東方古神録   作:しおさば

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作「Daysが面白い!」

霞「何を突然」

作「ほら、ああいう青春スポーツ物……なんかえぇやん?」

紫「せめて小説の話をしなさいよ……」


47話/命は無駄にしちゃいけないらしい

空に開けられた雲の穴から月が覗きこんでいる。

月明かりが差し込む広めに造られた庭は、何時ものそれよりも凄惨な光景にされた。

自らは一滴も流すことなく、血の海を作り上げた月の民はまるで、何事も無かったかのように輝夜へと歩み寄る。

久しぶりに月の力を目にしたが、俺がいた頃よりも随分と科学が発展したようだ。

「八意様、掃除は終わりました」

牛車に向かってそう言うと、月の兵士は道を開けた。

ゆっくりと庭に降り立った人物の姿を見ると、時間は進んでいないような錯覚を覚える。まったく、変わらないんだな。

月明かりに映える銀色の髪を靡かせて、彼女は一切の老いを感じさない。

「……永琳」

「お久しぶりですね、姫様」

言葉を交わした彼女達は、再会を確かめ合う。

2人の間は、その空間だけは誰にも邪魔をしちゃいけないし、……俺がさせない。

 

 

 

何年ぶりだろう、久しぶりに会った永琳は、昔と変わらない優しい表情をしていた。でも、その目だけは、なにか追い詰められたような、覚悟を決めた目をしていた。

「姫様、お迎えに上がりました」

その言葉は重く、永琳の本心が見えなくなる。

「永琳…………お願い」

それでも、彼女なら私を理解してくれる。私の一番の理解者でいてくれる。その思いを胸に私は言葉を紡ぐ。恐怖はない。断られるならば、それまでだ。またあの月に戻り、人としての生き方ができなくなるだけ。

覚悟を決めなさい。

「……私を……助けて」

私から離れていった言の葉は、夜風に乗って彼女に届いただろうか。

長い一瞬の後、彼女の表情はやっと、私の見たかった本当の笑顔になった。

「畏まりました。姫様」

 

 

 

「……なんのおつもりですか?八意様」

「あら、貴方の眼は節穴なのかしら?それとも、この状況がわからないほど愚かなのかしら」

迷っていた。上層部から通達されたのは、地上に追放された姫様の奪還。自分達で追放しておいて『奪還』なんて、おかしな表現だと思ったけれど。

兵士たちの中に私が組み込まれたのは、およそその方が姫様は従うだろうと言う、浅はかな考えのもとだろうけれど。どうやら、私が姫様の願いを叶えるとは思わなかったらしい。

「つまりは命令に背くと」

そう言って兵士は銃を構える。向けられた銃口には一切の迷いがない。彼らにとって、上からの命令は絶対であり、今や私は彼らの敵と認識された。

「ならば手足をもいで連れていくだけ」

「……出来るならばしてみなさい」

彼女の願いを叶えるならば、この命を賭けるだけの価値がある。あの表情を見れば尚更。

 

 

 

次々と放たれた光線を間一髪で避けていく。銃口の向きと指の動きを注視して、先読みをすれば躱す事は難しくない。だけど問題は私の体力が持たないこと。

迎え撃つように放たれる矢は、確実に相手の数を減らしていくが、流石に1人で相手をするには無理がある。

そんな事を考えていると、脚に光が掠る。

「くっ!」

「永琳!!」

まったく、油断してしまった。機動力の落ちた状態では、あの光線を避けるのは一層難しくなる。

……ふと、はるか昔の事を思い出してしまう。

あの時も脚に怪我をしてしまい、動けなくなった私は彼に命を助けられた。

白い羽織をはためかせて、颯爽と私の前に現れた彼は、優しい笑顔を向けてくれた。かつて月への移住の際になくしてしまった、私の唯一と言ってもいい友人。きっと、彼ならばまた私に笑顔を向けてくれる。「よく頑張ったな」って言ってくれるはず。

転んでしまった私の眉間に、銃口が突きつけられた。これで終わりなのだろうか。私は、姫様の願いも叶えられず、ここで息絶えてしまうのだろうか。

自分の非力さに悔しくなる。

今は亡き、友人の名を呼びたくなる。

せめて、姫様を……。

「……助けて!霞!!」

その言葉は私ではなく、姫様から発せられた。

友人と同じ名を。

 

 

 

「あー。もしかしてもしかすると、助けた方がいい?」

 

 

 

