インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~ 作:たちゅや
遅くなりましたが、ギリギリ模擬戦開始までは書けました。
龍也はアキと共に部屋を後にし、一夏達を迎えに行った。
彼らはようやく気分が良くなったのか、顔色が良くなっていた。
「お、気分は良くなったか皆の衆」
「おう、ようやくだぜ……。で、龍也、隣にいる人は ?」
「あぁ、こちらはアキさん。ブキヤ日本支部の開発主任だ」
龍也の紹介の後にアキさんが一歩前に出て彼らに挨拶をする。
「どうも、アキだ」
そう言われ、彼らは龍也がよくアキさん、と言っていた人物と知った。
ただ、刀奈だけは何度も会っているのであった。
「アキさん、一月振りですね。以前に使わせてもらったISは順調ですか ?」
「あぁ、君がデータ取りに参加してくれたおかげで開発のペースも進んだよ。あと二ヵ月ほどすれば完成できるんじゃないかな ?」
ま、龍也がもっと頑張ってくれたら早いんだけどな、と彼の方を見るが、龍也はそしらぬ顔で流す。
彼とて今は学生の身なので時間があまり取れないのと、バーゼラルドの強化を優先している為に手がまわらないのだった。
「……まぁ、いいか。さて、今日、君たちは我が社のIS部門の見学をするんだったね」
アキの声に一夏達はよろしくお願いします、と揃って挨拶をし、一人ずつ自己紹介をしていった。
全員の紹介が終わってから、
「じゃあ、ルートとしては三階の研究室見て、製造の順番でいいか。龍也はどうするんだ ?」
「俺はバーゼラルドの調整をやりたいから、先に地下に行くよ」
そう言い、龍也は一人地下へと向かっていった。
地下のアリーナ横にある整備室に到着すると、既に飛鳥ら幾人かのスタッフが彼の到着を待っていた。
「お、飛鳥か。もう今日使う武装一式が搬入してあるんだな」
広々とした整備室には本日、バーゼラルドがテストする武装一式が運び込まれ鎮座していた。
リボルバー式の巨大キャノン、リボルビングバスターキャノン。
砲身部のユニットを取り換える事で様々な形態をとれる、セレクターライフル。
ベリルウェポンの再現はされていないが、ドゥルガーⅡというFAの武装である大型両刃剣ベルングルストと盾のヘルライネ。
そして、真ん中に展開されているバーゼラルドの左右に置かれた巨大な盾のブラストシールド。
用意されている武装を見て龍也は感嘆の声を上げていた。
「そりゃあ、スタッフ一同あなたのわがままを再現させてもらったんだから、それくらいは当然よね」
飛鳥を筆頭にスタッフ一同がうんうん、と頷いていた。
龍也は改めてブキヤのスタッフの優秀さと手際の良さを思い直し、作業に移ることにした。
「よしっ ! 一夏達が見学を終えてこっちに来るまでに、各武装のインストール作業を終わらせるぞ !」
彼の声を合図とし、各スタッフが待ってました、と作業を開始した。
武装一式を量子化しISが使えるようにデータを入力してあげるにも、それなりの時間はかかるのだ。
今回、テストする武装の一部は特殊な運用もある為、そちらのデータも入力する必要があり非常に時間がかかる予定であった。
龍也もスタッフに交じり作業を始めた。
●
所変わって、見学をしている一夏達はブキヤが今後展開するFA型ISの研究室を見せてもらっていた。
その一室にはつい先日まで篠ノ之がVR訓練で使わせてもらっていたFA轟雷が鎮座していた。
「これは轟雷だったか…… ?」
彼女の誰に言った訳でもない独り言をアキが聞いたのか、
「お、箒ちゃんはよく知っているね。そう、これは轟雷だよ。今はFAの轟雷だけど、その内、
FAGとは、FAを美少女化したシリーズのことで、全身装甲のタイプではなく現在主流のISに近い見た目であった。
彼女達はこの見学が始まってすぐに模型の方で説明を受けていたので、どんな容姿になるのかは想像できた。
「これはISの世代で言うと、何世代目にあたるんですの ?」
オルコットがアキに問いかけた。
「そうだねぇ。一応は第三世代かな ? ただ武装の方がまだまだ開発中でね。今、必死になってる所さ」
