インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~ 作:たちゅや
武装テストの二日後。
シャルル・ド・ゴール空港。
パリの空の入口と言われるここに彼女はいた。
髪の色は美しいブロンド、背丈も高くすらっとした体型に誰もが魅了されていた。ただ、少し残念だったのは背負っているリュックサックが羽つきという点だけだろうか。
後に、彼女と出会った人は某ゲームのキャラクターによく似ていた、と語っている。
そう、彼――リロイ・ハロルドもその一人だった。
リロイ・ハロルド。
フレームアームズという作品内でも同姓同名のキャラクターがおり、優秀なパイロットとして知られている。
ここにいる彼はあくまで同姓同名の人物でしかないが、凄腕の傭兵ではある。
彼は彼女――月宮飛鳥を見つけると、手をあげ招いた。
彼女とは過去に幾つかの仕事をしたことがあり、今回は久しぶりにタッグを組むことになった。
「よう、飛鳥。どうだった飛行機の旅は ?」
飛鳥は笑顔で応えた。
「久しぶり、リロイ。ずっと座ってて退屈だったわ」
「そうかい。じゃあ、また座っての移動になるが我慢してくれよ」
リロイは停めてあった高級セダン車を指した。
飛鳥ははぁ、とため息をつき、
「そうね、よろしくお願いするわ」
車に乗り込みリロイが発進させる。
「へぇ~結構、このエンジン音良いわね。日本には無いのかしら ?」
「残念、これはこっちだけの特別仕様なんだよ」
「あら、残念。で、どうなの ?」
リロイは後部座席から一冊のファイルを取り手渡した。
ファイルを受け取り、流し読みをしていく飛鳥。
書かれているのはデュノア社とフランス軍によるISの演習中に突如、黒いFA型と思われるISが現れ演習中のISに攻撃し、大破させ去っていったということだ。
これは飛鳥も知っている内容である。
問題はここからだ。
「……ちょっと、亡国企業が絡んでるとか本当なの ?」
「可能性がある、と言う話だ。最近、デュノア社の社長含む幹部クラスの人間が、亡国企業の人間と会っているのを確認した」
「リロイが確認したの ?」
そうだ、と頷き話を続ける。
「バーゼラルド完成あたりに龍也から頼まれたんだよ。亡国企業もFA型ISを狙うかもしれない、ってね。まぁ、それ以外にも厄介な問題が起こってね」
「厄介 ?」
「あぁ。どうやらお前と龍也にとって厄介な相手が組織にいるらしい」
そう言われ彼女の頭に浮かび上がったのは一人の男だった。
●
時間は戻り武装テストの夜。IS学園の寮にて。
時刻は深夜二時。龍也は眠りから目覚めた。隣には刀奈が心地よい寝息を立てていた。
愛くるしい彼女を軽く撫でてから、
「……少し出て来るよ」
囁くように呟き彼は起き上がり、音を立てないように服を着替えた。
だが、いつもの服装とは違う。
白を基調とし、黒のラインが入った戦闘服だった。かつて、彼が概念戦争の後に起こった全竜交渉という戦闘で使っていた装備だった。
手に持つのは機殻剣。
「久しぶりに頼むぞ、相棒」
背中に機殻剣を固定し、静かに部屋を出ていく。
その背中を狸寝入りしていた刀奈が黙って見送った。
……あんな装備見たことない。どこへ ? 追うべきかしら。追うべきよね。よしっ。
意気込んで起き上がろうとした時、メールの着信音が鳴った。
「こんな時間に……」
メールの差出人と内容を見て安堵の顔をする。
『すまないな刀奈。明日の昼には帰るから、一緒にランチにいこう』
「……まだまだ私も甘いわね。じゃあ、おとなしく待ちましょう」
でも、いつまでもおとなしく待つ私じゃないわよ。
密かな闘志を胸に、今は眠ることにした。
一方、龍也は学園裏の海岸にいた。もちろん、外出許可もとっていないので誰にもバレないようにだ。
さて、バーゼラルドに着けた追加オプションを使うか。
バーゼラルド展開と同時に追加したステルスシステムをオンにし、PICを切り海底に沈んでいく。
スラスターを吹かせば熱源反応で学園には気づかれてしまうし、お目当ての相手にもバレてしまう。
だから、海底を走ることにした。
普通、PICを切った状態でISを動かすとなれば重すぎて、動かすのは非常に苦労する。さらに、海底を走るなんてできるわけがない。歩くのも無理かもしれない。
だが、ここにいるのは身体能力すらはっきりと知られていない男。
知っているのは世界でも数人のみ。
彼が超のつく規格外の人間である事を。
爆走とまではいかないが、ゆっくりとした走りで海底を目的地まで向かっていた。
向かうのは太平洋にある孤島。
走り出して二時間経った後、目的地に近づいたのでISを解除しそこからは泳ぎに変えた。
……ガードマシンに学園に乱入させたゴーレムを使用か。
目視で確認するだけでも海岸には、侵入者対策の赤外線トラップやゴーレム型ISが見えた。
だったら、相棒の出番だ、と再度バーゼラルドを展開し派手に挨拶をすることにした。
「行くぞ、バーゼラルドッ ‼ 博士に挨拶に行こうぜっ ‼」
両手にセグメントライフルを展開し、侵入者に気づいたゴーレム型IS八体に向かって銃弾を叩きこんでいく。
重厚な装甲をいともたやすく貫く弾丸。それは、ISの試合では決して使うことのできない銃弾であった。
つまり、今のバーゼラルドはリミッターを排除した完全戦闘仕様。もちろん、武装もだ。
これでサイズこそはISだが、フレームアームズのバーゼラルドとして能力を解放していた。
八体いたゴーレムは数十秒で破壊され、続けて地表がせり上がりゴーレムが出て来るが、難なく破壊していく。
とうに彼女は気が付いているだろうが、逃げはしないだろう。何せ、彼女こそがこちらを欲しているだろうから。
ゴーレムを破壊し、手近な進入口としてせり上がりゴーレムが出てきた場所から侵入する事にした。
学園のアリーナの半分ほどの広さの空間があり、そこには数十体のゴーレム達が龍也を待ち構えていた。
「……篠ノ之博士、この程度の数じゃ準備運動にもならないよ ‼」
オープン回線で高らかに宣言し、全てを破壊していく。
セグメントライフル、ブレード、インパクトナックル。
三種の武装に瞬時加速、瞬時転回など持ちうるスキルとテクニックを駆使し、迫りくるゴーレム達を撃ち、斬り、殴りつぶす。
当然、篠ノ乃束はこれを地下で見ていた。
「アハハ、これじゃあ一方的な蹂躙だねぇ」
どこか楽しげな束だが、視線は獲物を狩る者の物だった。
その彼女の隣では、銀髪の少女が不思議そうに眺めていた。
「パーティーはこれからだよ、二人目くん」
龍也、束博士の秘密ラボに殴り込むっ!
果たしてその理由はっ!?
明かされる理由は次回にて!