霞「コラボは良いのか?」
作「あまりアチラの投稿ペースもありますし。コチラだけ何本もあげてはご迷惑になりますよ?」
霞「そういうもんか?」
56話/暗い光らしい
夢乃が博麗神社の巫女になってから、早くも10年程が過ぎた。
夢乃もすっかり大きくなって、今では見た目は俺と大差ないくらいだ。
未だに能力の制御には一抹の不安があるが……。
成長したと言えば、美鈴も成長した。コッチは身体だけじゃなくその力も向上し、今では俺ですら人間状態だと危うい事もある。
「ってな理由で、美鈴の卒業試験〜!」
「……はい?」
相変わらず何処でも寝ることが出来る美鈴は、屋根の上で寝ていた。俺は側で腰を下ろす。
「そろそろ美鈴も独り立ちしても良いかなって思ってな」
「うぇっ?!で、でも……」
美鈴は不安な顔をしている。思えば長い事一緒に居たのだ、急に卒業と言われても不安にもなるか。
「美鈴にはもっと広い世界を見て欲しいんだよ。力や技術なんかじゃなくて、もっと知らなきゃいけないことがあるだろう?それは俺の元に居続けて知れることじゃない」
「……そう、ですね」
意外と美鈴は聡い子だ。ちゃんと話せばコチラの真意を理解してくれるし、汲んでくれる。
だからこそ、外にも目を向けて欲しい。この世界は俺だけじゃなく、もっと沢山の意思や心に溢れているんだから。
「わかりました。私、頑張ってみます!!」
「よし、なら試験といこうか」
「勝負は簡単、霊力しか使わないから、この俺に一撃いれてみろ」
「わかりました!!」
神社の庭に降りると、俺と美鈴は向かい合う。卒業試験として手合わせをするためだ。手合わせと言っても、今回ばかりは俺も本気で行く。別に卒業させたくない訳では無い、美鈴にしっかりと今の自分の実力を解ってもらうためだ。
「んじゃ、先ずは……」
俺日両手を合わせる。霊力を込めた球体を掌に創ると、それを握り潰す。昔、萃香と喧嘩をした時に使った能力を発動するためだ。
「掌握」
空間掌握。周りの木々や建造物の形はそのままに、破壊不能にしたり、その空間内のあらゆる制限を俺が握る能力。まぁ、今回はただ単に神社を守る為だけど。
「それじゃ、始めるか」
「……よろしくお願いします!!」
元気よく一礼する美鈴。
顔を上げると、俺の拳が視界を埋め尽くしていただろう。
「ぐふっ!?」
「なにを馬鹿正直に礼なんかしてるんだ。これからお前は誰にも守られない、1人の力で生きていくことになるんだ。礼を尽くすのは悪くは無いが、それが通用するか考えろ」
吹き飛んだ美鈴は、空中で咄嗟に体制を立て直し、着地する。
「……確かに、私が余裕を見せていい相手ではありませんね」
「ほら、本気でやってやるからかかって来い」
俺は挑発する。まぁ、美鈴はこんな挑発に引っ掛かりはしないが。
美鈴は重心を低くし、構える。両手両足にはかなりの量の妖力が込められ、その一撃は簡単に大岩を砕くほどの力がある。
人間状態で喰らえば、死なないがかなりの重傷を負うだろう。
「!!」
ふと、美鈴の姿が消える。あまりの速さに目が追いつかない。
流石は美鈴。体術ならば多分、鬼とタメを張れるんじゃないか?
「……だが甘い!!」
いくら速かろうが、俺の探知範囲に入れば意味は無い。姫咲くらいの速さならば別だが。
振り向きざまに回し蹴りを繰り出す。美鈴はそれをギリギリで躱すが、俺が右手で練り込んだ霊力弾は避けられず、被弾する。
しかし美鈴もそれで終わらず、被弾しつつもそのまま突っ込み、俺に組み付こうとしている。
俺はバックステップで距離を取りつつ、次の手を考える。
「いい根性だ!!」
「師匠の弟子ですから!!」
「あわわわ。だ、大丈夫でしょうか、美鈴さんは」
「心配いらないわよ。あれでも一応は妖怪。アレくらいの傷なら1日もしないで治るわ」
私と夢乃は縁側に腰掛け、2人の勝負を見守っている。
夢乃が心配で見守りたいと言い出し、流れ弾が当たっても困るので私がお守りをしているのだ。
しかしながら、美鈴はよく成長したと思う。昔ならば一瞬でケリが付いたであろう本気の霞との勝負も、今ではこんなにも食らいついている。今の彼女ならば、戦っても面白そうだ。
「美鈴さんには頑張って欲しいですけど……なんとも不思議な気持ちです」
「そんなもんかしらね。でも、霞の言うこともわかるでしょ?」
霞は決して厄介払いのつもりじゃない。純粋に美鈴の成長を喜び、門出を祝いたいのだ。
「ま、今は美鈴の応援でもしてあげなさい」
「……そうですね」
「おら、もう限界か?」
「……ま、まだです!」
強がって見せても体力の限界なのはバレバレで。身体中ボロボロになっていた。
「なら根性見せてみろ」
「言われずとも!!」
美鈴は力を振り絞り、駆ける。最初よりはスピードは落ちているが、それでもそんじょそこらの妖怪よりは何倍も速い。そんな中、美鈴はどうやら右手に妖力を溜めているようだった。いつもの美鈴からしたら、おそらくこれが最後の一撃になるだろう。
少しガッカリしてしまう。やはり卒業させるにはまだ早かったのだろうか。
俺は美鈴の最後の一撃に備え、構える。これが最後ならば、真正面から受けてやるのが礼儀だろう。
「こい!美鈴!!」
「うぉおおおおっ!!」
美鈴は『右足』を踏み込む。繰り出された拳に合わせ、俺も右拳を出した。
……待て、『右足』?
