インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~ 作:たちゅや
ことよろっ!
新年、一回目の投稿だよ。
くぅ~休みって良いねっ!
龍也のカスタムされた轟雷を目の前にして、鈴とセシリアはプライベートチャネルでやり取りをしていた。
『火力増し増しに重装甲。外付けのブースターで機動力はありそうね』
『あの分厚い盾を抜くにはわたくしの火力では難しいですわ』
『セシリアはVR訓練だっけ ?? 見たことある武装はあるの ?』
『両手の武装は見たことあります。左のライドカノンは高火力で気を付けるのは勿論ですが、右に持ってるグレイヴアームズが厄介ですの』
厄介、という事に鈴は尋ねる。
セシリアは苦い記憶を呼び起こしながら語る。
『仮想訓練の際は、アレが反転して別の武装に変わったんですの。それが炸裂型のレーザーライフルでして……。避けたつもりでも避けきれずシールドエネルギーは削られ、さらに着弾した場所はエネルギー波によるダメージゾーンになって進むだけでダメージをもらうという……』
『中々えぐいわね……』
本来の仕様のグレイヴアームズではなく、ブキヤが魔改造した物のデータでの話なのではあるが、彼の事だ。それで制式採用している可能性は高い。
『なので、最初に狙えるなら武器破壊をしたいと思います』
セシリアはBT兵器の練度を高めることを優先に訓練をしてきた。更に、龍也経由でブキヤからキラービークをテストで試用している。
これがまた彼女には相性が抜群なのであった。
何せ火力不足であったブルー・ティアーズを見事に補う性能を見せ、戦術が増える事になった。
最初からわたくしは全力で行きますわよ。
――等と、彼女らは話しているのだろう。と、龍也は二人を眺めながら戦意を高めていく。
確かにこの轟雷は火力重視でセッティングしているが、一番やりたい事は別にある。
お前達に教えてやるよ。コイツの戦闘方法をなっ ‼
試合開始のカウントダウンが表示される中、龍也はやや中腰で足を広げる。
セシリアはスターライトmkⅢの安全装置を外し、ティアーズを展開させる。彼女の前では鈴が双天牙月を連結させて構えている。
観客達も新型のISの性能に期待を寄せながら、カウントがゼロになるのを待っている。
5、4、3、2、1――0。
ゼロになった同時に四基のティアーズが龍也目掛けてレーザーを放つ。
鈴は接近戦を仕掛けるべく突撃する。対して彼はというと。
ティアーズの攻撃は両肩にアームで接続されている盾が自動で動き防ぎ、
さぁ、行くぞ。
意思は伝達され行動に現れる。
エクステンドブースターとスカート部のブースターが火を噴き、轟雷が弾丸のように発射される。
それは瞬時加速――ではなく、よりエネルギーの消費が激しい移動手段の一つ。とある傭兵達にとっては、強力な攻撃にもなるテクニック。
グライドブースト―― 一定の高度を保ったまま、エネルギーが続く限り移動するテクニック。
ここから続けて行うのがISでは絶対にやる事が無い攻撃。やれば双方のSEを削る諸刃の剣――。
「これがっ ! グライドブーストからのぉブーストチャージだっ ‼」
咆哮を上げながら、スピードを維持したまま鈴に体当たりをかます。
ブーストチャージ――グライドブーストによるハイスピードで機体を加速させ、その勢いを蹴りに乗せて叩きつけるという格闘技術で速度が速く、重量が重いほどダメージは増加する。
鈴もとっさに防御の態勢をとりはするが……。
「ぐげっ」
とても女性が発してはいけない声を発しながら、鈴は後方へと吹っ飛ばされていく。
これにはセシリア含め観客全員がドン引きしていた。
『な、なんと龍也選手、体当たりだあああっ ‼』
「うわぁ……龍也の奴、酷いなぁ」
「酷いというか、あんな戦い方を選択するのがありえないんだけどね」
一夏の素直な意見に、シャルルが答える。
元々、ISで殴り合いやぶつかり合いは互いのSEを削るだけで無意味に近い。以前、バーゼラルドにインパクトナックルを装備させてヴァイスハイトを殴った事はあったが、あれはバッテリーによる特殊フィールドを形成した上での近接攻撃なので、今回とは若干違う。
受け手側の鈴もまさかこんな手段を用いて来るとは思っていなかった。
なんて馬鹿げた攻撃なのよっ !
