インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~ 作:たちゅや
確認不足はダメだね!
模擬戦を終えた二人だが、何故か正座をさせられていた。
「え、えーと……楯無さん。一体これは……」
笑顔なのだが妙な威圧感を出す彼女に龍也は押されていた。
一夏も篠ノ之と凰の威圧にたじたじとしていた。
そんな彼らを見る周りの人達は悲哀の情を示していた。
「うん ? 言いたいことは分らないかしら ?」
いや、そう言われても思い当たる節が無いんだが……。
「い、いや……本当に分らないんだが……」
「ふぅん~、そんな事を言っちゃうんだ」
刀奈は目を細める。
思わず彼はビクッとしてしまう。同時に危険信号を感じ取った。
やばい。刀奈が超怒ってる。俺は何をやったんだ ?
思考を活性化させるが思い当たる節が無く、気ばかりが焦ってしまう。
そんな彼に彼女は、
「……本当に分らないのね。龍也って時々そういう事あるわよねぇ」
「も、申し訳ない」
「まったく。あのね、私たちの事を放っておいて勝手に模擬戦始めたでしょ ?」
「あ……」
それに篠ノ之と凰もうんうん、と頷いていた。
「……なぁ、龍也。これ、俺達どうなるんだ ?」
「……一夏さんや。俺にはいい案が浮かばない」
最早、彼らには彼女達を鎮める方法を思いつくことは出来なかった。
「だから、ね。龍也、ちょっと私たちに付き合ってもらえる ?」
「……はい」
有無を言わせない雰囲気に肯定の返事しか出来なかった。
●
「右に避けろ一夏っ !」
龍也の声に反応し、一夏は白式のスラスターをフル稼働させ右に体を飛ばす。先ほどまでいた場所には衝撃音と共に床が黒くにじんでいた。
「チッ、避けられたか」
篠ノ之が悔しそうに呟くが、手に持っている獲物を再び構え狙いを一夏につけ直す。
「あ、危なかったっ。助かったぜ、龍也」
「言っている間に二射目と他の攻撃が来るぞ、足を止めるなっ !」
二人はアリーナ内を逃げ続けた。どうしてこうなかったのか、模擬戦をやっているのは彼女達の申し出であったのだが、彼らに許されたのは防御と回避のみだった。
……断るなんてできなかったもんな。
龍也はバーゼラルドのフォトンブースターを出力調整しながら、アリーナ内を動き続けていた。
さすがに先ほどの模擬戦でゼルフィカールパーツは限界だった為に、今回は装備できなかった。
一夏も彼の言葉通りに動き続けた。
「箒ちゃんはそのままセレクターライフルの各種テストをお願いね。鈴ちゃんは龍砲で追撃ね。セシリアちゃん、どんどん撃っちゃっていいわよ」
刀奈の指示に篠ノ之は了解、と答えハウザーモードのセレクターライフルを一夏向けて放つ。
「さぁ、一夏 !喰らいなさいっ !」
凰も龍砲による追撃を一夏に放ちながら、手には双天牙月を握り近距離戦に持ち込もうと移動していた。
オルコットも両手でリボルビングバスターキャノンをしっかり保持し、狙いをつけながらトリガーを弾く。
想像以上に反動が少ない事に驚きながらも、弾道はまっすぐ龍也を捉えていた。
彼は避けるつもりでいたが、その行動は他者によって阻まれた。
「避けるなんてさせてあげないからね♪」
リボルビングバスターキャノンの攻撃に合わせるかのように、刀奈がミステリアス・レイディのランス型武装である蒼流旋で回避行動を邪魔してきた。
高速で放たれる突きに右手に展開したユナイトソードで防御をするが足止めをくらい、バスターキャノンの攻撃にも防御の一手をとらざるを得なかった。
「ヘルライネッ !」
致し方なく龍也は大盾を展開。左手に持ちバスターキャノンの攻撃を受ける。重い衝撃が左腕に伝わるがヘルライネには傷一つついていなかった。
「まだまだですわっ !行きなさい、ブルー・ティアーズ !」
四基のティアーズが龍也を討つべく宙を舞う。それだけにはとどまらず、
「続けてこちらも行きますわ」
自動でリボルバーが回転し次弾の装填が終わっていたバスターキャノンの引き金を弾く。
今度は連続射撃、三発で彼を狙い撃った。
「く、連続で受けるのはキツイッ ‼」
いくら頑丈に造ってある盾といえども、連続で同じ場所に受けるのは良くない。
多少の無理はしてでも避ける。
後方に瞬時加速で下がりつつ、ブルー・ティアーズの攻撃は最小限で避ける、もしくはユナイトソードで受けるなどして、ダメージは最小限に留める。が、そんな動きをしながらも厄介な刀奈に対してはヘルライネを向け、何と飛ばしたのだ。
「盾を飛ばした !?」
彼女は蒼流旋で盾を弾こうとするが、それは悪手になった。
飛んできたヘルライネの先端がクロー状に展開し、蒼流旋を掴んだのだ。
まさか、盾にそんなギミックがあるとは思いもしていなかった。
「盾すら武器にするなんて ! ねぇ、龍也これもFAの再現なのよね !」
クローが蒼流旋に深く食い込んでいた為、刀奈は武器を捨て後ろに下がる。
「攻防一体の盾、それがヘルライネ ! そう、これも再現武具だ !」
一応、盾による防御行為という力技で刀奈の武器を破壊したが、状況は芳しくなかった。
