東方古神録   作:しおさば

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長らくお待たせしました。

プライベートで忙しくなってしまい、やっと更新です。


83話/幻想大異変-人里①

紫様の命令で、人里へと向かった私は、その現状に言葉をなくすしかなかった。

至るところに飛び散った血溜まり。

凡そ誰か判別すらできなくなった人間の死骸。

燃え盛る家屋。

悲鳴とも嗚咽とも区別がつかない、阿鼻叫喚。

いつの間にか握られた私の拳には血が滴っていた。

 

 

 

遥か昔。

 

紫様の式となる前。

 

1人の男と私は出会った。

あの日の事は、きっと忘れることは無い。

 

当時の私は、鳥羽上皇に愛され、何不自由なく暮らしていた。

それまでに出会った男共とは違い、鳥羽上皇は私の身体ではなく、心を愛してくれた。

それまで、ただの慰みものとしか見られていなかった私にとって、それは余りにも甘美で、暖かい日向の様な愛だった。

 

しかし、当然ながら私は妖怪。

幾ら抑えようと、その身から溢れる妖気に当てられ続ければ、人間の身には毒にしかならない。

 

私は、彼を守るために『敢えて』正体を明かし、逃げるように都を去るしかなかった。

 

逃げた私を討伐にやって来たのは、何度かその名を聞いたことのある、安倍晴明と言う陰陽師。

 

私の命もここまでか。と半ば諦めた。

 

「何か言い残すことはあるかい」

 

そう問われる。

 

ないわけが無い。

私が去って、彼の容態はどうなったのか。

彼は悲しんでくれているのか。

数多の言葉が私の頭の中を駆け巡った。

 

しかし、私の口から出たのはたった一言。

 

「上皇に……私は幸せでしたと……」

 

 

 

 

 

殺生石にされ、そこから紫様に救われるまで、長い年月が流れた。

もはや彼は既に亡くなっただろう。

私の心の甘えが、彼を苦しめたのだと、長く長く自分を責めた。

 

たまたま紫様に助けられた私は、その目的を聞いて驚いた。

『人間と妖怪が共存出来る世界』

 

そんな物が出来るわけがない。

妖怪は、どこまで行っても妖怪でしかない。

生きているだけで、人間を苦しめる存在でしかない。

 

「妖怪と人間の違いってなんだと思う?」

 

紫様に問われたあの日を、今でもハッキリと覚えている。

 

妖怪とは、人間に対する毒だ。

その身の全ては毒にしかならない。

 

「なら簡単な話よ」

 

 

 

 

 

「毒を持って、人間に仇なす毒を制しなさい」

 

 

 

それが人間への、彼への恩返しに成るならば。私は猛毒となろう。

もはや、人間に愛されることは無理だろう。

それでいい。それでもいい。

 

愛とは無償だと、彼に教わった。

見返りのない、見返りを望まないのが愛だと。

 

「それに毒は使い方によっては薬になるのよ」

 

-----------

 

瓦礫の山と化した家屋を分け進む。

どうやら、まだ無事な人里の住人は1箇所に集まり、最後の抵抗をしているようだ。

 

まだ間に合う。

 

それがわかった瞬間、私の身体は何も考えずに動いていた。

例えこの後、人間から恐れられようとも。

私は一向に構わない。一つでも多くの命を救うことが、私の恩返しであり、愛なのだから。

 

だから、紫様しか知らないこの姿になろうとも、もはや後悔はない。

 

 

 

「我が主の命により、貴様らをくらいつくす!恐怖し、命乞いも最早意味の無いものとしれ!!」

 

私の本来の姿、白面金毛九尾の狐。

見上げるほどに大きく、美しく輝く金毛の尾を振り、鋭い爪を剥き出しに、私は人間達の前に降り立つ。その背に多くの命を背負えることが、今はただ誇らしく、嬉しく。目の前の敵が何であろうと、猛毒と化した私は一切の躊躇なく屠り去る。

 

「我は九尾!!貴様ら如きが我が猛毒に適う事はない!!」

 




と、言うわけでちょっと短めですが。

今回は藍様の過去を少し書いてみました。
基本、橙が絡まなければ藍様はカッコイイ系女子だと思うんです。


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