インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~ 作:たちゅや
織斑一夏は壁にもたれ疲れ果てていた。
隣には同じく憔悴しきった篠ノ之箒にセシリア・オルコットがいた。
三人は先ほどまで秋野龍也が提案したVR訓練を行い、とんでもない目に遭っていたのだ。
何度も繰り返される戦闘訓練。
敵はこちらの攻撃パターンを学習し、一枚も二枚も上の技術でこちらをねじ伏せにかかってくる。
対して、こちらはそれに対抗する手段の構築と実践を行わねばならない。
瞬時に判断をし、行動し続けるのはとても辛いことであった。
更に言えば、一つの戦闘訓練が終わるとすぐさま、両方の機体のエネルギーは補充され再開されるという鬼畜仕様。
そんな訓練をみっちりと二時間ほど行ったのだから、例えVRでデータ上ではあったが疲れ果てるのも無理はなかった。
龍也は倒れている三人にタオルとぬるめのドリンクを渡しながら、今日の訓練の感想を聞いていた。
「龍也の趣味が全開だったけど、俺は瞬時加速の使い所がポイントかなぁ、と思った」
「そうだな。あと、零落白夜も燃費が悪いからエネルギー管理をもっとできるようになろう」
続けてオルコットが告げた。
「わたくしは、接近戦に持ち込ませない戦術をもう少し練らないといけませんわね……。早く偏向射撃を習得しなくては……」
「オルコット嬢はどっちかというと、色んなタイプの敵との経験値を積めば、戦術の幅が広がると思うけどね。偏向射撃については、アドバイスがしにくいなー。適性はあるんだから、あとはきっかけ次第なんだろうけど。篠ノ之はどうだった?」
「……龍也、一体何なのだ。あのバイクのような形に変形する機体は」
「アレがそいつのウリなんだよ。中々楽しかっただろ?」
篠ノ之は複雑な表情のままで続きを言った。
「中距離タイプという話だから、どんな相手かと思えばあんな変わり者とは思わなかったぞ。動きは速い。武器はマチェットだが、まさか指が武器になっているとは……。こちらも不慣れな機体だったので対応しにくかった」
そうか、と答えると一夏が篠ノ之に訊ねた。
「不慣れな機体って箒はどんなISを使ってたんだ?」
「言ってもいいのか龍也?」
「いいさ、俺が説明する。今回、篠ノ之に使ってもらったのは現在、俺がブキヤで開発している機体の試作機だ。“轟雷”っていう機体なんだが、これが中々良いフレームアームズなんだよ」
強力な装甲を持ち、装備交換率も良く整備もしやすい。派生機もたくさん出たというフレームアームズ界ではとっても大切な存在なのだ。
一応、言っておくと篠ノ之が装着したのはガールの方の轟雷である。
「まぁ、打鉄によく似てるな、と感じたが動かすとやはり違うものだな」
「だが、良い機体だったろ?」
うむ、と頷く篠ノ之に、思わず笑顔になる。
「……さて、強化訓練一日目が終了したわけだが、来週行われる対抗戦の前日まで実機とVR訓練をバランスよく行っていくぞ!」
一夏達はマジか……とぼやくのであった。
●
その後、龍也は自室で今日の訓練内容を纏めていた。
正直な意見を言うと、思った以上に一夏は動けていたと考える。
やはり、問題点は経験の無さだ。エネルギー管理にしろ、瞬時加速の使用にしろ、戦闘における場数が少ないので、切れるカードが少なすぎる。
この辺りを強化してあげるだけで一皮むける気がするのだ。
一つ気になることがあるとすれば、自分もそうだが妙にISとのマッチングが良いのだ。
ISの方がこちらに合わせてくれているように思えることもしばしば。
こう考えると、ISのコアが気になって仕方がない。
どうにかして、コアを一つ手に入れて解体したいな……。
そんなことを考えていると、突然、大きな声と騒音が聞こえだした。
おいおい、どこの部屋からだ?
慌てて部屋から出ると、一夏の部屋から凰が飛び出してくるのが見えた。走り去っていく彼女の背を見ながら、後から出てきた一夏を捕まえ、事情を聞くことにした。
話を聞いていくと、呆れてしまった。
簡単にまとめるとこうだ。
一夏が昔、凰と交わした約束があったのだが、どうやら彼と彼女で認識の齟齬があったようだ。
凰の料理スキルがあがったら毎日、酢豚をおごってくれる、と一夏は覚えていたのだが、どう考えても日本で言う味噌汁を毎日のくだりだ。
当然、凰としては覚えてもらっていないことに関して、怒りがわく。
怒った凰と口喧嘩が始まり、一夏はうかつにも身体的な特徴の事で反撃をしてしまったのだ。
言われた凰はバカ、一夏! と叫び部屋から飛び出していった、という話だった。
「あのなぁ、一夏さんや。どう考えてもお前が悪いぞ?」
約束に関しては凰も回りくどくて悪いとは思うが、一夏が言った言葉は決して口に出して良い物ではない。
そこは分っているのか、
「……あとで謝りに行ってくるよ。でも、約束に関してはちゃんと覚えてたつもりだったんだけどな」
この男、どうしてくれようか。
と、龍也は思うがここで自分が答えを言うのは、筋違いである。願わくば、一夏本人が気づくか、凰本人から改めて言うべき内容だ。
「そうだな、まずは謝って来い」
一夏の背中をポン、と押し凰が去った方に押してやった。
「あぁ! 行ってくる!」
そう言いながら駆けていく一夏を見届けると、龍也はやれやれ、と部屋に戻った。
しかし、次の日になって更に彼と彼女の仲が悪くなっているのを見て驚くのであった。
ちゃうねん、プロット通りに筆がすすまないねん。
ともかく、次回こそは!
クラス対抗戦です‼