インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~   作:たちゅや

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二十一話

 龍也は全員が頷いたことを確認してから説明口調で話し始めた。

 

「まず私はブキヤのテストパイロットです。社員でもあります」

 

 これは確認事項だ。

 

「そして、最近、ブキヤのメインコンピュータがハッキングされることがありました。幸いにも、用意してあったダミーのFAのデータが盗まれただけで済みましたが、今回現れたヴァイスハイトはこのデータを用いて造られた可能性が高いです」

 

 さて、と彼は一息を置いた。

 

「問題は、今回現れた乱入者の一機がヴァイスハイトだったことです」

 

 そう言うと、一夏以外は気づいたのか表情が変わる。

 

「一夏以外は勘がよろしいようで。そう、責任問題になりかねない内容でした。ですので、ブキヤ社員としまして、問題の解決の為にバーゼラルドをまとい戦闘での処理を行った、という訳でございます」

 

 ここまで言っても何が責任問題になるんだ、と一夏は頭にクエスチョンマークを出していたので、さらに補足をいれる。

 

「うーん、一夏はまだ分らないか ? 要するにIS学園としてブキヤに抗議を入れられると、企業として責任が発生するんだよ。だから、学園に被害が出る前に俺が即座に鎮圧したってわけだ」

 

「あぁ……なるほど。ようやく分かったぜ」

 

「と、言っても学園に迷惑はかけたわけだから、企業としては結局、謝罪することにはなるんだがな」

 

 被害としては、アリーナのシールドバリアを破ったのと、避難の際に破壊した隔壁の修理代程度で済んだわけだが、混乱を招いた、という意味では謝罪が必要にはなる。

 その辺は、既に龍也からブキヤに連絡が入っており、後日、代表からの謝罪と修理をする、という話で学園長には伝わっている。

 それでも、まだ織斑先生の眼はこちらを睨んでいた。

 

「……そういう事にしておこう。織斑と凰は部屋に戻って待機していろ」

 

 二人はえっ、と口からこぼれた。

 

「いやいや、千冬姉。俺たちはまだ」

 

 彼は聞きたいことがあったのだ。あのISの正体を。でも、彼女は許さなかった。

 

「聞こえなかったのか。部屋に戻って待機していろ」

 

 つまり、ここからは聞くな、と言う事だ。

 

「……行こう、一夏。これ以上は聞けないみたいだし、ね」

 

「……く、分かったよ、出ていくよ」

 

 一夏は納得しておらず、部屋に留まろうとしたが、凰が彼を連れ出した。

 二人が出ていくのを見届けてから、織斑先生が言葉を紡いだ。

 

「……理由は分かったが、お前のバーゼラルドは危険すぎる」

 

 ほう。と龍也は彼女の言いたいことを察する。

 

「あぁ、あの別のISを破壊したセグメントライフルの威力についてでしょうか ? それともヴァイスハイトを四散させたパイルバンカーでしょうか ?」

 

「両方だ。どちらも確実に軍用IS並みの攻撃だった。あんなものを使われては――」

 

「そりゃあ、競技用のISに使う攻撃じゃありませんし。無人機と分っていなければ使うことはありませんよ」

 

「当たり前だっ ‼ 直撃したISの残骸を見たか ? 装甲はひしゃげ、溶解し原型を留めていなかったんだぞ ! まともに残っていたのはコアだけだ。ヴァイスハイトとかいうISも、無事なのはコアだけだったんだぞ」

 

 彼女の激高した声が部屋に響いた。山田先生はびくっ、としていたが同様の事を思っているのか龍也を見る目には非難の意思があった。

 確かに、現状の法律では軍用の開発は禁止されていたような気がするが、そんなものは建前に過ぎない。

 実際は各国ともにISを軍用にし、兵装も作っているのだ。

 

「……それもこちらから言えば、当たり前なんですよ。だいたい、競技用も軍用も差はリミッターが付いているか否かだけじゃないですか。競技用といえど、扱いを間違えれば人を殺めますよ」

