インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~   作:たちゅや

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お待たせしました。
遅れた原因は……すまん。そういうことだ。

では、続きはあとがきで。


四十八話

 私が目を覚ますと知らない天井が見えた。

 

 ……と言うのがこの国のテンプレートだと聞いたが、実際は救護室の天井。状況を察するに、あの暴走の後にここに運び込まれたと考えるが。

 そもそも何故、暴走に至ったのか。正直、その瞬間の事はあまり覚えがない。

 ただ、覚えているのは“負けたくない”という気持ちが強かった……という事だけ。

 

 実力も経験も劣るはずの彼にどうして追い込まれたのか。

 タッグマッチだったとはいえ、パートナーである篠ノ之箒は優秀だった。

 気迫も十分、瞬時にこちらに合わせられ、背中を任せられた。本音を言うとそこまで期待はしていなかった。

 かの篠ノ之束の妹、というだけで大したことは無いと思っていた。

 だが、蓋を開けてみれば十二分に訓練された戦士だった。聞けば、龍也がみっちり訓練をしていた、と。

 以前に自分も訓練を受けたことがある為、それは必然の結果と言えた。

 

 対して織斑のパートナーはシャルル・デュノア。否、シャルロット・デュノアか。高速切替を得意とし、どのレンジでも対応してくる厄介な存在。

 織斑の拙い所を見事にカバーし、こちらを相手に善戦した。

 

 だから全力を出したのだが……何が敗因に繋がった ?

 

「単純に気持ちの問題だったんだろ」

 

 一人しかいないはずなのに、つい口にしていた事に返答され私は困惑した。

 

「よっ、ラウラ。調子はどうだ ?」

 

「た、龍也……」

 

「私もいるんだが、体の方は良さそうだな」

 

「教官……」

 

 龍也と千冬がぬっ、と彼女の前に姿を現す。

 寝てるわけにはいかないと、体を起こそうとするが二人に止められ寝たままで応対を続ける。

 

「少し体が痛むが、問題はありません」

 

 それを聞き二人は良かったと告げると、今度は彼女が尋ねてきた。

 

「龍也、私が負けたのは気持ちの問題と言ったがどういう事だ」

 

「あくまで俺が思っただけだからな ? お前の攻撃には一夏への不満――負の感情のみで戦っていた。だが、一夏は純粋にお前に勝ちたい思いで戦っていた。それが実力にブーストをかけて、お前に迫り、一瞬超えたんだ。……勝敗を決めるのはそんな一瞬で十分だ」

 

 と、言いはするが実際は龍也が試合を見ている訳では無かったので、本当の所はよく分からない。だが、きっとそうであろう、と考えていた。

 かつてラウラを指導した際に、織斑千冬の大会二連覇を成し遂げれなかった原因である一夏に強い負の意識を持っているのを感じていたのだ。

 この時に適切な処置をしておきたかったのだが、厄介者の連中(軍の残党)の邪魔と事後処理で時間が無くなってしまったのだ。

 一夏について言えば、きっちりと心身共に鍛えているので、これくらいの実力は示してもらわねば困る。

 

 ラウラはしばし龍也の言葉に考え込むが、やがて口を開け、声を出す。

 

「……それもあるかもしれないな」

 

 あぁ、そうだ。簡単な事だったんだ。

 

 要は、一夏に嫉妬していたのだ、と彼女は気づく。

 偉大な姉の弟である彼に、だ。

 ラウラの表情がより柔らかくなっている事に二人は気づく。

 

「さて、ラウラも元気そうだし俺は行くよ。織斑先生あとはお願いしますね」

 

「ああ、分かった」

 

 龍也は彼女の変化に満足し出ていく。残された千冬は暫しの間、ラウラと話をするのであった。

 

「……ところで教官。私のISに施されていたのはVTシステムで間違いないのですね ?」

 

「そうだ。条約で禁止になっているソレだ。ISへの蓄積ダメージや搭乗者の精神状態、そして何よりも搭乗者の意志――願望がトリガーになって発動する。……実に巧妙に隠されていたよ」

 

