インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~   作:たちゅや

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三十七話

 リロイがカトラスを駆り、IR-P13(セグメントライフルの発展型)の銃口をバルチャーに突き付けていた。

 背後からの視線には殺意がこもっているのが判る。

 さて、と彼女は思考を続ける。ふと思いつくのはFAの方でもあった“黒い森事件”。だが、自分が倒したバーゼラルドは実機だ。これだけは確かだ。

 では、と考えるが同時に体も動いていた。

 リロイがトリガーを弾くよりも早く、振り向きざまに右足のベリルベーンでIR-P13を切り裂いた。

 飛鳥が用いるバルチャーには基本的に近接武装しかない。幾ら利便性のあるベリルウェポンがあるとはいえ、“ただの”IS乗りなら到底扱いきれないピーキーな機体だ。

 しかし、ここにいるのは“元”日本代表にして秋野龍也の右腕だ。そこらのIS乗りが束になっても蹴散らしてみせる。

 

 ……カトラスのセンサーは異常時に光るレッド。操縦系統が乗っ取られているのね。じゃあ、ごめんねリロイ。

 

「カトラス、破壊しますっ」

 

 飛鳥は短期決戦で決着を着ける為、瞬時加速で一気に近づく。

 相手はISではなく、武神だ。搭載できる武装に限りはあるが、パワーでは遥かにISを超えている。FA型ISでも全力で戦えば歯が立たないのだ。

 それ故に、長期戦は不利と判断した。

 金色剣は分割し、腰にマウント。両腕の狗式鋼爪での格闘戦にスタイルを切り替えた。

 

「はぁっ !」

 

 右、左と交互に繰り出されるストレートパンチ。カトラスはディフェンスローターで器用に防御する。

 飛鳥はベリルベーンを伴う蹴りも織り交ぜながら、攻撃を続ける。

 カトラスはそれらを巧みに防御、カウンターとして脚部のベリルダガーを手に持ち斬撃を放ってくる。

 お互いの攻撃は、更なる攻撃で防ぐという行為で戦闘が続く。

 

「はああああっ !」

 

 飛鳥は気合を入れ、腰にマウントしてあった金色剣を解体、投擲武器として放つ。

 長剣、短剣、放たれた刃をカトラスが弾き続けるが、その間を狙い飛鳥が素早く移動し密着する。

 そして、カトラスの胴に掌底を叩き込み、

 

「仙氣発勁っ !」

 

 カトラスの装甲に氣を送り込んだ。

 すると、装甲にヒビが入り、表面だけではなく内部装甲までが弾け飛び、合致していたリロイが現れた。

 ちなみに、武神の操縦は人が合致する――融合に近い状態で行う為、ダメージのフィードバックがある。よって、リロイは発勁の影響を受け若干、全身血だらけになっていた。

 だが、死んではいない。これが、真仙氣発勁と呼ばれる技だった場合は、彼の内蔵もダメージを受け危なかったであろう。

 リロイは倒れ込むようにカトラスから出ると、飛鳥を見て、

 

「ば、バカ野郎ッ ! 殺す気か ‼ もうちょっと止め方考えてくれよ !」

 

「えー……良いじゃない、助かったんだから。気にしないの」

 

「アホーっ ! 駆動部を狙って破壊すれば動きは止まるだろ ! なのに、仙氣発勁なんて使いやがって ! とっさにこっちも氣を練ったから、ちょっと血だらけになっただけで済んだけどさ ‼」

 

 等と、不満を述べるが氣を練るとかは普通の人間には出来ない技なのだが。

 

「まぁまぁ、で、どうして乗っ取られたの ?」

 

「……ハァ、もういいです……。ふぅ――、簡単に言うとそこのバーゼラルドから電子攻撃を貰って、感染した」

 

 リロイが続けて説明した内容はこうだった。

 飛鳥とバーゼラルドが戦闘しているのを眺めていると、突如、カトラスが起動。確認してみると、バーゼラルドから武神に対してのみ効果のある電子ウイルスのような物が発せされていた。

 このままだと暴走してしまう、と思い慌てて合致し制御を取り戻そうとしたら無理でした、という事だった。

 で、彼女が説明を聞いて放った一言が、そのまま暴走させても良かったのに……。

 

「最終的にどうしようもなかったら私自身の能力で戦うしね ?」

 

