インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~ 作:たちゅや
五十四話目です。
龍也は視界では敵機を捉えきってはいないが、試作型光波射出機を射撃モードにして数発放つ。
強烈な光波は真っすぐ敵機を貫こうとするが、何の手応えも無く消えてしまう。
代わりに、四発の光波がこちらを射抜こうと放たれていた。
これを危なげなく回避し、互いを視界に捉える距離で相対し様子を伺う。
敵は以前にも使っていたFA型ISフレズヴェルク・レイジの姿であったが、異なる点もあった。背面に懸架していたベリルショットライフルは無くなっており、小型化したであろうACS-14GPを四門が銃口をのぞかせていた。両腕部にはヘキサギアで扱われるエクシードプラズマキャノンを搭載していた。
近接武装もベリルスマッシャーではなく、試製三式破砕槌を手にしていた。
ほぅ、どのレンジでも戦える機体に仕上げてきたのか。しかも、ヘキサギアの兵装ときた。好きな奴がいるのか ?
などと思っている余裕は無い。どの武装も強力な物に変わりはないので、攻撃を喰らうわけにはいかない。
ACS-14GPは原作ではフレズヴェルクシリーズのTCSを突破できる武装だ。仮に直撃すれば装甲を抜かれる可能性はある。パワーアップしているこのゼルフィカールであれば、数発は耐えれるが、油断はできない。
「以前とは比べられない程の機体にしてきたようだな !」
「ハハッ ! 汝を倒すためだっ ! その為にはどんな手段でも使わせてもらう !」
相対する二人の闘氣が高まっていく。
コイツに勝つ為に手段は選ばない。最初から使えるものは使っていく。
互いに考える事は同じだった。
ゼルフィカールから炎が噴きあがり、フレズヴェルクからは黒い炎が噴きあがる。その炎は龍の形を取っていく。
二体の背に龍が顕在し、睨み合い咆える。
「「行くぞっ ‼」」
二人が同時に武装に龍を纏わせ放つ。ぶつかり合った龍は大爆発を起こし、熱風を巻き起こす。
その振動は大気を震わせ、海を荒れさせる。
それほどの攻撃をまともに喰らえば、タダでは済まない。が、二人はそんな事を意に介さず次の攻撃に移っていた。
龍也は試作型光波射出機を剣モードにし、炎を纏わせた斬撃を飛ばす。
対して竜也は攻撃を避けつつ、急加速。一気に距離を詰めて両手で持った試製三式破砕槌で斬り……否、殴りかかる。
圧倒的質量を持った武装であるソレは、斬るよりも重さで叩くというのが正しい表現かもしれない。
チィッ ! アレも喰らったら即死だ ! 受けるのも無し、避けるべきだ。
舌打ちをしつつ、後ろに跳び攻撃を回避。同時に、牽制の為にT-LINKスライダーを向かわせる。
「T-LINKコンタクトっ、行けっ !」
龍也の思念を受け、肩部と腕部から三基ずつスライダーが動き、竜也に向かっていく。
「BT兵装かっ !」
自身に向かって飛んでくるソレに彼は腕部のエクシードプラズマキャノンで近づかせないようにするが、斬撃だけではなく、射撃も出来るT-LINKスライダーの攻撃に四方から攻められる。
ブレード状の武装かと思えば、射撃もできるか ⁉ 厄介な武装をっ。
ならば、と竜也はACS-14GPによる大火力でT-LINKスライダーごと、龍也を薙ぎ払う事を選択した。
「要は汝を倒せば済むことっ ! 砕け散れっ !」
背部アームがACS-14GPの四門を動かし、瞬時に狙いを付ける。数秒でチャージが終了し、大火力の砲撃が放たれる。
四つの光波は真っすぐ龍也を狙うが、その余波でT-LINKスライダーを弾いていく。ただ、すぐに方向を変えてフレズヴェルク・レイジに立ち向かうが、機体の周囲に強力なフィールドが形成されているのか、斬撃も射撃も弾かれる。
フィールドを張りつつ、攻撃をできるのか……。アレを抜いて当てないといけないとすると、試作型光波射出機では心もとないか ?