輝夜の声が庭に響き渡った。

血を流す永琳は頭に銃を突きつけられ、輝夜はその後ろ。

俺?一応輝夜に結界を張っていましたよ。永琳を相手にしていた兵士が、輝夜を傷つけないとは言いきれないし。下手すれば人質に取られる可能性もある。

俺は銃を夜月で叩き斬り、間に割って入る。

「……か……すみ?」

「久しぶりだな永琳。元気だったか?」

俺を見上げる永琳は、驚きのあまり頭が回らないようだ。おぉ、こんな永琳初めて見た。

「生きて……いたの?!」

「まぁ、なんとかね。でもその話は後でいいか?」

突然現れた俺に驚いていた兵士は、落ち着きを取り戻し今度はサーベルの様なものを構える。その刃は光を放つ。多分、銃と同じ原理の光だろう。

「さて、怪我したくないやつは大人しく帰ってくれないか」

「……貴方が何者かは知りませんが、我々に刃向かうのならば、そこに転がる骸と同じ道を辿って貰うのみです」

予想はしていたけれど、話が通じる相手ではないようだ。

俺は夜月を構えなおすと霊力を開放する。とは言っても、今の俺は封印されている状態。夜月もその力を十分には発揮できないかもしれない。

「断ち切れ、夜月」

それでも、やらなきゃならんでしょう。

夜月を払いある理を断ち切ると、視界を遮る黒い壁が現れる。

「……何をしたのかわかりませんが。そんな壁、無意味です」

恐らく壁の向こう側で銃を構えているのだろう。レーザーが放たれる音がした。

しかし光は届くことなく壁の中に吸い込まれるように消えていった。

「……何をした」

「なに、光を通さない空間を作っただけだよ」

可視不可視共に光はその厚さ数センチの空間の中では進まない。もちろん、光が届かないのだから、何も見えない暗闇と化すが。

「光が届かないならば、届くまで近づくのみ」

「そりゃそうだ」

壁とはいえ、物理的にそこにあるのではない為、なんの抵抗もなくすり抜けてしまう。黒い壁をくぐり抜けサーベルで切かかる者を夜月で受けると、その手が微かに震えるのがわかる。

「なんだこれ」

「超振動よ。刀身自体を震わせることで切れ味を増しているの」

背後で永琳が解説してくれた。なるほど、電動歯ブラシの様なものか。あれ?違う?

「だけど、俺の刀は壊せない」

サーベルを押し返すと、左手で霊力弾を放つ。直撃を喰らった兵士は勢いよく吹き飛び、倒れて静かになった。

「肩こりに良さそうだな」

「……その考えはなかった」

永琳は肩凝りとか酷そうだもんな。何故かは言わないけど。なんせ周りには永琳並のヤツがいないから。何がとは言わないけど。

「……紫!2人を連れてこの場を離れろ」

そう言うと輝夜たちの側に紫のスキマが開かれる。何度見てもあの見た目は不気味だ。

「2人ともその中に入れ、後は俺の弟子が案内する」

「え……この中にはいるの?」

うん。俺も前ならば断るだろう。だが今はそんな事を言ってる場合じゃない。

「美鈴は2人の警護を頼む」

「了解です!」

姿は見えないが元気のいい返事が何処からか聞こえてきた。多分、いい笑顔で敬礼でもしてるんだろう。見えないけど。

 

2人がスキマに入り、閉じられたのを確認すると、黒壁を消し去る。

「さて、そろそろ手を出しても良いぞ」

「……?何を言っているのです」

そう言った兵士の後ろで轟音と共に別の兵士が吹き飛ぶ。

「やっとね。我慢の限界よ」

土煙の中から血だらけの兵士を引きずって現れたのは姫咲だった。

「半分は貰って良いのよね」

「お好きにどうぞ」

そう言うと2人は走り出し、その後には兵士達の悲鳴だけが残った。

 

 

 

「……気味悪いわね。どうなってるの、この空間」

霞に言われてなんか気持ちの悪い空間の裂け目に入ったけど、幾つもの目が浮かびそれぞれこちらを見ている。

「……姫様は、霞とお知り合いだったのですか」

「つい最近ね。最初は驚いたけど」

永琳の脚を手当していると、何処からか霞と一緒にいた少女が出てきた。

「手当が終わり次第、場所を移しますわ」

「……これはアナタの能力なの?」

「……場所は『迷いの竹林』と言われる、身を隠すには持ってこいの土地です」

「せめて会話をしなさいよ」

 




作「この章も残り僅か」

霞「永琳は変わらないなぁ」

永「あら、これでもまた成長したのよ?」(ポヨン)

輝「……」

紫「……」

霞「あえて何も聞かない」

美「大きいのはいい事ですね」

姫「私だってこんな事にならなければ……」

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