東方古神録   作:しおさば

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作「どうも、最近タバコの量が増えてきた、ヘビースモーカーのしおさばです」

霞「恐らく肺は真っ黒だろうな」

作「……それでも止められないのです」

霞「……どうしょうもないな」


73話/門番は頑張るらしい

 

目が覚めると、やはりいつもと同じ天井が目に入る。

もう、この部屋でどれだけの時間を過ごしたのか、100年を超えたあたりから数えるのを辞めてしまったからわからない。

いつも通りにパジャマから着替えて、食事が運ばれてくるのを待つ。あーあ、また今日も退屈でつまらない1日が始まるのか。

紅く染められた部屋で、私はお気に入りのヌイグルミを抱く。何度も壊してしまったから所々継ぎ接ぎだらけだけど、これだけは捨てられない。だって、お姉様が初めて私にくれた大切なヌイグルミなんだもの。

それ以外のオモチャは壊れたら興味がなくなる。だって面白くないんだもん。なんであんなに簡単に壊れるの?

部屋の隅で山積みになった、オモチャだったものには目もくれず、私の頭の中には今日はどんなオモチャが与えられるのかでいっぱいだった。

この部屋には時計もないから、今が何時なのかもわからないけれど、普段ならばもうそろそろ妖精メイドがドアをノックするはずなのに、今日はそれが遅い。

もう。遅いメイドにはお仕置きしなきゃね。

 

いくら待っても、メイドは姿を表さなかった。

どう考えてもおかしい。普段は時間に遅れることなんてないのに。

鍵の掛けられた、重い鉄の扉に耳を当てる。ヒンヤリとした感触が頬を冷やす。この部屋は地下にあるから、物音なんて全く聞こえないし、もし仮に地下じゃなかったとしても、この扉は音を通さないほどに厚い。それでも私は毎日こうやって外の音が聞こえないか耳を当てる。少しでも外の世界を感じたくて。少しでも、私以外の音を感じたくて。

そして毎回気付かされる。

 

私は独りなのだと……。

 

 

-------------------

 

「ひぇー!」

「あ、こら避けるな!」

さっきとは打って変わって、全くと言っていいほど威厳のない戦い方をする門番を、私は弾幕を放ちながら追いかける。既に門の外は穴だらけで、これを修繕するのは骨が折れるだろう。まぁ、私には関係ないけど。

「避けないと当たっちゃうじゃないですか!!」

「だからさっさと当たれっての!!」

「痛いから嫌でーす!!」

なんとも。ほんとにさっきの門番と同一人物なのかしら。

さっきは私の知る限りでも、妖怪としては相当上の実力者に見えたのだけれど。こうやって逃げる様は、お世辞にも『強そう』とは思えない。

「アンタ、ホントに何なのよ!!」

「ただの門番ですよー!!」

叫びながらも、間一髪で弾幕を避けていく。

……そう言えば、かれこれ数十分は逃げ回っているのに、この門番は息切れ1つしていない。

そして何よりも、私の弾幕が1度も当たっていない。

まさか余裕が無い振りをしている?だとしたら何故?何の為に?

「……しまった!!」

そういう事か。完全に策にハマってしまった。コイツは最初から私と戦うつもりなんて無かったんだ。この門番の目的は屋敷の中に私を入れないこと、私を倒すことなんかじゃなかった。

それはそうだ。だって『門番』なのだから。

「アレ?気がついちゃいました?」

「アンタ……見た目の割に頭良いのね」

「ふふ。褒め言葉として受け取っておきます」

まったく。これじゃあの(チルノ)を魔理沙に押し付けた意味がないじゃない。

私は空中で動きを止め、方向転換する。こいつの目的はわかった。ならば私だってコイツに構ってられない。私の目的はこの異変を解決することなのだから。

「おや、もう終わりですか?」

「ふん。アンタがこの異変の犯人ならばいくらでも相手してやるけど、違うんでしょ」

「まぁ、そうですね」

呆気なくも正直に答えた門番は、腰に手を当てため息を吐いた。

「本当はもう少し貴女の実力を見たかったのですが。しょうがないです、ねっ!」

そう言うと、一気に壁をかけ登る。ってかどんな身体能力よ。普通、壁を助走なしで垂直に登る?!

そんな事を考えていると、門番は私のいる高さまで飛んだ。しまった。余計なことを考えていたから反応が少し遅れてしまった。

「これならまだ、夢乃さんの方が強いですよ」

空中で身体を捻り、回し蹴りを繰り出す。私は咄嗟に両腕を引き上げることで、なんとかガードするが、その身体からは想像出来ないほどの威力に数メートル吹き飛ばされた。

「ったく。さっさと帰りたいのに!」

 

-------------------

 

最近、頭の中で誰かの声がする様になってきた。その声は甘く、優しく、私の心の隙間を埋めてくれるような、私の望む声で私の望む台詞を呟く。

最初は独り言だった。

私がそれに反応すると、その声は喜んだ。きっとこの声の主も寂しいんだと思う。

いつしか声と会話をするようになった。

だからもう、寂しくはなかった。私には姿も見えないけれど、それでも私に優しい声があるのだから。

だから、寂しくはない。淋しくはない。悲しくはない。

 

 

それでも。1番聞きたい声は、遥か昔に聞いたきり、この扉を開けてはくれない。

一言でいい。私の名前を呼んでくれるだけでいい。私はここに居ると、その声で証明してくれるだけでいい。

 

きっと、私が悪い子だから。悪い子だから、お姉様は扉を開けてくれないんだ。

私が悪い子だから、私はずっと見慣れたこの部屋から出られないんだ。

そうでしょ?声の主さん。

 

 

 

『アナタは悪くない。』

「嘘よ。だってお姉様は1度だって顔を見せてもくれないんだもの」

『アナタは悪くない。』

「嘘よ。悪い子だから、私は何年も何年も、ココから出られないの」

『アナタは悪くない。……悪いのはこの世界』

「……この世界?」

『アナタは悪くない。悪いのはアナタを閉じ込めたこの世界と、この世界を造った神様』

「神様?」

『そう。アナタは悪くない。だから、悪いこの世界を壊しましょう』

「……そう。そうなんだ。悪いのはこの世界なんだ」

『この世界を守ろうとする奴らも悪い』

「……なら壊さなきゃ」

『そう。壊しなさい。アナタならそれが出来る』

「私には、それが出来る」

『さぁ、先ずはアナタを閉じ込める、この悪い扉を壊しなさい。そうすれば、アナタは自由』

「わかったわ。私、この世界を壊す」

『アナタならそれが出来る。さぁ、自由になりなさい、フランドール(・・・・・・)

 

 

「私が、この世界を壊してやるわ。見ててね、無明(・・)




作「感想で『無明嫌い』と言われました。作者としては狙い通りで嬉しい限りですね」

霞「敵だけど、好きなやつってのもいるだろ?」

作「そうですが、私としては無明はトコトン嫌われて欲しいのです」

霞「歪んだ愛情だな」



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