マートルの生存戦略   作:ジュースのストロー

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予想していた方もいたとは思いますが、前回で完結だというのは嘘です。すみません。
この章が終わってもまだまだ続くつもりなので、これからも宜しくお願いします。




自演乙ww

 

 

《 過去のマートルside 》

 

 

ばっしゃあああああん!

 

頭から水が勢いよく降ってきた。えっ、何? 何で??

というか、ここは何処だ???

 

頭の中が疑問で埋めつくされていると、急に腕を掴まれた。

 

「ひっ!?」

 

まさか後ろに人がいるとは思わなくて、ビックリして振り向くとそこにいたのは……誰だ? 凄い格好しているな。まるでハリーポッターみたいだ。あれ? 私も同じ格好をしてる?? どういう事だ??

 

「私は未来の貴方よ。このままこの場所にいると、トム・リドルとバジリスクがやって来て貴方に服従の呪文をかけるの。だから急いで逃げましょう!」

 

そう言われても未来の自分とはとても思えないのだが……。そもそも私はそんな顔つきではない筈…………ならどんな顔をしているんだ? おかしい、自分の事の筈なのに自分の顔が思い出せない。

 

「とにかく行くわよ! 早く!!」

 

取り敢えず急いでるらしい目の前な人物の言う通りにするべきかと結論付けた私は、未来の私?に手を引かれてトイレの個室を出た。

 

ズルり

 

この音は、まさか……!? 震える体を叱咤して足を動かす。まさか、本当にバジリスクとトム・リドルに私が狙われているのか!! 何故こんな事になったのかとか色々と聞きたい事はあるが今は仕方ない。とにかく逃げるしかない!

 

「目を瞑って!……コケコッコー!!」

 

バジリスクは鶏の朝を告げる鳴き声で逃げ出すのだったか……。目の前の未来の私は本気で私を助けようとしてくれているようだ。

 

アバダ・ケダブラ(息絶えよ)!」

 

「しゃがんで!」

 

声をかけられる前に反射的に体の体制を低くした。すると、すぐに頭上を魔法の閃光が飛んで行くのが感覚で分かった。あ、危なかった……。

転んでしまった手を離してしまった姿勢から慌てて起き上がろうとすると、何か障害物を踏み付ける。

 

「な、何?!」

 

薄く目を開けて確認すると、恐らく死の呪文が当たってしまったのだろう未来の私が床に倒れていた。未来の私が死に、こんな状況で1人になってしまった事に、一気に顔色が悪くなる。とにかく私だけでも逃げなければいけない。流石に動かない人間を運びながらトム・リドルから逃げ切る事は無謀過ぎる。

私は急いで立ち上がると……近くの床に何かキラリと光る物を見つけた。

 

「!! ……これは……。」

 

タイムターナー、逆転時計であった。未来の私が付けていたものなのか、鎖が切れてしまっているその魔法道具を慌てて拾い、私は一回転させた。

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

急に静まり返った周りの雰囲気に多少驚きつつも、逆転時計が成功したのだと、深く息を吐く。このままここにいれば、トム・リドルとバジリスク、未来の私と成り代わった直後の私がやって来る筈だが、私はどうするべきなのだろうか。

未来を知っている私としては何とか助けてあげられないかとも思うが、そもそも私にそんな大それた事が出来るのかも疑問である。恐らくだが未来の私はずっと先の未来から来ていたのだ。鏡で自分の姿を確認した所、ハリーポッターに出て来る嘆きのマートルそのものだった。その姿が未来でああなっているというのなら、それは数時間での変化ではおかしいだろう。そんな未来から来た私でも歯が立たなかったのだ。成り代わった直後の私ではお察しだろう。

 

「力にはなれそうにない……なら、どうするべきか……。」

 

そう言えば、未来の私は「このままだと、トム・リドルに()()()()()をかけられる」と言っていた。という事は殺されはしなかったのだろう。それもそうか、何せ未来の私は生きているから存在しているのだ。それが先程、いや今から一時間後では死の呪文で殺されてしまっているのだ。これは私達が2人いた事への弊害かもしれない。そのせいで片方が死んでも、もう片方を生きて捕らえれば大丈夫だという思考をされてしまったのだろう。