「防御を崩しながら、ごっそり削るなんてとんでもないわよ !」
「鈴さん一度下がってくださいましっ」
起き攻めをされないよう、セシリアがフォローに入る。
ティアーズによる射撃に加え、彼女はキラービークを投入していた。
「お行きなさい、キラービークッ ‼」
彼女の意思に応え、二基のキラービークが龍也に向かっていく。
このキラービーク、ウイングユニットもブレードのように扱うことができ、すれ違いざまに斬りつけるといった芸当もできる。
ティアーズ四基に加え、合計六基のBT兵装を扱う彼女の精神力に感嘆する龍也。
いけるだろう、と思い提案したのは彼なのだが実際に動かしているのを見るのは初めてだったりする。
『おっとセシリア選手、ここで新兵器投入か !? 織斑先生、アレは何でしょうか ?』
『まぁ、BT兵装の類だろうな……ん ? ほう、どうやらブキヤから提供された新型のBT兵装みたいだな。開示されているスペックを見るにブルー・ティアーズの上位互換だな』
千冬が手元に寄越されたデータを見、そう伝えセシリアを見直す。
……合計六基のBT兵装。この短期間でそれだけ使えるようになるとは、かなり無茶な訓練をしたな。加えて、龍也からの射撃も回避する為に位置取りにも注意を払っている。
そこまでできる代表候補生はいない。だが、やはり決定打に欠ける、と結論付けた。
さて、どう火力不足を補うのか見せてもらおうか、と試合に視線を移すのだった。
龍也は軸をずらして回避しつつ、右手のグレイヴアームズはティアーズ達を狙い、左手のライドカノンと滑空砲は鈴とセシリアへばら撒きながら距離を詰めるべく前進する。
止めなくては、と鈴が双天牙月を構えながら前に出てくる。
「さっきのお返しをしないとねっ ‼」
距離はまだある。ライドカノンの弾を衝撃砲である龍咆で潰しながら、セシリアが狙われないように鈴は速度を上げていく。
『セシリアっ !』
『わかってますっ !』
急かされるが焦りは禁物。
セシリアはブルー・ティアーズを戻しキラービークの操作をしながら、上空を舞う。
初手で武器破壊をしたかったが、ブーストチャージで狙う隙を逃してしまったので次の手段を実行する。
足りない火力を補うために考えた戦術。今、お見せしますわっ !
スターライトMk.Ⅲを構えるが、ただ狙うわけではない。
ブルー・ティアーズを展開し直し、スターライトMk.Ⅲの銃口部に四基を接続させる。
一本の糸が頼りなくとも、何本も縒り合せば強くなる。同じように、威力の低い武装も束ねて使用すればっ。
『鈴さん、チャージの時間を稼いでください !』
鈴に時間稼ぎを打診するが、彼女はそれどころではなかった。
龍咆で龍也を牽制するつもりが、彼は盾で防ぎ切って見せ更には、セシリアのキラービークの攻撃も巧みに防ぐのだ。また、先程のブーストチャージを使う素振りをちらつかせる事でプレッシャーもかけてくる。
彼女とて二度目を貰うわけにはいかない、と退くとグレイヴアームズとライドカノンの砲火が襲ってくる。
それらを龍咆と双天牙月で潰し、逸らすがいつまでも続けられるほど集中力は持たない。
なので、鈴はセシリアを待つのだが未だ射撃体勢でチャージ中のまま。
「ああぁ、もうっ ! 鬱陶しいわね ! 何であんたはそんな戦い方しかしないのよっ」
「まぁ、轟雷の出来る事を宣伝しないといけないからなっ ! 俺、本来の戦い方では無い事は伝えておこうっ !」
どちらかと言えば、彼は射撃武器よりも格闘武器を好む性格だ。
……さて、そろそろセシリアもチャージが出来たころかな ? 思い至った戦術、見せてもらおう !