第三世代のISは操縦者のイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵装を搭載することを想定した物となっているが、ブキヤはこの辺りの開発にてこずっていたのだ。
この点はバーゼラルド開発時にも問題になっていおり、現在は未搭載である。
「でも、そんな内部事情を部外者のあたしたちに言ってもいいわけ ?」
鈴のもっともらしい意見にアキは苦笑するが、すぐに応える。
「まぁ、このくらいは公に公開している情報だしね。本当にマズイ物は見せてないよ」
「そう。それならいいけど。あとで変な誓約書とか書かせないでよ」
「大丈夫、大丈夫。そんな事をしたら、アイツにどやされるよ」
アキはそう言いながら、次の場所へと彼らを案内していった。
案内されたのは、見学者用のルートであった。通路には大きなガラス窓があり、そこからはIS用の武装が製造されているのが見えた。
ブキヤが製造する武装類は特注品のパーツが多く、作業員が手作業で作成、組み立てをしていた。
一夏も食い入るように見ながら、アキに所々で質問をしていた。
「アキさん、ブキヤではIS自体の量産はしてないんですか ?」
「そうだね。造っていないわけではないけど、量産となるとまだだね。近々、轟雷の量産が始まる予定だからそこからだね」
「へぇ~。FA型っていう特異なISを造ってるんだから、てっきり量産もしてるもんだと思ってました」
一夏が言うのも最もな話なのだ。
このブキヤという企業だが、販売しているIS用の武装が変態じみているのだ。巨大なドリル、三つ爪の削岩機のような物や龍也がよく使う合体する剣、ユナイトソードなど男ならロマン溢れる数々なのだが、如何せん、女性には不人気なのだ。
それでも、アサルトライフルなどは取り回しが良いように設計され、威力も非常に安定した性能ということで重宝されているのだ。
例えば、オルコットのISであるブルーティアーズに使われているスナイパーライフルは、ブキヤ製のスナイパーライフルを改造して搭載されているのだ。
他国の専用機にもブキヤの武装が支給されていることから、実はブキヤという社名は武器屋が正しいのでは ? と囁かれるほどである。
ただし、業界内だけでの話ではあるが。
●
その後、アキは一夏達を地下アリーナに案内した。
いよいよ本日のメインイベントであるバーゼラルドの武装テストの時間がやってきたのだ。
彼らが案内されたのは地下アリーナ横の整備室だ。
既に、龍也達は準備を整えており、彼らを待っていた。
「ん、見学は終わったのか」
「あぁ ! 幾つか武装も見せてもらったけど、使ってみたいのがあったぜ !」
少々、興奮気味な一夏だが、自身のISである白式には拡張領域のスペースが空いておらず、後付装備ができない為に使えないと嘆いていた。
そこにアキが救いの手とも言える一言を放った。
「なんだ一夏君は知らないのかい ? 他のISの武装も操縦者が許可を出せば使用はできるんだよ ? ここの武装なら開発者権限で許可を出せるから使ってみるかい ?」
一夏はな、なんだと……驚きのリアクションを取り、次の瞬間には、
「ぜひっ、ぜひとも ‼」
前のめりにアキに迫る。思わず後退する彼だが、龍也が興奮するなと彼を制した。
「分かった分かった。俺の武装テストに付き合ってくれた礼に後で何でも使わせてやるよ」
そう言う彼に約束したぞ、と強調する一夏。
はいはい、とあしらいながら龍也は、
「じゃあ、早速、一夏と模擬戦形式でテストを始めるか」
「よし、やってやるぜっ !」
二人は揃って整備室を出て行き、アリーナへと入場していった。
「あ~あ、勝手に話を進めて……まったく。それじゃあ、データ取りを開始するぞ~」
どうも最近は自分という存在を抜いて、話を進めるな~とアキは感じながら周囲のスタッフ達にデータ取りの準備をさせた。
刀奈達も男達がすぐに熱くなって私達をおいてけぼりにする、とある意味でアキと同じことを考えていた。
「……完全に私達の事を忘れてなかったかしら、あの二人」
「楯無さんに同意です。まったく、一夏の奴は」