色々な選択肢が頭の中を駆け巡るが、未来の私があの時ああやって私を助け出した事も踏まえると、迂闊には動けない。未来の私の方が情報量も技術もケタ違いに持ってる筈だから、本来ならば行動の指針にすべきなのだ。

だが未来の私はこのままでは死んでしまう。一時間後の私と、未来の私と、自分自身を助けるにはどうしたら良いのか……………………私は1つ決心をした。

 

 

 

 

 

 

 

トイレの個室にて、未来の私がやって来るのを待つ。やがて足音が聞こえて来たので、中に人がいるのをアピールするために敢えて音を出した。

 

「貴方は誰なの?」

 

トイレの外から低くて何処か緊張と警戒を孕んだ声が聞こえて来て、思わず笑ってしまった。

 

「私は、貴方が助けたかった私の一時間後の私よ。」

 

杖を突きつけながら驚いた顔をした未来の私に、また笑ってしまったのはツボに入ったからか、彼女がまだ生きているからかは分からない。

その後、私が詳しく説明をすると納得してくれたのか、彼女は警戒を解いた。そして私は告げる。

 

「ねぇ、こうして会って話してみて確信したけど、貴方は今の暮らしに案外満足してるんじゃない?」

 

「……確信と言いながら聞いてくる辺りが意地が悪いわね。」

 

彼女の顔が引き攣ったのを見て、図星かと思う。

 

「仕方ないわ。私は貴方なんだから。」

 

「はぁ……性格わっる。……ブーメランだわ。」

 

「ふふっ、それ程でもないわ。」

 

「ふふっ、そうね。まぁ、確かに今の暮らしも悪くないというか、結構気に入ってはいるわ。だけどそこに死の危険が隣り合わせなのが嫌なのよね。何でここまで受難が続くのか、サッパリだわ。」

 

疲れた様に溜息を吐く彼女に、未来の事が不安になった。未来の私はそんな状態におかれているのか……。そして恐らくだが、彼女はまだ何か隠している。これが彼女の行動を鈍らせて、あんな結末を生み出した原因の一つなのだろう。

 

「ねぇ、未来の貴方が気に入ってる世界はそんなにアッサリと捨てちゃって良いものなの? 何か、大切なものがあるから気に入ってるんじゃないの??」

 

「…………。」

 

これも図星だったのか、彼女は完全に口を噤んだ。

 

「この際だから、いくら未来の私でもハッキリ言うわ。服従の呪文は諦めなさい。貴方の力じゃ無理よ。」

 

「そ、そんな事…………駄目だった所をタイムターナーでまた直せば……」

 

「そんな考えだから失敗するのよ。私は未来を知っている訳ではないけど、私自身の事は何となく分かるわ。恐らく何か気分が良くなる心的要員でもあって、突発的に事を起こしたんでしょう?」

 

「うっ……。」

 

過去の私相手にここまで図星を指摘されて感情を吐露する何て、未来の私はどれだけ甘ったれているのだろうか。大切な物が出来て悪い方向に不抜けてしまったのか?

 

「未来の私ながら情けないわ。そもそも大切な人を捨ててまでも保身に走る何て…………いっそ入れ替りましょうか?」

 

「えっ?!」

 

本気ではないが、少し位虐めてもバチは当たらないだろう。それだけ、未来の私が大切な人を蔑ろにして自分の欲を取った事に腹が立った。

 

「そうよ。私ならきっと貴方の言う大切な人を大切にしてあげるわ。貴方は気が済むまで何回も繰り返せば良いじゃない。」

 

「そ、それは!………………ごめんなさい。」

 

未来の私も、私自信が本気じゃなくて何を言いたかったのかを察したのか、謝って来た。

 

「ふんっ、謝る相手が違うわ。……はぁ。」

 

私は彼女の目に溜まった雫をすくうと、頭を撫でて優しく微笑んだ。

 

「大丈夫よ。私はちゃんと決意したんだから。だから、その決意を無駄にせず、貴方は貴方のするべき事をして。」

 

「私の、するべき事…………。」

 

「そう、ちなみに私のするべき事はこのまま制限時間まで隠れながら暇を潰す事ね。」

 