当たらぬよう、スラスターを吹かし上下左右に逃げるが、連続照射でこちらに攻撃の隙を与えない。
鬱陶しいと思うが、ティマイオスとクリティアスで一気に距離を詰めアトランティス・ストライクで防御フィールドを抜きつつ攻撃でダメージを与えたいと動く。
「段鎖術式ティマイオス、クリティアス解放っ ‼」
ゼルフィカールの周囲の空間が歪み、元に戻る反動により跳躍を繰り返し一気に肉薄する。
だが、フルフェイスの下で竜也はニヤリと笑みを浮かべる。
「かかったなっ ‼」
竜也の声と共にレイジ改の後ろから、銀色のISが現れ攻撃を放ってきたのだ。
「なにっ ⁉」
既にアトランティス・ストライクを放つ体制でいたのだが、背部ユニット・シャンタクも用いて真上に跳び上がり、銀色のISの攻撃をかわす。
「 “銀の福音” だと ⁉」
“銀の福音” ――シルバリオ・ゴスペルは、アメリカとイスラエルが共同開発している軍用ISだ。彼はブライアンが開発の補助として参加しているので、内密情報として聞いていたのだ。
「はっ、知れたこと。ここに来る前に強奪させてもらったのだよ」
強奪と聞き、機体を凝視する。よく見れば全体に異様な紋様が浮かんでいる。
あの紋様……。禍々しさを感じる。とても嫌な感じだ。
「その紋様で操っているのかっ ‼ 」
「ご名答。我を倒さぬ限り、それは破れんぞ ! さあ、行けっ !」
竜也が左手を掲げると銀の福音が攻撃態勢に入る。ゼルフィカールはロックオンされたことを知らせるが、龍也は銀の福音にパイロットがいるのか生体反応を調べる。
生体反応、有り、か。加減はしないといけないが、正直……難しいっ 。
竜也には死ぬような攻撃を、銀の福音には機能停止を狙う程度の攻撃、と加減をするのは龍也といえど至難の業であった。
さらに、ダメ押しと言わんばかりに竜也は次の一手を打つ。
「そして、今こそこのフレズヴェルク・レイジの真なる姿を見せてやろうぞ ‼ ギガンティックコンビネーションッ ‼ 」
渾身の叫びと共に頭上の雲を切り裂きハーピー型にユニコーン型のユニットが現れる。
ギガンティックコンビネーション ⁉ それにあのユニットは !
龍也はその二体に見覚えがあった。M.S.G.の中でもギガンティックアームズと呼ばれる巨大支援ユニットにそれらがあるのだ。
二体のユニットがフレズヴェルク・レイジと重なると同時に、三体が赤い光に呑まれる。その間、彼らを守るようにシルバリオ・ゴスペルが龍也に砲撃を行ってくる。
くそ、と自分の判断に悪態をついてしまう。見覚えがある、と思った瞬間に体を動かすべきだったのだ。
赤い光が消えると、そこにはフレズヴェルク・レイジを核とした翼の生えた巨人が佇んでいた。
「ギガンティックアームズ、ルシファーズウイング……」
「そうともっ ‼ これぞ貴様を屠るにふさわしい機体といえようっ ‼ 」
原典ではクリアブルーに輝くフェザーユニットは紅色に輝き、大剣ギガスラッシュエッジを構えながら竜也の咆哮が響いた。
いやぁ、敵の機体をどう強くするかで悩んでたらこれだけ時間が空いたよ!
そういうわけで、竜也君には最近出たばかりのギガンティックアームズを使ってもらうぜ!
で、シルバリオ・ゴスペルさん。
扱い方間違えたかなぁ……
次回もよろしくね!