インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~ 作:たちゅや
「で、一夏よ。二人の時間を邪魔してくれるっていう事は、それなりの用件という事だな」
龍也の冷たい声が部屋に響き、一夏は床に座り震えていた。
彼の眼は鋭く、視線だけで殺されてしまう、と感じたからだ。
龍也の隣ではバスローブ姿の刀奈がベッドの上で彼らを眺めている。が、彼同様に笑ってはいなかった。
「え、えーとな……」
突然、訪問した自分が悪いのは分るのだが、二人からの殺意の視線に耐えながら話し始めた。
シャルルが女で、デュノア社の命令で男性操縦者に近づいてきた。あわよくば、白式やバーゼラルドのデータを盗るつもりだった。そして、バレた今、学園を去ると言っている。
話を聞いてて龍也は、女と判明したのが、一夏の不注意でシャルルがシャワーをしている所に入ってしまったから、というラッキースケベだった、という事に頭を抱えた。
一方、話す一夏は二人の反応に驚きが感じられなかったので、もしやと、
「あのさ、もしかして龍也に楯無さんは知ってた…… ?」
「ああ、俺は会社の方から色々聞いていたよ」
「私もとある情報屋から、ね ♪」
「なんだよ~……だったら、教えてくれてもいいじゃないか」
がくっ、とうなだれる一夏。
「まぁ、お前に問題を解決できるだけの能力があれば教えていたよ」
そう言われると一夏はうっ、と詰まってしまう。初めての男性操縦者、ブリュンヒルデの弟、という点を除けば、単なる学生に過ぎないからだ。
それは彼としても分っている点だった。だから、彼を頼ってやってきたのだ。
「さて、で、一夏はそんな事を言いにやってきたのか ?」
「いや、違う。俺はシャルルを助けたい。だけど、方法が分らないんだ」
だから、と口調を強めて彼は請うた。
「どうやったら助けられるのか教えてほしいんだ !」
一夏の強い意志を感じる言葉だった。
龍也は一瞬、刀奈と視線を交わしお互いの意思を確認する。思う所は同じだったのか、彼女は一夏に話すよう促した。
「一夏、彼女を助けたい気持ちは分かった。だが、確認したい事があるからシャルルと話をさせてもらっていいか ?」
「あ、あぁ、分かった」
携帯を取り出し、シャルルを呼び出す一夏。電話に出たシャルルに事情を説明してから、龍也に渡す。
「やぁ、シャルル。なぁに、少し聞きたい事があったから話をさせて欲しいんだ。大丈夫かな ?」
『……ううん、大丈夫。えっと、何を聞きたいのかな ?』
電話越しの彼女の声は、これからの事を考えて不安になっているのか、それとも諦めてしまっているのか、は分らないが弱々しかった。
ならば、ハッキリと意思を示してもらおう、と彼は彼女に問うた。
「シャルル、否、シャルロット・デュノア。君は、“どうして欲しい” ?」
龍也の問いにシャルルは黙ってしまう。
「俺はシャルロットを生かすも殺すこともできる。だが、正直な所、君の意思は確認していない。だから、教えてくれ。君は“どうして欲しい” ?」
そう伝えるが彼女は正直、困った。彼女は自分の想いを表に出していいのか迷っていたからだ。
自分は妾の子。母が亡くなってからデュノア本家に引き取られたが、そこに己の意思を示す機会はなく、言われるがまま従う生活をしてきた。
今回のIS学園転入もデュノア夫妻からの指示だったので、正体がバレた今、学園を去るしかないと考える。
自分の気持ちは、このまま学園で自由に生活をしたい。
だが、指示に従うのであれば、もう任務は遂行できないので学園を去るべきだ。
この二つの想いで迷っている。
龍也は何も言わないシャルロットに優しく語り掛ける。
「シャルロット。胸の想いを信じろ。それを教えてくれればいい」
……良いのかな ? 本当に言ってしまっていいのか。
不安に思う彼女に彼は、こう告げた。本当の気持ちを教えてくれたなら、俺達は君をその通りに、想いを叶えられるようにしてあげる、と。
この言葉を受け、彼女は思いの丈をぶつけるのだった。
●
フランス、デュノア社前。
秋野龍也は月宮飛鳥と共にそこにいた。
「ねぇ、龍也。本当に、本当に正面から行くの ?」
「ああ。アイツがいるんだったら、どんな手を使おうが最後は俺との一騎打ちになる。だったら、最初から直接ぶつかる方が手っ取り早くていい」
笑顔で語る龍也に飛鳥は困り顔になる。
何せ、アイツ、というのが彼にとっての怨敵であり、長い間、死闘を繰り返してきた者だったからだ。その度に、龍也が重傷を負う事が分っているので、あまり戦ってほしくないのだ。
自分が変わってあげれれば、とは思うが防戦一方になるばかりでお手上げな為、進言する事も出来ないでいた。
「大丈夫だよ、飛鳥。死にはしないからさ」
飛鳥は不安が募るばかりであった。
そんな彼女に龍也は笑みを浮かべてから、社内へと足を進めていく。
