インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~ 作:たちゅや
模擬戦を終えた六人が整備室に戻ると、アキと飛鳥がいない事に気づく。
どこに行ったかを龍也がスタッフに尋ねた。
「なぁ、アキさんと飛鳥はどこに行ったんだ ?」
彼の問いに応えたのは、白髪のメガネをかけたスタッフだ。
「少し前に社長から呼び出しがあって行っちゃったよ」
「佐山社長の所か」
アキさんだけでなく、飛鳥も呼び出しって言う事は、重要案件の可能性が高い。一体、何があった。最悪、俺も動く必要が出てくるか……。
ふむ、と一人考え込む彼だが、今は少し頭の隅の方に置いておくことにした。
「……そうか。ありがとう。武装テストの方はどうだった、良いデータは取れたかな ?」
「良いデータが取れましたよ。セレクターライフルもリボルビングバスターキャノンも期待値通りでした。でも、一般用でのデータですからね。バーゼラルドに制式採用するには専用チューンが必要です」
「まぁ、こっちへの受領はまだ先でいいから、今日の結果を元に綿密なチューンを施そう」
それから、と彼は、
「俺が提案してあるバーゼラルドの改造だけど、どれくらいかかりそうだ ?」
「あぁ、“アレ”の再現以外ならあと二ヵ月ちょっとで完成しますよ」
「お、意外と早いね。それじゃあ、完成したら連絡をよろしく」
それを聞く外野は、あれ以上強化したらもう龍也に敵いないんじゃない ? という思いで一致していた。
むしろ、まだ強化するのか、であった。
彼らの驚きも龍也は一向に気にせず、
「さて、皆の衆。模擬戦によるデータ採取、助かったよ」
「いや、俺の方こそ良い経験ができたよ。……ただ、さっきの
一夏のどこか遠い所を見るような眼に、彼は苦笑いで返す。
対して女性陣はというと。
「さすが龍也よね。全力を出してないとはいえ、四人がかりの総攻撃でも中々落ちないんだもの」
刀奈は強敵、と書いた扇子を広げながら話す。
続けて篠ノ之らが、
「うむ、今回も轟雷を使わせてもらったが中々しっくり来るものがあった。射撃も武装の方で自動修正が入り扱いやすかった。……それでも、龍也にはほとんど当てれなかったが」
「そうですわね。一夏さんは直線的な動きが多いので当てやすかったですけど、龍也さんは変則的な動きもされるので当てにくかったですわね。でも、わたくしにはあのリボルビングバスターキャノンは重すぎでした。箒さんが使われたセレクターライフルの方が相性は良かったですわ」
「あたしはどっちも苦手かな。もう少し小型で取り回しの良いのがいいわね。そういう武装はないのかしら ?」
ふむ。小型で取り回しの良い射撃武器かぁ。開発中のマルチキャリバーは希望の品だろうか。または、連装砲もいいな。
龍也は幾つかピックアップし、凰に見せてみた。
「へぇ……腕部に固定できそうな連装砲が良いかもね。あるの ?」
「まだペーパープラン。販売の際は是非ともブキヤから購入をよろしくお願いしますね」
などと、軽い営業スマイルで宣伝をしてから、
「言い忘れてたけど楯無に一夏、セシリアに鈴と箒には今回テストに協力してくれたということで、報酬が支払われるのでよろしくっ」
彼の発言に刀奈以外の女性陣はおっ、と驚きの表情を浮かべた。
理由は初めて名前で呼ばれた事、または報酬が支払われる事になのか、はたまた両方なのか。
「あら、龍也にしては珍しく早いわね。私と飛鳥以外の女性を名前で呼ぶなんて」
「ん……そろそろ自分の中で良いかな、と思ってな。嫌だったか ?」
刀奈の珍しい物を見るような視線を受け流しながら、箒や鈴、セシリアを見る。
「まぁ、私は名前で呼んでもらえる方が良い。というか、最初の方に言ってたような……」
「あたしもそっちの方が良いわね。苗字で呼ばれるとむず痒くて」
「あぁ……ようやくセシリアと呼んでくださいましたね。長かったですわ……」
セシリアだけが一年以上かけてようやく名前で呼ばれた為に感慨にふけていた。
ちなみに刀奈に関して言えば、出会って速攻、名前呼びでした。理由は、まぁおいおい話すとしよう。
「……龍也ちょっといいか ? その報酬っていうのが気になるんだが」
女性陣とは打って変わって、一夏はどうして報酬に関して問うてきた。
微妙に困惑しているのか、不安げな声だった。
「そうか、一夏はこういうのは初めてだもんな。困惑するのは分らないことはない。説明するとだな、今回はブキヤから各専用機の所有国にお願いをしたんだよ。武装テストに協力してください、ってな。もちろん、専用機のデータは秘匿とされる物だから、テストデータ以外の削除はするし、協力の対価としての報酬も支払う、という内容で契約してたんだよ」
ちなみに各ISに戦闘データとして残る武装テストのデータに関しては削除してもらっている。
「それだと私は関係ないな」
専用機持ちでも無い箒は、自分は関係無い、と言うが、
「いや、箒にもちゃんと支払うよ。一夏にも払うんだから、貰っておいてくれ」
そう言う龍也の眼は真剣だった。彼曰く、こういう所はちゃんとしておかないと企業として恥ずかしいとの事だった。
そこまで言われると受け取らない訳にはいかないので、渋々箒も受け取るのであった。