右手を出すのに右足で踏み込む?
「でやぁああああっ!!」
美鈴の左手は俺の拳とぶつかるが、それは元より覚悟の上で、骨が砕けた音がしても気にしない。本命はこれから。
あっけなく拳が振り抜かれたことで体制を崩してしまうと、隙が出来る。美鈴はそれを見逃さず、身体を無理やり捻り右手を繰り出した。
「!なろっ!!」
俺はなんとか距離を取ろうと無理な体制で地を蹴る。なんとか美鈴の拳が届く範囲から離れたが、その直後小さな衝撃が脇腹を襲った。
「……これで……勝ちです……!!」
美鈴の手は開かれ、少し煙が立ち込めている。なるほど、妖力弾か。
今まで体術主体だったから、正直油断したな。
俺の脇腹には着物が破れ、少し赤くなった身体が見えた。
「……お見事」
そう言ってやるが、声が届くまもなく美鈴は意識を手放してその場に倒れ込む。
まったく、締まらないなぁ。
「んじゃ卒業を祝して、かんぱ〜い!!」
「……いや、なんか軽くないですか?!」
あの後、美鈴の治療を終えて意識が戻るのを待ち、今は小さいながらも宴会を開いている。
机の上には夢乃が腕によりをかけて作った料理が並び、姫咲はいつの間に隠していたのか、秘蔵の酒を持ち出していた。
「いやはや、まさか最後の最後にあんな事を思いつくとはな」
「む、夢中でしたので」
美鈴は少し照れくさい様に顔を赤くしている。
「ま、これで俺も安心してお前を送り出せるな」
普段はあまり酒を飲まない美鈴も、今回ばかりは飲んでいる。
「で、これからどうするんだ?」
「……そうですね。少し、世界を見て回ろうかと」
「ほぅ」
まぁ、これで一生会えないわけじゃないし。何時ぞやの異世界で出会った、成長した美鈴の様に、誰かに仕えているかもしれないが、俺は不死で美鈴は妖怪だ。また会えるさ。
しかし……。
「多分、私はこれでお別れですよね……」
夢乃は見るからに落ち込む。確かに、人間である夢乃には寿命がある。いくら長生きをした所で、あと80年くらいってところか。流石に妖怪との時間感覚とは大きな差がある。
「……そう……ですね。でも、私は一生夢乃さんのことを忘れませんよ!」
「わ、私もです!!」
「……あら、私は忘れられるのかしら」
「い、いや、そんなことありませんよ!!」
全く。姫咲もホントは寂しい癖に、素直じゃねぇなぁ。
こうして、美鈴との宴は夜遅くまで続いていった……。
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暗い森の中、男は一人、草木を踏み分け歩いていた。月明かりすら届かない暗闇の中、しかしながら男の足取りは止まることもなく進む。
広く伸びた枝のせいで、やはり明かりの届かない、すこし開けた空間に出ると、男はやっと足を止めた。
見れば1人の少女が木の根元に力なく横たわっていた。
その姿は妖怪に襲われたのか、既にボロボロで、死んだように眠っていた。
しかし男の気配に気が付いたのか、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
視線が男とぶつかると、あからさまな敵意を向け、睨みつける。
「おやおや。そんなに睨まないでおくれよ」
男はゆっくりと少女に近づく。その姿は構えるわけでもないのに、隙を一切見せないものだった。
「……君はいい眼をしているね。深い闇のような、ドブ底のような。この世の全てを憎んでいる、とてもキレイな眼だよ」
男は薄ら笑いを浮かべ、近づく。
その笑みはお世辞にも友好的とは言えず、まるで爬虫類が舌なめずりをしている姿を連想させるもので、もし少女が余力を残している状態であれば、すぐさま攻撃を加えていただろう。
しかし少女の体力は限界を迎えていて、腕を上げるのすら億劫な程だった。
「この世界は嫌いかい?ならこの世界を創った本人に復讐しようよ」
すぐ側まで歩み寄った男はしゃがみこみ、少女と目線を合わせる。その目は暗闇の中にあっても怪しく光り、1度眼を合わせれば離すことが出来なかった。まるで蛇に睨まれた蛙のように。
「……さぁ、君の心を頂こうか」
霞「このお〜ぞら〜に〜、つ〜ばさをひろ〜げ〜♪」
美「あ、私『蛍の光』の方が良いです」
霞「あ、そうなの?」
姫「とうとう美鈴も卒業なのね」
作「なんとか美鈴がカッコよく書けてれば良いんですけどね……」