保護官のお仕事   作:グリザー

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第2話

「はぁー」

 

深いため息をつき、前を見据える。

そこには木でできたドアが立っている。

正直回れ右をして帰りたいが、それは叶わない願いだろう。

 

俺は再びため息をついた後、覚悟を決めてドアをノックする。

 

「アルバ・ラタルです」

「入っていいぞ」

 

俺は、許可をもらい中に入る。

すると目の前には、執務机の上に書類を散らばらせた少し髪の少ない中年の男性がいた。

男は俺が中に入ったことを確認すると、俺にドアを閉めるように指示をしつつ、書類を片付ける。

 

「それで、お前がここに呼ばれた意味はわかるか?」

「いえ、わかりません」

 

そう言った瞬間、辺りの重圧が上がり、温度が下がったような感覚に陥る。

狭い執務室、人も近くにいないからか周りは静寂が支配している環境。その中で俺は机を挟み、ある戦とも言えるものをしていた。

 

「なら、もう少しはっきりと言おう――お前、常時何匹出している?」

「常時出しているのは三匹だけです」

「そうかそうか、で何匹に餌をやっている?」

「その三匹だけですが?」

「嘘をつくな!」

 

上司――クラルは大きく机を叩きながら、こちらに資料を投げ渡す。

そこにはこの部署の予算について書かれてあり、一つの折れ線グラフが大きく下落していた。

 

「ここ数ヶ月間、保護動物に与えるための餌の総量が急速に減っていってた!」

「はぁ」

「そして!ここ最近大型生物を保護したのかと思ったが違かった!」

「それで、俺が犯人だと?」

「そうだ、お前のレアスキルで飼っている奴らへの餌で減ったものだと思っている」

「いえ、違いますが?」

「は?」

 

なにバカなこと言ってんだ?とでも言うような顔をしているクラルを無視して話し始める。

 

「俺は常時三匹までしか出しませんし、そもそも大食らいどもは最近無茶させたから当分は保管しています。なので今回は俺ではありません」

 

俺のレアスキルで飼っている中には確かに大型のものもいる。しかしそいつらは生体データ取る時にすこし無茶をさせてしまったので、療養中。当分は出てこない。

なので今回は俺ではない。

 

「本当か?」

「はい」

「絶対?」

「絶対」

「嘘ついてない?」

「ついてない」

「わかった、なら犯人見つけるまでの期間付き減給で済ましてやる」

「おい待てやコラ」

 

なに言ってんだこのハゲ?

ハゲは、頬杖をつきながら、いかにもやる気なさそうに話し始める。

 

「今回、見当違いな事で怒鳴ったのはまあ謝ろう。だがな、それ以外でもお前いやお前らはやり過ぎだ」

「何がです」

「餌だよ。確かにウチは密猟者や群れの中で追い出されたやつを保護して、回復まで預かるさ。それは保護官として、自然を愛するものとして当たり前のことだ」

 

しかし、とため息をつきながら紡いでいく。

 

「ここはどうしようもない奴を一時的に保護するだけであって、懐いた奴を飼う場所でも、餌をやる場所でもないんだ。そこらへんわかっているか?」

「わかってます」

「嘘をつくな。お前らが本当にわかっていたら、うちの食料はいつでも問題ないんだよ」

「うっ」

 

この場所では、群れで居場所のなくなった動物や密猟者の被害にあった動物を一時的に保護する事がある。

もちろん、それは傷が治ってしまえば再び野に放つ。

だが、だいたいの動物は餌をやる人をなついてなかなか離れてくれなくて、最後は一苦労するのだが、そこは涙を飲んで心を鬼にするのが決まりだ。

 

しかし、そいつを気に入ってしまい、自分の寮内で飼ってしまう者もどうしてもいるのだ。

というか俺もその一人だ。

もっとも、最後まで面倒を見ることと、給料の中から食料代を出せる事が条件だが、そんなに厳しいものでもない。

 

「第一なぁ、わかるか?お前らが飼っている奴らの、主にお前が飼ってる奴の分で、常時うちの食料カツカツなの」

「ですが」

「金払ってもな、一度に持ってこれる食料の数には限りがあるの、輸送船だって月に3回しか来ないし、買い出し行くのも費用かかって処理が大変なんだぞ?主に俺の」

 

ぐうの音も出ない。

実際にそうなのだ。ここは管理世界の中もっとも自然の残った場所で、文明なんて管理局が来るまでなかった。そんな場所だから、動植物の保護に使われているのだ。

だからこそ、俺たちみたいに中で住む人は定期的にくる輸送船に食料などを頼らなければならないから、食料の総量というのはどうしても決まってきてしまう。

 