「狡いわ……」

 

「ふふっ、私は貴方なんだから仕方ないでしょっ。」

 

笑って出て行った私は、未来の私へと希望を託す事にした。きっと大丈夫だ。未来の私も私なのだから…………

 

 

 

 

 

 

 

 

《 未来のマートルside 》

 

 

 

過去の私からこの後起きる事を伝えられ、私が密かに考えていた後ろめたさも看破され、エールを貰った私はあの女子トイレに残って目眩し呪文をかけて隠れていた。

 

私の記憶通りにトイレの中へと押し込まれて水をかけられた過去の私は、しばらくの間呆然としていると、ブツブツと考え事を始めた。伸びそうになる手を抑えて、無防備な彼女のローブにタイムターナーを入れると、私はトイレの個室で息を潜めて、事が終わるのをただただ待った。

 

「っこれは…………」

 

我が君が私を捕まえて服従の呪文をかけている頃、私には何か記憶が流れ込んで来ていた。恐らくこの記憶は先程出会った過去の私の記憶だ。少し先で我が君と話をしている過去の私にも同様の物が流れ込んだらしく、私にしては珍しく狼狽えていた。

成程、確かに過去の私の言う通りだ。客観的に自分を見て、改めて自らの過ちに気付いた。

 

 

 

 

 

『マートル! 心配したんだよ!!』

 

『ナギニ……ごめんなさい。ありがとう。』

 

我が君達が完全にいなくなったであろう時までトイレに隠れ、やっとの事で秘密の部屋へと戻って来た私はナギニにぎゅうぎゅうに巻きつかれて苦しくなりながらも、何とかそれだけは伝えた。

本当に彼女には頭が上がらなくなってしまった。私が今後、彼女を裏切る事は決してないだろう。

ナギニは私の変化に気付いたのか、ホッとした顔をすると、嬉しそうに笑った。

 

『マートル、おかえりなさい!』

 

『!……ただいま、ナギニ。』

 

まだ少しだけ、この選択で良いのか不安だったが、ナギニの顔を見たらこれが正しいのだとストンと理解出来た。

 

『あの……所でそれは何なの?』

 

『これ? 分からないけど、綺麗でしょ!』

 

ナギニはよっぽど暇だったのか、渡しておいた呪文学の本の他にも何冊か本を引っ張り出し、そこら辺の雑貨で遊んでいた様だ。その中でもナギニがクッションにしている金色のキラキラした細い糸の集合体は何なのかサッパリ分からない。

ナギニがその上から退いてくれたので、手に取ってマジマジと見ると、それは長い金髪のカツラであった。

 

「これ、どこかで…………!!」

 

周りを探すと見つかったのは真っ赤な縁の眼鏡。あぁ成程、そう言う事だったのか……。

 

「っ私の性悪女めっ!!」

 

何もかも私の自作自演。あの書店にトム・リドルの日記が置いてあったのはどうか知らないが、恐らくタイムターナーを雑貨屋の主人に押し付けたのも、書店の女性店員に変装していたのも未来の私なのだ。だからあんなに人をおちょくって、笑っていたのかと酷く納得する。1発頭を殴ってやろうかと思ったが止めた。それをすると私もいつか同じ痛みを感じてしまう。

 

『マートル、どうしたの? 大丈夫??』

 

急に怒り始めた私を心配してか、ナギニが優しく声をかけて来る。

 

『大丈夫よ……ごめんね、びっくりさせちゃって。』

 

『うぅんっ! 平気!! あっそうだ、私ね呪文覚えたんだ! 』

 

そう言ってナギニが杖を使わずに放ったのはエクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)だった。尻尾を杖の変わりに使い、その先端から銀色の輝きが飛び出す。それは形を形成はせずとも、とても綺麗であった。

 

『どう、綺麗でしょ!』

 

『そうね…』

 

パトローナムはあっという間に空気に消えていってしまったが、それでもナギニはこれを杖なしで行ったのだ。彼女の魔法力の高さが伺える。

 

『ありがとう、ナギニ……気を遣ってくれたのよね。』

 

『べつに、自慢したかっただけだもん…』

 

