インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~ 作:たちゅや
プライベートの用事が進まないぜ!
はい、一か月ぶりの私です。
師走!社会人は忙しいんやで?
等と言っておりますが、正直な所を言いますと、
煮詰まっていました。
書いては消してを繰り返して、唐突感とやっつけ感を残しつつも投稿してしまう、この体たらく。
すまんなぁ(´・ω・`)
「シャルロット・デュノア。君は今日からブキヤ所属のテストパイロットなのでよろしくっ !」
「え ?」
あまりにもあっけらかんとした龍也の話にシャルロットは呆けてしまった。
彼からデュノア社の事など話があると言われ、関係者が揃っている学園長室に来てみれば、開口一番がソレだ。呆けない方がおかしい。
だが、同様の態度をとっているのは彼以外の楯無に千冬、学園の長である轡木 十蔵もだ。
「ちょっと龍也。幾ら何でも説明を省略しすぎじゃない」
「……秋野、もう少し説明をしろ」
「ソウデスヨネー」
秋野 龍也――彼もデュノア社での戦闘からまともに休まないまま、ブキヤからISを受領し学園に戻れば追い回され、あげくには千冬との模擬戦ときたもんだ。さすがに疲れたのか説明する気力が出ないのだ。
はぁ、と息を吐いてから説明を始めた。
「まず、デュノア社での出来事から――」
自身の怨敵である“秋野 竜也”。亡国企業との関わり、疑似ISコアの作成、弱みに付け込まれたデュノア夫妻。
物凄く簡単に話すが、要点は付いていた。
「で、ブキヤとしてはデュノア社と吸収合併します。その為、シャルロット・デュノアはブキヤ所属のテストパイロットとなるわけです。また、今後もフランスの代表候補生として励んでもらいますので、よろしくお願いします」
「え、えっと話は分かったんだけど、僕は“男性”として――」
「まぁ、再入学すれば問題ないだろう。フランス政府もシャルロットの性別偽りに関与しているし、公にするとややこしい話になるんだよ」
現地にまだいる飛鳥から政府のお偉いさんもコレに関与してたよ~と一報を受け、龍也も考えていた案を頭から抹消し、政府にこう言うように伝えた。
『面倒ごとにしかならないから、俺がやった事と相殺な』
これにフランス政府も首を縦に振り、龍也もにっこり。
「とはいえ、各種手続きの問題もあるからタッグトーナメントが終わるまでは、変わらず男性として振る舞って欲しい。それからは、改めて女性として転入してもらうから。これでいいですよね、十蔵さん」
彼に尋ねられ、初めて十蔵は口を開いた。
「……えぇ、いいですよ。しかし、龍也君。少し独断過ぎませんか ? もう少しこちらと連携を取ってもらっても良いんですがね」
「ん~今回は申し訳ない。次に同じような事があれば、ご相談させてもらいます。……次が無い事を願うばかりですがね」
「だといいですがね。では、織斑先生。シャルロットさんに関しては今日の話で進めて下さい」
「分かりました。……デュノア、お前も理解したな ?」
自分の事とはいえ、急すぎる展開に若干、シャルロットは着いていくので精いっぱいで、千冬への返答もただ頷くだけであった。
後に彼女は展開が早すぎて整理するだけで大変だった、と龍也に語っていた。
話を終えてシャルロットだけが退室し、三人はまだ話を続けた。お題は亡国企業に関してだ。
「……龍也、あなたはアノ組織に対してどこまで知っているの ?」
「そうだねぇ……。かなり古い組織である事と複雑すぎる体系で全貌が把握できない事と、俺の怨敵が所属している事くらいだ」
怨敵、と聞くたびに楯無の表情は硬くなる。彼女も飛鳥と同様に彼への執念と、戦いの結果もよく知っているからだ。
「その敵だが、秋野と同程度の実力を持っていると言うんだな ?」
千冬の問いに頷いて答える。彼女は一瞬、目を伏せ模擬戦の内容を思い出していた。
「……私とて、現役は引退したが訓練は続けている。“あの大会”で優勝した時よりも力はあると思っているが――この私と模擬戦で引き分ける奴は、そうそういない」
そこまで言ってから十蔵が口を挟む。
「厄介な事ですねぇ……。日本政府はもう既に ?」
「報告は入ってるはずですよ。どう対応するかは政府次第です」
「……正直、難しいでしょうね。どうしても保守的になる国ですからね」
十蔵は深いため息をつき、楯無の方にも同じことを聞いた。
「更識の方では、IS委員会にも組織の手が入っている、という事は分かりました。あとは龍也が言っていた事と同じですね。できれば、少数精鋭で専属の組織が欲しい所です」
