霞「全部お前の匙加減じゃないか」
作「ほら、よく言うじゃない?『作品の中でキャラが生きている』って」
霞「こんな時にそのセリフを使うなよ」
一夜明けて翌日。昨日は途中から天照の猛攻を躱すことに全力をそそいだためか、あまり酒の残っていない身体を伸ばしながら部屋を出る。
いつ眠ったのかは覚えていないけれど、しっかりと布団で寝ていたし、天照が一緒に寝ていた、なんて展開も無い。
「おはようございます」
出雲大社の巫女が朝餉の用意に忙しないながらも、俺に挨拶をしてくる。いや、態々立ち止まらなくてもいいよ?
「天照達は何処に?」
「天照様は既に広間にいらっしゃいますよ」
あいつ、あんだけ酔っ払ってたのにちゃんと朝は起きるのな。少し感心した。
長い廊下を歩いていると、途中で諏訪子に出会う。コイツは二日酔いなのか頭を抱え、足取りが覚束無い。
「あ〜う〜。頭痛いよ〜」
「アレだけ飲むからだ」
諏訪子の後ろには神奈子もいた。つーか朝からその背中の注連縄着けるの?重くない?邪魔じゃない?
「あ、おはようございます霞様」
「うぇっ?あ、おはよ〜」
「おう、おはよう。大丈夫か?」
「私は平気なのですが……」
「頭が頭痛で痛いよ〜」
その日本語は明らかに間違ってるぞ。
「おはようございます、お父上様」
「おはよう。月夜見は流石に二日酔いとかなってないんだな」
「自制していますので」
鋭い目で諏訪子を睨む。あぁ、ココに俺が居なかったら長時間の説教だったろうな。最短で2時間ものだ。
んで、さっきから気になっているのだが、その隣で机に突っ伏しているのは誰だ?
「おあようごじゃいますぅ〜」
「それは挨拶なのか」
二日酔いで死にそうな顔をしている天照。だから大人しくしとけと言ったのに……。
声を出すことも辛そうな天照は、顔をチラッと上げて直ぐにまた倒れ込む。普段ならばここで俺に抱きついてきそうなものだが、余程余裕がないのだろう。
「これ、今日もまた飲むのか?」
「……そうです」
いくら神酒と言えど、飲み過ぎは良くないんじゃないか?昨日だって、俺が覚えている範囲でも空になった酒樽が積み上げられて山になっていたろ。あんな量、鬼でも飲まないぞ。……多分
その後、俺達は朝食を済ませ、庭でのんびりとしていた。どうせこの後も酒飲んで騒ぐだけなのだから、暫くはゆっくりしても罰は当たらないだろう。……俺に罰を当てる事が出来るやつなんて居ないけど。
それよりも、こんなどんちゃん騒ぎが1ヶ月も続くと思うと頭が痛くなる。毎日のように俺は天照に絡まれて、毎日のように諏訪子に脇腹を殴られるのか?
「……よし、逃げよう」
とりあえず顔は出したのだし、当初の目的は達成されているわけだ。こんな面倒な集まりと知っていれば、多分来なかっただろうし。
そんなわけで、俺は庭の木に留まっていた八咫烏に声をかける。
ココから出ていって、先ずは自分が祀られているっていう神社に行ってみよう。
なに、俺がいなくなっても大丈夫だろう。何せ俺は自由の神だからな。
「……絶対に後で月夜見様に怒られまっせ?」
「月夜見が怖くて創造神なぞやってられるか」
まぁ、アイツの説教は御免こうむるがな。
「まぁ、ワイも暇やからえぇですけど。怒られても知りませんで?」
……よし、バレた時用に一筆書いておくか。
「で、戻ってきたの?」
ワームホールを潜って守矢神社に戻ると、珍しく姫咲が迎えてくれた。……実際には、多分たまたま外に出ていた時に俺のワームホールを見つけただけだろうけど。
「姫咲ならあの空間は楽しめるだろうけど、アレが続くと思うと俺には耐えられないから」
そう、とだけ言うと姫咲は神社へと戻る。コイツ、何しに外に出たんだ?