こういう、普段は素直なのに感謝されると照れ隠しをするナギニはやっぱり愛らしい。顔を背けてボソボソと呟いていたが、尻尾が隠しきれない程揺れていたのが視界に入った。

 

「あ!! という事は本も用意しないと駄目かしら!」

 

〝タイムターナーと時間の旅〟の本は未来の私がどうぞ見て、と言わんばかりに飾っていたのだ。元から書店にある可能性も少なからずあるが、あの書店はマグルのものである。やはり、自分で用意しなければならないだろう。

 

『ごめんなさいナギニ、ちょっと図書館に用事が出来たから行ってくるわ。』

 

『図書館? なら私もついて行っても良い??』

 

『え……うーん。目隠し呪文を掛けるし、大丈夫かしら…。』

 

今まで散々待たせてしまったので、これ以上はしのびなかったのもある。私はナギニをいつかの様にポケットに入れると、目隠し呪文をかけてそっと必要の部屋を出た。

少ないとはいえ、いない訳では無い生徒とぶつからないように気を付けながらも図書館を目指す。本当は借パクなんてしてはいけないんだろうが、それも仕方ない。幸いに、過去の私は本を立ち読みするだけで留めていたので、夏休みが明けたらこっそり返しておこう。

〝タイムターナーと時間の旅〟…………物語、ではないし、説明書や図鑑が置いてある場所は…………うーん、見つからない。それなら分野毎に並べられている棚にあるのかと見ていくと、「命の神秘」関連のコーナーに何故か並んでいた。よく見ると近くに〝賢者の石の可能性〟や〝魂の引き裂き方〟といった本がある。これは禁書庫のものじゃないのかと思ったが、私としてはありがたいので一緒にパクっておいた。休みが明けたら返す、返すから…………1年後の夏休みだが。

 

『あっ、主様!』

 

『!!』

 

ここで、今まで驚くくらいに静かだったナギニが声をあげる。ナギニがポケットから出した顔を向ける先を追うと、確かに我が君がそこを歩いていた。しかもナギニの小さくない声が聞こえたのか、こっちに目を向ける我が君。蛇に睨まれた蛙とはこの事かと、固まってしまった私だったが、我が君が気のせいかと視線を逸らしたのでホッとした。

 

『ナギニ駄目よ。過去の人にはなるべく干渉しちゃいけないの。』

 

『えぇ〜、少しお話する位は駄目? 他には何もしないよ。』

 

『それでも、よ。それだけ過去への干渉はリスクを伴うのよ。私が小石を蹴ったら未来が滅亡する位にはね。』

 

『そ、そんなに…………そっかぁ、残念だけど仕方ないね。』

 

流石にそれは冗談だったのだが、素直なナギニは信じたみたいである。私はナギニが将来変な男に騙されないか心配だ。……いや、もしそんな事になっても我が君の鉄槌が降りるから大丈夫か。

 

 

 

 

 

 

『それじゃあ、元の時間に戻りましょうね。これ以上此処にいても仕方ないわ。』

 

必要の部屋にて、私はナギニ、本3冊、金髪のカツラ、真っ赤な眼鏡、タイムターナーを持つと、部屋を出て廊下を3回行き来した。心の中で暖炉とフル・パウダーを願うと、現れた暖炉にフル・パウダーを投げ入れて、私は過去の書店へと戻った。

 

「あんた……魔女か?」

 

横から声を掛けられてビックリすると、いつかの雑貨屋さんの男性店員がそこにいた。恐らく、私が急に書店の前へと現れたのを見ていたのだろう。目隠し呪文を掛けておけば良かったと後悔するも、見られてしまったのではもう遅い。

 

「子供の魔女か……売ったらちっとは金になるか……?」

 

小声で言ったつもりなのだろうが、丸聞こえである。怪しく笑みを作りながらも「怖くないよ。お家に連れてってあげるよ。」とのたまう男にアバダ・ケダブラ(息絶えよ)をかけてしまおうかとも思ったが、重要な事を思い出した。匂いが付いているので、ここで魔法を使えないのである。正当防衛を主張すれば、お咎め無しになる可能性も高いが、変に目を付けられるのは御免である。そのためここをどうやって切り抜けようかと考えていると、ポケットのナギニがとんでもない事を言ってきた。

