ご了承ください。
side 霞
-時間は遡ること数時間前。
幻想郷を突如として襲った、異形の軍勢による襲撃。
俺にすら気取られず張られた結界によって、対処が遅れた為に、後手にまわらざるを得なかった。
「とにかく、魔理沙は人里へと向かってくれ」
「わ、わかったぜ!!」
そう言って箒に跨り空へと飛び立つ魔理沙を見送り、俺は次の手を考える。
「私はどうすればいい?」
隣に立つ霊夢は、今までにない異変に珍しく多少の狼狽えを見せた。
いくら今までに数多くの異変を解決したと言っても、これだけの規模となれば話は別なのだろう。
そこで俺はふと気が付く。
「……おかしくないか」
この異変の首謀者が誰かは分からないが、少なくとも幻想郷において
現実と幻想の境目。その結界の要はココだ。
ならば必然的に博麗神社を狙うべきだ。それなのに、俺達は能力が使える。
現にルーミアは未だに黒い球体になって辺りをフワフワと飛んでいるし、魔理沙も『魔法』を使って空を飛んでいった。
つまりはこの周辺には結界が貼られていないということ。
それは博麗の巫女を侮っているのか。それとも目的は別にあるのか。
「随分と舐められたものね」
「……もしかして怒ってる?」
「当たり前でしょ!」
暫くして、慌てた表情の紫がやって来た。
紫にとっても予想外の出来事らしく、珍しく困惑の色を見せていた。
「何故博麗神社では能力が使えるのでしょうか」
「そればっかりは分からん。だが、今後ココが狙われないと言いきれない以上、少なくとも霊夢はココを移動するべきでは無いな」
紫は頷きながらも、思考を巡らせているようだった。
「仕方ない。俺が行って、結界を破ってこよう」
いざと言う時に対処できるように、あまり動きたくはないんだけどな。
空を見上げると、さっきまで晴れ渡っていた筈なのに、雲行きは怪しく、分厚い雲が空を多い始めていた。
「それはオススメしませんよ、創造神」
声が聞こえた。
この時ばかりは一番聞きたくなかった声。
なるほど、コイツならば全て合点が行く。
つまりは他の者に手出しをされたくなかったんだ。
だから時間稼ぎとも思える手段で、態々回りくどい事をしたんだ。
「そうだろう。無明」
「さて、それはどうでしょう」
神社の屋根に登り、俺達を見下ろす無明。
貼り付けられた笑みは、より一層不気味に見えた。
「……師匠。結界は私が」
「まぁ、無理だと思いますよ」
無明の動きを警戒しつつも、行動しようとした紫を一言で制する。
「いま、各所に張っている結界は少し特殊な細工を施してあります。あなた如きの妖力では傷一つ付けられません」
「……あら、そんなことやって見なくては分からないじゃない」
口元を扇子で隠し、相手にコチラの真意を悟らせない。そんな紫のやり口は、無明には通用しなかった。
「まぁ、万が一。結界を破壊できたとしても、私が何も考えていないわけがないじゃないですか」
フワリと屋根から飛び上がると、無明はそのまま人里の方向を指さした。
「もし、結界が破られたならば、その瞬間この博麗大結界に大穴を空ける術式が発動します」
「……何を言っているの」
「おや、分かりませんか?現実と幻想の境界を無くしてしまう、と言っているんです」
博麗大結界。それがこの幻想郷にとってどれだけ重要なものか。もし、奴の言う通り、境界が無くなってしまえば、危うい均衡で保たれていたこの世界の住人は、その存在すらも保てなくなる。
外の世界で忘れ去られた存在が、ココで生きていけるのは、博麗大結界によって守られているからだ。身体、心、それらを大結界は外から隠しこの世界に留める為にある。
「そんなことになれば、いくら創造神でも手の打ちようがないのでわ?」
「何が望みだ」
こんな回りくどい方法を取り、幻想郷の住人まで人質にして。
俺は無明を睨みつける。
「世界の再構築ですよ」
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