霞「ってか、俺の出番はまだか?」
作「……恐らく……次回あたりには……」
いきなり現れた目の前のナイフを、勘だけを頼りに避けていく。
博麗の巫女である私は、よく『天才』等と呼ばれることがあるが、その実態は殆どがこの勘によるものだと思っている。それだけこの勘には自信があるし、今までの実績もある。なんせ今も、この勘のおかげで無傷だ。
一体何処にそれだけ隠していたのか、辺り一面は投げられ放置されたナイフで埋め尽くされた。
「アンタ、ホントに人間?」
「えぇ、もちろん」
一瞬で消えたり現れたりする『人間』なんて、見たことも聞いたこともないのだけれど。
咄嗟に地を蹴り、後ろへと飛ぶ。直後、地面へと深く突き刺さるナイフを視界の端に捉えながら、それでも余裕を見せるメイドから目を離さない。
コイツが姿を消す度に、妙な違和感を感じる。何か能力を使っているのだろうけど、自然の流れを狂わせられているような。まぁ、能力を使っている時点で、自然もくそもないのだけれど。
それ以上に違和感というか、一瞬だけ、そうほんの一瞬だけ、世界が止まってしまうかのような。勘とは言えないような、曖昧であやふやな感覚。
しかし、このまま無駄に時間を浪費してもしょうがない。
ならばこの勘とも言えないような、あやふやな感覚に任せてみるのも悪くは無い。
「……あら、もう諦めたの?」
動きを止めた私を訝しむメイド。諦める?面倒くさがる事はあっても、やり始めたことを諦めたことなんて、一度たりともない。
「あんまり、博麗の巫女を舐めないでよね」
そう言って、私は1枚の札を取り出す。
感覚を信じるならば、この1枚で事足りるはず。
「しょうがないから、遊んであげるわ」
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「うぉっ!あっぶな!!」
顔の横スレスレを流れた弾幕。ずり落ちそうになる帽子を抑えながら、広い図書館の中を箒で飛ぶと、紫もやしは動くことすらなく色とりどりの弾幕を放ち続けた。
流石は『魔女』だけはあるぜ。見たこともないような魔法陣を描き、見たこともないような魔法を放つ。
「……ちょこまかと、鬱陶しいわね」
「スピードには、ちょいと自身があるんだ、ぜ!!」
そう言って、箒に魔力を込めスピードを上げる。景色はその速度を増して、一気に後方へと流れた。
紫もやしへと距離を詰めると、ポケットから取り出した八卦炉を構える。もらった、そう確信を込めて弾幕を放つ。
「甘いわよ、泥棒」
放たれた弾幕は、見えない壁にぶち当たり、霧となって消える。
「なんだそれ!ずっりぃ!!」
「これが実力の差よ」
私に向かられた指先から、魔力が放出された。
一瞬にして視界を埋め尽くす、光。
「く、そぉぉおおっ!!」
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「さっきから、避けてばかりじゃない」
投げつけたナイフを避けられる。もう何本投げた事だろうか、数えるのも億劫になる。
それ程に加えられた攻撃も、1度として巫女に当たることなく、そこらじゅうの壁や地面に突き刺さっていた。
今まで、これだけの攻撃を無傷で避けられたことなど無かったのに。流石は『博麗の巫女』と言ったところだろうか。
けれども、私の攻撃が当たらないのと同じく、巫女からの攻撃も、私の能力がある限り当たることは有り得ない。
代わりに私は、
この巫女がお嬢様に辿り着かなければ、それは私の勝ちなのだから。
しかし、こうも避けられ、壁を穴だらけにするのはいただけない。後々修繕する事を考えれば、被害は最小限に抑えるべきだ。ならばいっその事、回避できない状況に追い込むか。
私は懐中時計を取り出す。別に、これが無くても能力は発動できるけれど、これが有ればより正確な時間操作ができる。
私は時間を止めた。世界は色をなくし、モノクロの海へと姿を変える。
この世界の中では私以外は、その動きを全て止める。呼吸も鼓動も、この世界では全てが息を潜め、再び動き出すのを待っている。
追い込むための布石を放つ。投げられたナイフを避ければ、その先には行き止まりの角。次の攻撃は、どうやっても避けられない。
「時よ…動き出せ」
再び色を取り戻した世界。
巫女の目の前には、ナイフが迫る。
アナタはそれを避けるでしょう。でもそれでイイ。
避けることで、自分の首を締めるとも知らずに。
「チェックメイトよ」
そして再び時を止めようとした。
「そうね、アナタはもう詰みよ」
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私は1枚の札を取り出す。
もし、仮にこの感覚を信じるならば、どれだけの攻撃を加えようとも、文字通りメイドには止まって見えているはず。
動きが速いとか、先読みが出来るとか、そんな話じゃない。
ならば答えは簡単だ。
そしてこの札ならば、それらを解決できる。本来ならば普通の人間相手に使うような代物じゃないけど。残念なことに目の前のメイドは普通ではないらしい。なら何も躊躇う必要は無いか。
私は攻撃用の札に混ぜて、この札を投げる。
「無駄ね。お札の無駄遣いって知ってるかしら?」
難なく躱された札は、その全てが地面へと突き刺さる。
「どっかの妖精じゃないんだから、言葉も意味も、使い方も知ってるわよ」
細工は終了。後は上手く掛かってくれれば。
そう思っていると、メイドはふとポケットから何かを取り出した。よく見れば銀色に光る、鎖が付けられた時計のようなもの。
それを見ていたかと思えば、再びあの感覚が私を襲い、目の前にナイフが現れた。
空を飛び、避けると背中に軽い衝撃を受けた。咄嗟に背後からの攻撃かと思ったが、どうやら違い、そこには壁が立ちはだかる。
なるほど、追い詰められたわけだ。
「チェックメイトよ」
なるほど。これでは次の攻撃は避けられない。上手く追い込まれた。
でもそれはコチラも同じ。
メイドが1歩、歩み寄った。その足元すら確認することなく。
そこに、私が投げた札が有るとも知らずに。
「そうね、アナタはもう詰みよ」
札に足が乗せられる。その瞬間に札は効果を発動し始める。
予め込められた霊力が、札から流れ出すと、札が札を口寄せし、鎖のように連なる。それらは一気に天井付近まで登ると、まるで蛇か何かのようにメイドへと絡みついていく。メイドも危険を察知したのか、ナイフで札を切り裂くが、切られる度にまた新たな札が現れ、絡みつく。
「なっ!?」
「無駄よ。博麗の巫女が、生半可な封印術を使うわけないでしょ」
言葉通り、札は絡みつき続け、やがてメイドは指1本動かすことも出来ないほどに雁字搦めとなった。
「さて、これでアンタは終わりだけど、どうする?」
「こ、これは『弾幕ごっこ』でしょ?!し、死ぬような攻撃はダメなのよね?!」
確かに、『弾幕ごっこ』とは人間と妖怪との実力の差を埋めるためのルールであり、誰も死ぬ事のないように作られた。というか、私が考えた。だからこそ、私がそのルールを破るわけにはいかない。
「そうね、死ぬような攻撃はダメよ」
「な、なら……」
「でも……死ぬ程痛い攻撃は……アリなのよ」
「……え?」
「霊符『夢想封印』」
咲「あの巫女、鬼かなにか?!」
作「鬼巫女……そう言うのもあるのか……」
美「あの人、ホントに人間なんですかね」
霊「何か悪口を言われてる気がする」
魔「気のせいだろ」
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