言えない。霞が帰ってくる気がしたから外に出ていたなんて、恥ずかしくて言えたもんじゃないわ。まるで寂しくて帰りを待つ小娘のようじゃない。見た目は子供だけど。
「で、今度はどこに行くの?」
私は思考を切り替えるために話題を変える。どうせ霞はなにも気にしてはいないだろうけど、この心内は読まれたくはない。
「なんか、俺の事を勝手に祀っている神社があるらしいから、それを見に行こうかと思ってる」
……神様って勝手に祀っていいものなのかしら。よくわからないけど。まぁ、神の一般常識は霞に当てはまらない、って事で無理矢理納得させる。
『だって霞だもの』の一言で、大凡の事は済ませそうだし。
「ならさっさと行きましょう。一応コレでも妖怪なんだから、いつまでも神社なんて所には居たくないわ」
「これから行くのも神社だぞ?」
「貴方を祀っている神社でしょ?それならココよりはマシよ」
どういう判断だ、という霞の言葉は無視をして。神社の屋根の上で昼寝をしている美鈴を呼び起こす。あの子、何処でも寝るわね。こないだなんて、柱に寄りかかって、立ったまま寝ていたし。ある種の才能かもしれないわ。全く羨ましくないけど。
「……あれ?師匠。どうしたんですか?忘れ物ですか」
寝ぼけ眼で屋根から飛び降りてきた美鈴は、やはり寝惚けたことを言う。この子には体術の修行よりも、おつむの方をなんとかしたら?
そんな考えを察したのか、霞は苦笑いしながら「美鈴はこれで良いんだよ」とだけ言った。
「旅を再開するのよ」
「……そうなのですか?では準備をしてきますね」
「うん。俺も真苗ちゃんにお礼を言わないとな」
そう言って2人は社の中へと消えていった。残された私は、別段荷物なんかもないし、人間の小娘なんぞに礼を言うのも癪に触る。特に世話になった覚えもないし、所詮は妖怪と人間だもの。
ついこないだ別れた紫とか言う小娘は、人間と妖怪が共存出来る世界、なんてものを夢見てた様だけど。所詮は絵空事。どこまで行っても妖怪と人間は相容れない存在なのよ。
「……神奈子様と諏訪子様を置いてきたんですか」
「結果的にそうなるな」
一通り説明すると、最初に出てきた言葉がそれだった。なんとも、2人を大事にしているいい子じゃないか。
「まぁ、神無月が終わる頃に迎えに行くから心配するな」
「はぁ」
それでも、一抹の不安を覚えているのか、どこか暗い表情だ。
「1人が不安ならば、誰か付けようか?」
「あのお2人のどちらか、ですか?」
それもまた不安な様子。僅かな間にどんな生活を送ってたんだ、アイツらは。
「……しょうがない。あんまりしたくはないが、神様の力を見せてやろう」
そう言って神様モードになる。一応、神力はかなり抑えて。流石に神と同居しているとはいえ、いきなり俺並みの神力に当てられたら、気を失ってしまうだろうし。
神様モードで両手を合わせる。初めての試みだから、隠しているが自分でも成功するか不安だし。
創造したのは二対の狛犬型の式神、『阿』と『吽』。赤い色に染められた小さな注連縄を背負っているのが阿で、紫色の前掛けを着けているのが吽。サイズ的には柴犬だが、中級妖怪程度ならば圧倒できる様にしてある。
「ふぅ、なんとか出来た」
式神とは言え、生物を創造するのは初めてのことだったから、上手くいくか不安だったが。
「わぁ、可愛いですね」
早速真苗に懐いたのか、二匹(と言っていいのかわからんが
)は擦り寄っている。真苗も満更ではないらしく、漸く笑顔になった。
「コイツらなら多少の妖怪は退治できるし、真苗の言う事をよく聞くようにしてある。何かあればコイツらを通して俺に伝わるようにしてあるから、連絡するといい」
「はい、わかりました」
本来ならばここまで甘やかす事もないのだが。ま、出雲に2人を置いてきた手前、これくらいは良いか。
「それじゃあ、俺達は行くぞ?」
「あ、はい!お気を付けて」
真苗に見送られ、俺達は俺が祀られている博麗神社へと向かうことにした。
作「ここで1つネタバレを……」
霞「は?」
作「なんとこの章は戦闘がありません!!」
霞「それで喜ぶの、お前だけじゃないか」
作「……なんとも、どんだけ経っても戦闘シーンほ苦手なもんで」
霞「いい加減慣れろよ」
天「父上様〜?何処ですか〜?!」
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