰かを呼ぶ。こんな大声を近くで出されてもこの子は起きないのか。
「ユウ様、妹様がお休み中でございます。お静かに願います」
気がつくと1人のメイドがユウの隣に立っていた。いつの間に現れた?なんとなく時間の流れが乱れたと思ったらイキナリだ。
「おぉ、悪い悪い。実は客人を案内しててな、もし良かったら中を見せて貰えないだろうか」
「はぁ、一応お嬢様に確認させていただきますが、宜しいでしょうか」
銀髪のメイドは凛々しい表情でコチラを一目見ると、再び姿を消そうとした。しかし門の前で寝ている女性を見ると、大きな溜息を吐いて何処から取り出したのかナイフを構える。なかなかに手入れの行き届いた、まるで調度品の様なナイフはメイドの手を離れ、次々に女性へと刺さっていく。うわぁ、痛そう。
「いったぁぁああっ!!」
「だろうな」
「…………あ!寝てませんよ咲夜さん!?これはその……瞑想していたんです!!」
いや、その言い訳はどうなんだ?
これだけ周りが騒がしいってのに、身動き一つしなかったじゃないか。
「……はぁ、とりあえずお説教は後よ。私はお嬢様に知らせて来るから、美鈴はユウ様をご案内して」
「ユウさん?……あれ?ユウさん、どうしたんですか?」
突き刺さったナイフを引っこ抜きながら、漸くユウの存在に気がついたのか不思議そうな顔をしている。うん、さっき呼ばれてたし、確定だろうな。
「なに、異世界の神を案内しててな。コチラが創造神の神条霞、鬼の姫咲ちゃん。そんで……」
「……」
どうやら美鈴(幼女の方)も気がついたようで、驚きのあまり声が出ていない。
「……コチラは紅美鈴ちゃんだ」
「…………な、なんですとーーーっ?!」
美鈴(大)と美鈴(小)の出会いだった。
「いやー。私にもこんな時期があったんですねー」
「いやー。私も将来はバインバインになるんですねー」
ほぼ同じ声質がステレオで聞こえてくる。美鈴(大)が美鈴(小)を肩車しているのだ。
「確かに、これは面白いわね」
姫咲は大と小を交互に見る。アレがコウなるのね、と小さく呟いていた。
「挨拶された時に気がついたけど、やっぱり美鈴の幼い頃なんだな」
「まぁ、そちらの霞さんとは初対面ですけど」
それは紫の時に確認済みだ。いくら同一人物がいたとしても、ここは異世界。所謂平行世界なのだから、俺が存在しなくても不思議ではない。むしろ、この世界の俺は今頃、平穏に生きているんじゃないか?
「……ユウ様、お嬢様がお呼びです」
再びいきなり現れたメイドが俺達を案内する。さっきから、この登場の仕方じゃないとダメなんだろうか。
俺はともかく、姫咲と美鈴には心臓に悪いと思うが。
「貴方が兄様の言っていた異世界の神ね」
「あぁ、神条霞だ。よろしく」
俺の数段上から、豪華な椅子にどっかりと座った幼女--レミリア・スカーレットは威厳タップリに語りかける。
「それで、この館を見せて欲しいと?」
「まぁ、そういう事だな」
ピンクの服にドアノブカバーの様な帽子を被り、背中には一対のコウモリのような翼が生えている。小さな口からは小さいながらも鋭い牙が見え隠れして、確かに吸血鬼なのだと認識できた。
「ま、兄様の紹介なのだから無碍にはできないわね。自由に見て構わないわよ」
「おぉ、ありがとう」
俺は礼を言うと深く頭を下げ、部屋を出ようとする。
「……無事でいられるといいわね」
そんなレミリアのセリフは、奇しくも俺に届かなかったが。
「で、なんで俺は1人でこんな所にいるんだ?」
俺は皆とはぐれ、紅く染められたドアの前にいた。多分、さっきの部屋からそんなに離れてないと思うが、つまりはぐるっと一周して戻ってきたのか。皆、迷子だな?これだからお子様達は……。
「と、そんなしょうもないこと置いといて、ホントに何処だよ」
とりあえず、目の前のドアを開けてみるか。
鍵のかかっていないドアは何の苦もなく開かれた。中を覗くと館と同じように赤で統一された内装に、所々壊れた玩具や無残に千切れたぬいぐるみが散乱していた。
部屋の隅には大きな、所謂お姫様ベッドが置かれている。
「……おじゃましま〜す」
なんとなしに小声になってしまう。
内装からしてこの部屋の主は女の子なのだろう。あまり長居はできないが、少し疲れたから休ませてもらおう。
天蓋付きのベッドに腰掛けると何か柔らかい感触がした。なるほど、こんなベッドは初めてだが柔らかい感触なのだな。
「……ふにゃ」
「ふにゃ?」
おいおい、このベッドは音声も出るのか?そんな機能が必要とは思えないけど。
「…………痛い」
「……」
うん。音声機能だよな?音声機能だと言ってくれ。このちっこい人形の膨らみは、多分ぬいぐるみか何かだよな?!
「いった〜い!!!」
「ぎゃぁああああ!!」
「殺すっ!!」
結果、現在幼女に追っかけられる創造神の図が出来上がった。
何この子!寝起き超悪いよ!?言い訳とか全然出来なかったんだけど!!確かに、気付かずに踏んでしまった俺が悪いんだけどね?!
「何事だ?」
少し先のドアが開いて、中からユウが顔を出した。助かった!この子なんとかして!!
「霞?何を……」
そう言って俺の後ろを見ると、いきなり顔色を悪くして無言のまま中に引っ込んでしまう。
「なんで?!」
「……つ〜かま〜えた〜」
突然肩にかかる手、振り返ると悪魔の様な笑顔の幼女が紅い目を光らせていた。
……そこから、俺の意識は暗闇へと落ちていった。
後々聞いた話だと、窓を突き破り門の外まで吹き飛んで、地面に頭から突き刺さっていたらしい……。
霞「酷い目にあった……」
作「フランちゃんの寝起きは、ユウさんでも勝てないらしいですからね」
姫「アレはちょっと……私でも相手をしたくないわ」
霞「姫咲がそんな事言うとわ……」
作「んじゃ、次回もお楽しみに!!」
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