 

『えっ、本当にそれをするの??』

 

『大丈夫だよ! 更に追撃もするから!! だからマートルは離れててね。』

 

納得いかない状態だったが、既に腕を引っ張られて裏道に押し込まれている私にはあまり時間もない。彼女の言う通りにした方が私としても都合が良く、私は渋々ナギニをポケットから取り出すと……

 

男に向かってぶん投げた

 

それはもう、ビターーン!という音がしそうな勢いで投げた。そして始めのうちは何だか分かってない様子の男だったが、それが蛇だと分かると悲鳴を上げ始める。私はそんな男とナギニを尻目に結構な距離を離れると、ナギニに大声で合図を出した。

 

ステューピファイ(麻痺せよ)!』

 

本当に見事にナギニが呪文を男に当てると、男は気を失い、道に倒れた。私はそれを確認すると、元の場所に戻ってナギニにお礼を言って抱き上げる。

 

『どんなもんだい!!』

 

私を守れたのが嬉しかったのか、いつもより二割増で鼻高々なのが可愛らしい。そのままナギニに頼みごとをすると、快く引き受けてくれて良かった。

まずは私達の記憶を消すオブリビエイト(忘れよ)。そしてタイムターナーに凍結呪文と追尾呪文を掛ける。凍結呪文は男が誤ってタイムターナーを使ってしまわない様に。追尾呪文は男がタイムターナーを他の人間に売ったり捨てたりしない様にだ。こうして男には悪魔のネックレスが取り憑いてしまった訳だが、人身売買をしようとしていたのだから自業自得である。流石に全ての呪文をナギニが覚えていた訳ではないので私が教えはしたが、1発で全てを成功させたナギニは凄い。

ようやく段取りが整ったので、元の時間へと戻る。今回はちゃんと裏道に入ってからタイムターナーを取り出すと呪文を唱える。

 

フィニート・インカーターテム(呪文よ終われ)

 

すると視界がクルクルと変わり、やっと元の時間へと戻って来る事が出来た。ここで、以前の比じゃない量の記憶が流れ込んで来た。私が我が君に殺された記憶、その他のいくつかの可能性があったであろう記憶。ここにいる私が実際に体験した事の他に、今までの私は多くの可能性を体験して来たらしい。それら全てが頭に流れ込んで来て、軽く眩暈を覚えた。

だが、ここで終えられないのが辛い所だ。ここから、少し前へと飛んで書店の女性店員に成り変わらなければならない。いい加減、眠くなって来た目を擦りつつもタイムターナーを回転させて、私は私が雑貨店に来る少し前の時間へと飛んだ。

マグルの書店は何と、廃業していたみたいでシャッターが閉まっていた。ボロボロの建物や誇りっぽい店内を私は離れながらナギニに清めの魔法で綺麗にしてもらい、何とか営業出来る程度の見た目にはなった。中の本は廃業してもそのままになったいたので、良かった。それらの中から例の日記帳も見つける事が出来、これには重点的に清めの呪文を掛ける。これら全ての魔法をナギニにやらせて、遠くからただ眺めているだけの私は申し訳なさで一杯であった。

机に顔がギリギリ見える程度の本の壁を作り、私はカツラと眼鏡で変装をする。流石に服装を変えるのは、蛇であるナギニには見本がないとイメージがし難しかったので、本で体を隠すための壁である。

準備も整い、待っている間はそこら辺の適当な本を読んでいたが、過去の私に呼ばれた事により返事をする。

記憶通りに我が君の名前を入れてくれないかとお願いされたので日記帳を持って奥の部屋へと入ると、魔法で名前を入れた。そこで聞こえて来た声に思わず吹き出してしまったのは仕方ない。

 

『マートル! この本、マートルのネックレスと同じだよ!!』

 

『ナギニ、しぃ〜。』

 

過去の私は1人シューシュー言う変なヤツに見られたのではと思っていたが、話の内容ががっつり分かっていたのなら確かに面白い。聞かれてなかっただろうとハラハラする過去の自分を虐めたくなってしまう気持ちも分からなくもないだろう。名前を入れた日記帳を持って2人を呼んだ後に爆弾をいくつか投下する。