亡国企業がどういう動きをしてくるのか分らない以上、熟練の腕を持つ者で構成された組織が欲しかった。
かつては、そのような組織が日本にもあったが今は解体されており、そのメンバーも全員が揃うことは二度と無いであろう。
「仮にISを用いてのテロ行為があった場合だが、IS委員会は学園側に出撃要請を出してくる可能性が高い」
そう言う千冬の表情は穏やかではなかった。何せ、本当にそのような事を言ってくる可能性があるからだ。
学園としては生徒に実戦をやらせるつもりは毛頭ない。
あくまで正規の訓練を受けた者がやるべきで、学園で命のやり取りの方法を教える事は無いからだ。
だが、IS委員会はそう思っていない。学園で実戦を想定した訓練をする事を強いてくるのだ。おかげで、二年生になってからはより実戦に近い訓練が幾分か増えてくる。
「……そうならない事を願うばかりです」
しかし、龍也の思いとは裏腹に、近い将来に生徒達は実戦を経験する事になってしまうのだった。
●
時間は過ぎていき、遂にタッグトーナメントの日がやってきた。
龍也は対戦相手の発表を見る為、大型スクリーンの前に来ていた。一夏達も来ており、今か今かと待ちわびていた。
さぁ、初戦の相手は誰になるか。
正直な所、専用機組以外と当たった場合は、ただの消化試合になりかねない。今回、龍也は新製品の宣伝もするので、手を抜くわけにはいかないのだ。
そんな事を思っていると、時刻が来たのか対戦表が映し出された。
「良しっ ‼」
と彼が声を上げれば、
「ゲッ ⁉」
と鈴の叫びが上がった。
「あー……初戦から龍也さんとですか……。気合を入れないといけませんわね」
セシリアは特訓の成果を見せる時が来た、と気合を入れ直す。
相方がやる気を出している以上、鈴も合わせるしかない。
「くっ……しょうがないわね。龍也っ ‼ 絶対負かしてやるわよ ‼」
「うんうん、その意気だっ。二人とも全力でかかってきな ‼」
初戦からセシリアと鈴のペアと当たるのは好都合だった。
代表候補生二名に勝てる機体であれば、良い宣伝になると考えたからだ。しかし、これは浅はかな考えと言える。
何故なら、彼自身が強い為に見る者によっては、機体が強いのか判断がし難いのだ。
一応、タッグトーナメントは公にされているので、業界の人間は集まってくる。
目の肥えた者ならば、本質は捉えることが出来るかもしれない。
ちなみに龍也がそれを思い至ったのは、第一試合を終えてからのことであった。
さて、対戦相手が分れば次は――。
『各ブロックの第一試合の選手は準備の為に控室に集まってください~』
校内アナウンスが流れ、試合に出る選手たちが動き出した。
龍也も集団に混じりながら移動していく。
控室では真耶がおり、トーナメントにおいての注意事項等を話してくれた。その説明も五分ほどで終わり、いよいよ第一試合が始まろうとしていた。
『皆さーん、お待たせしました ! Aブロックの第一試合を始めたいと思いますっ !』
解説もとい実況する生徒の熱い声が校内放送で流れてくる。
『この試合、皆さん見逃しちゃいけませんよ。なんと、世界で二番目の男性操縦者である秋野 龍也さんが登場ですよ ! 対するは、セシリア・鈴ペアだあああっ !』
『ちなみにだが、秋野は運営の都合で一人での参加になっている。一人とはいえ、油断はするなよ ? 私と模擬戦をしてドローだったからな』
生徒の隣からマイクをすくい発現する千冬。話し終え、マイクを戻すと解説の生徒――赤崎 ミチルが、
『おっとぉ、織斑先生から興味深い話が聞けた所で、準備が整ったようです。では、アリーナの方を見てみましょう』
アリーナではセシリアと鈴が既にISを展開し、龍也と対峙していた。
彼は未だISを展開しておらず、ただ時を待つかのように静かに佇んでいる。
『おっと、龍也さんはまだISを展開してませんね。何かあるのでしょうか』
何かあるのか、と言われてから彼は、
「その通りっ ‼」
カッと目を開き、大勢の観衆に向けて声を張り上げた。
「括目せよ、これが我が新しき力だっ ‼ 行くぞ、轟雷 ‼」
腕を振り上げ、ISを展開する。
身に纏うはカスタマイズされた轟雷だ。
左右の肩には身を覆えるほどの大盾を備え、バックパックの左右には滑空砲を。脚部にはブースターが増設されている。
右手には十字の形をしたライフルを持ち、左手にはライドカノンを構えていた。
フルフェイスの中では龍也は笑みを浮かべ、相対する二人に告げる。
「さぁ、始めよう。お前達の鍛練の成果を出し尽くせっ ‼」