東方古神録   作:しおさば

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あの子、登場


80話/数千年ぶりの式らしい

 

少しの酒の匂いと、陽気な連中の雰囲気を乗せて、柔らかい風が頬を撫でていく。

久しぶりに、気分の良い酒が飲めた。

皆が異変など無かったかのように、楽しく騒げる。それだけでも、紫の成した事には意味があるんじゃないかと思えてきた。

ココでは人間も妖怪も、種族の垣根なんて初めから存在しない。同じ時、同じ場所に集って、こうやって酒が飲める。そんな仲間がいるだけだった。

 

「はーい!創造神様の力ってのを見てみたいぜ!!」

しみじみとこの場の空気を楽しんでいたところに、魔理沙が意味のわからないことを提案してきた。

「実際、創造神様ってのは何が出来るんだぜ?」

「……何でも出来る」

なんか昔にも聞かれたことのある質問だ。そして聞かれる度に、俺自身の能力のチートさを改めて感じる。

「いや、そんな大雑把な答えじゃなくて」

これ以上無いくらいに的確な答えなんだがな。

それでも魔理沙は納得しないらしい。最近のお子様は少しワガママじゃないか?

「……しょうがない。魔理沙、手を出してみな」

「ん?こうか?」

差し出された魔理沙の両手に、俺は手を翳す。柔らかな光が立ち込め、仄かに暖かくなる。

光が小さくなりやがて消えると、魔理沙の両手には溢れんばかりの液体が注がれていた。

「おわっ!なんだこれ!!」

「飲んでみな」

無色透明な液体に、興味を惹かれつつも怪しむ魔理沙。恐る恐る口に運ぶと、それを舐めるように少量口に入れる。

「……う、うまい!!」

「そうだろう。なんせ俺の知りうる最高の酒を創造したからな」

なんて能力の無駄使いだ。自分でやって呆れてくる。きっと月夜見がこの場に居たならば、俺はお説教(3時間コース)確定だろうな。

「……飲み終わっちまった」

「早ぇよ……」

「えー。師匠、私も飲みたいです!!」

はいはい、そう言うと思ってたよ。

俺は両手を合わせる。どうせだ、全員に行き渡るだけの量を造っちまえ。

突如現れる無数の樽。それは魔理沙にあげた酒と同じものが入った、『無くならない』酒樽。ほんと、創造神様大盤振る舞い。

「そんじ2回目の乾杯だー!!」

「「「「おー!!」」」」

 

--------------------

 

「……なんか、『神様』ってののイメージが崩れさる音が聞こえたわ」

騒がしい連中から離れ、私は今日は(・・・)中身の入っていない賽銭箱の前に腰を下ろす。

遠目に見るのはこの神社の祭神。

……ホントに神様なの?

1人で持ち上げるのすら大変であろう酒樽を、水か何かのように勢いよく飲んでいるけど。

「紛うことなき創造神様ですよ」

そう声をかけてきたのは、何故生きているのかわからない初代博麗の巫女、夢乃さん。見た目は20歳を過ぎたくらいなのに、実年齢は……。一応女性だから伏せておこう。

「あの方がいなければ、博麗神社どころか、この世界すら無かったのですから」

「未だに信じられないわ」

普段は社でゴロゴロして、気が向けば人里まで遊びに出かけ、神様ってのは皆こんなもんなの?

「霞様は特別ですよ。なんせ創造神であり、自由を司る神様なのですから」

「自由ねぇ……」

確かに、自由奔放って言葉がピッタリだわ。

ご利益があるのかどうか疑わしいけど。

「それよりも、私としてはアナタに興味があるわ」

「私にですか?」

夢乃さんは驚いた表情を見せる。

「……なんせ先代の巫女に会うのは初めてだから」

前任の巫女は突然居なくなった。幻想郷を守る結界の管理者としても存在する博麗の巫女。その不在はこの世界の存亡も危ぶまれるとして、紫は私をこの幻想郷に連れてきたらしい。それ以前の記憶がない私には、今となってはどうでもいい事だけど。

先代の巫女は、とても強かったらしい。それは戦闘に限らず、その心のあり方までも。誰もが羨むような美しさを持ちながら、こと戦闘になれば鬼神のごとく戦う。『博麗の巫女』が妖怪のみならず、人間からも恐れられているのは、多分そのせいでもあると思う。

「あの門番も言ってたわ。私よりあなたの方が強いって」

自慢ではないが、これでも戦闘には自信があった。並の妖怪ならば負けることはないし、弾幕ごっこならば今まで負けたことは無い。それは私の能力も関係してるけど、大きな要因は恐らくこの『巫女の勘』だろう。

今回の異変も、このお陰で何度救われたことか。それだけ、私はこの勘を信じていた。

 

それでも、あの吸血鬼の妹--フランドールには勝てるとは思えなかった。

勝てる未来が想像出来なかった。もし、あそこで霞さんが現れなかったら、きっと今頃、私は死んでいたかもしれない。

あの日、全てが終わり布団に潜り込んだ時、その事に気がついてしまった。

弾幕ごっこなら勝てた?

それは『幻想郷』の中だから。もし、弾幕ごっこのルールを知らない妖怪が現れたら?

もし、賢者たる紫ですら勝てない相手が現れたら?

私はどうすれば良いのだろうか。

そんな事を考える度に、私の手は小さく震える。

「別に誰かの為とか、そんな大層な目的なんて無いけど。それでも、負けっぱなしは趣味じゃないの」

「……なるほど」

そう言って、夢乃さんは優しく微笑んだ。優しく、一度見たら忘れられないような、そんな笑み。

「なら霞様に弟子入りしてみては?」

「……はい?」

神様に弟子入り?そんな事出来るの?

「そりゃそうですよ。なんせ、紫さんや美鈴さんは、霞様の弟子だったんですよ?」

……確かに、妖怪が神様に弟子入りとか、普通に考えればおかしな話だ。何となく、霞さんなら納得してしまうけれど。

「一度、お話してみてはどうでしょう」

「……考えとくわ」

 

神様に弟子入り……ねぇ。

 

---------------------

 

酒樽を何度か飲み干す。飲み干す度に、樽は再び酒で満たされていく。

俺の霊力が無くならない限り、この樽は自動的に酒を造り続け、渇れることはない。

周りを見れば、もう既に何人かが酔い潰れその場で眠り込んでいた。

やはり、俺と飲み比べ出来るのは同じく神か、鬼くらいなものか。

そんな事を考えながら、樽をその場に置き。気持ちいい夜風を浴びながら、空を眺めていると、突然俺の背中に衝撃が走った。

俺は余りにも予期せぬ事に、受け身も取れず数メートル吹き飛ばされた。

何?!敵襲?!

そんな見当違いな予想とは裏腹に、衝撃の原因たる人物は、堂々と俺の目の前に立つ。

その姿は見覚えがあった。

黒い洋服に金色の髪。赤いリボンのような札を結ぶ、コイツは……。

「やっと見つけたのかー!!」

「ル、ルーミア?!」




霞「やっとルーミアを回収か」

作「長かったですねー」

ル「久しぶりなのかー」

霞「そのバカっぽい喋り方はなんともならなかったのね」



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