「まぁまぁ、しょうがないよ。龍也も今日の武装テストを楽しみにしていたからね」
そんな彼女達に飛鳥が声をかけながら近づいていた。
「あ、自己紹介がまだだったわね。私は月宮飛鳥。龍也と同じブキヤのテストパイロットよ」
彼女の名前を聞き、オルコットと凰、篠ノ之が反応し応えた。
「えっとまさか、あなたは」
「元日本代表の月宮飛鳥……なの ?」
「まさかこんな所で……」
三人の問いに飛鳥はそうよ、と返した。
そう、何を隠そう彼女は一年前までは日本代表としてISを駆っていたのだ。当時は織斑千冬の次に刀や剣を使わせたら右に出る者はいない、と言わしめられていた。だが、理由を話すこともなく突如として代表を降り、表舞台からは姿を消していた彼女とここで会えるとは思いもしなかったのだ。
「しかし、こんな所で元でも代表の方とお会いできるとは思いもしませんでしたわ。大抵は国が抱える施設やIS学園のような所での教導でしか会えないものとばかり」
「いやぁ、色々とあってね」
色々、と言う飛鳥にむすっとした楯無が呟く。
「色々って、龍也の事だけじゃない」
「あら、刀奈ちゃん。決して龍也の為に代表を辞めたわけじゃないわよ ?」
いじわるな笑みを浮かべながら、彼女は楯無を刀奈と呼んだ。
当然、篠ノ之達は ? とした表情をしていた。
「あっ ! ちょっと飛鳥、その呼び方はやめてって言ってるじゃないっ !」
「あら、ごめんね。まぁ、良いじゃないの。気にしない気にしない。それよりも、龍也達の模擬戦が始まりそうよ」
言葉では謝っているが、悪びれる様子もなく彼女はさっさと整備室にある巨大モニターに注視する。
刀奈は肩を落としながら篠ノ之達に、あとで説明するわ、と語りモニターに視線を移した。
彼女達は、はぁ……と二人に倣いモニターを見る。
既に彼らは準備万端でISを展開していた。
ただ、龍也のIS、バーゼラルドの姿が違っていた。
●
一夏は彼のISの姿が変わっている事に驚いていた。
「龍也、その姿は……」
「フフ……これこそがバーゼラルドの真の姿と言っても過言ではない。その名も、ゼルフィカールッ ‼」
全身に装甲兼推進器を内蔵したスラストアーマーの改良型を装着した、バーゼラルドの長所である高機動に、短所であった装甲の薄さを同時に強化する事のできる専用装備を装着した形態であった。
一夏はその見た目から、ロボット物でよくある強化合体を連想し羨ましく思った。それは顔に現れていたのか、龍也から羨ましいかっ ! と言われる。
「当たり前じゃないかっ ! めちゃくちゃカッコイイじゃないか !」
「そうだろ、そうだろう。男ならそういう反応しないと困るな」
「何だよお前だけパワーアップしてて良いなぁ」
「そう言うな。お前には“コレ”を貸すからさ」
龍也は両手にプロペラントタンクを量子空間から取り出し、一夏に近づいた。
彼はそれが以前に龍也が放ったセグメントライフルの攻撃に使われたユニットという事に気づく。
「龍也、それって」
「これはプロペラントタンク。これ一基でIS一機分のエネルギーを補うくらいはある。二基、お前に貸すよ」
彼は装備の使用許可を出し、白式の両サイドにプロペラントタンクをセットした。
白式は使用許可を受けたそれを認識し、一夏にデータを表示させた。
龍也が言うように一基で一機分のエネルギーがあるのか、白式のSEは三倍に増えていた。
「良いのか ?」
「あぁ。それだけあればゼルフィカールのテストには十分だろ」
つまるところ、それだけ無いとテストにならない、と彼は言っているのだ。一夏も今の発言の意味は理解したのか、少しカチンときた。
「ほほう……。まぁ、これだけあれば零落白夜も使い放題だし、すぐにお前を倒せるな」
「ならやってみてくれ。お前の今持てる全てを見せろっ !」
龍也が挑発しながらバックステップで距離を取った。
そして、互いに愛用の刀と雪片二型を構え戦闘態勢を取る。
「行くぞ、一夏っ !」
「あぁ、来い龍也っ !」
こうして二人の戦いは始まったのだ。
いやぁ、ゼルフィカールはカッコイイなぁ。
と、ようやくようやくゼルフィカールの登場です。
長かった……。でも、活躍は次回以降です。