プライベートで忙しくなってしまい、やっと更新です。
紫様の命令で、人里へと向かった私は、その現状に言葉をなくすしかなかった。
至るところに飛び散った血溜まり。
凡そ誰か判別すらできなくなった人間の死骸。
燃え盛る家屋。
悲鳴とも嗚咽とも区別がつかない、阿鼻叫喚。
いつの間にか握られた私の拳には血が滴っていた。
遥か昔。
紫様の式となる前。
1人の男と私は出会った。
あの日の事は、きっと忘れることは無い。
当時の私は、鳥羽上皇に愛され、何不自由なく暮らしていた。
それまでに出会った男共とは違い、鳥羽上皇は私の身体ではなく、心を愛してくれた。
それまで、ただの慰みものとしか見られていなかった私にとって、それは余りにも甘美で、暖かい日向の様な愛だった。
しかし、当然ながら私は妖怪。
幾ら抑えようと、その身から溢れる妖気に当てられ続ければ、人間の身には毒にしかならない。
私は、彼を守るために『敢えて』正体を明かし、逃げるように都を去るしかなかった。
逃げた私を討伐にやって来たのは、何度かその名を聞いたことのある、安倍晴明と言う陰陽師。
私の命もここまでか。と半ば諦めた。
「何か言い残すことはあるかい」
そう問われる。
ないわけが無い。
私が去って、彼の容態はどうなったのか。
彼は悲しんでくれているのか。
数多の言葉が私の頭の中を駆け巡った。
しかし、私の口から出たのはたった一言。
「上皇に……私は幸せでしたと……」
殺生石にされ、そこから紫様に救われるまで、長い年月が流れた。
もはや彼は既に亡くなっただろう。
私の心の甘えが、彼を苦しめたのだと、長く長く自分を責めた。
たまたま紫様に助けられた私は、その目的を聞いて驚いた。
『人間と妖怪が共存出来る世界』
そんな物が出来るわけがない。
妖怪は、どこまで行っても妖怪でしかない。
生きているだけで、人間を苦しめる存在でしかない。
「妖怪と人間の違いってなんだと思う?」
紫様に問われたあの日を、今でもハッキリと覚えている。
妖怪とは、人間に対する毒だ。
その身の全ては毒にしかならない。
「なら簡単な話よ」
「毒を持って、人間に仇なす毒を制しなさい」
それが人間への、彼への恩返しに成るならば。私は猛毒となろう。
もはや、人間に愛されることは無理だろう。
それでいい。それでもいい。
愛とは無償だと、彼に教わった。
見返りのない、見返りを望まないのが愛だと。
「それに毒は使い方によっては薬になるのよ」
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瓦礫の山と化した家屋を分け進む。
どうやら、まだ無事な人里の住人は1箇所に集まり、最後の抵抗をしているようだ。
まだ間に合う。
それがわかった瞬間、私の身体は何も考えずに動いていた。
例えこの後、人間から恐れられようとも。
私は一向に構わない。一つでも多くの命を救うことが、私の恩返しであり、愛なのだから。
だから、紫様しか知らないこの姿になろうとも、もはや後悔はない。
「我が主の命により、貴様らをくらいつくす!恐怖し、命乞いも最早意味の無いものとしれ!!」
私の本来の姿、白面金毛九尾の狐。
見上げるほどに大きく、美しく輝く金毛の尾を振り、鋭い爪を剥き出しに、私は人間達の前に降り立つ。その背に多くの命を背負えることが、今はただ誇らしく、嬉しく。目の前の敵が何であろうと、猛毒と化した私は一切の躊躇なく屠り去る。
「我は九尾!!貴様ら如きが我が猛毒に適う事はない!!」
と、言うわけでちょっと短めですが。
今回は藍様の過去を少し書いてみました。
基本、橙が絡まなければ藍様はカッコイイ系女子だと思うんです。
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