一夏にも絶対受け取れ、と念を押して渡すのであった。
●
その後、場所を変えて一階の休憩スペースに移動した一行だったが、案の定、龍也は佐山社長から呼び出しを受け、社長室に来ていた。
「友人との語らい中に申し訳なかったな、龍也」
佐山はソファーに座る様に促し、龍也は彼の対面に座った。
当然、佐山の隣には運切が座っている。
「いえ、アキさんと飛鳥が呼ばれたと聞きましたので私も呼ばれるかと思っていました」
「ふ……そうか。では、早速だがデュノア社は知っているな ?」
彼の問いに頷き答えると、佐山は話を続けた。
「そのデュノア社からこのような文面が届いた」
一枚の書類と写真を机の上に置く佐山。内容はアキ達に見せたものと同一であった。
簡単に目を通す龍也は唖然とした。
「……面倒な案件ですね」
「あぁ、今しがた飛鳥君には現地調査をお願いした所だ。そこで真意が分ればいいのだがね」
「それでね、龍也君にもお願いがあるんだ」
「実はフランスの代表候補生がIS学園に転入してくるようだ。ただし、所属がデュノア社になっている」
佐山の言葉に龍也は疑惑の念しか浮かばなかった。
どうしてこの時期に転入なのか、と。まるで、狙ったかのような……。
難しい顔をする龍也に佐山は、
「君が思っている疑問を私達も考えていてね。しかも、“男性操縦者”だそうだ」
「はぁ ⁉」
思わず声を上げてしまったが、咳払い一つしてから、
「し、失礼しました。えぇと、私がやるのは学園に転入してくる“男性操縦者”の調査及び監視といった所でしょうか」
龍也の発言に佐山はその通りだ、と返す。
「こちらも最大限のバックアップはするつもりだ。必要な事は連絡をくれればいい」
「了解です。頼りにさせてもらいます」
「さて、話は変わるがISコアを一つ奪取して解体しているそうじゃないか」
ニヤリ、と佐山は意味深な表情を浮かべていた。
「えぇ、今はブライアンに解析兼解体をしてもらっています」
「へぇ~ブライアンが来てるんだ。佐山君、あとで会いに行っても良いかな ?」
「そうだね、久しく会っていないし、あとで会うとしようか。――で、龍也君はコアに何が使われていると考えるかね ?」
何が使われている、か。龍也は現時点で考えていることを語ることにした。
「……まず気になるのは、コアに意思があると言う事です。意思があるなら、“生きている”と考えています。そうなると、使われる技術には……“金属が命を持つ概念”が使われてるんじゃないかな、と」
“概念”という発言に二人は言葉を無くしていた。
“概念”とはあらゆる事象に関係する物理法則のようなものだ。
例えば、“文字には力が宿る”という概念が使われるとする。
その概念の力が及ぶ範囲では、文字として書かれた事が現実のものとなるのだ。
単なる木の棒に、“聖剣”と書けば、それは聖剣になる。
“弾が無限になる”とバンダナに書いて巻けば、無限バンダナにもなるのだ。
と、まぁ概念について説明するとキリがないのだが、かつてこの世界の裏では概念戦争と呼ばれるものがあり、この時の残留物が未だに残っていたりする。
龍也が考えるのは、その時の残留物、特定概念を封じた“賢石”をたまたま篠ノ之博士が発見し、ISのコアにしたのではないか、というものだ。
「……可能性の話だね ?」
「えぇ。仮にそうだったとすれば、篠ノ之博士には警告をしようと思っています」
「そうだね。アレはもっとゆっくりと世界に馴染んでいってもらいたいものだ。お手柔らかに頼むよ」
「龍也君は佐山君と一緒で少しやりすぎる傾向があるから、注意してね ?」
「フフ、運切君は手厳しいね。では随時、報告の方をよろしく頼むよ」
「了解しました。では、失礼します」
龍也は席を立ち、一礼してから部屋を去っていく。
残った二人は少し感慨にふけていた。
「……佐山君、大丈夫かな ?」
「どうだろうね。彼の考えが正解だとすれば、私達も動く必要があるが、まずは報告を待とうじゃないか」
「……うん、そうだね」
佐山は彼女を安心させるように頭を撫でる。
少しくすぐったいようだったが、運切は気持ちよさそうな顔をしていた。
●
佐山達と話を終えた龍也は刀奈達と合流した。
「龍也、社長さんとのお話は終わったの ?」
「あぁ、終わったよ。よーし、それじゃあ最後はここの食堂でご飯食べて帰ろうぜ ‼ ブキヤの食堂は物凄く美味しいから期待してくれていいぜ」
それに反応するのは一夏だった。
「お、それは期待しちゃうぞ。できれば、真似できるように研究もしたいな……」
料理好きな彼にとっては美味しい食事というのは最高の教材なのであった。
そうして、一行はブキヤ食堂に移動し、どう考えても企業の食堂で出されるはずのないレベルの食事に舌鼓を打つのであった。
というわけで二十八話でした。
クロス作品に『終わりのクロニクル』の追加を致しております。
この作品の設定を用いて、コア関連の話は進めて行こうと思います。
いやぁ、あの作品の設定は便利なんだわ。
……本気で絡ませると、IS陣はみんなキャラが一気に薄くなって侵食されてしまうので、極々最小限に留めたいとは思っています。
さて、話は進んでいきます。
次回はようやく転入生のお二人が参戦っ。