彼の思いと同時に鈴にプライベートチャネルでセシリアの声が届く。
『OKですわっ ‼』
鈴は聞くと同時に龍也に龍咆を発射しながら、後ろに瞬時加速で後退する。
「行きますっ ! スターダスト・ブレイカーッ ‼」
スターライトMk.Ⅲとブルー・ティアーズのチャージしていたエネルギーを一気に放つ。
放たれたレーザーは集束し、蒼い閃光となり龍也を襲う。
「ほう集束砲かっ ! リリカルでマジカルなのか、それともWのドライツバークバスターからヒントを得たか ⁉」
龍咆を盾で防ぎ、セシリアの集束砲を横に回避して避けるが、
「逃がしませんわっ ‼」
彼女は未だレーザーを出し続ける銃口を彼の方に向けて薙ぐ。
ちぃっ、と舌打ちしながら逃げるが、足元に龍咆の衝撃が来る。
足止めされ、仕方なく二枚の盾を前に出し集束砲を受ける。
ズシン、と重い衝撃が体を襲う。
「くっ、ゴリゴリとSEが削られるっ。しかも !」
ハイパーセンサーは左右から来るキラービークを捉えていた。
前面の攻撃を盾で防ぎながら、グレイヴアームズとライドカノンをキラービークに向けるが、これはタッグ戦。構えたと同時に龍也は武装を手放し、瞬時加速で後退する。
手放した武装には分離した双天牙月が投擲され刺さっていた。
「……龍也、アンタよく視えてるじゃない ?」
「タッグ戦だからなっ。常に二人とも視界に入れていないと闘えないさ」
……とは言うが、思った以上にダメージを貰ったな。
轟雷の盾はセシリアの集束砲を受けた為にほぼ使い物にならなくなっていた。あと数秒もすれば貫かれていたと思う。タイミング良く砲撃が終わって助かった。だが武装は鈴に破壊され今は無手だ。
SEも残り三割。客観的に見て、セシリアと鈴が優勢だ。それでも、彼にはまだ余裕が見られる。フルフェイスなので、表情は彼女達には見えないが。
しかし、二人には余裕が無かった。
セシリアは集束砲を撃ったおかげで、スターライトMk.Ⅲとブルー・ティアーズに負荷がかかり過ぎ、銃身が焼けてしまい使用不可。
鈴も思った以上に疲れており、長くは戦闘を継続できないと考えていた。
『アレで仕留めれなかったのが痛いわね……。セシリアは武器ある ?』
『キラービークがありますが、正直、心許ないですわ』
疲れた声で鈴に答えるセシリア。
キラービークはそろそろエネルギーが切れかかっているのだ。ブルー・ティアーズは本体に戻すことでエネルギー回復ができるが、外付けのユニットの為、回復機能は無いのだ。
『でも、おかげで龍也に結構ダメージが与えれてるはずよ。あと少しだけ頑張りましょ』
『えぇ、そうですとも』
鈴は双天牙月を回収し、両手に構え直す。セシリアもインターセプトを取り出し、左右にキラービークを配置する。
ふ、まさかアレを使うことになるとは思いもしなかったな。
「二人ともよく善戦してくれた。感謝として、この先で見せるはずだった武装を見せるとしよう !」
嫌な予感が二人を襲うが、既に遅し。
「バイオレンスラム、スパイクモードっ ‼」
轟雷の手には先端に八つのスパイクがついた見た目から凶悪なソレが握られていた。
「さぁ――フィナーレだ」
さながら死の宣告か。轟雷のメインカメラが赤く光るとブースターが火を噴き、鈴に突貫する。