だから考えなしに動物を飼ってしまうと、そこが問題になってしまう。

最近は管理局が嘆願を聞き入れたので、問題はなくなってたのだが、ダメになってしまったようだ。

 

俺はため息をつき、諦めをつけた。

 

「はいはい、分かりましたよ。今回の食料についての原因調査してくればいいんでしょう?」

「ああそうだ。だが忘れるな、終わるまで減給だからな」

「地獄に落ちろクソ上司」

「終わるまで減棒だ」

 

解せぬ。

 

―――――

 

「こんな事があったんだよ」

「そらお前が悪い」

 

俺は呼び出しの後、同僚と食堂で飯を食べていた。

今日の昼食はラーメン。

地球という管理外世界の食べ物だが、なかなかどうしてこの味は病みつきになる。

 

「で、犯人の目星はついてるのか?」

「あぁ」

 

あの食糧倉庫は昔俺が忍び込んだせいで、警戒がかなり厳重なものになっている。

だからこそ、職員以外の犯行と絞ってやれば、おおよその見当はつく。犯人が職員だった場合はその後探せばいい。

一番立証するのに面倒なのは、動物相手なのだから。

 

「とりあえずの一匹目は、ライアーフォックスだ」

「あいつらは賢いからありえるな」

 

ライアーフォックス種。こいつらは人間よりも賢いとされていて、事実ここで保護される前はうまく騙して餌をとったりしてたらしい。

ちなみに保護されるようになった原因は、騙されたものが怒りに任せて山狩しすぎたかららしい。

 

こいつの特性は知性以外にも、擬態魔法という特殊な魔法がある。

能力としては単純で、相手の側をコピーするだけのものなのだが、声帯や体臭までも真似ることができる。

まさにライアーの名前にふさわしい動物だ。

 

なにか窃盗系の出来事が起きたら、こいつを疑うことは当たり前になっている。

だからこいつのことは語らず、次の候補に移る。

 

「二匹目はグリードラビットだ」

 

同僚はあぁ、と納得するような声を出す。

グリードラビットは、見た目的に言えばただのウサギなのだが、侮ることなかれ、こいつらはとにかく物を奪う。

特に食糧と光りものなら何がなんでも奪いに行く。

事実こいつらの特性を知らずに、近づいたやつがネックレスや時計を取られることは多い。

 

だが、こいつらには一つあまりにも残念なところがあった。

――知性だ。

こいつら、どうも光っているのならなんだろうと御構い無しだ。

懐中電灯、眼鏡、そして水面の反射だ。

 

湾岸部に生息していたやつらは、海の乱反射でキラキラ光っている海水の中に躊躇なく飛び込んでいき、そのまま溺れていったものが殆ど。山に生息していたやつらは、比較的そのような事故はなかったのだが、竜種やカラス系のやつらの巣に特攻していき、自分から餌になることをやめなかった。

 

その結果、こいつもここで保護することになった。

だがその保護方法は特殊なことは何一つしない。

ただあいつらの巣に、常時魔力で光る光源を入れているだけだ。

あいつらは一番光っているものに突撃する。

だからこそ、一番光るものを巣にいれておけばなんの問題もないということだ。

巣穴は、保護官の寮や施設からは十分に放してはいたが、一匹が忍び込み、そこから他の奴らも忍び込む。なんてこともありえる。

だが、基本的に馬鹿なので、とりあえずの候補だ。

あいつらはそこまで賢くない。

 

「三匹目は――――」

「おいおい、そいつがそんなことするか?」

「いや、多分する。というよりこの中では一番有力だと俺は思っている」

 

同僚は首を横にふるながらありえないという。

だが、俺の考えが正しければ、おそらくこいつだと思っている。これは俺の保護官としての感が囁いていた。

 

「はー、じゃあ後で結果を教えてくれ」

「おう、もし当たってたら俺に酒をおごってくれ」

「なら外れてたら俺に酒をよこせ」

「外れたら、な」

 

勝負は今日の夜だ。

 

とりあえず、それまではみんなを愛でて時間を潰すのが一番かもしれん。

きっとそうだ。俺の保護官としての感もそう囁いている。そんな気がする。




この作品では、このように作者の考えた動物がたくさん出てきます。
え?こんな動物ありえないって?魔法の力で進化したんだよ(投げやり
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