 

 競技用と言われる武装も、生身の人間に使えば殺める事が出来るものだ。だから、彼には彼女達の言葉は届かない。

 

「それに、こちらも怒ってるんですよ。俺たちのFA型ISを ! こんなふざけた事に使われたのがっ ‼」

 

 今度は彼の怒気のこもった言葉が部屋を支配する。

 

「戦って分りましたけど、あのヴァイスハイトはダミーのデータよりもずっと高性能だった。武装も、できる限り再現されていた。こんな事ができるのは世界で一人しかない」

 

 彼は確信していたのだ。この元凶を。

 

「だから、俺は抗議の意を込め、武装のリミッターを解除しました。……これでは納得されませんか ?」

 

 彼の回答に織斑先生と山田先生は答えなかった。

 やりすぎだ、というのが彼女たちの思いだが、彼の怒りを肌に受け答えれなかったのだ。

 

 大切な物を汚された、という彼の気持ちを理解した故に。

 

「……ところで、先生方。残骸から回収されたコアはどうされたんですか ?」

 

 ここで今まで黙っていた刀奈が口を開いた。

 

「あれは……未登録のコアでした。今は、織斑先生と共にある場所に厳重に保管してあります」

 

「未登録のコア……。ますます元凶はあの天災、と考えるのが妥当の線ですね」

 

「……その事は秘匿事項だからな。お前たちは決して口外しないように。それから、秋野。分っているとは思うが」

 

「大丈夫です。通常の試合ではちゃんとリミッター解除はしませんから」

 

 何なら誓約書を書いても良いですよ、と彼は付け加えた。

 そして、彼女もこれ以上、追及することをやめ、

 

「……分かった。話は以上だ。部屋に戻れ。あとで、この件に関して学園側としての回答を全員に出す」

 

「了解しました。では、失礼します」

 

 二人が出ていくのを見送り、山田先生が声をかける。

 

「……先輩、龍也君が取ったと思われるコアについては聞かなくて良かったんですか ?」

 

 彼女はヴァイスハイトの残骸を回収した時に気づいたのだ。これはコアが二つ搭載されていた形跡を発見したのだ。ただ、残骸に残されたのは一つだけだったので、彼が取ったのではないか、と思っていたのだ。

 

「……山田君。確証が無い事を聞いても、あいつは何も答えないさ。それに、政府から圧力がかかるだけだ」

 

 今回の件に関してもそうだ。ブキヤからの回答の前に日本政府から圧力がかかったのだ。彼に自由にさせろ、と。

 

 全く、政府は何を考えているんだ ? どうして秋野に自由にさせる ? 彼には何があるんだ ?

 

 彼女たちの疑問は募るばかりだった。

 

「……この一か月で私の心労は限界を迎えそうだ」

 

 入学式が終わり、こんな濃密な一か月も現役時代に体験した記憶は彼女にはなかった。

 山田先生も、

 

「そうですね……。私もダメかもしれません……」

 

 生徒の前では気丈に振る舞ってはいるが、今年は各国からの男性操縦者についての情報をまわせやら、引き抜き、IS委員会との話し合い等々、表には出ない所での職務がありすぎたのだ。

 そこにこの事件。

 もう、彼女たちのストレスは溜まる一方だった。

 

 はぁ、とため息をつく山田先生を見ながら、織斑先生は内心、天災に向けて愚痴を放っていた。

 

 ……束、お前はとんでもない奴を敵にしたぞ。そのせいで、私もお前を恨んでしまいそうだ。

 

 




……もしかしたら、添削し直すかもしれませんが、二十一話でした。

IS学園で龍也が日本政府と深い繋がりを持ち、どんなことをしているのかを正確に知っているのは、
刀奈以外だと学園長とアノ人だけです。

千冬さん達はまだ政府にとって特別な人間、といった認識でしかありません。
ただ、今回の件でこの認識のままではいけない、と感じる事になります。

さて、

次回は天災サイドの話をしてから、ようやく原作一巻の話を終えたいと思います。
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