 はぁ、とため息を吐くがすぐに真剣な表情で千冬はラウラに問うた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。お前は誰だ ?」

 

「私は……“ただの”ラウラです」

 

 嫉妬を募らせ、“あの人になりたかった”ラウラはもういない。だから、彼女はそうはっきりと返答した。

 その返答に千冬は驚きながらも、言葉を紡いだ。

 

「だったらちょうどいい。何せ、この学園にいる三年間はある意味で自由だ。思うように生きればいいさ」

 

 ラウラはどう応えるか迷わなかった。縛るモノがなくなったこの身は自由なのだから。

 

「ええ、自分で考え思うように生きます」

 

 

 

 

 さて、救護室を出た龍也は一夏の元を訊ねていた。理由はレイファルクスが使わせたアーセナルアームズの影響が白式に出ていないか確認する為だった。

 

「大丈夫だよ龍也。俺も白式も何ともないぜ ?」

 

 戦闘後しばらく時間は経っているが、まだ一夏の気分は高揚していた。故に、龍也に強気な口調で応えていた。

 

「そうは言うが、規格外の武装を使ったんだ。何かしら影響はあったと思う方が普通だ」

 

「心配性だな龍也は。でも、大丈夫だって。あの機体、レイファルクスって言うんだっけ ? から借りた武装は白式にエネルギー供給しただけだしさ」

 

 エネルギー供給……。元にそんなシステムはなかったハズだ。だったら、やっぱり何かの目的があって“使わせた”と考えるが妥当だ。

 

「一夏、通常、ISの武装にそんな機能は無いんだ。だから……」

 

「大丈夫だって、言ってるだろっ ‼」

 

 龍也の言葉を遮る一夏。その眼はまるで敵を見ているかのようだった。

 普段は見せる事のない態度に龍也も驚く。

 そんな龍也を見てか、一夏も我に返り、

 

「え、あ、悪い。あの戦いの途中から気分が落ち着かなくてな」

 

 高揚したまま……か。

 

「……判ったよ。でも、一夏。一度、白式はしっかりと調べた方が良い。“何か”があった後じゃ遅いんだからな ?」

 

「ああ、分かった。龍也にそれだけ言われてるんだから、そのうち倉持技研に調べてもらうよ」

 

「そうしてくれ」

 

 何だか気まずい雰囲気になったので、龍也はその場を後にした。

 

「……どうしたんだろうな、俺」

 

 一夏は自分に起きてる変化に戸惑いつつ、白式を見るばかりだった。

 

 

 

 

 龍也はどこへ行くとも決めていなかったので、学園内を歩きながら考えをまとめていた。

 突如現れたFA型ISレイファルクス。フレームアームズとしての能力を完全再現して現れた機体は一夏にアーセナルアームズを何らかの目的があって使わせる。

 一夏自身も戦意が高揚しており、危険を感じる。

 さらにレイファルクスはこれから必要になるからと、アーセナルアームズの詳細な武装データを渡してきた。

 確かにこれがあれば作成は容易だ。だが、その能力を十全に扱うにはやはり機体その物のアップデートが必要だ。

 少なくとも、現状ならゼルフィカール――否、ゼルフィカール/NE(ナイトエッジ)仕様にはしたいところだ。

 欲を言えばレイファルクスが良い。さもなくば、技術再現で建造されたヤクトファルクスでも良いが、ぶっちゃけブキヤに開発する余裕が今は無い。

 現状は新規FA型ISとしての轟雷の量産、刀奈にデータ取りをしてもらった機体の作成、龍也が進めている俺アームズ用の武装作成で手が一杯なのだ。

 

「しょうがない。兎に頼むとするか……」

 

 あまりこちらの技術を教えたくはないのだが、今後の事を考えれば背に腹は代えられない。

 龍也はそう決めると早速、送るべきデータをまとめるのであった。

 




 一夏に闇墜ちフラグを積ませていく四十八話でございました。
 まぁ、難産だったこと。ノリで書いているのが裏目に出ています。

 ともあれ、書きたい物は書けてるので私としては良しっ。

 さて、次回も鈍足ですがよろしくお願いします。
 

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