……俺の前方には刀奈とオルコット嬢。右の方では篠ノ之と凰が一夏を嬲り続けているか。……バーゼラルドのSEはまだ七割残っているが、このまま防御ばかりの戦いは辛いぞ。
その後、数十分後に白式のSEが。そこから更に数十分経った後にようやくバーゼラルドのSEが無くなり模擬戦は終了するのであった。
戦い終わった後の彼女達の表情は妙にすっきりとしていた。
代わりに男二人は疲れ切って倒れるのみであった。
●
そんな彼らの模擬戦をみていたアキや飛鳥であったが、途中で社長からの呼び出しを受け、社長室に来ていた。
室内では高そうな椅子と机に向かい、大量に積まれた書類に目を通しつつ、重要案件のメールに返信作業をしている白髪に一房だけ黒が混じった若い男性がいた。
隣にはスーツ姿の黒髪ロングの女性が、頑張れ、頑張れと何故かエールを送りながら佇んでいた。
「……社長の仕事量は良いとして、奥様――副社長の頑張れエールは何とかならないんでしょうか」
飛鳥が呆れてアキに言うが、
「もはやブキヤ名物だからなぁ。佐山社長と
彼が応えると、佐山は二人に話しかけた。
「……アキ君に飛鳥君。この運切君の頑張れエールを邪険にしてはいけないよ。私はこれが無いとやれない性分でね。まぁ、それは置いておいてだ。二人には少し相談事があってね」
佐山は山積みになっていた書類の中から一枚の紙を取り出し、二人に渡すように運切に言う。
「はい、アキさんに飛鳥さん。これを読んでどう思ったか、まずは率直な感想を言って欲しいんだ」
そう言われ書類に目を通すが、二人は内容に眩暈をした。
「あの、社長。これは……無理です」
「いやぁ、これはさすがに受けられないですね」
「そうだな。そう言うのが普通の感覚だ」
二人が否定の意見をするのは最もだった。
どんな内容か簡単に言うと、フランスのデュノア社からでFA型ISの生産ラインを提供する代わりに技術提供を求める、という内容であった。
デュノア社と言えば、量産型ISでは世界第三位のシェアを誇る企業である。そのIS、ラファール・リヴァイヴは第二世代型であるにもかかわらず、第三世代に引けをとらない優秀な能力を秘めたものだ。扱いやすく、多くの国で採用されているISでもある。
だが、最近は業績が落ちてきており、第三世代の開発も遅れている事で陰りも見えている所であった。
そんな所からこんな内容を貰っても、こちらは何にも得にならない。
ブキヤ自体はもうすぐFAG型IS轟雷の生産ラインが整いつつあり、他のFAG型ISの製造についても話が進んでいる段階であったからだ。
また、何よりも向こうが欲しいのはこちらのFA型ISの稼働データだけであることは容易に想像ができていた。
しかし、佐山の表情は真剣な物であった。
「だが、これは訳ありでね。もう一枚、コレを見てくれないか」
追加でもう一枚の書類を彼らに見せる佐山。
それは写真だった。鮮明ではなく、少しモザイクがかかっていた。
目を凝らして見ると、映っているのは漆黒のISだった。両肩にキャノン砲を携え、多数のラファールを屠っていた。
うーん、と唸りながらアキがにらめっこしていると、急に彼の顔色が悪くなった。
「……社長、この機体もしかして」
「さすがは開発主任のアキ君だ。気づいてくれて何よりだ」
「えーと、すいません。私には黒いISとしか認識できないんですが」
「飛鳥さん、そのISをよーく見てください。見たことありませんか ?」
運切に言われ再度、眼をこらす飛鳥。
う~ん、そう言われてもなぁ。何となく両肩のキャノンがM.S.Gのフリースタイル・バズーカに似てなくもないけど……。あとは、やたらブースターのようなのが見えるなぁ。
そこまで思考してからあれ ? と彼女は首をかしげた。
「……あの、これってもしかしてバーゼラルドですか ?」
彼女の行きついた答えに三人は肯定の相槌をした。
「バーゼラルド砲撃戦仕様。両肩にイオンレーザーカノンを装着したタイプだ。でも、これはまだペーパープランで製造なんてしていないんだが」
神妙な顔つきで喋るアキだが、佐山が訳ありと言った事とコレが関係しているのか、と思うと頭が痛くなっていた。
「社長、もしかしてデュノア社は」
「ああ、我が社が行った事だとして言ってきている」
「やっぱり……。厄介な問題が舞い込んできましたね」
「そこで、だ。アキ君には内外で情報の漏えいがあったのか確認してくれ。飛鳥君はフランス現地に飛んで事実確認をお願いしたい」
「分りました。ちょうど、ブライアンも来ているので彼にも手伝ってもらいます」
「私の方も了解しました。現地ではバックアップしてくれる人は誰かいるんですか ?」
「問題ない。現地には君もよく知っている者がバックアップしてくれる。すまないが、今から飛んでくれないだろうか」
佐山の問いに飛鳥は了解です、と応えるのであった。
さて、一体この件はどうなっていくのだろうか。
社長の名前とか考えてなかったんや……
この辺考えるのに、時間がかかってしまった。
というわけで、二十七話でした。
デュノア社が出てきたってことは……そう、もうすぐ彼(ぇも登場ですよ!