あの日あの時あの場所で、   作:浮火兎

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 先日の風邪から二日経ち、私はようやく外出解禁の判を両親から貰うことができた。

 それから真っ先に向かったのは診療所、ジュードの自宅であるマティス医院だ。私は自作の昼食を詰めたバスケットを片手に、朝の診察が始まる前にも関わらず、お構いなしに玄関扉を開け廊下奥の住居部分に繋がる扉をノックする。

 

「おはようございます、レイアです」

 

 声を掛けると「はーい!」という返事にパタパタと小走りな足音がする。すぐに扉は開かれ、ジュードの母――エリン先生が出迎えてくれた。

 

「おはよう、レイア。もう元気になったのね。よかったわ」

「ご心配おかけしました。ジュードは?」

「まだ布団の中よ。もうすぐ朝ご飯だから起こして来てくれる? あ、レイアも食べて行く?」

「ありがとう先生。でも、おうちで食べて来たから大丈夫」

 

 突然の訪問にも関わらず気兼ねない会話ができるほど、ロランド家とマティス家の親交は深い。

 マティス家夫婦はどちらも医師で妻エリンが先生、夫ディラックが大先生と皆から敬意を込めて呼ばれている。

 朝食を断った私は勝手知ったる他人の家とばかりにまっすぐジュードの自室へと向かう。途中、リビングで珈琲片手に新聞を読むジュードの父――ディラック大先生にも挨拶は忘れない。

 

「大先生、おはようございます。お邪魔してます」

「レイア、来てたのか」

 

 おはようと言いながら彼は新聞を丁寧に畳み、私を手招く。近寄った私の手首を掴み、脈をはかりはじめる。

 

「体調はどうだ?」

「もう平気」

「そうか。バスケットを持っているということは、今日は出かけるのか?」

「この前術を失敗してジュードを水浸しにしちゃったから、その埋め合わせにね」

 

 実はあの後、巻き添えを食らった彼の怒りは説教だけでは済まなかった。腹の虫が治まらないジュードのご機嫌取りに、私は彼のワガママを一つ聞くことで手打ちとなった。それが、『治ったら一緒に海停に遊びに行こう』である。

 大先生は腕時計と睨めっこをしながら、よしと一言呟いた。何も言われないということは、どうやら正常値らしい。

 主治医であるディラック先生には小さな頃から大変お世話になっている。私が意識せぬ内にこの身体は発熱、動悸、息切れを頻繁に起こすため、大先生の『レイアと会ったらまず脈をはかる』というのは、もはや私たちの間では挨拶に等しい行為となっていた。

 これが意外と早期発見に繋がり、少しでもディラック先生の眉が上がると、私はジュードと共に部屋に押し込められる。一体どんな処置だと判断を疑うが、私特有の回復法には間違ない。

 

「病み上がりなのだから、簡単な健康診断をしてからなら許可しよう。遊びに行く前に一度診察室によりなさい」

 

 私は素直に頷いた。

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