 

「ちなみに、男性の名前を頼まれていましたが、彼氏だったり?」

 

「違います。」

 

予想通りの返しに思わず彼女の前でも笑ってしまったが、彼女は変な人を見る目だけ残してさっさと店を出て行った。

 

「あーー、おかしっ。」

 

『……ねぇマートル、もしかして書店の店員さんってマートルだったの?』

 

『えっ、今まで気付いてなかったの?』

 

『気付かないよ! というか何で変装してるの?? 全然分からなかったよ!!』

 

『それは過去の自分に私だってバレないためよ。本に書いてあったでしょ? 怪しまれるって…………あ。』

 

以前読んだ〝タイムターナーと時間の旅〟について思い出した。大事な事は3つ。1つ目は決して過去の自分に顔を見られない事。これは未来の自分に出会った過去の自分が未来の自分を怪しんで殺してしまう事例が多発した事かららしい。2つ目は目的以外の改変を最小に留める事。少しの変化でも過去に干渉するという事は大きな未来の改変を引き起こしてしまうので、必要最低限に留めなければいけないのだ。3つ目はタイムターナーを壊してはいけない事。タイムターナーが壊れると、もう過去から未来へと戻れなくなってしまう。壊れたタイムターナーは魔法でも元には戻せないので注意が必要だ。

 

私は本の注意書きの3つの内の2つを破ろうとしていたのか。……その本を用意したのも自分自身なのに、結局過去の私の力がなければ守れなかったとは情けない。

 

「あー、本当に私って……」

 

『?』

 

『何でもないよ、いい加減帰ろっか。』

 

『うん! あ、結局主様の喜ぶ事って見つからなかったね。』

 

『確かに。…………!!』

 

待てよ。あれならもしかしたら我が君も喜んでくれるかもしれない……

 

『えっ、私に出来るかな?』

 

『大丈夫よ。私も練習手伝うわ!』

 

 

 

 

 

 

『それで、2人は何を見せてくれるんだい?』

 

『えへへー。』

 

『まぁ、発案は私ですが、厳密に言うとやるのはナギニなんですけどね。』

 

現在時刻は夜の7時、我が君の部屋にて我が君とナギニの食事を眺めながら先程の話を出すと我が君は興味は持ってくれた様であった。

 

『じゃあ行きますね。』

 

『よっしゃお願い! マートル!!』

 

『OK!』

 

そして私はナギニを手に取ると………………

 

窓の外にぶん投げた

 

「はっ? えっ、ナギニ???」

 

我が君が珍しく狼狽えている横で私はどんどんと離れて行くナギニを見つめる。ナギニは段々と自由落下して行くと、地面に着地する前に自らスポンジファイ(衰えよ)で地面を柔らかくして軟着した。

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)エ!』

 

そして、守護霊の呪文で大蛇を出すと、それに乗って部屋へと戻って来た。その時のナギニはコバンザメの様なフイット感で大蛇にくっついていたと私は妙に感心した。

 

『じゃじゃーーん! どうっ?』

 

そしてドヤ顔のナギニを目の前にして我が君と私は指を立てたのだが、我が君はしばらくナギニを褒め称えると私の方にに振り向いて

 

「マートル、後でお話ね。」

 

とそれはそれは良い笑顔で言って来た。

あれ? 何か私は間違えたのか??

 

 

 

ナギニが横で爆睡する中、私は眠気もすっ飛ぶ説教を受けて翌日の朝にナギニの起床と共に開放された。

 

 

 

 






ナギニは自分がマートルの食事を奪っているのに気付いていません。マートルはいつも先に夕食を済ませているという事になっています。ナギニが残した分だけがマートルのお腹にたまります。

ナギニをぶん投げたのは、距離を離さないと匂い関連て訴えられてしまうから。時間短縮と我が君を驚かせるのも兼ねてます。
我が君は守護霊自体は綺麗だと気に入ったが、ナギニを危険な目に合わせたマートルに怒りました。また、我が君は直前まで寝ていたので全く眠くなかったという。
やっと話の落ちがいつも通りになりました。何だかマートルの不憫さにホッとしたのは私だけではないですよね?



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