「……全く、お前や龍也に限った話じゃないが、固有能力を持ってる連中にとってISや武神は枷でしか無いんじゃないか ?」

 

 飛鳥は彼の言う事には応えず、先を急ぐように歩き始めるのだった。

 

 

 

 

 一方、日本、IS学園では龍也が一夏達の訓練の様子を見守っていた。

 彼自身は昼間のトラブル(一夏ラヴァーズの面々とシャルルらと食事をしたのだが、セシリアの酷いサンドイッチを食べ、放課後まで倒れていた)により、まだ体調が万全ではなかったからだ。

 

 今は一夏とセシリアの模擬戦中だ。

 ティアーズとライフルの射撃を避けながらセシリアに接近戦を挑んでいた。

 しかし、彼女の巧みな牽制により未だに間合いには入れていなかった。

 

「一夏ってISに乗って二、三か月ですよね。それでアレだけ動けるなんて……」

 

 素直に感嘆するのは龍也の隣で訓練を眺めるシャルルだった。

 

「そうだな。アイツは俺のキツイ訓練にも耐え、技術を吸収しているからな」

 

「聞いた話だと、VR訓練もやってるんだって ?」

 

「あぁ、俺がブキヤで行っていたんだ。それをアイツにもさせている。シャルルもやる ? 楽しいよ ?」

 

 シャルルは少し考えるような素振りを見せてから答える。

 

「うん、お願いしようかな」

 

 その答えに龍也はニヤァと汚い笑みを浮かべる。

 シャルルは、“あ、選択肢間違えたかな”と思ったが、彼はすぐさま自前の端末から色々データを引っ張り出し、VR訓練のデータを作成し始めており、やっぱりやめる、とは言えない雰囲気であった。

 苦笑し、視線を一夏とセシリアの模擬戦に移す。

 一夏は龍也から伝授された抜刀術をメインに据えたヒット&アウェイの戦闘スタイルを確立しかけていた。

 その結果、彼はSEが三割を切るが、ブルーティアーズのBT兵器を破壊し、SEもあと二割という所まで追い込むことが出来た。

 

 ……彼のVR訓練ってそれだけ効果がある、って事なのかな。相手は仮にも代表候補生。それが、要の武装を破壊されて、今は――。

 

「これで決めるっ !」

 

 空にいる彼女に瞬時加速で迫り、零落白夜を発動させた一夏の一撃が決まろうとしていた。

 セシリアは迫る刃を見ながらも笑みを浮かべた。

 不審に思う一夏だが、振り始めた斬撃を止める事は出来ず、振り切った。だが、彼が斬ったのは空だった。

 

「なっ ⁉」

 

 一瞬で彼女がいなくなった事に驚く彼とは対照的に見学していた者達は、セシリアの動きに見惚れていた。

 

「一夏さん、足元がお留守でしてよ ?」

 

 彼女は斬られる直前に、PICを切り、重力に従い落ちたのだ。そして、再度、PICをONにし、両手にブキヤ製のハンドガンを持ち真下から彼に銃弾を叩き込むのだった。

 さすがの一夏もこれには対応出来なかったのか、防御もできず全弾もらいSEが枯渇する。

 

「ちっくしょーっ ‼ あと少しだったのにな」

 

 地上に降り立った一夏が悔しさ漏らす。

 対して、セシリアは危うさを覚えていた。着実に力をつけてきた一夏と比べて、自分はその内負けるのではないか、と。今回は勝てたが、次はどうだろうか。

 

 シャルルは先程まで考えていた事を口に出した。

 

「代表候補生に迫る……か。そりゃあ、データを欲しがるのは無理もないかな」

 

 呟くような小言ではあったが、隣にいた龍也はしっかり聞いていた。

 彼は何も反応せず、訓練を終えた二人に声を掛けに行くのであった。

 




●武神:操縦席は本来、背中にあり、そこから搭乗し合致し操縦する。
リロイが使った武神カトラスはISサイズなので、乗り込むのではなく、纏う形。
操縦方法は合致してだが、危険なダメージを受けた場合は合致を解くように出来ている。

●仙氣発勁:龍狼伝より。詳細はwikiなど見に行ってね♪


はい、三十七話目でした!
ふぅ、ようやくIS学園側に話を持ってこれそう。
グダグダしないよう、ちょっとスピードを上げて話は進めていきたいと思います。
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