ちなみに飛鳥には地下の捜索を託してある。
「さて……と」
中に入ると人は誰もいなかった。気配もせず、本当に誰もいない事が分る。
周囲を確認していると、受付のディスプレイに文字が浮かんでいた。
『社長室で待つ』
「……ご招待、ありがとうございます、てね」
文章を確認すると同時に、エレベーターの扉が開く。
龍也は堂々とした態度で乗り込む。扉が閉まると、勝手に動き出し彼を運んでいく。
飛鳥は同時に階段で地下へと進み、奴が何をしていたのか探りに向かった。
「さて、何が見つかるかな~」
彼女が赴く場所は隠された場所。普通に行けるのは地下二階までだが、このデュノア社、実は地下は五階まで存在する。
三階以降は研究施設や開発室が存在する。今回目指すのは最下層の五階だ。目を覚ましたデュノア夫妻の話では最下層で奴が“何か”をしていた、との事。
事前に夫妻から三階以降に行くためのカードキーは貰っているが、使えない可能性もあるので彼女はISと専用の戦闘装備を用意していた。
「……こっちも人の気配はしないわね」
階を降りていくが、こちらも人の気配はなくよどんだ空気と自身の足音のみが響いていた。
彼女は途中、地下二階でカードキーを使い五階まで降りる為のエレベーターを起動させ降りて行った。
エレベーター内で奇襲でも受けるかと思い、愛用する武装――金色の刃で形成された長騎剣を構えていた。
「あちゃー某作業員が活躍するゲームだと、クリーチャーが出て来るんだけど、無いか~」
何のトラブルも無く到着してしまい、気を張るだけ無駄だったか、と嘆くが扉が開いたと同時に彼女の口元が上がる。
扉の先からは異臭がする。人が、獣が腐ったような臭いだ。
この鼻を突く臭い、嗅いだ事がある、と飛鳥は記憶から呼び起こす。
あぁ、アレか、と、うなずく。かつて、龍也と共に狩った事のある“生物”だ。
「……こういうのを私は待っていたのよっ」
握っていた剣を振り、キンッと金属音を鳴らし、彼女は戦闘態勢を保ちながら先を進むのだった。
●
龍也はエレベーターが止まった階で降りる。どうやら、降りた先が社長室だったようだ。
目の前には己が怨敵であるアイツがこちらを睨んでいた。
その姿は髪と目の色だけが違うだけで、“秋野龍也”にそっくりだった。しかし、何とまぁ不思議な事に奴の名前も――。
「よぉ、“竜也”。色々やってくれたみたいだな」
そう、彼もまた字が違うだけだが“竜也”という名なのだ。
彼は視線を外さないまま、右手にどこからともなく刀を取り出し、切っ先を向ける。
「全ては……龍也、貴様を殺す為。デュノアの会社と人を用い、我が力を更なる高みに昇らせることが出来た……」
「それで、人の気配がしなかったのか。……まぁ、お前が何をしようがこちらはそれを潰すのみ」
龍也もまた、どこからともなく出した刀を握り、力を込める。
彼にとって最凶の敵であり、最も嫌悪すべき敵。
それが、彼。
龍也は秋野家本家出身。そして、竜也は分家の一人。
分家の人間にも本家の人間が持つ異能の力は発現する。それでも、決して本家の人間に匹敵するほどではない。
だが、竜也は違った。龍也と同程度の力を持っていたのだ。だからなのか、本家の龍也に成り代わりたいと思うようになり、より強い力を求めるようになっていた。
今回の事もそうだ。彼は何かしらの禁術を用い己の力を高めた。そこから来る余裕が態度に現れていた。
「ハハッ、だったらやってみてくれ。――行くぞ」
竜也は首にかけていた黒曜石を掴み宣言する。
「起動せよっ、我がIS……フレズヴェルク・レイジ !」
赤き光に包まれ、生まれるは黒を基調としクリスタルパーツは紅のフレズヴェルクだった。
両の手にはベリルスマッシャーを、背部にはアームが追加されベリルショット・ライフルを四丁装備した超攻撃型仕様。更に、ブースター類も強化されているようで、オリジナルのフレズヴェルクよりも大型化していた。
「それが、お前が俺達から奪ったデータで造ったISか」
龍也の言葉には静かな怒りが篭められていた。
「そうっ ! 調べたぞ、貴様が使うバーゼラルドはこの
竜也は雄々しく腕を振り、自信を体現する。
「……ならば、行くぞっ ‼ バーゼラルド・リヴェンジャーッ ‼」
龍也もバーゼラルドを纏い、武装を展開する。
彼が使うのは大型ビーム兵器であるメガスラッシュエッジ。これをブラスターモードで両腕部に固定していた。
FA型ISを纏った二人は睨み合い、意識を高揚させていく。
討つべきは己が怨敵。力はこの手に。あとは、振るうだけ。
二人の戦意が高まった今、激しい戦いが始まる。
終わる時は、どちらかが果てる時か、それとも――、両者の死をもってか。
盆休みはすっかり引きこもり、愛犬と戯れていた私です。
今回は龍也のライバル登場です。
秋野 竜也。
果たしてバーゼラルドがどこまで壊れるのか!?
何かのフラグが建つのか!?
次回もやりたい放題やってやんよっ!