「させません !」
セシリアがキラービークを向かわせるが、それらの攻撃は極々短い瞬時加速、いわゆるクイックブーストで軸をずらし楽々避けて見せた。
鈴は速度を落とさず迫る龍也にどう対処するか、瞬時に判断する。
「乗ってやろうじゃないのっ ‼」
気合を入れ、龍也へ向かう。
迫る彼がバイオレンスラムを振りかぶるのに合わせて、龍咆を放つ。しかし。
「ふんっ ‼」
「はぁ ⁉」
龍也は地面にバイオレンスラムを叩きつけると、上空に跳躍し龍咆を回避する。
そこで鈴は彼の狙いが自分では無い事に気づくが、彼は更にブースターを噴かせて速度を一気に上げ、バイオレンスラムをセシリアに叩きつけ、地上へ墜とす。
「きゃあっ ‼」
短い悲鳴をあげるセシリア。龍也は追撃とばかりにもう一発、バイオレンスラムを叩き込み黙らせる。
ハッキリ言う。過剰であり、またもや全員がドン引きである。
だが、龍也は素知らぬ顔で鈴を捉えバイオレンスラムを変形させる。
今度はスパイクではなく、破城槌モードにし突撃する。
「ブキヤの武器ってどれもこれも過剰すぎない ⁉」
「いやいや、これくらいがちょうど良いんだよ」
『どう考えても過剰だよ !』
試合を見ている誰もが叫ぶが、龍也は無視だ。ロマンのある武器なんだから、過剰とかは野暮ったい話なのだ。過剰戦力万歳 !
「さぁさぁ、残りSEも少ないから一撃で終わらせるぞ」
またも龍也は加速し、バイオレンスラムを突き出し突撃する。もう何も考えずただ突き進むのみだ。
鈴はもう接近戦をする気は無くなっており、龍咆を引き撃ちしながら距離を離す。
このまま距離を取り続けて、龍咆で片をつけるっ。
甘いぞ鈴。退くよりも速ければ問題ないんだよっ。
当たらなければどうという事は無い、の精神の元で龍也は龍咆を掻い潜りながら進んでいく。徐々にスピードも上げていき、距離をじりじりと詰めていく。
下がり続けるわけにはいかない。討つべきか。
彼女は覚悟を決め、迎え撃った。
龍也は体当たりと瞬時加速の多様、セシリアの砲撃でもうSEは空に近いはず。一撃入れれば倒せるはずよ。落ち着いて、一撃入れればっ。
「来なさい、龍也 !」
「応ともっ !」
龍也と鈴が互いの攻撃レンジに入る。その刹那、互いの獲物を振りかぶり、撃ち放った。
バイオレンスラムが鈴に届くのが早いのか。
それとも、双天牙月が龍也に届くのが早いのか。
決着はその一瞬でついた。
僅かな差、武器のリーチの差でバイオレンスラムが甲龍を貫いていた。
「……俺の勝ちだ」
「ハァ……あたしたちの負け、ね」
さて、今回のカスタム轟雷ですが、所持武装はこれらになっています。
・グレイヴアームズ(反転させることでパルスガンとして使用可能)
・ライドカノン
・滑空砲(今回の話では、活躍無し。無念)
・バイオレンスラム
・アーミーナイフ(使われることが無かった)
火力増しでしたが、最大の武器はその装甲を使ったブーストチャージだった、というオチでして……。
何度か書き直してたんですけど、もう轟雷の皮を被ったACが戦ってるような状態もありました(笑)
あー久しぶりにACVやりたいなー。主任を蹴り飛ばすムービーが好きなんですよ~
と、まぁ四十四話目でした。
新年の休みの間にもう一本行きたいですね。
ではでは。